おっさんが願うもの

猫の手

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王都編 〜勉強する〜

180.おっさん、ジョンを知る

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 脳をフル回転させているとあっという間に時間が経ってしまった。
 気が付けばロイはソファの背もたれに頭を預け、天井を仰いだ状態で口を開けて居眠りをし、アビゲイルも読んでいた本が膝の上からずり落ちる所だった。
 キースは俺の隣の机で自分の仕事だろう書き物をしていた。
「はぁ…」
 すっかり冷めてしまったお茶を飲んで、乾いた喉を潤すと時計を見る。
 そろそろ夕飯の時間だと、2人を起こすことにする。
「ロイ、アビー。ご飯行こうか」
 声を掛けると、ロイがフガッと鼻を鳴らして目を覚まし、アビゲイルも眠ってしまったことに恥ずかしそうにしながら姿勢を直した。
 瑠璃宮自体が防御結界で包まれているため、身近に護衛を置く必要があるのかな、と疑問に思うが、万が一を考えてのことなので口出しはしない。
 だが、護衛任務につく2人がとても暇そうで申し訳なくなってしまった。
「あー…よく寝た」
「何しに来てんのよ」
 ロイの言葉にアビゲイルが苦笑するが、自分もうたた寝してしまったので、あまり強くは言えない。
 そんな2人に笑いながら執務室を出る。当然のようにロイは俺の肩を抱き、頬や耳元に顔を寄せてくるのを拒まずに好きにさせた。
「ショーヘーちゃん、前に比べたら嫌がらなくなったわよね」
 少し前までは、人前でベタベタされるのがすごく恥ずかしくて、必死に離れろと突っぱねていた。
 だが恥ずかしがるのを止めると決めてから、受け入れるようにしていることを指摘される。
「いつ何があるかわからないし、恥ずかしがっていられないなって思って」
 照れながらアビゲイルに言うと、ニコリと綺麗な笑顔を向けられる。
「そうね。甘えられる時に甘えた方がいいわよ。でないときっと後悔するわ」
 そう言われ、俺も笑顔でああと返事をした。
 それは赤い月の時に身を持って体験した。
 もっと触れておけば、もっと抱きしめておけば、もっとキスしておけば、と吐きそうになるほど後悔したのだ。
 もう2度とあんな思いはしたくなかった。裏切られた時のような辛さが心も体も襲い、どうしようも出来ないもどかしさに引き裂かれるような思いをした。
 肩を抱くロイの手に自分の手を重ねて自分から指を絡ませると、ロイが嬉しそうに笑って俺の頬にキスをしてくれた。



 夕食後は執務室に戻らず共同リヴィングでギル達が来るのを待つ。
 午後8時過ぎ、ギルとフィッシャーが訪れた。
「内装がだいぶ変わりましたね」
 ギルが部屋を見渡して微笑む。
「キース君もようやっとアラン様と身を固める決心をしてくれて、長年見守ってきた者として本当に嬉しいよ」
 フィッシャーがキースに近寄ると、キースの手を取ってその指にキスを落とす。その行動にキースがボッと顔を赤くして、少し前までの俺のようだと声に出さずに笑った。
「ショーヘイ君も最初に会った時から随分と変わった」
 スススッと静かに滑るように俺に近付いたギルバートが、止めようとするロイをいとも簡単にかわして、俺の腰を引き寄せつつダンスするように俺の手を取った。
「ギ、ギル様…近…」
「すっかり艶っぽくなって…。この辺が特に色っぽく…」
 言いながら俺の尻から腰の辺りに手を滑らせる。
「触んな!エロジジイ!!」
 背後からギルバートを殴ろうとしたロイの手をするりとかわしつつ、俺から手を離す。すかさずロイに抱きしめられて、ギルバートに触られた尻辺りを消毒するように手で擦ってきた。
「あまり過保護過ぎてもよくありませんよ。ショーヘイ君も色々な経験を積むべきだ」
 何の経験だよ、とツッコミたくなるが、言えばきっと倍返しされるので、はははと乾いた笑いを漏らすだけに止めた。
「アビゲイル、シェリーとの交際スタートおめでとう」
 そんなギルバートはサッサとアビゲイルのそばに行き、喜びの声を贈っていた。


