28 / 60
28【炊屋姫の斎会】
しおりを挟む
それからしばらくして、先日稚沙と厩戸皇子が立ち会った例の仏像が、無事金堂に入れることができたようで、その知らせが稚沙達の耳にも入ることになる。
(あの人は、一体どうやって入れたんだろう?)
稚沙には鞍作鳥がどのようにして、仏像を金堂の中に入れたのかは、さっぱり分からない。
「うーん、まぁ無事に仏像が入ったから良いけれど、本当に不思議」
そして炊屋姫の意向により、それから斎会が行われることになった。
そして彼女の元には沢山の人達が集まってきた。当日稚沙は、その後の直会のために配膳の仕事に携わるよう指示をうけていた。
「はぁ、今日も相変わらず忙しいったらありゃしない!」
稚沙は直会が行われている場に、食事や空の器を持って行ったりきたりしている。
そして彼女が忙しく働いていると、ふと目先にある人物の姿を確認することができた。
その人物は境部臣摩理勢のようで、彼は誰かと話をしている様子だ。稚沙がその相手にも目を向けると、相手は蘇我馬子の息子の蝦夷だった。
だがとても和気あいあいといった感じには見えず、何とも少し重ぐろしい雰囲気をその場に漂わせていた。
(そういえば椋毘登も、蝦夷と境部臣摩理勢は対立関係に発展するみたいなこと話してたけど、やっぱり本当なのかも)
稚沙には、彼らがどんな会話しているのかは分からない。だが互いに警戒しながら話しているようにも見えるので、余り良い話をしてる風には思なかった。
稚沙がとりあえずその場を離れようとした所、後ろから急に、誰かが声を掛けてくる。
彼女が誰だろうと振り返ると、そこには厩戸皇子が1人で立っていた。
そして彼は稚沙の横にやってくると、彼女が今まで見ていた方に目を向ける。
「ふーん、蝦夷と境部臣摩理勢か……」
「皇子も彼らの関係のことは知ってるんですね」
「あぁ、もちろんさ。私は蘇我とは繋がりが深い。というより、私は蘇我の血筋の皇子だからね」
厩戸皇子の祖母にあたる蘇我小姉君は蘇我馬子の姉妹にあたる人である。
「確かにそうでした。なら皇子も2人の関係が良くないのは心配になりますね」
「本当に全くだ。これが新たな火蓋にならなければ良いのだが」
(2人は割と近い親戚同士だから、なおさら争いになれば悲惨なことになる......)
稚沙と厩戸皇子は、摩理勢と蝦夷の2人を何ともやらせない思いで見つめる。
その後彼らの会話も終わったようで、互いにその場を離れていったようだ。
(あの人は、一体どうやって入れたんだろう?)
稚沙には鞍作鳥がどのようにして、仏像を金堂の中に入れたのかは、さっぱり分からない。
「うーん、まぁ無事に仏像が入ったから良いけれど、本当に不思議」
そして炊屋姫の意向により、それから斎会が行われることになった。
そして彼女の元には沢山の人達が集まってきた。当日稚沙は、その後の直会のために配膳の仕事に携わるよう指示をうけていた。
「はぁ、今日も相変わらず忙しいったらありゃしない!」
稚沙は直会が行われている場に、食事や空の器を持って行ったりきたりしている。
そして彼女が忙しく働いていると、ふと目先にある人物の姿を確認することができた。
その人物は境部臣摩理勢のようで、彼は誰かと話をしている様子だ。稚沙がその相手にも目を向けると、相手は蘇我馬子の息子の蝦夷だった。
だがとても和気あいあいといった感じには見えず、何とも少し重ぐろしい雰囲気をその場に漂わせていた。
(そういえば椋毘登も、蝦夷と境部臣摩理勢は対立関係に発展するみたいなこと話してたけど、やっぱり本当なのかも)
稚沙には、彼らがどんな会話しているのかは分からない。だが互いに警戒しながら話しているようにも見えるので、余り良い話をしてる風には思なかった。
稚沙がとりあえずその場を離れようとした所、後ろから急に、誰かが声を掛けてくる。
彼女が誰だろうと振り返ると、そこには厩戸皇子が1人で立っていた。
そして彼は稚沙の横にやってくると、彼女が今まで見ていた方に目を向ける。
「ふーん、蝦夷と境部臣摩理勢か……」
「皇子も彼らの関係のことは知ってるんですね」
「あぁ、もちろんさ。私は蘇我とは繋がりが深い。というより、私は蘇我の血筋の皇子だからね」
厩戸皇子の祖母にあたる蘇我小姉君は蘇我馬子の姉妹にあたる人である。
「確かにそうでした。なら皇子も2人の関係が良くないのは心配になりますね」
「本当に全くだ。これが新たな火蓋にならなければ良いのだが」
(2人は割と近い親戚同士だから、なおさら争いになれば悲惨なことになる......)
稚沙と厩戸皇子は、摩理勢と蝦夷の2人を何ともやらせない思いで見つめる。
その後彼らの会話も終わったようで、互いにその場を離れていったようだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
夢幻の飛鳥~いにしえの記憶~
藍原 由麗
歴史・時代
時は600年代の飛鳥時代。
稚沙は女性皇族で初の大王となる炊屋姫の元に、女官として仕えていた。
彼女は豪族平群氏の額田部筋の生まれの娘である。
そんなある日、炊屋姫が誓願を発することになり、ここ小墾田宮には沢山の人達が集っていた。
その際に稚沙は、蘇我馬子の甥にあたる蘇我椋毘登と出会う。
だが自身が、蘇我馬子と椋毘登の会話を盗み聞きしてしまったことにより、椋毘登に刀を突きつけられてしまい……
その後厩戸皇子の助けで、何とか誤解は解けたものの、互いの印象は余り良くはなかった。
そんな中、小墾田宮では炊屋姫の倉庫が荒らさせる事件が起きてしまう。
そしてその事件後、稚沙は椋毘登の意外な姿を知る事に……
大和王権と蘇我氏の権力が入り交じるなか、仏教伝来を機に、この国は飛鳥という新しい時代を迎えた。
稚沙はそんな時代を、懸命に駆け巡っていくこととなる。
それは古と夢幻の世界。
7世紀の飛鳥の都を舞台にした、日本和風ファンタジー!
※ 推古朝時に存在したか不透明な物や事柄もありますが、話しをスムーズに進める為に使用しております。
また生活感的には、聖徳太子の時代というよりは、天智天皇・天武天皇以降の方が近いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
梅すだれ
木花薫
歴史・時代
江戸時代の女の子、お千代の一生の物語。恋に仕事に頑張るお千代は悲しいことも多いけど充実した女の人生を生き抜きます。が、現在お千代の物語から逸れて、九州の隠れキリシタンの話になっています。島原の乱の前後、農民たちがどのように生きていたのか、仏教やキリスト教の世界観も組み込んで書いています。
登場人物の繋がりで主人公がバトンタッチして物語が次々と移っていきます隠れキリシタンの次は戦国時代の姉妹のストーリーとなっていきます。
時代背景は戦国時代から江戸時代初期の歴史とリンクさせてあります。長編時代小説。長々と続きます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
鎌倉最後の日
もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!
蘭癖高家
八島唯
歴史・時代
一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。
遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。
時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。
大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを――
※挿絵はAI作成です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる