44 / 68
44P
しおりを挟む
「忍坂姫、君が腕に持っているそれは何なんだ?」
雄朝津間皇子は、思わず彼女にそう聞いた。
すると、忍坂姫は少し照れながら布の中にあるものを取り出した。そしてそれを雄朝津間皇子に差し出した。
「これ、雄朝津間皇子にあげようと思って」
忍坂姫にそう言われて、雄朝津間皇子はそれを受け取った。そして彼が見てみると、それはどうやら餌袋のようだった。
「昨日の件で、やっぱり何かお礼がしたいなと思って自分で作ってみたの。皇子外に出ることが多いでしょう?だから良いかなと思って」
忍坂姫は少し緊張気味にして言った。どうやら受け取った雄朝津間皇子の反応を酷く気にしているようだった。
そんな彼女を見て、今日部屋にとじ込もってやっていたのは、きっとこれを作っていたのであろうと彼は理解した。
まさか皇女がこんな物を作っていたとは流石に驚きはしたが、彼は純粋にこの贈り物が嬉しいと思った。
「お、俺の為にわざわざこんな物を……」
雄朝津間皇子は余りの事に、じーと彼女が作った餌袋を見ていた。見た目もとても綺麗で、きっとかなり丁寧に編み込んで作ったのであろう。
(雄朝津間皇子、なんかやたら袋を見てない?)
「そ、その、皇子に気に入って貰えたら良いんだけど……」
忍坂姫は少し小さな声で彼に言った。
雄朝津間皇子はそんな彼女を見て、嬉しさの余り思わず彼女を抱きしめた。
「忍坂姫、本当に有難う!とても嬉しいよ!!」
そう言って事あろうに、さらに彼女の頬に口付けまでしてきた。
忍坂姫はいきなり彼に抱きしめられて、さらに頬に口付けまでされてしまい、酷くどぎまぎしていた。
「ち、ちょっと、皇子。どさくさに紛れて何してるんですか!!市辺皇子もいるのに」
忍坂姫はそう言って、雄朝津間皇子から無理矢理自分の体を離した。
そして市辺皇子は、そんな雄朝津間皇子と忍坂姫のやり取りをただただ呆然と見ていた。
「叔父上、良いな~僕もその袋欲しい」
市辺皇子的には、そんな2人のやり取りよりも、彼女が作った餌袋の方が気になるようだ。
「あ、ごめんなさい、市辺皇子。皇子の分もちゃんとありますよ」
彼女はそう言って、もう1つ作ってあった餌袋を彼に渡した。
市辺皇子の袋は、雄朝津間皇子よりも少し小さめに作ってあった。
それを受け取った市辺皇子は「やった!」と言って、その場でとても喜んでいた。
雄朝津間皇子は、自分だけ作ってもらっていた訳ではなかった事を知り、若干面白くないような表情をしていた。
「とりあえず、これは本当に有難う。今後使わせて貰うよ」
雄朝津間皇子は笑顔でそう答えた。
自分の為だけに作っていなかった事は少し残念ではあるが、市辺皇子の気持ちもしっかりと考えている彼女は、本当に優しい娘だと彼は思った。
「皇子に、そこまで喜んで貰えるとは正直思ってませんでした。でも喜んで貰えたようなら、本当に良かったです」
忍坂姫も笑顔でそう答えた。
忍坂姫からしても、この皇子の反応は少し意外だった。だが今回は彼に喜んで貰いたい一身で作っていたので、とりあえず良しとする事にした。
そう忍坂姫が思っていると、市辺皇子がまた横から彼女の手を引っ張って言った。
「ねぇ、2人共そろそろ部屋に戻ろうよ。夕飯の頃じゃない?」
市辺皇子はその時間になると、しっかりとお腹がすくみたいだ。
「あぁ、もうそんな時間なんだ。じゃあ今日は3人で食べるとしようか」
そう言って、雄朝津間皇子は珍しく市辺皇子の手を握った。
そしてそんな市辺皇子の反対の手は、忍坂姫の手を握っている。
彼は両手を握って貰えて、どうもとても喜んでいるようだった。
こうして3人は仲良く、手を握ったまま部屋の中へと戻っていった。
雄朝津間皇子は、思わず彼女にそう聞いた。
すると、忍坂姫は少し照れながら布の中にあるものを取り出した。そしてそれを雄朝津間皇子に差し出した。
「これ、雄朝津間皇子にあげようと思って」
忍坂姫にそう言われて、雄朝津間皇子はそれを受け取った。そして彼が見てみると、それはどうやら餌袋のようだった。
「昨日の件で、やっぱり何かお礼がしたいなと思って自分で作ってみたの。皇子外に出ることが多いでしょう?だから良いかなと思って」
忍坂姫は少し緊張気味にして言った。どうやら受け取った雄朝津間皇子の反応を酷く気にしているようだった。
そんな彼女を見て、今日部屋にとじ込もってやっていたのは、きっとこれを作っていたのであろうと彼は理解した。
まさか皇女がこんな物を作っていたとは流石に驚きはしたが、彼は純粋にこの贈り物が嬉しいと思った。
「お、俺の為にわざわざこんな物を……」
雄朝津間皇子は余りの事に、じーと彼女が作った餌袋を見ていた。見た目もとても綺麗で、きっとかなり丁寧に編み込んで作ったのであろう。
(雄朝津間皇子、なんかやたら袋を見てない?)