 ソファに座り、キースがお茶をそれぞれの前に置いた時点で話が始まった。
「ショーヘイ君、だいぶ前になりますが、ベルトラークについて話したことは覚えていますね?」
「はい。他にも昨日と今日で、現在の状況についても自分なりに勉強しました」
「それは素晴らしい」
 俺の言葉にフィッシャーがニコリと微笑む。
「どう思いましたか?」
「公表されている内容ですから、特に問題点はありません。しいて言うなら、先代から国境警備、軍事面に力を入れているなという印象ですね」
「その通りです。
 現在ベルトラークは国境警備軍として私兵を使っています。その規模は小さな国一つ分に相当します」
「国軍が警備にあたっているわけではないんですか」
「国境警備に当てられている兵士の3分の2はベルトラークの私兵なんですよ」
「給料の出所が違う二つの軍で、衝突が起きたりしないんですか?」
「今の所は何の問題もありません。あくまでも国軍兵士が上で、私兵はその下につくという形に収まっています」
「帝国方面から侵攻された時、真っ先に被害にあうのはベルトラークだからな。自分の領地を守るということが、しいては国を守ることに繋がる。そう言われれば何も言い返せないのが現状なんだ」
 フィッシャーが苦笑混じりに言った。
「ですが、その私兵の数があまりにも多すぎる」
「もしかして、領地経営に不審な点があるっていうのは、その私兵の給料の問題ですか?」
「そうなんだよ。
 1万人以上の私兵の給料をどこから捻出しているのか」
「国に収める分に不備はなく、収支報告書を見ても余剰金が多いわけでもない」
 2人が一度言葉を切ったので、頭の中で少しその状況を整理した。
「ねぇ、私兵って貴族が個人的に雇うんでしょ?つまりその1万人の兵士の給料を辺境伯が個人で払ってるってことよね?」
 アビゲイルが確認するように聞いた。
「その通りだよ」
「そんなに雇えるほど個人資産があるってことよね。
 領主だからってことなの?」
「それは一概には…」
 フィッシャーが苦笑した。
 領地管理についてはその領地の大きさによるところも大きいのだろうと思った。
「領主の仕事は領民から税を徴収して国に納めること。
 そして、領民のために領地の整備を行うこと。
 領地内の産業を発展させるのも仕事の一つだね」
 フィッシャーがアビゲイルにわかるように説明する。
「国は各領地から1年に1度提出される予算案から、領地管理に必要な金額を国庫から支出して領主に預けるんだ。
 その預かったお金を元にして、利益を生み出せるかどうかは領主の手腕にかかっているんだよ」
「まるで店の経営ね」
「そうだよ。領地といえどもやることは商会と同じだ。
 いかに利益を生み出させるかが大事なんだ。
 農業にしても、人力ばかりでは利益はたかが知れてる。だから領主が農園に出資をして、必要な器具を揃える手助けをしたりする。そうすることによって、農園も領地もより多くの利益が得られる」
 フィッシャーの説明に俺もうんうんと頷いた。
「農業に限らず、流通に関してもガタガタな道より、綺麗に整備された道の方が早く荷物を運べるだろう?
 より迅速により多く。そうすれば利益が生まれる。
 そういう街道整備なんかも領主の仕事だ。公共事業ってわけだね」
 俺も付随して説明すると、アビゲイルはうんうんと頷き、ギルバートとフィッシャーは俺の説明にニコニコした。
「つまり、国庫から領主のお給料も出てるってことですよね?」
「その通り。これは領地にもよるんだが、ベルトラークの場合は、利益から決められたパーセンテージで領主個人に支払われているんだよ」
「それじゃぁ、領地経営が上手くいって、利益を出せば出すほど領主個人が潤うってこと?」
「そうなるね」
「そうなるんですが、領主自身の生活環境を整えるのにも莫大な費用がかかります。
 1万人の給料を払えないこともないですが、ほぼ全額を使い切ってまで私兵を雇うのかと言われると…」
 ギルバートが区切ってお茶を口に含んだ。
「それが不審な点なんですね」
 俺の言葉に2人とも頷いた。
「まぁ、単純に考えれば裏金か、報告していない何らかの事業を展開してるってことだろうな」
 ロイが足を組み直しながら言った。
「裏金についてはこちらで何度も調査しているんだ。
 それこそ表からも裏からもね」
 黒騎士であるフィッシャーが苦笑を浮かべる。
「黒騎士が裏金の証拠を掴めないなら、事業の方か」
「問題は、何をしているか、です」
 ギルバートが言いながらキースにお茶のおかわりを頼んだ。
「それも掴めないんですか?」
 フィッシャーに尋ねると、両手の平を上にして肩をすくめた。
「予測される事業や犯罪紛いのことまで全て考慮した上で調べているが、全く掴めない」
「何かをしているとするなら、実に巧妙ですよ」
「もしかしたら、本当に領主自身の個人資産だけで賄っている可能性もあるんじゃないの?」
「それもあり得ます。出来ないことではありませんからね」
 そこまで話をして全員が黙り込んだ。

 領地を守るために私財を警備費用に充てているというのも理解出来ない話ではない。
 本当に領地が、領民が大切で、一切贅沢をせずに献身的に尽くしているなら納得も出来る。それが事実であれば、領主としては鑑の様な存在だ。
 そうであって欲しいとは思うが、それは当の本人でしかわからない。

「じゃぁ、ショーヘーにその辺についてジョンに探りを入れろってことか」
 ロイがムスッとした口調で言う。
「噂だとかなりチャラいらしいじゃねーか。大丈夫なのか」
 やはりロイはそんな男と俺を合わせたくないらしい。
「手紙だとすごく丁寧な文面だったから、噂を聞いて驚きました。
 その…あっち方面でかなり奔放な人だとか…」
 言いにくそうにすると、ギルバートもフィッシャーも苦笑した。
「申し訳ないと思っているよ。確かにジョンは娼館に入り浸るような男だ」
「ですが特定の人物と浮き名を流したこともなく、決して悪い噂だけではないんですよ」
 ギルバートがじっと俺の顔を見て、ジョンの話をする。
「この国で性奴隷が禁止されているのは知っているでしょう?」
 その言葉に黙って頷く。
「数年前になりますが、複数の性奴隷を借金奴隷と偽って入国させ販売しようとした奴隷商がいましてね。
 ですが、ジョンがそれを見破り、奴隷商を摘発したことがあったんです」
「そう。
 ジョンはたまたま気付いたと言っていたらしいが、おそらく事実は違う。
 やり方はとても稚拙なものだったが、彼の行動で複数の奴隷が救出された」
「どんなやり方をしたんだ」
 ロイが興味を持ったのか身を乗り出した。
「なぁに、簡単ですよ。身元を隠して奴隷の闇市に潜入し、1人で大暴れしたんです。
 その暴れっぷりで自警団が数部隊出動する騒ぎになりましてね。
 全く届出のされていない奴隷市に、性奴隷紋が刻まれた者が見つかって、大騒ぎですよ」
「1人でってwやるわね。怪我しなかったの?」
「しましたよ。それこそ一時は生死も危ぶまれるほどの重体でした」
「おいおい…無計画にも程があるだろ」
 ロイが呆れたように言った。
「意識を取り戻して事情聴取をしたんだが、彼はたまたま身の回りの世話をしてくれる専属奴隷が欲しいと思っただけだと。
 そう思い立ってたまたま耳にした奴隷市に行き、性奴隷だと知って憤慨し、暴れたと」
 フィッシャーがおかしそうに笑いながら言った。
「ぜんぶたまたまで済ませたんですか?」
 キースも呆れたように言う。
「そうです。全てが偶然だったとね」
 ギルバートも笑っていた。
「つまり、ジョンはその闇市が開かれることを知っていて、奴隷達を助けるために?」
「全てを救えるわけではありません。
 救出された性奴隷の中でも、違法に性奴隷化された者だけです。
 正規に手続きされた者もいましたので、その者はもう救いようがありません」
 それでも、数人はジョンに救われたことになる。
 結局、ジョンはそれ以上何も言わず、なぜ気付いたのかはいまだにわからないという。
 今の話を聞いてますますジョン・ベルトラークがどういう男かわからなくなった。
「君に近付こうとするのにも、何らかの理由と目的があるんだろう」
「以前、君が話していた、次子以降の輩が簒奪者ということも考えられます。
 ショーヘイ君はジョンに会って、その人となり、物の考え方を探って来て欲しいんです」
「もちろん、現辺境伯についても聞き出せれば尚良いのだが…」
 2人の言葉にコクコクと頷いた。
「話を聞くに、一度や二度の逢瀬でその本質は見抜けなさそうですね…」
 唇を触りながら、本質を見抜くなんて俺に出来るだろうか、と考えた。そしてふとシェリーやメルヒオールを思い出す。
 彼女らも俺が素を見せたことで、向こうも本来の姿を見せるきっかけになった。ならば、今回は様子見ではなく、最初から聖女ではなく翔平個人として会った方がいいのではないかと思った。
 娼館に入り浸るような男に、取り繕った清楚で気品溢れる聖女よりも、普通の男として会った方が懐に入りやすいかもしれない。
「あの…」
 そう思って提案してみる。
「なるほど。確かにそうかもしれないな」
 フィッシャーが真顔で答え、ギルバートも考え込んだ。
「俺はどっちでもいいと思うぜ。ショーヘーならどっちにも対応出来るだろうし、ショーヘーがやりやすい方法でいいと思うがな」
 ロイが俺の言葉を後押ししてくれ、隣に座るロイを見て、微笑む。
「そうですね。それはショーヘイ君に任せましょう。実際に行動するのはショーヘイ君ですしね」
 ギルバートがニコリと微笑んだ。
「問題があるとすれば、食事する場所だな。おそらくあちらが指定してくると思うが、場所によっては聖女としての姿でいなければならないかもしれん」
「そうですね。そこは臨機応変で行きましょう」
 もし指定してくるのが貴族御用達の店であれば、形だけでも聖女でいなくてはならない。
「まだもう少し時間あるしよ、どんな奴なのか入り浸ってるっていう娼館で聞き込みでもすりゃいいんじゃねぇか?」
 唐突にロイが言った。
 だが、その言葉に俺は眉間に皺を寄せてロイを見た。アビゲイルもキースもはぁ?というような顔をする。
「……お!俺じゃねえよ!俺は行かねえよ!?」
 ロイがその視線に慌てて否定する。
「…いいよぉ、別に行ってもさぁ…」
 ジト目で隣のロイを睨みつつ思い切り嫌味を言う。
「姐さん兄さん達に話聞いて来いよ」
「な…行かないって!誰か別の奴に!」
「この件を知ってて娼館に行けるような人いるかぁ?」
「い、いるだろ!探せば!」
「いいよぉ~、ロイが行って来いよ」
「行かないって!」
「ついでにたっぷり姐さん兄さん達と楽しんでくればいいじゃん。俺は別に構わねえよ~」
「ショ~ヘ~」
 泣きそうな声でロイの顔が歪み、俺に抱きつこうとするが、フンと顔を背けた。
「今までの行いの結果ですね」
 ギルバートがクスクスと笑い、俺も顔を背けたまま口元を歪ませて笑う。
「まぁ確かにロイの言う通りだな。こちらで誰か見繕って行かせよう」
 フィッシャーも笑いながら言い、キースもアビゲイルも声に出さずに肩を震わせた。
「ショ~ヘ~、行かないってば~、信じてくれよ~」
 あまりにも否定するのに必死過ぎて、揶揄われていることにも気付かない珍しいロイの姿がそこにあった。




