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53《小野妹子》
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そして6月に入った頃、隋からの客人達はいよいよ、難波津に到着した。
その際には、飾り舟30艘で客人を江口で出迎えることとなる。
※江口:淀川の河口
その後客人達を、炊屋姫が新造した館にまずは落ち着かせた。
そして大和からは、客人の接客の指示をだす。その指示を受けたのが。
中臣宮地烏摩侶
大河内直糠手
船史王平
の3名である。
そしてこの3人は、隋からの帰国者である小野妹子を前にして、口論を始めた。
「妹子殿、それは一体どういうことだ!」
大河内直糠手は余りのことに、思わずその場で叫んだ。
「はい、ですから、私が帰国するときに隋の帝から受け取った国書を、百済を移動中に、百済の者に奪われてしまったのです」
小野妹子は特に動揺することなく、淡々とそう彼らに説明する。
それを聞いた3人のうちの中臣宮地烏摩侶も、続けて声を張り上げて小野妹子にいった。
「きさま、それでも大使か!太使として遣わされたのであれば、何が何でも任務を果たすべきではないのか!!」
彼はそういって、思わず妹子の襟元の部分を掴む。
「そうそう、烏摩侶殿のいう通りだ。それはあなたの怠慢があったからではないのですか?」
最後に船史王平もそういって、小野妹子に対し少し厳しい目を向る。
こうして彼らは、自身の怒りを露にして、小野妹子を一方的に攻め立てる。
だがそんな彼らの発言を小野妹子はとてもすました感じで聞いていた。
彼の表情からは、全く怖じけづく感じが見られない。
だがここでいい合っていても、どうしようもない。そこで3人は小さな声で急に相談を始める。
そしてやっと話し合いが終わったのか、3人を代表して、中臣宮地連烏摩呂が小野妹子にいった。
「とにかくこのことは炊屋姫様に報告する。恐らく流刑にでもなるだろう。
厩戸皇子の信頼が厚いお前がいい気味だな!」
彼はそういうと、その場でケラケラと笑いだした。
そして笑いがおさまった後、他の2人を連れてその場を離れていった。
そんな彼らを小野妹子は、ただただ呆然と眺めていた。
そしてその後、彼は頭に手を当ててやれやれといった感じで思わず呟いた。
「ふぅー、まったくもって、ややこしい人達だ。大王や皇子の意向を全く組み取れていない……」
小野妹子が隋の帝の元にいった際に、彼は厩戸皇子の書いた国書を帝に渡していた。
その国書には「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す、恙無しや」の文面が記載されている。
帝はその国書を見るなり、自分以外の者が天子を名乗った事で、倭国側のその強気な姿勢にひどく激怒した。
だがこれはあくまでも、隋と対等な関係を築きたいという、厩戸皇子の考えである。
帝からの国書の紛失も、そういった互いの立場の兼ね合いも含んでいるのだ。
そしてその後小野妹子の件は、すぐさま炊屋姫の元に伝わることとなる。
だが報告に来たその3人に対し、彼女からは意外な返事が返ってくる。
「確かに彼は、国書を失うという罪を犯したかもしれません。ですが軽々しく刑に処すべきではないでしょう。
これが隋から来た客人に知られるのは、余り良くありません」
炊屋姫はそういって小野妹子をゆるし、刑に処さなかった。
それを聞いた3人は酷く腹を立てるものの、炊屋姫にはよう逆らえず、大人しく引き下がるほかなかった。
こうして、小野妹子へのお咎めはなくなり、刑は無事に回避されることとなった。
その際には、飾り舟30艘で客人を江口で出迎えることとなる。
※江口:淀川の河口
その後客人達を、炊屋姫が新造した館にまずは落ち着かせた。
そして大和からは、客人の接客の指示をだす。その指示を受けたのが。
中臣宮地烏摩侶
大河内直糠手
船史王平
の3名である。
そしてこの3人は、隋からの帰国者である小野妹子を前にして、口論を始めた。
「妹子殿、それは一体どういうことだ!」
大河内直糠手は余りのことに、思わずその場で叫んだ。
「はい、ですから、私が帰国するときに隋の帝から受け取った国書を、百済を移動中に、百済の者に奪われてしまったのです」
小野妹子は特に動揺することなく、淡々とそう彼らに説明する。
それを聞いた3人のうちの中臣宮地烏摩侶も、続けて声を張り上げて小野妹子にいった。
「きさま、それでも大使か!太使として遣わされたのであれば、何が何でも任務を果たすべきではないのか!!」
彼はそういって、思わず妹子の襟元の部分を掴む。
「そうそう、烏摩侶殿のいう通りだ。それはあなたの怠慢があったからではないのですか?」
最後に船史王平もそういって、小野妹子に対し少し厳しい目を向る。
こうして彼らは、自身の怒りを露にして、小野妹子を一方的に攻め立てる。
だがそんな彼らの発言を小野妹子はとてもすました感じで聞いていた。
彼の表情からは、全く怖じけづく感じが見られない。
だがここでいい合っていても、どうしようもない。そこで3人は小さな声で急に相談を始める。
そしてやっと話し合いが終わったのか、3人を代表して、中臣宮地連烏摩呂が小野妹子にいった。
「とにかくこのことは炊屋姫様に報告する。恐らく流刑にでもなるだろう。
厩戸皇子の信頼が厚いお前がいい気味だな!」
彼はそういうと、その場でケラケラと笑いだした。
そして笑いがおさまった後、他の2人を連れてその場を離れていった。
そんな彼らを小野妹子は、ただただ呆然と眺めていた。
そしてその後、彼は頭に手を当ててやれやれといった感じで思わず呟いた。
「ふぅー、まったくもって、ややこしい人達だ。大王や皇子の意向を全く組み取れていない……」
小野妹子が隋の帝の元にいった際に、彼は厩戸皇子の書いた国書を帝に渡していた。
その国書には「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す、恙無しや」の文面が記載されている。
帝はその国書を見るなり、自分以外の者が天子を名乗った事で、倭国側のその強気な姿勢にひどく激怒した。
だがこれはあくまでも、隋と対等な関係を築きたいという、厩戸皇子の考えである。
帝からの国書の紛失も、そういった互いの立場の兼ね合いも含んでいるのだ。
そしてその後小野妹子の件は、すぐさま炊屋姫の元に伝わることとなる。
だが報告に来たその3人に対し、彼女からは意外な返事が返ってくる。
「確かに彼は、国書を失うという罪を犯したかもしれません。ですが軽々しく刑に処すべきではないでしょう。
これが隋から来た客人に知られるのは、余り良くありません」
炊屋姫はそういって小野妹子をゆるし、刑に処さなかった。
それを聞いた3人は酷く腹を立てるものの、炊屋姫にはよう逆らえず、大人しく引き下がるほかなかった。
こうして、小野妹子へのお咎めはなくなり、刑は無事に回避されることとなった。
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