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そして翌日、阿止里あとり達は吉備に戻る事になった。

瑞歯別皇子みずはわけのおうじや佐由良達は、そんな彼らを見送りにやって来た。

『瑞歯別皇子、この度は本当にありがとうございました。』

『あぁ、こちらこそ色々話しが聞けて良かった。また吉備の海部の方にも機会があれば行ってみたい。』

元々吉備を嫌っていた瑞歯別皇子からすれば、これはかなりの変化だと、隣で聞いていた佐由良は思った。

この分だと佐由良も実家帰りが出来るかもしれない。

『はい、是非吉備の海部にもいらして下さい。』

阿止里がそう言うと、2人は互いに握手を交わした。
瑞歯別皇子も阿止里の事をどうやら認めたようだ。

すると阿止里は佐由良に目を向けた。

佐由良は阿止里との別れを悲しんでいるようだった。

すると阿止里は手を広げた。その瞬間佐由良は阿止里の胸に飛び込んだ。

『阿止里、今度はこっちから会いに行くからね。』

そう言って佐由良は阿止里の胸で泣き出した。すると阿止里は佐由良を優しく抱きしめて、彼女の頭を撫でてやった。

その瞬間、瑞歯別皇子が自身の剣をにぎっているのが分かった。

(なる程、もしこのまま俺が佐由良を奪おうものなら、剣を仕掛けてくるつもりか......)

やはりこの皇子は侮れないなと阿止里は思った。

そして、彼は自分から佐由良を引き離した。

『じゃあな佐由良、俺そろそろ行くから。』

そう言って佐由良の頭をポンポン撫でると、そのまま近くにいた馬に股がった。


『瑞歯別皇子、他の皆さんも、本当に有り難うございました。ではお元気で。』

そう言って阿止里一行は、馬を走らせて、吉備へと帰って行った。

そんな彼らを佐由良は姿が見えなくなるまで見送っていた。

(阿止里、本当に元気でね。)

すると瑞歯別皇子が佐由良の隣に来て、彼女の肩を抱いた。

『やっぱりあいつが帰ると寂しいか。』

佐由良はそんな皇子に対して言った。

『確かにちょっとは寂しいけど、でもここには皇子や他の宮の人達がいるから、大丈夫。』

佐由良は笑顔で瑞歯別皇子にそう言った。

(きっとこれからも色々な事が起こるんだろうけど、私はこの人を信じて頑張って生きて行くわ。)

『じゃぁ、そろそろ中に戻ろうか。』

そう言って彼は、佐由良の肩に腕を置いたまま歩き出した。


大和もこれから、暑い夏が近づいて来ようとしている。

佐由良の好きな夏の季節だ。きっとまた色んな事があるんだろうなと佐由良は思うのであった。



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