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王都編 〜勉強する〜
181.おっさん、餅を焼く
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読んでいた本を閉じてふわぁと大きな欠伸をした。流石に一日中座りっぱなしというのも疲れるものだ。
立ち上がって大きく伸びをした後に腰を左右に捻った。
昨日メモしたものを清書したのだが、さらにわからないこと、知りたいことがどんどん増えて、清書した紙にもメモ書きがいっぱいになってしまった。
ダメだ。考えれば考えるほどまとまらない。
はぁとため息をついてコキコキと首を鳴らすと、気晴らしに窓の外を眺めた。
そこに、こちらに向かってくるディーとオスカーの姿が見えて、もう護衛の交代の時間か、と時計を見る。
「ロイ、起きろ。もう昼だぞ」
昨日と同様に居眠りをしていたロイがフガッと鼻を鳴らして目を覚ました。
「俺、今日もここに居るわ」
寝惚けながら言い、ふわぁと大きな欠伸をした。
「何言ってんだ」
そんなわけにはいかないだろ、と言いながら昼食をとるために一度執務室を出る。
1階に降りた所でディーとオスカーが到着し挨拶をかわした。
「ショーヘイさん」
ニコリと微笑みながらディーがコートを脱ぎながら急いで俺に近寄ると、チュウとキスしてきた。
「人数減ったし、また2人体制になったから護衛の順番回ってくるの早いな」
「それはそれで嬉しいです」
ディーがにこやかに笑う。
「昼食は?」
「済ませてきたので先に行ってますね」
すでに昼食を済ませたという2人と別れて、俺たちは食堂で昼食を済ませた後、アビゲイルは官舎に戻ったが、ロイは戻らずにくっついてくる。
「オスカーが帝国の話すんだろ?俺も聞く」
ロイは戻らず、執務室で2人からの説明を聞くことにした。
「帝国の貴族、全部となるとかなりややこしいから、とりあえず今回お前に見合いを申し込んできたバルト家について説明するわ」
オスカーがソファに座り、キースに淹れてもらったお茶を飲みながら言った。
「帝国には5つの公爵家がある。俺の実家のレンブラント、ソフィア王妃の生家のバルト、ロレーヌ、グロスター、ランカスターの5家だな」
帝国も公国同様に世襲制の国だ。
だが、公国と違うのは、いかに長子といえどもそう安安と家を継げるわけではないことにある。
オスカーは次男(第2子)であり、長男と争って勝ち、公爵になることも出来たのだが、いくら周囲が持ち上げようともオスカー自身にその気がなかった。
「俺は公爵の仕事にも領地経営にも関心がなくてな。帝国では18歳で元服するんだが、その時に継承権を放棄し、レンブラントと名乗ることもやめたんだ。
だから俺はただのオスカーで、レンブラント家の血筋であっても、もう関係がない」
そう言ってニカッと笑う。
「俺の妹、レンブラント家の長女は現皇帝の第2妃でな。家のために皇家に嫁いだんだ。
帝国はこの国以上に政略結婚が盛んで、皇帝の7人いる妃のうち、4人は帝国の高位貴族、残りの3人は属国の姫や王子たちだ」
「7人…」
1人の皇帝に7人も妃がいるなんて、と顔を顰めた。日替わりでローテーションでも組んでいるんだろうか、と下世話な想像をしてしまった。
「今の皇帝は好色家だからな」
オスカーが苦笑いを浮かべる。
「実は私も皇帝の妃にと望まれたことがありましてね」
「え!?」
ディーが苦笑しながら打ち明け、俺は変な声をあげてしまった。
「そんなことあったなぁw」
ロイが笑いながら親友を小突く。
「まぁ、はっきりきっぱりとお断りしましたけどね」
「簡単に断れるもんなのか?」
「王達が猛反対したからな。あんな男に嫁がせるかってえらい剣幕でw」
オスカーがその時のことを覚えているのか、笑いながら言う。
「父や兄さん達があらゆる手を使って阻止してくれたんですよ。
今考えると、私が王位継承権を放棄出来たのも、それがあったせいも大きかったと思います」
「そうだな。継承権がないなら政略的価値はグッと下がる」
会話を聞きながら、なるほどね、と理解した。
「まぁ、皇帝がディーゼルを望んだのは他にも理由があるんだが」
「他の理由?」
「ディーゼルの容姿だよ。ソフィア王妃の生き写しだ」
そう聞いて、王宮の大階段に飾ってあった肖像画を頭に思い浮かべる。本当に、ディーの肖像画かと思ったくらいにそっくりだった。
「ソフィア様は、帝国の至宝と呼ばれるほど容姿端麗で、頭も良かった。皇帝の正妃になるとずっと言われていたんだ。
おそらく皇帝自身もそのつもりでいただろう」
「ですが、父と学生時代に出会って恋に落ち、大恋愛の末に結婚してしまった」
レイブンとソフィアは大恋愛だというのは聞いていた。
将来皇帝の正妃とまで言われていた人の心を射止めたレイブンもすごいと思うが、他国へ嫁ぐということで、きっと色々な摩擦も起こったんだろうなと、その時の状況を知りたいと思ってしまう。
「皇帝にしたら納得いかないだろうよ。で、生まれてきたディーゼルを見て、ソフィア様の代わりに、と思ったんだろうな」
「うわぁ…」
ソフィアに振られて、その息子がそっくりだから嫁にって、短絡的すぎると鼻で笑ってしまった。
「話が逸れたな。
帝国での5つの公爵家当主はそれぞれが国の重鎮で、レンブラント家は国軍の将軍職を歴代担っていて、俺の兄も現役の騎士で将軍だ。
帝国は武が尊ばれる国で、いくら高位貴族であっても実力がなければ役職につくことは無理だ。
現公爵で将軍である兄も、めっぽう強いぞ。俺には及ばんがな」
オスカーがニヤリと笑いつつ、兄に対してマウントを取る。
だが、オスカーが言うくらいなのだから、実際に強いんだろうと思った。
「セリオも今は第2騎士団で部隊長をしてるって聞いたぞ。なかなか強くなったみてえだな」
セリオの名前が出て、俺は少しだけ眉間に皺を寄せた。
狩猟祭でセリオがロイに求婚したことはいまだに鮮明に覚えている。セリオだけじゃない、帝国のシーグヴァルド伯爵もだ。
それを思い出して、心がモヤッとする。
「バルト家は帝国ではどんな立ち位置なんだ?」
モヤモヤと打ち消すように、別の話をわざと持ち出した。
「バルト家はどちらかというと、武というよりかは政だな」
「そうですね。現公爵のマシュー・バルト、母の兄に当たる人ですが、皇帝の側近の1人です」
「今回お見合いするっていうユージーンは3男だっけ?」
「ええ。ユージーン・バルト24歳。彼は次男と3男2人で領地経営を担っていますね。」