 ギルバートとフィッシャーが帰り、時間が経って揶揄われたと気付いたロイがソファの上で三角座りをしてムスッとしている。
「もういい加減機嫌直せよ」
 ロイの背後からその頭を撫でる。
「俺を性欲の権化みたいな言い方したじゃん。俺はもうショーヘーにしか勃たねーのに…」
 ブツブツと小さい声で言った内容に赤面する。
「もー、いじけんの止めなさいよ」
 アビゲイルが笑いながら言い、その口調がまるで可愛い弟を慰めるような姉のように思えて、思わずほくそ笑んだ。
「ロイ様も可愛い所ありますよね。
 子供の頃から見てますけど、素直というか何というか…」
 キースもクスクスと笑いながら使った茶器を片付けていた。
「ショーヘーちゃんに慰めてもらいなさい。あたしは部屋に戻るわね」
 ポンポンと頭を撫でて、お休み、と退室して行った。
「私も今日はこれで」
 キースも笑顔で俺たちに挨拶すると自室へ入って行く。
「ほら、ロイ」
 三角座りしているロイの腕を掴んで引っ張ると、ロイがそのまま俺にベッタリとくっついて来る。
「ショーヘー、信じてくれヨォ」
「わかったわかったwww」
 頭をぐりぐり押し付けて来るロイに笑いながら俺たちも部屋に戻る。
「ほら、風呂入るぞ」
「一緒に入っていいのか?」
「いいよ。一緒に入ろ」
 ベッタリとくっついて歩くロイに笑いながらバスルームに向かった。



