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第1獣
怪獣1-9
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爺爺岳は内部からの爆発力によって、爺爺岳全体が揺すられ、刻々と崩れて行く。
「何だあれは!」
「見ろ! 山が崩れて行く!」
驚いた兵士たちは、AK74Mを爺爺岳に向けながら、崩れて行く光景を見ていた。
その様子を確認した、ミハイル少佐の部隊は撤退命令を出そうとしたが、地面の下から突き上げる揺れに耐える方が先だった。
「ミハイル少佐! 山が崩れて行きます!」
「分かっている! 今はとにかく落ち着くんだ!」
指揮官が動揺していれば、それは部下全体に伝播する。指揮官たるもの常に落ち着いて、対応しなくてはならない。ましてや、こんな突飛な事態であれば尚更だ。
士官学校時代に教わったことを頭の中で反芻しながら、崩れ行く爺爺岳を見ていた。
やがて揺れが完全に止まると、崩れ落ちた爺爺岳から、巨大不明生物が姿を現した。そしてその巨大不明生物は、辺りを軽く見回すと蝙蝠のような羽を羽ばたかせて飛び立とうとする。
「嘘だろ……!」
「あんなのが、山の中にいたのか?」
驚いた声を漏らすも、その中でも冷静な部下はいた。
「少佐! 攻撃命令を!」
部下が打診する。
「ダメだ、我々が今持っている兵器ではあいつにダメージを与えられん! それより、カシンリン博士とチェフスキー博士の安否を確認しろ!」
部下に攻撃要請より、二人の博士の救助を命令した。ただ、同時に巨大不明生物はどこへ飛んで行ったのかという計算も忘れなかった。
「誰か、地図を持って来てくれ! それにコンパスも!」
コンパスと定規の計算によると、北海道の網走方面へ向かっていることが判明した。
最初に未確認生物の姿を捉えたのは、航空自衛隊根室分屯地第26警戒隊のJ/FPS-2対空警戒レーダーだった。近隣の戦闘航空団である、千歳基地へ緊急連絡を行う。
それが、第26警戒隊の最後の仕事になった。巨大不明生物は低空で、しかも音速で跳んでいた。だから音速に達することによるソニックブームが発生し、第26警戒隊は跡形もなく四散した。
勤務していた自衛官全員がバラバラの肉片となるなり、瓦礫や機材に押しつぶされる形で死んだ。生存者は誰もいなかった。
それは根室市も同様だった。巨大不明生物の発生する、ソニックブームをもろに受け、根室市の建物全てが四散したのだ。根室市民にとっては、何が起こったのか確認する暇も無く、虫のように死んで行った。
本来なら彼らを助けるはずの医者も死傷し、病院さえ破壊され何も残っていなかった。そしていざと言う時に国民の皆が頼りにしている、自衛隊も。今やその機能を完全に停止していて、助けに向かえる者はいなかった。
彼らは地獄のような苦しみを味わいながら死んでいく。それしか道はなかった。
運よく被害から逃れた市民もいたが、ほとんど傷ついた亡者を見捨て、根室市からの脱出を図っていた。
そんな中、巨大不明生物は一気に上空へ羽ばたくと、次の標的を探し始めた。
それは人がなるべく多く存在する地域を探していた。そしてある地方都市が目に入ってきた。湖の近くにある小さな街、そこを目掛け飛んで行った。
だが、そこに思わぬ乱入者が現れた。金属製のジェットエンジン音を響かせて、小さなものが複数飛んできた。それは緊急連絡を受け取って、スクランブル発進した、千歳第2航空団の戦闘機、F15Jイーグルの編隊だ。
多数機編隊長の山崎三佐は、青森県三沢基地から転属してきたばかりだが。自分のやろうとしている職務に集中した。
「まさか、本当に戦うことになるとはな……」
前の怪獣襲撃の際に、大規模EMPが発生し、多くのイーグルドライバーやF2のパイロットが犠牲になった。あの時、北部航空方面隊の航空戦力はゼロに近かった。
三か月前のようなことは絶対に起こさせない、今度は我々自衛隊の完全勝利で終わらせる!と胸に誓う。
愛機であるF15Jを操縦し、自然と座席の真ん中あたりにある、操縦桿握る手に力が籠った。
「何だあれは!」
「見ろ! 山が崩れて行く!」
驚いた兵士たちは、AK74Mを爺爺岳に向けながら、崩れて行く光景を見ていた。
その様子を確認した、ミハイル少佐の部隊は撤退命令を出そうとしたが、地面の下から突き上げる揺れに耐える方が先だった。
「ミハイル少佐! 山が崩れて行きます!」
「分かっている! 今はとにかく落ち着くんだ!」
指揮官が動揺していれば、それは部下全体に伝播する。指揮官たるもの常に落ち着いて、対応しなくてはならない。ましてや、こんな突飛な事態であれば尚更だ。
士官学校時代に教わったことを頭の中で反芻しながら、崩れ行く爺爺岳を見ていた。
やがて揺れが完全に止まると、崩れ落ちた爺爺岳から、巨大不明生物が姿を現した。そしてその巨大不明生物は、辺りを軽く見回すと蝙蝠のような羽を羽ばたかせて飛び立とうとする。
「嘘だろ……!」
「あんなのが、山の中にいたのか?」
驚いた声を漏らすも、その中でも冷静な部下はいた。
「少佐! 攻撃命令を!」
部下が打診する。
「ダメだ、我々が今持っている兵器ではあいつにダメージを与えられん! それより、カシンリン博士とチェフスキー博士の安否を確認しろ!」
部下に攻撃要請より、二人の博士の救助を命令した。ただ、同時に巨大不明生物はどこへ飛んで行ったのかという計算も忘れなかった。
「誰か、地図を持って来てくれ! それにコンパスも!」
コンパスと定規の計算によると、北海道の網走方面へ向かっていることが判明した。
最初に未確認生物の姿を捉えたのは、航空自衛隊根室分屯地第26警戒隊のJ/FPS-2対空警戒レーダーだった。近隣の戦闘航空団である、千歳基地へ緊急連絡を行う。
それが、第26警戒隊の最後の仕事になった。巨大不明生物は低空で、しかも音速で跳んでいた。だから音速に達することによるソニックブームが発生し、第26警戒隊は跡形もなく四散した。
勤務していた自衛官全員がバラバラの肉片となるなり、瓦礫や機材に押しつぶされる形で死んだ。生存者は誰もいなかった。
それは根室市も同様だった。巨大不明生物の発生する、ソニックブームをもろに受け、根室市の建物全てが四散したのだ。根室市民にとっては、何が起こったのか確認する暇も無く、虫のように死んで行った。
本来なら彼らを助けるはずの医者も死傷し、病院さえ破壊され何も残っていなかった。そしていざと言う時に国民の皆が頼りにしている、自衛隊も。今やその機能を完全に停止していて、助けに向かえる者はいなかった。
彼らは地獄のような苦しみを味わいながら死んでいく。それしか道はなかった。
運よく被害から逃れた市民もいたが、ほとんど傷ついた亡者を見捨て、根室市からの脱出を図っていた。
そんな中、巨大不明生物は一気に上空へ羽ばたくと、次の標的を探し始めた。
それは人がなるべく多く存在する地域を探していた。そしてある地方都市が目に入ってきた。湖の近くにある小さな街、そこを目掛け飛んで行った。
だが、そこに思わぬ乱入者が現れた。金属製のジェットエンジン音を響かせて、小さなものが複数飛んできた。それは緊急連絡を受け取って、スクランブル発進した、千歳第2航空団の戦闘機、F15Jイーグルの編隊だ。
多数機編隊長の山崎三佐は、青森県三沢基地から転属してきたばかりだが。自分のやろうとしている職務に集中した。
「まさか、本当に戦うことになるとはな……」
前の怪獣襲撃の際に、大規模EMPが発生し、多くのイーグルドライバーやF2のパイロットが犠牲になった。あの時、北部航空方面隊の航空戦力はゼロに近かった。
三か月前のようなことは絶対に起こさせない、今度は我々自衛隊の完全勝利で終わらせる!と胸に誓う。
愛機であるF15Jを操縦し、自然と座席の真ん中あたりにある、操縦桿握る手に力が籠った。
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