「長女も次女もすでに結婚して他国にいて、バルト家で独身はユージーンだけだな」
「どんな人なんだ?」
「5歳下ですが…。子供ですね。甘えん坊で夢見がちな子供みたいな所があって」
ロイも似たようなことを言っていた。
24歳というと、まだ社会に出て数年目という年だ。5歳しか離れていないロイやディーに子供と言われるのだから、精神年齢が24歳にしては、ということなのかもしれない。
「手紙にもさ、見合いして結婚を前提にお付き合いと、という感じじゃなかったよ。
お友達になってください、みたいなニュアンスだった」
「ああ、ユージーンならそう言うでしょう。恋愛よりも遊び相手、話し相手が欲しい、みたいな」
ディーが苦笑する。
「バルト家はあわよくば聖女と結婚させたいが、ユージーンはそんなつもりないかもな」
ロイがおかしそうに笑った。
「ですね。あの子の場合、恋愛よりもまだ英雄とか聖女とかの御伽話に夢中って感じですね」
それを聞いて、確かに手紙の中には、俺がやった聖女の行動のことがたくさん書いてあったことを思い出す。
見合いしたいと言っている相手からの手紙にしては、聖女へのファンレター的な内容だったのだ。
「まぁ今回の見合いは形式的なものですし、相手がユージーンですから気を張る必要はないと思いますよ。
上手く話を合わせるだけで満足するんじゃないでしょうか」
「わざわざモーリスを付き添いに寄越すんだから、1人で他国に行くことも出来ない坊ちゃんだな」
オスカーもおかしそうに笑う。
「むしろ、叔父上の方が気になりますよ。付き添いとはいえ、わざわざ甥っ子のために出張ってくるなんて」
ディーの眉間に皺が寄る。
そういえば、ディーもアランも叔父であるモーリスが苦手だと言っていたのを思い出した。
「見合いについても、ユージーンじゃなくて、モーリスの方でも充分にあり得る話だからな。
もしかすると、ユージーンをダシにして、実際はモーリスがショーヘーに会いたいと思っているかもしれん」
オスカーが腕を組んで首を傾げる。
「そのモーリスさんって人は何をしてる人なんだ?」
「一応兄である公爵の補佐官ですね」
「補佐官が甥っ子のためとはいえ、仕事を抜け出して付き添うっていうのもおかしな話だ」
オスカーが眉間に皺を寄せる。
「モーリスは曲がりなりにもバルト家の一員で、政に通じている。
あの一族らしく頭も良いし、公爵代理として務められるような男だ」
オスカーの言葉にディーも頷く。
「そこなんですよ。結局このお見合いはユージーンのためじゃなく、バルト家に何らかの思惑あってのことだと考えるべきじゃないですか?」
「おいおい。面倒くせぇなぁ。帝国まで聖女争奪戦に参加してくるってことかよ」
ロイがマールデンやキドナも絡んできているのに、と思い切り顔を顰めた。
それを聞いて、ふと思い至る。
「マールデンはメルヒオール王子、キドナはバシリオ王子だったろ?
帝国皇家に独身で妙齢の姫か王子はいないのか?」
おそらく帝国側にも、この2国の王子が俺に求婚した情報は入っているはずだ。なのに見合いの申し込みは高位貴族だということに違和感を覚えた。
その俺の質問に、全員が目を丸くする。
「言われてみればそうだな。皇帝の子供にも妙齢の独身がいるぞ」
「さらに皇帝自身もまだ60代ですし、8番目の妃にと言われてもおかしくありませんよ」
キースが眉を顰めて言った。好色家と言われている皇帝だから有り得ない話ではない。
「確かに言われてみれば…。マールデンやキドナが動いたのに帝国が動かないっていうのは…おかしいな」
オスカーが首を捻る。
「単純に皇家が聖女を必要としていないのか。
それとも、何か別の理由があるのか。
皇帝の側近であるバルト公爵の補佐を付き添いに寄越すんじゃなくて、ユージーンが建前で、そのモーリスが本命なんじゃないか?」
モーリスという人物がバルト公爵の代理を務められるほど優秀な人物なら、モーリス自身が何らかの意図を持って一緒に来ると考えた方がしっくりくるのかもしれない。
「つまり、注意すべきはユージーンとの見合いじゃなくて、モーリスの方だと言いたいのか」
ロイが顎を撫でながら俺を見る。
「あくまで憶測だよ。
ただ、甥っ子可愛さに要職についている人が仕事ほっぽり出して付き添いに来るのか?って話。
本当にユージーンが可愛いだけかもしれないけど、俺はどんな人か知らないし」
「…モーリスは、何を考えているのか、掴めない人なんですよ」
ディーがボソリを言った。
「昔からよく公国には来ていました。それこそ、母が生きている頃はよく。
母が亡くなってからは頻度は減りましたけど、それでも長期休暇の時は必ず母の墓参りに来て、1週間は滞在していく…」
それを聞いて、そんなに来ているのなら、先ほどの憶測は違うかもしれないと思った。
「いつも笑っているんですが、何となくその顔と思っていることが違うような気がして…」
「はっきり言って気持ち悪い」
ロイがフンと鼻を鳴らし、ディーが苦笑いを浮かべる。
「ロイの言う通りなんですよ。精神的にざわついて気持ち悪い」
「確かになぁ」
オスカーも2人に同調した。
「アラン様も同じようなことをおっしゃってましたね。
大人になられてからは特に」
それを聞いて、モーリスという男がどういう人なのか全く想像出来なくなってしまった。
何気なく言った憶測だったが、実は的を得ているのかもしれない、とも思うが、どうもディー達のモーリスに抱く感情に引っ掛かりを覚える。
構いすぎて嫌われる、という心理もなきにしもあらずだが、言い加減いい年になった甥達にここまで思われるのも何かおかしい。
色々と話を聞いて、今まで同様に走り書きでメモを取っていたので、今度じっくり考えようと、先ほどの憶測や、思ったこと、感情面もメモにとった。
バルト家、帝国皇家、ユージーンの人となり、モーリスについて。
とりあえず、現時点で知りたいことは大体出揃ったな、と一区切りつけることにした。
「ありがとう。何となくバルト家についてはわかったよ。
帝国に関しては本で詳しく調べてみる。またわからないことがあったら聞いてもいいかな」
「ああ、いつでも」
オスカーがニコリと笑った。
その後は、昨日ギルバートとフィッシャーに聞いたジョン・ベルトラークの話をディーとオスカーに聞かせた。
オスカーもジョンについての噂は聞いたことがあったらしく、娼館での聞き込みの話になった時に、ニヤリと顔を歪ませた。
「俺、行こうかな」
「え」
オスカーがいやらしい笑みを浮かべると、すぐに魔力を手に集中して魔鳥を出現させる。
「俺が娼館で聴き込みしてくる。経費で落としていいんだよな?