「あ“~やっぱ風呂はいいな~」
 ロイによしかかるように背中を預けて湯船に浸かる。
「ショーヘー…」
 チュッとロイが俺の耳にキスして、そのまま唇と舌で嬲る。
「ん…ぁ」
 ゾクゾクと背筋に快感が走り体を捩るとロイの手が胸に周り、優しく胸を撫でて揉まれた。
「ん…男の胸揉んでも面白くねーだろ…」
「ショーヘーの胸だからいーの」
 クスクス笑いながら優しく揉みしだき、ぷっくりと膨らんだ乳首を指先でいじる。
 後ろを振り返るとすぐに唇を重ねられた。
「ん…ん…」
 舌を絡ませながら何度も何度もキスを繰り返した。
「気持ちい?」
「ん…気持ち…」
 はぁと快感に濡れた声をあげて熱い吐息を吐く。
「だめ…のぼせる…」
 チュウ、チュッと音を立ててキスを繰り返しながら、お湯のせいだけではない体温の上昇に体が赤くなる。
「あがろっか」
 ロイがクスッと笑って唇を離すと、はふぅと息を吐きながらバスタブから出た。
 もうすでに臨戦態勢になってしまった下半身を持て余しつつも、タオルで水分を拭き取りロイを鏡の前に座らせる。
「ドライヤー魔法使うわ」
 笑顔で温風をロイの頭に充てる。
「おおー、こりゃいいな」
 ロイの柔らかい髪を手で梳かしながら乾かしていく。
「なんで今まで誰も考えなかったんだろうな。思いついても良さそうなのに」
「それな。温風を魔法で出すっていう発想がな。なかなか思いつかねーわ」
「そういうもんかねぇ」
 ロイの髪を乾かした後、尻尾にもドライヤーをかける。
「うわぁ!ふわっふわだ!」
 ふわふわになった白い尻尾を顔に押し付けて思い切りもふる。
「くすぐったいw」
 ロイに尻尾を奪い返され口を尖らせながら俺も自分の髪を乾かした。
「終わったな!?よし!!」
 そわそわしながら背後で待っていたロイが魔法の玉を打ち消した瞬間俺を姫抱きに抱えて急いでベッドまで運ぶ。
 髪を乾かしている間に俺のペニスはすっかりなりを顰めてしまったが、ロイはさっきよりも大きく怒張しており、抱き上げられ歩くリズムに合わせてペチペチと腰に当たって顔を赤くした。
「ショーヘー、ほら。もう我慢出来なくてこんなんなってる」
 ベッドに寝かされ、俺に跨ったロイがいきり勃ったペニスに手を添えて見せつけてくる。その先からはすでに先走りの蜜が溢れようとしており、ビキビキと筋も立っている様子に顔も耳も全身を真っ赤に染めた。
 さらにロイのペニスを受け入れることを想像してペニスも腹の中もずくずくと疼き始めていた。
「もうお前じゃないと勃たない。ショーヘーだけ抱きたい。ショーヘーの中に挿れたい」
 赤裸々に言われ、恥ずかし過ぎて顔を手で隠した。
「可愛い。ショーヘー、好きだよ」
 ヘラッと笑い、ロイが覆い被さってきた。
 顔を隠した手を避けてキスをする。
 それだけでゾクゾクと全身を快感が駆け巡り、体温が上昇する。
 舌を絡ませ、吸われ、唇を甘噛みされると、それだけでとろとろに溶けていくような錯覚を引き起こす。
 ロイの舌で指で全身を愛撫されて、身体中がとろけていった。
