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「所でさ、せっかく兄上の所に来たんだし、しばらくここに泊まっていっても良い?」
「はぁ?」
「父上と母上が死んじゃって、大王になった去来穂別の兄上も色々と忙しそうだし。何か一人だと寂しくて……」
雄朝津間皇子はシュンとしながら言った。まだまだ家族が恋しい年齢なのだろう。
雄朝津間皇子は、元々先の大王である大雀の宮で暮らしていた。
だが大王が崩御した後は今の大王である去来穂別大王の住んでいる磐余稚桜宮に移っていた。
「お前、まさかここに来た本当の理由はそれなんじゃ?」
「まぁ、そう言われると否定出来ないけど」
雄朝津間皇子は瑞歯別皇子に無邪気にそう答えた。
そんな事を弟皇子から言われて、瑞歯別皇子は思わずガクッと肩を落した。
(まぁ、この歳じゃ仕方ないか)
「分かった、暫くここにいろ。ただ俺だってそんなに暇じゃない……」
「わぁ、兄上有り難うー!」
雄朝津間皇子は大声で喜んだ。
(やれやれ、ここにしばらく滞在出するのがそんなに良いものなのか)
ただ、ここ最近は嫌な事ばかりだっので、弟がいれば気持ちを持ち直すのに良いかもしれない。
瑞歯別皇子は大喜びしている弟を見て、そう思った。
翌日、佐由良が倉庫の片付けを終えて戻って来た時の事。
胡吐野と同じ宮仕えの伊久売が何か話しをしていた。
「2人供何かあったの」
2人は佐由良がやって来た事に気付き、彼女に歩み寄った。
すると伊久売が彼女に答えた。
「昨日雄朝津間皇子がこの宮に来られたんだけど、しばらくここに滞在されるみたいよ」
「雄朝津間皇子?」
(一体誰なんだろう)
佐由良は不思議そうに思っていると、胡吐野が答えた。
「前の大王の第4皇子で、今の大王の弟になるわ」
「え、まだ皇子がいたの?それは知らなかった」
吉備海部で伝わっていたのは瑞歯別皇子までだった。
他にも皇子がいてもおかしくはないが、まだ幼いか身分が低いかのどちらかだろう。
続けて伊久売が答えた。
「雄朝津間皇子はまだ11歳で、磐之媛が産んだ末の皇子よ。佐由良あなたよりも若いんだから」
「へぇー磐之媛様の末の皇子ね。それは知らなかったわ」
(磐之媛は結構たくさん皇子を産んでいたのね。本当に同じ女性として凄いと思う……)
「それで、その雄朝津間皇子がどうしてこの時期に来られたの」
最近は物騒な事件が続いていた為、この若宮内でも、割りと見張りが強化される事態になっていた。
なので、そんな中で来るとなると佐由良も少し不思議に思えた。
「特に用があった訳ではないらしく、どうも久々に兄の瑞歯別皇子に会いたかったみたい。まぁ、あの皇子が謀反を起こすとは考えにくいし……」
伊久売がそう答え、胡吐野も「そうそう」と頷いた。
「はぁ?」
「父上と母上が死んじゃって、大王になった去来穂別の兄上も色々と忙しそうだし。何か一人だと寂しくて……」
雄朝津間皇子はシュンとしながら言った。まだまだ家族が恋しい年齢なのだろう。
雄朝津間皇子は、元々先の大王である大雀の宮で暮らしていた。
だが大王が崩御した後は今の大王である去来穂別大王の住んでいる磐余稚桜宮に移っていた。
「お前、まさかここに来た本当の理由はそれなんじゃ?」
「まぁ、そう言われると否定出来ないけど」
雄朝津間皇子は瑞歯別皇子に無邪気にそう答えた。
そんな事を弟皇子から言われて、瑞歯別皇子は思わずガクッと肩を落した。
(まぁ、この歳じゃ仕方ないか)
「分かった、暫くここにいろ。ただ俺だってそんなに暇じゃない……」
「わぁ、兄上有り難うー!」
雄朝津間皇子は大声で喜んだ。
(やれやれ、ここにしばらく滞在出するのがそんなに良いものなのか)
ただ、ここ最近は嫌な事ばかりだっので、弟がいれば気持ちを持ち直すのに良いかもしれない。
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「昨日雄朝津間皇子がこの宮に来られたんだけど、しばらくここに滞在されるみたいよ」
「雄朝津間皇子?」
(一体誰なんだろう)
佐由良は不思議そうに思っていると、胡吐野が答えた。
「前の大王の第4皇子で、今の大王の弟になるわ」
「え、まだ皇子がいたの?それは知らなかった」
吉備海部で伝わっていたのは瑞歯別皇子までだった。
他にも皇子がいてもおかしくはないが、まだ幼いか身分が低いかのどちらかだろう。
続けて伊久売が答えた。
「雄朝津間皇子はまだ11歳で、磐之媛が産んだ末の皇子よ。佐由良あなたよりも若いんだから」
「へぇー磐之媛様の末の皇子ね。それは知らなかったわ」
(磐之媛は結構たくさん皇子を産んでいたのね。本当に同じ女性として凄いと思う……)
「それで、その雄朝津間皇子がどうしてこの時期に来られたの」
最近は物騒な事件が続いていた為、この若宮内でも、割りと見張りが強化される事態になっていた。
なので、そんな中で来るとなると佐由良も少し不思議に思えた。
「特に用があった訳ではないらしく、どうも久々に兄の瑞歯別皇子に会いたかったみたい。まぁ、あの皇子が謀反を起こすとは考えにくいし……」
伊久売がそう答え、胡吐野も「そうそう」と頷いた。
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