明日にでも行ってくるから、人選びしなくてもいいぞ。
娼館の名前教えてくれ」
魔鳥に向かって話すと、サッサと窓を開けて、魔鳥をフィッシャーに向かって放った。
「お前…」
ロイが呆れたように言ったが、ニヤけたオスカーがロイを振り返り、
「なんだ、お前も行きたいのか?一緒に行くか?」
と誘いをかけた。
するとロイはすぐに俺の顔を見て、機嫌を伺うような表情を浮かべた。
「行きたいなら行けば?」
昨日に引き続き、スンと真顔になるとロイに向かって言う。
「行かねーってば!オスカー!余計なこと言うな!」
「ディーゼル、お前はどうする?」
「は!?い、行きませんよ!」
突然話を振られたディーの声が上擦った。
「ディー、行ってもいいんだぞ」
同じようにすました声で言うと、ディーも顔を赤くして否定した。
「行かないですよ!オスカー!!」
2人に怒鳴られながらもオスカーはゲラゲラ笑い、俺も苦笑する。
そうこうしているうちにすぐにフィッシャーから魔鳥が帰ってきた。
「お、来た来た」
ウキウキしながらオスカーが窓を開け魔鳥を中に入れる。
「オスカーが行くなら問題ないな。場所はセドアとルヴァンの間にある夢幻城という名の娼館だ。
そこのシアという男娼がお気に入りらしい。
ちなみに経費については後日相談ということでな」
魔鳥が喋るのを初めて聞いて、カラスを小さくしたような鳥が、フィッシャーの声で喋るのを興味津々に見つめた。
「よっしゃ。じゃあ明日ちょっくら行ってくっかな」
ヒヒヒと嬉しそうに笑うオスカーに苦笑する。
93歳、元の世界では50代に相当するのだろうが、いまだに性欲は現役らしい。
ロイとディーを見ると、2人ともうすら笑いを浮かべていた。
おそらく、この話で2人は過去の記憶を思い出している。娼館で誰かとSEXした記憶を。
それがこの表情なんだと思い、そのまま2人を睨みつける。
「ショーヘー、なんか怒ってる?」
「別に」
ぶっきらぼうに返事をした。
今は俺だけだと言うが、やっぱり2人は今まで娼館にも通っただろうし、不特定多数と性欲を満たすためのSEXしてきたから、こういう話を聞くとどうしても不安になってしまう。
この世界では当たり前なのだろうが、俺は今までの2人のSEX遍歴のことを考えるとどうしても不安と辛さが襲ってきてしまう。
1ヶ月と少し前に起こったあの猥談騒ぎから、俺は2人をまだ完全に信用出来なかった。
それはとても悲しいことだと思うが、一度抱いた不信感は1ヶ月やそこらで払拭出来るほど、簡単なものではない。
二つの世界の性の価値観の違いが今だに俺を苦しめているのも事実だ。
だが過去は過去。
俺は感じているこのモヤモヤの意味をはっきりとわかっていた。
ただの焼き餅なのだ。
はっきりと2人の過去の相手に嫉妬している。
だからムッとするしモヤッとする。
「ショーヘー、怒ってる」
「怒ってない。餅を焼いてるだけだ」
そう言って2人の目を見て苦笑する。
一瞬2人が考えた後、不思議そうな顔をする。
「なんでヤキモチなんて…」
「誰に…?」
2人とも俺の心がわからないようで首を捻るが、キースは俺が2人の過去の相手に嫉妬しているとわかったようでクスクスと笑っていた。
「もうこの話はおしまい。
オスカー、情報入ったらよろしく」
「おうよ」
まだ2人はわからないようで納得いかない表情をしていたが、話を打ち切った。
ロイが嫌々ながら瑠璃宮を後にする。
「今日は私の番です」
ディーにドヤ顔で言われムッとしたようだが、昨日はロイが独占していたのだからお互い様だ。
帰り際濃厚なキスをされて、これで我慢する、と深いため息をつきながら項垂れて帰って行った。
夕食後、就寝するまでの間共有リヴィングで寛ぐ。
「明日、ヴィンスが俳優を連れて来るって聞きましたよ」
「ああ、そうなんだ。顔に傷を負わされたみたいでさ。酷いことするよな」
顔を顰めながら、傷の状態にもよるけど、綺麗に消してあげたいと話す。
「ウォルターの件があって、狩猟祭にクレア様はいらっしゃいませんでしたね」
キースが言い、クレアの情報を頭の中から引っ張り出す。
そしてシェリーと同様にロマーノ家との政略結婚の被害者だったことを思い出した。