 挿入される前に一度イカされて放った精液と蜜を潤滑油代わりにされて、さらに唾液も混ざりぐちょぐちょに濡れたアナルに、ガチガチになったロイが挿れられると、頭の中が快感で真っ白になった。
「あー…ぁ、んぅ、あっ」
 中を熱いロイのペニスで押し広げられ、腸壁をゆるゆると擦られると、腹の中から快感が脳天まで突き抜ける。
「は…ぁ…ショーヘー、すげ…気持ちい」
 ロイがゆっくりと翔平の中を味わいながら喘ぎ、腰を揺らす。
「ひぁ、あ、ん」
 パチュンパチュンと音を立てる抽送に、翔平も喘ぎながら自ら腰を揺らした。
「ロイ、あっ、ん、お」
 グプッと奥を突かれると射精感が襲って来る。
「お、奥…あ」
「ここ?」
 クンとロイが翔平のいい所を突き上げその場所を示すと、ビクビクと翔平の体が痙攣したように震えた。
「だめ…そこ、だめぇ」
 何度もいい所を突かれて、堪えきれない快感に涙を流した。
「イッてもいいよ…俺もイキそう」
「あっ、あ、ロイぃ」
 トントンとノックするように奥を突かれて、短い悲鳴のような嬌声を上げた瞬間、翔平の体がガクガクと痙攣し、それに耐えるようにロイにしがみついた。
 ギュウッとロイを包み込んでいた中が締まり、ロイもグゥと低く呻くと、その中に勢い良く射精する。
 絶頂を迎えながら、腹の中に感じた熱にさらに快感を覚えて、長い嬌声をあげた。
 最後まで出し切ったロイがはぁと熱い息を吐きながら、汗ばんだ翔平の体を抱きしめる。
「好きだよ…愛してる…」
「ん…俺も…」
 啄むようなキスを何度もかわし、目が合うとどちらかともなく微笑む。
「もっかい…いい?」
 今射精したばかりなのに、硬さを失わないロイが腰を揺する。
「あ…」
 その刺激に声をあげると、その甘い響きにさらに中で大きくなった。
「いいよ。いっぱいシて」
 ゆさゆさと軽く腰を揺するロイの頬に両手を添えると、自ら口付けた。
「!」
 途端にロイの鼻息が荒くなり、上半身を起こすと翔平の足を抱えて、中を抉るように大きく突き上げた。
「あ”!あ“ぁ!あっ」
 パンッパンッと肉を打つ音と抽送の度に濡れた音が響き、その快楽に身を委ねた。



「ショーヘー、ごめん…大丈夫か?」
 数度目の射精後、クタッとした翔平に声をかける。
「…だい、じょ、ぶ…」
 そうは言いつつも、すでに甘い疲労感で体が動かせない。まだ意識があるだけマシだ。
「そのまま寝ていいよ。綺麗にしとくから」
 閉じかけている目を見てクスクス笑いながら頬を撫でる。
「ん…寝る…」
 その温かいロイの手にうっとりした表情を見せると静かに目を閉じ、すぐに寝息をたて始めた。
 ロイが自分でつけた翔平の身体中に広がるキスマークに、また派手にやってしまったと苦笑しつつ、クリーンをかける。
「抑えられないんだよなぁ…」
 自虐的に笑いながら横になり、そっとその体を抱きしめた。
 



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