「そ、その、皇子に気に入って貰えたら良いんだけど……」
忍坂姫は少し小さな声で彼に言った。
雄朝津間皇子はそんな彼女を見て、嬉しさの余り思わず彼女を抱きしめた。
「忍坂姫、本当に有難う!とても嬉しいよ!!」
そう言って事あろうに、さらに彼女の頬に口付けまでしてきた。
忍坂姫はいきなり彼に抱きしめられて、さらに頬に口付けまでされてしまい、酷くどぎまぎしていた。
「ち、ちょっと、皇子。どさくさに紛れて何してるんですか!!市辺皇子もいるのに」
忍坂姫はそう言って、雄朝津間皇子から無理矢理自分の体を離した。
そして市辺皇子は、そんな雄朝津間皇子と忍坂姫のやり取りをただただ呆然と見ていた。
「叔父上、良いな~僕もその袋欲しい」
市辺皇子的には、そんな2人のやり取りよりも、彼女が作った餌袋の方が気になるようだ。
「あ、ごめんなさい、市辺皇子。皇子の分もちゃんとありますよ」
彼女はそう言って、もう1つ作ってあった餌袋を彼に渡した。
市辺皇子の袋は、雄朝津間皇子よりも少し小さめに作ってあった。
それを受け取った市辺皇子は「やった!」と言って、その場でとても喜んでいた。
雄朝津間皇子は、自分だけ作ってもらっていた訳ではなかった事を知り、若干面白くないような表情をしていた。
「とりあえず、これは本当に有難う。今後使わせて貰うよ」
雄朝津間皇子は笑顔でそう答えた。
自分の為だけに作っていなかった事は少し残念ではあるが、市辺皇子の気持ちもしっかりと考えている彼女は、本当に優しい娘だと彼は思った。
「皇子に、そこまで喜んで貰えるとは正直思ってませんでした。でも喜んで貰えたようなら、本当に良かったです」
忍坂姫も笑顔でそう答えた。
忍坂姫からしても、この皇子の反応は少し意外だった。だが今回は彼に喜んで貰いたい一身で作っていたので、とりあえず良しとする事にした。
そう忍坂姫が思っていると、市辺皇子がまた横から彼女の手を引っ張って言った。
「ねぇ、2人共そろそろ部屋に戻ろうよ。夕飯の頃じゃない?」
市辺皇子はその時間になると、しっかりとお腹がすくみたいだ。
「あぁ、もうそんな時間なんだ。じゃあ今日は3人で食べるとしようか」
そう言って、雄朝津間皇子は珍しく市辺皇子の手を握った。
そしてそんな市辺皇子の反対の手は、忍坂姫の手を握っている。
彼は両手を握って貰えて、どうもとても喜んでいるようだった。
こうして3人は仲良く、手を握ったまま部屋の中へと戻っていった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
枢軸国
よもぎもちぱん
歴史・時代
時は1919年
第一次世界大戦の敗戦によりドイツ帝国は滅亡した。皇帝陛下 ヴィルヘルム二世の退位により、ドイツは共和制へと移行する。ヴェルサイユ条約により1320億金マルク 日本円で200兆円もの賠償金を課される。これに激怒したのは偉大なる我らが総統閣下"アドルフ ヒトラー"である。結果的に敗戦こそしたものの彼の及ぼした影響は非常に大きかった。
主人公はソフィア シュナイダー
彼女もまた、ドイツに転生してきた人物である。前世である2010年頃の記憶を全て保持しており、映像を写真として記憶することが出来る。
生き残る為に、彼女は持てる知識を総動員して戦う
偉大なる第三帝国に栄光あれ!
Sieg Heil(勝利万歳!)
夢幻の飛鳥2~うつし世の結びつき~
藍原 由麗
歴史・時代
稚沙と椋毘登の2人は、彼女の提案で歌垣に参加するため海石榴市を訪れる。
そしてその歌垣の後、2人で歩いていた時である。
椋毘登が稚沙に、彼が以前から時々見ていた不思議な夢の話をする。
その夢の中では、毎回見知らぬ一人の青年が現れ、自身に何かを訴えかけてくるとのこと。
だが椋毘登は稚沙に、このことは気にするなと言ってくる。
そして椋毘登が稚沙にそんな話をしている時である。2人の前に突然、蘇我のもう一人の実力者である境部臣摩理勢が現れた。
蘇我一族内での権力闘争や、仏教建立の行方。そして椋毘登が見た夢の真相とは?
大王に仕える女官の少女と、蘇我一族の青年のその後の物語……
「夢幻の飛鳥~いにしえの記憶」の続編になる、日本和風ファンタジー!