「そのクレア嬢は今どうしてるんだろう」
「聞くところによると、シェリーがアレらから解放されたことに喜んで、近々シギアーノ領に行くらしい」
「彼女も優秀な女性ですから、シェリーのサポートに行くそうですよ」
「そうなんだ。いい人だな」
「ウォルターの件がなければ狩猟祭にも出席していたんですけど、一応自粛という形を取ったようですね」
「ただ、ジェロームがウォルターに襲われた件は不問になったからジェンキンス家にしたらラッキーっちゅー話だな」
「そうかぁ…」
つい数週間前の話なのだが、随分と昔の話のように感じた。
毎日色々あって本当に時間が経つのが早いと思ってしまった。
オスカーが騎士の部屋に戻り、キースも自室へ戻ると、ディーがソワソワし始めた。
それに対して少し意地悪な心が湧き起こる。
「俺たちも寝るか」
「はい」
ニコニコしながら俺の手を握って俺の自室へ戻ろうとする。
「あ、風呂、俺が先でいい?」
「え?一緒に…」
「あ?なんか言った?」
思い切り聞こえなかったフリをして、着替えの準備を始めると、ディーが困ったような顔をしているのを、心の中で笑いながら見つめる。
「いえ…。じゃぁ先にどうぞ…」
俺があまりにも普通にしているので言いだせなくなったのか、モゴモゴ言いながらベッドに座った。
「じゃ、お先に」
背中を向けて笑いながらバスルームに向かう。
数十分後、ディーがバスルームへしょんぼりした姿で入って行き、俺は笑いながら見送るが、その姿が見えなくなった後、しっかり着た寝夜着を脱いだ。
全裸のまま布団へ潜り込むと、ディーが風呂から上がるのを待つ。
意地悪した後、俺が裸で待っていたらどんな顔をするだろう、とその反応が楽しみで仕方なかった。
「ショーヘイさん、寝たんですか…?」
ディーが風呂が出て、俺がベッドに入っていることを知ったディーが声をかけてくるが、俺は答えずに寝たフリをする。
「…はぁ…」
途端にがっくりと項垂れてため息をつくディーの声が聞こえて、声に出さずに笑う。
そっと布団を捲り、遠慮がちに離れた位置に滑り込んできたのがわかり、俺は寝返りを打つフリをしてディーの方を見る。
「ディー」
「え、あ、起きてたんですか?」
「起きてたよ」
薄暗い寝室の中でじっとディーを見て微笑む。
「待ってた」
「待ってたって…」
ディーが俺に近寄り、俺に触れようとして手を伸ばし、俺が裸であることに気付く。
「……!」
ガバッとディーがものすごい素早さで俺にのしかかってきた。
「ショーヘイさん、意地悪だ」
言いながら貪るように唇を重ねる。
そんなディーの首に両腕を回してそのキスを受け入れ、自分から舌を差し出す。
チュル、ジュッと舌を絡ませて吸いあい音を立てる。
「今日はディーが俺を独占するんだろ?」
「します。いっぱい愛したい」
口を離し、ディーが履いていたズボンと下着を素早く脱ぎ去る。一応護衛という名目で瑠璃宮に来ているため、寝夜着ではなく、何かあった時に対処できるように騎士服を中途半端に着ている状態だった。
「いっぱい愛してくれ」
言いながらディーに腕を絡ませてキスをねだると、ディーがガバリと俺に覆い被さり、そのまま濃厚なキスを繰り返す。
重なった体が熱く、足にディーのイキリたったペニスがあたる。俺のペニスもすっかり大きく持ち上がり、お互いにこすり付け合うようにペニスをぶつけ合う。
「あ…ん…」
布団を大きくはだけ、ディーが自分のペニスと一緒に俺のものを掴むと上下に扱く。
「もうこんなに濡れて…ここも柔らかい…」
指でアナルをなぞられ、少しだけ強めに周辺を押されると、クプクプと指を簡単に受け入れていた。
「ん…ぁ…風呂で、準備…したから…」
「…私がしたかったのに…。たっぷり舐めて濡らして、解したかったのに」
言いながら、柔らかくなったアナルに指を入れられた。
「んぅ…あ、あっ」
先走りの蜜を掬い取ってアナルに塗り込める。そのまま体勢を変えて腰を大きく抱えられると、アナルへ舌を這わされた。
「あ、あぁ、ん」
舌を入れられ、十分に解されて濡らされたアナルが挿入を待ってヒクヒクと収縮を繰り返す.
「ディー…、来て」
すでに挿入される快感を待ちわびてずくずくとした疼きがひっきりなしに襲って来ている。
「ディー、欲しいよ」
素直に言葉に出した瞬間、アナルに添えられたディーのペニスが奥深くまで挿入された。
「んあ!あー」
それだけで軽くイッてしまい、無意識に腰が揺れる。
「は…あ…中、熱い…」
トントンと奥をノックするようにディーの腰が揺れ、その度に電流のような快感が背筋を駆け上がる。
「あ、んぅ!」
「っくぅ…ショーヘイさん、そんなに締めないで…」
突き上げるたびに、ギュウギュウと締め付けるアナルにディーが顔を歪めた。
「ひゃぁ、あん、んぅ!」
前立腺を擦り上げられ、奥を突かれる度に体が無意識に痙攣する。
「あ、ディ、ん、き、きも、ちい」
「私も、気持ちい、ん!」
ディーが大きく抽送を繰り返し、抱えていた両足を離すと腰を掴んだ。
「ショーヘイさん!」
名前を叫ばれ、そのまま最奥を目指して深く打ち込まれた。
「あ“!あぁ!」
何度目かの突き上げで一気に絶頂に追い上げられた。
「あ、イ、イク!」
快感に濡れた高い声をあげると、ディーが翔平のペニスを握りその鈴口を撫でると、その衝撃にあっけなく射精した。
その反動で腸壁が一気に締まり、ディーも呻き声をあげると、中に精液を注ぎ込む。
腹の中に注がれる熱い迸りを感じて、それだけでも快感が押し寄せる。
「は…ぁ…」
絶頂の余韻を感じながらディーが翔平の上に倒れ込むとその体を抱きしめた。
「愛してます。本当に最高のSEXだ…」
ディーがうっとりしながら余韻を楽しみ、愛を告げられて無意識に腸壁がうねった。
「まだ足りない…。もっと愛してもいいですか?」
顔を上げて翔平を覗き込むと、翔平も絶頂の余韻でその目に涙を溜めていた。
「ん…もっと、愛して…」
腕も足も上げてディーに絡みつかせると、挿入されたままだったペニスがムクムクと大きさも硬さもすぐに取り戻す。
ゆさゆさと腰を揺すると、すぐに翔平の口から嬌声が漏れた。
自分の下で喘ぐ翔平が愛おしくてたまらない。可愛くて何度でも啼かせたい。もっと深く繋がりたい。トロトロに溶かして、快楽に呑まれる姿を見たい。
前から、後ろから、何度もその体を味わった。
お互いの汗と精液でぐちゃぐちゃになり、翔平が意識を飛ばすまで貪るように抱いた。
「抑えられなくてすみません、ショーヘイさん」
抱き潰してしまった翔平を綺麗にした後に呟く。
昨日もロイに抱かれたはずだ。それなのに今日も気を失うまで…と少しだけ反省した。
立ち上がって大きく伸びをした後に腰を左右に捻った。
昨日メモしたものを清書したのだが、さらにわからないこと、知りたいことがどんどん増えて、清書した紙にもメモ書きがいっぱいになってしまった。
ダメだ。考えれば考えるほどまとまらない。
はぁとため息をついてコキコキと首を鳴らすと、気晴らしに窓の外を眺めた。
そこに、こちらに向かってくるディーとオスカーの姿が見えて、もう護衛の交代の時間か、と時計を見る。
「ロイ、起きろ。もう昼だぞ」
昨日と同様に居眠りをしていたロイがフガッと鼻を鳴らして目を覚ました。
「俺、今日もここに居るわ」
寝惚けながら言い、ふわぁと大きな欠伸をした。
「何言ってんだ」
そんなわけにはいかないだろ、と言いながら昼食をとるために一度執務室を出る。
1階に降りた所でディーとオスカーが到着し挨拶をかわした。
「ショーヘイさん」
ニコリと微笑みながらディーがコートを脱ぎながら急いで俺に近寄ると、チュウとキスしてきた。
「人数減ったし、また2人体制になったから護衛の順番回ってくるの早いな」
「それはそれで嬉しいです」
ディーがにこやかに笑う。
「昼食は?」
「済ませてきたので先に行ってますね」
すでに昼食を済ませたという2人と別れて、俺たちは食堂で昼食を済ませた後、アビゲイルは官舎に戻ったが、ロイは戻らずにくっついてくる。
「オスカーが帝国の話すんだろ?俺も聞く」
ロイは戻らず、執務室で2人からの説明を聞くことにした。
「帝国の貴族、全部となるとかなりややこしいから、とりあえず今回お前に見合いを申し込んできたバルト家について説明するわ」
オスカーがソファに座り、キースに淹れてもらったお茶を飲みながら言った。
「帝国には5つの公爵家がある。俺の実家のレンブラント、ソフィア王妃の生家のバルト、ロレーヌ、グロスター、ランカスターの5家だな」
帝国も公国同様に世襲制の国だ。
だが、公国と違うのは、いかに長子といえどもそう安安と家を継げるわけではないことにある。
オスカーは次男(第2子)であり、長男と争って勝ち、公爵になることも出来たのだが、いくら周囲が持ち上げようともオスカー自身にその気がなかった。
「俺は公爵の仕事にも領地経営にも関心がなくてな。帝国では18歳で元服するんだが、その時に継承権を放棄し、レンブラントと名乗ることもやめたんだ。
だから俺はただのオスカーで、レンブラント家の血筋であっても、もう関係がない」
そう言ってニカッと笑う。
「俺の妹、レンブラント家の長女は現皇帝の第2妃でな。家のために皇家に嫁いだんだ。
帝国はこの国以上に政略結婚が盛んで、皇帝の7人いる妃のうち、4人は帝国の高位貴族、残りの3人は属国の姫や王子たちだ」
「7人…」
1人の皇帝に7人も妃がいるなんて、と顔を顰めた。日替わりでローテーションでも組んでいるんだろうか、と下世話な想像をしてしまった。
「今の皇帝は好色家だからな」
オスカーが苦笑いを浮かべる。
「実は私も皇帝の妃にと望まれたことがありましてね」
「え!?」
ディーが苦笑しながら打ち明け、俺は変な声をあげてしまった。
「そんなことあったなぁw」
ロイが笑いながら親友を小突く。
「まぁ、はっきりきっぱりとお断りしましたけどね」
「簡単に断れるもんなのか?」
「王達が猛反対したからな。あんな男に嫁がせるかってえらい剣幕でw」
オスカーがその時のことを覚えているのか、笑いながら言う。
「父や兄さん達があらゆる手を使って阻止してくれたんですよ。
今考えると、私が王位継承権を放棄出来たのも、それがあったせいも大きかったと思います」
「そうだな。継承権がないなら政略的価値はグッと下がる」
会話を聞きながら、なるほどね、と理解した。
「まぁ、皇帝がディーゼルを望んだのは他にも理由があるんだが」
「他の理由?」
「ディーゼルの容姿だよ。ソフィア王妃の生き写しだ」
そう聞いて、王宮の大階段に飾ってあった肖像画を頭に思い浮かべる。本当に、ディーの肖像画かと思ったくらいにそっくりだった。
「ソフィア様は、帝国の至宝と呼ばれるほど容姿端麗で、頭も良かった。皇帝の正妃になるとずっと言われていたんだ。
おそらく皇帝自身もそのつもりでいただろう」
「ですが、父と学生時代に出会って恋に落ち、大恋愛の末に結婚してしまった」
レイブンとソフィアは大恋愛だというのは聞いていた。
将来皇帝の正妃とまで言われていた人の心を射止めたレイブンもすごいと思うが、他国へ嫁ぐということで、きっと色々な摩擦も起こったんだろうなと、その時の状況を知りたいと思ってしまう。
「皇帝にしたら納得いかないだろうよ。で、生まれてきたディーゼルを見て、ソフィア様の代わりに、と思ったんだろうな」
「うわぁ…」
ソフィアに振られて、その息子がそっくりだから嫁にって、短絡的すぎると鼻で笑ってしまった。
「話が逸れたな。
帝国での5つの公爵家当主はそれぞれが国の重鎮で、レンブラント家は国軍の将軍職を歴代担っていて、俺の兄も現役の騎士で将軍だ。
帝国は武が尊ばれる国で、いくら高位貴族であっても実力がなければ役職につくことは無理だ。
現公爵で将軍である兄も、めっぽう強いぞ。俺には及ばんがな」
オスカーがニヤリと笑いつつ、兄に対してマウントを取る。
だが、オスカーが言うくらいなのだから、実際に強いんだろうと思った。
「セリオも今は第2騎士団で部隊長をしてるって聞いたぞ。なかなか強くなったみてえだな」
セリオの名前が出て、俺は少しだけ眉間に皺を寄せた。
狩猟祭でセリオがロイに求婚したことはいまだに鮮明に覚えている。セリオだけじゃない、帝国のシーグヴァルド伯爵もだ。
それを思い出して、心がモヤッとする。
「バルト家は帝国ではどんな立ち位置なんだ?」
モヤモヤと打ち消すように、別の話をわざと持ち出した。
「バルト家はどちらかというと、武というよりかは政だな」
「そうですね。現公爵のマシュー・バルト、母の兄に当たる人ですが、皇帝の側近の1人です」
「今回お見合いするっていうユージーンは3男だっけ?」
「ええ。ユージーン・バルト24歳。彼は次男と3男2人で領地経営を担っていますね。」
「長女も次女もすでに結婚して他国にいて、バルト家で独身はユージーンだけだな」
「どんな人なんだ?」
「5歳下ですが…。子供ですね。甘えん坊で夢見がちな子供みたいな所があって」
ロイも似たようなことを言っていた。
24歳というと、まだ社会に出て数年目という年だ。5歳しか離れていないロイやディーに子供と言われるのだから、精神年齢が24歳にしては、ということなのかもしれない。
「手紙にもさ、見合いして結婚を前提にお付き合いと、という感じじゃなかったよ。
お友達になってください、みたいなニュアンスだった」
「ああ、ユージーンならそう言うでしょう。恋愛よりも遊び相手、話し相手が欲しい、みたいな」
ディーが苦笑する。
「バルト家はあわよくば聖女と結婚させたいが、ユージーンはそんなつもりないかもな」
ロイがおかしそうに笑った。
「ですね。あの子の場合、恋愛よりもまだ英雄とか聖女とかの御伽話に夢中って感じですね」
それを聞いて、確かに手紙の中には、俺がやった聖女の行動のことがたくさん書いてあったことを思い出す。
見合いしたいと言っている相手からの手紙にしては、聖女へのファンレター的な内容だったのだ。
「まぁ今回の見合いは形式的なものですし、相手がユージーンですから気を張る必要はないと思いますよ。
上手く話を合わせるだけで満足するんじゃないでしょうか」
「わざわざモーリスを付き添いに寄越すんだから、1人で他国に行くことも出来ない坊ちゃんだな」
オスカーもおかしそうに笑う。
「むしろ、叔父上の方が気になりますよ。付き添いとはいえ、わざわざ甥っ子のために出張ってくるなんて」
ディーの眉間に皺が寄る。
そういえば、ディーもアランも叔父であるモーリスが苦手だと言っていたのを思い出した。
「見合いについても、ユージーンじゃなくて、モーリスの方でも充分にあり得る話だからな。
もしかすると、ユージーンをダシにして、実際はモーリスがショーヘーに会いたいと思っているかもしれん」
オスカーが腕を組んで首を傾げる。
「そのモーリスさんって人は何をしてる人なんだ?」
「一応兄である公爵の補佐官ですね」
「補佐官が甥っ子のためとはいえ、仕事を抜け出して付き添うっていうのもおかしな話だ」
オスカーが眉間に皺を寄せる。
「モーリスは曲がりなりにもバルト家の一員で、政に通じている。
あの一族らしく頭も良いし、公爵代理として務められるような男だ」
オスカーの言葉にディーも頷く。
「そこなんですよ。結局このお見合いはユージーンのためじゃなく、バルト家に何らかの思惑あってのことだと考えるべきじゃないですか?」
「おいおい。面倒くせぇなぁ。帝国まで聖女争奪戦に参加してくるってことかよ」
ロイがマールデンやキドナも絡んできているのに、と思い切り顔を顰めた。
それを聞いて、ふと思い至る。
「マールデンはメルヒオール王子、キドナはバシリオ王子だったろ?
帝国皇家に独身で妙齢の姫か王子はいないのか?」
おそらく帝国側にも、この2国の王子が俺に求婚した情報は入っているはずだ。なのに見合いの申し込みは高位貴族だということに違和感を覚えた。
その俺の質問に、全員が目を丸くする。
「言われてみればそうだな。皇帝の子供にも妙齢の独身がいるぞ」
「さらに皇帝自身もまだ60代ですし、8番目の妃にと言われてもおかしくありませんよ」
キースが眉を顰めて言った。好色家と言われている皇帝だから有り得ない話ではない。
「確かに言われてみれば…。マールデンやキドナが動いたのに帝国が動かないっていうのは…おかしいな」
オスカーが首を捻る。
「単純に皇家が聖女を必要としていないのか。
それとも、何か別の理由があるのか。
皇帝の側近であるバルト公爵の補佐を付き添いに寄越すんじゃなくて、ユージーンが建前で、そのモーリスが本命なんじゃないか?」
モーリスという人物がバルト公爵の代理を務められるほど優秀な人物なら、モーリス自身が何らかの意図を持って一緒に来ると考えた方がしっくりくるのかもしれない。
「つまり、注意すべきはユージーンとの見合いじゃなくて、モーリスの方だと言いたいのか」
ロイが顎を撫でながら俺を見る。
「あくまで憶測だよ。
ただ、甥っ子可愛さに要職についている人が仕事ほっぽり出して付き添いに来るのか?って話。
本当にユージーンが可愛いだけかもしれないけど、俺はどんな人か知らないし」
「…モーリスは、何を考えているのか、掴めない人なんですよ」
ディーがボソリを言った。
「昔からよく公国には来ていました。それこそ、母が生きている頃はよく。
母が亡くなってからは頻度は減りましたけど、それでも長期休暇の時は必ず母の墓参りに来て、1週間は滞在していく…」
それを聞いて、そんなに来ているのなら、先ほどの憶測は違うかもしれないと思った。
「いつも笑っているんですが、何となくその顔と思っていることが違うような気がして…」
「はっきり言って気持ち悪い」
ロイがフンと鼻を鳴らし、ディーが苦笑いを浮かべる。
「ロイの言う通りなんですよ。精神的にざわついて気持ち悪い」
「確かになぁ」
オスカーも2人に同調した。
「アラン様も同じようなことをおっしゃってましたね。
大人になられてからは特に」
それを聞いて、モーリスという男がどういう人なのか全く想像出来なくなってしまった。
何気なく言った憶測だったが、実は的を得ているのかもしれない、とも思うが、どうもディー達のモーリスに抱く感情に引っ掛かりを覚える。
構いすぎて嫌われる、という心理もなきにしもあらずだが、言い加減いい年になった甥達にここまで思われるのも何かおかしい。
色々と話を聞いて、今まで同様に走り書きでメモを取っていたので、今度じっくり考えようと、先ほどの憶測や、思ったこと、感情面もメモにとった。
バルト家、帝国皇家、ユージーンの人となり、モーリスについて。
とりあえず、現時点で知りたいことは大体出揃ったな、と一区切りつけることにした。
「ありがとう。何となくバルト家についてはわかったよ。
帝国に関しては本で詳しく調べてみる。またわからないことがあったら聞いてもいいかな」
「ああ、いつでも」
オスカーがニコリと笑った。
その後は、昨日ギルバートとフィッシャーに聞いたジョン・ベルトラークの話をディーとオスカーに聞かせた。
オスカーもジョンについての噂は聞いたことがあったらしく、娼館での聞き込みの話になった時に、ニヤリと顔を歪ませた。
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同じようにすました声で言うと、ディーも顔を赤くして否定した。
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2人に怒鳴られながらもオスカーはゲラゲラ笑い、俺も苦笑する。
そうこうしているうちにすぐにフィッシャーから魔鳥が帰ってきた。
「お、来た来た」
ウキウキしながらオスカーが窓を開け魔鳥を中に入れる。
「オスカーが行くなら問題ないな。場所はセドアとルヴァンの間にある夢幻城という名の娼館だ。
そこのシアという男娼がお気に入りらしい。
ちなみに経費については後日相談ということでな」
魔鳥が喋るのを初めて聞いて、カラスを小さくしたような鳥が、フィッシャーの声で喋るのを興味津々に見つめた。
「よっしゃ。じゃあ明日ちょっくら行ってくっかな」
ヒヒヒと嬉しそうに笑うオスカーに苦笑する。
93歳、元の世界では50代に相当するのだろうが、いまだに性欲は現役らしい。
ロイとディーを見ると、2人ともうすら笑いを浮かべていた。
おそらく、この話で2人は過去の記憶を思い出している。娼館で誰かとSEXした記憶を。
それがこの表情なんだと思い、そのまま2人を睨みつける。
「ショーヘー、なんか怒ってる?」
「別に」
ぶっきらぼうに返事をした。
今は俺だけだと言うが、やっぱり2人は今まで娼館にも通っただろうし、不特定多数と性欲を満たすためのSEXしてきたから、こういう話を聞くとどうしても不安になってしまう。
この世界では当たり前なのだろうが、俺は今までの2人のSEX遍歴のことを考えるとどうしても不安と辛さが襲ってきてしまう。
1ヶ月と少し前に起こったあの猥談騒ぎから、俺は2人をまだ完全に信用出来なかった。
それはとても悲しいことだと思うが、一度抱いた不信感は1ヶ月やそこらで払拭出来るほど、簡単なものではない。
二つの世界の性の価値観の違いが今だに俺を苦しめているのも事実だ。
だが過去は過去。
俺は感じているこのモヤモヤの意味をはっきりとわかっていた。
ただの焼き餅なのだ。
はっきりと2人の過去の相手に嫉妬している。
だからムッとするしモヤッとする。
「ショーヘー、怒ってる」
「怒ってない。餅を焼いてるだけだ」
そう言って2人の目を見て苦笑する。
一瞬2人が考えた後、不思議そうな顔をする。
「なんでヤキモチなんて…」
「誰に…?」
2人とも俺の心がわからないようで首を捻るが、キースは俺が2人の過去の相手に嫉妬しているとわかったようでクスクスと笑っていた。
「もうこの話はおしまい。
オスカー、情報入ったらよろしく」
「おうよ」
まだ2人はわからないようで納得いかない表情をしていたが、話を打ち切った。
ロイが嫌々ながら瑠璃宮を後にする。
「今日は私の番です」
ディーにドヤ顔で言われムッとしたようだが、昨日はロイが独占していたのだからお互い様だ。
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「そうかぁ…」
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「俺たちも寝るか」
「はい」
ニコニコしながら俺の手を握って俺の自室へ戻ろうとする。
「あ、風呂、俺が先でいい?」
「え?一緒に…」
「あ?なんか言った?」
思い切り聞こえなかったフリをして、着替えの準備を始めると、ディーが困ったような顔をしているのを、心の中で笑いながら見つめる。
「いえ…。じゃぁ先にどうぞ…」
俺があまりにも普通にしているので言いだせなくなったのか、モゴモゴ言いながらベッドに座った。
「じゃ、お先に」
背中を向けて笑いながらバスルームに向かう。
数十分後、ディーがバスルームへしょんぼりした姿で入って行き、俺は笑いながら見送るが、その姿が見えなくなった後、しっかり着た寝夜着を脱いだ。
全裸のまま布団へ潜り込むと、ディーが風呂から上がるのを待つ。
意地悪した後、俺が裸で待っていたらどんな顔をするだろう、とその反応が楽しみで仕方なかった。
「ショーヘイさん、寝たんですか…?」
ディーが風呂が出て、俺がベッドに入っていることを知ったディーが声をかけてくるが、俺は答えずに寝たフリをする。
「…はぁ…」
途端にがっくりと項垂れてため息をつくディーの声が聞こえて、声に出さずに笑う。
そっと布団を捲り、遠慮がちに離れた位置に滑り込んできたのがわかり、俺は寝返りを打つフリをしてディーの方を見る。
「ディー」
「え、あ、起きてたんですか?」
「起きてたよ」
薄暗い寝室の中でじっとディーを見て微笑む。
「待ってた」
「待ってたって…」
ディーが俺に近寄り、俺に触れようとして手を伸ばし、俺が裸であることに気付く。
「……!」
ガバッとディーがものすごい素早さで俺にのしかかってきた。
「ショーヘイさん、意地悪だ」
言いながら貪るように唇を重ねる。
そんなディーの首に両腕を回してそのキスを受け入れ、自分から舌を差し出す。
チュル、ジュッと舌を絡ませて吸いあい音を立てる。
「今日はディーが俺を独占するんだろ?」
「します。いっぱい愛したい」
口を離し、ディーが履いていたズボンと下着を素早く脱ぎ去る。一応護衛という名目で瑠璃宮に来ているため、寝夜着ではなく、何かあった時に対処できるように騎士服を中途半端に着ている状態だった。
「いっぱい愛してくれ」
言いながらディーに腕を絡ませてキスをねだると、ディーがガバリと俺に覆い被さり、そのまま濃厚なキスを繰り返す。
重なった体が熱く、足にディーのイキリたったペニスがあたる。俺のペニスもすっかり大きく持ち上がり、お互いにこすり付け合うようにペニスをぶつけ合う。
「あ…ん…」
布団を大きくはだけ、ディーが自分のペニスと一緒に俺のものを掴むと上下に扱く。
「もうこんなに濡れて…ここも柔らかい…」
指でアナルをなぞられ、少しだけ強めに周辺を押されると、クプクプと指を簡単に受け入れていた。
「ん…ぁ…風呂で、準備…したから…」
「…私がしたかったのに…。たっぷり舐めて濡らして、解したかったのに」
言いながら、柔らかくなったアナルに指を入れられた。
「んぅ…あ、あっ」
先走りの蜜を掬い取ってアナルに塗り込める。そのまま体勢を変えて腰を大きく抱えられると、アナルへ舌を這わされた。
「あ、あぁ、ん」
舌を入れられ、十分に解されて濡らされたアナルが挿入を待ってヒクヒクと収縮を繰り返す.
「ディー…、来て」
すでに挿入される快感を待ちわびてずくずくとした疼きがひっきりなしに襲って来ている。
「ディー、欲しいよ」
素直に言葉に出した瞬間、アナルに添えられたディーのペニスが奥深くまで挿入された。
「んあ!あー」
それだけで軽くイッてしまい、無意識に腰が揺れる。
「は…あ…中、熱い…」
トントンと奥をノックするようにディーの腰が揺れ、その度に電流のような快感が背筋を駆け上がる。
「あ、んぅ!」
「っくぅ…ショーヘイさん、そんなに締めないで…」
突き上げるたびに、ギュウギュウと締め付けるアナルにディーが顔を歪めた。
「ひゃぁ、あん、んぅ!」
前立腺を擦り上げられ、奥を突かれる度に体が無意識に痙攣する。
「あ、ディ、ん、き、きも、ちい」
「私も、気持ちい、ん!」
ディーが大きく抽送を繰り返し、抱えていた両足を離すと腰を掴んだ。
「ショーヘイさん!」
名前を叫ばれ、そのまま最奥を目指して深く打ち込まれた。
「あ“!あぁ!」
何度目かの突き上げで一気に絶頂に追い上げられた。
「あ、イ、イク!」
快感に濡れた高い声をあげると、ディーが翔平のペニスを握りその鈴口を撫でると、その衝撃にあっけなく射精した。
その反動で腸壁が一気に締まり、ディーも呻き声をあげると、中に精液を注ぎ込む。
腹の中に注がれる熱い迸りを感じて、それだけでも快感が押し寄せる。
「は…ぁ…」
絶頂の余韻を感じながらディーが翔平の上に倒れ込むとその体を抱きしめた。
「愛してます。本当に最高のSEXだ…」
ディーがうっとりしながら余韻を楽しみ、愛を告げられて無意識に腸壁がうねった。
「まだ足りない…。もっと愛してもいいですか?」
顔を上げて翔平を覗き込むと、翔平も絶頂の余韻でその目に涙を溜めていた。
「ん…もっと、愛して…」
腕も足も上げてディーに絡みつかせると、挿入されたままだったペニスがムクムクと大きさも硬さもすぐに取り戻す。
ゆさゆさと腰を揺すると、すぐに翔平の口から嬌声が漏れた。
自分の下で喘ぐ翔平が愛おしくてたまらない。可愛くて何度でも啼かせたい。もっと深く繋がりたい。トロトロに溶かして、快楽に呑まれる姿を見たい。
前から、後ろから、何度もその体を味わった。
お互いの汗と精液でぐちゃぐちゃになり、翔平が意識を飛ばすまで貪るように抱いた。
「抑えられなくてすみません、ショーヘイさん」
抱き潰してしまった翔平を綺麗にした後に呟く。
昨日もロイに抱かれたはずだ。それなのに今日も気を失うまで…と少しだけ反省した。
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