※また前作同様に、話をスムーズに進める為、もう少し先の年代に近い生活感や、物を使用しております。
※ 法興寺→飛鳥寺の名前に変更しました。両方とも同じ寺の名前です。

妖刀 益荒男
地辻夜行
歴史・時代
東西南北老若男女
お集まりいただきました皆様に
本日お聞きいただきますのは
一人の男の人生を狂わせた妖刀の話か
はたまた一本の妖刀の剣生を狂わせた男の話か
蓋をあけて見なけりゃわからない
妖気に魅入られた少女にのっぺらぼう
からかい上手の女に皮肉な忍び
個性豊かな面子に振り回され
妖刀は己の求める鞘に会えるのか
男は己の尊厳を取り戻せるのか
一人と一刀の冒険活劇
いまここに開幕、か~い~ま~く~

まひびとがたり
パン治郎
歴史・時代
時は千年前――日ノ本の都の周辺には「鬼」と呼ばれる山賊たちが跋扈していた。
そこに「百鬼の王」と怖れ称された「鬼童丸」という名の一人の男――。
鬼童丸のそばにはいつも一人の少女セナがいた。
セナは黒衣をまとい、陰にひそみ、衣擦れの音すら立てない様子からこう呼ばれた。
「愛宕の黒猫」――。
そんな黒猫セナが、鬼童丸から受けた一つの密命。
それはのちの世に大妖怪とあだ名される時の帝の暗殺だった。
黒猫は天賦の舞の才能と冷酷な暗殺術をたずさえて、謡舞寮へと潜入する――。
※コンセプトは「朝ドラ×大河ドラマ」の中高生向けの作品です。
平安時代末期、貴族の世から武士の世への転換期を舞台に、実在の歴史上の人物をモデルにしてファンタジー的な時代小説にしています。
※※誤字指摘や感想などぜひともお寄せください!
鎌倉最後の日
もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!
【完結】女神は推考する
仲 奈華 (nakanaka)
歴史・時代
父や夫、兄弟を相次いで失った太后は途方にくれた。
直系の男子が相次いて死亡し、残っているのは幼い皇子か血筋が遠いものしかいない。
強欲な叔父から持ち掛けられたのは、女である私が即位するというものだった。
まだ幼い息子を想い決心する。子孫の為、夫の為、家の為私の役目を果たさなければならない。
今までは子供を産む事が役割だった。だけど、これからは亡き夫に変わり、残された私が守る必要がある。
これは、大王となる私の守る為の物語。
額田部姫(ヌカタベヒメ)
主人公。母が蘇我一族。皇女。
穴穂部皇子(アナホベノミコ)
主人公の従弟。
他田皇子(オサダノオオジ)
皇太子。主人公より16歳年上。後の大王。
広姫(ヒロヒメ)
他田皇子の正妻。他田皇子との間に3人の子供がいる。
彦人皇子(ヒコヒトノミコ)
他田大王と広姫の嫡子。
大兄皇子(オオエノミコ)
主人公の同母兄。
厩戸皇子(ウマヤドノミコ)
大兄皇子の嫡子。主人公の甥。
※飛鳥時代、推古天皇が主人公の小説です。
※歴史的に年齢が分かっていない人物については、推定年齢を記載しています。※異母兄弟についての明記をさけ、母方の親類表記にしています。
※名前については、できるだけ本名を記載するようにしています。(馴染みが無い呼び方かもしれません。)
※史実や事実と異なる表現があります。
※主人公が大王になった後の話を、第2部として追加する可能性があります。その時は完結→連載へ設定変更いたします。
TAKAFUSA
伊藤真一
歴史・時代
TAKAFUSAとは陶隆房のことである。陶隆房の名は有名ではないが、主君大内義隆を殺害し、のち厳島の合戦で毛利元就に討たれた陶晴賢といえば知っている人も多いだろう。その陶晴賢の歩みを歴史の大筋には沿いながらフィクションで描いていきます。
全く初めての小説執筆なので、小説の体はなしていないと思います。また、時代考証なども大嘘がたくさん入ってしまうと思いますがお許しください。少数の方にでも読んでいただければありがたいです。
*小説家になろう にも掲載しています。
*時間、長さなどは、わかりやすいと思うので現代のものを使用しています。

桜はまだか?
hiro75
歴史・時代
ようやく春らしくなった江戸の空のもと、町奉行所同心秋山小次郎が駆けていた。火付(放火)である。
ボヤであったが、最悪江戸を焼く大火となる可能性もある。火付けは大罪 ―― 死罪である。
どんな馬鹿野郎が犯人かと、囚われている自身番に飛び込むと、そこにはうら若き乙女の姿が………………
天和三(一六八三)年三月二十九日、ひとりの少女が火付けの罪で、死罪となった。世にいう、八百屋お七事件である。
なぜ、少女は火付けを犯したのか?
これは、その真相を探り、なんとか助けてやりたいと奮闘する男たちの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる