おっさんが願うもの

猫の手

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王都編 〜狩猟祭 王都への帰路〜

177.おっさん、甘いひと時と新たな謀略

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 宿の別館の周囲は森になっていて散策出来るようになっていた。
 はぁと真っ白い息を吐き出すと、背後からモコモコのマフラーをふわりと首に掛けられる。
「ありがとう」
 そんなイケメンなディーの行動に、振り返りつつ頬を赤く染めて微笑む。
 寒いけど、気持ちが良い。
 キリッと冷えた空気が体を引き締めてくれる。
 隣に立ったディーが俺の手を握り、俺も握り返して指を絡ませる。
 ゆっくりと遊歩道を歩き始めると、サクッサクッと霜の降りた凍った土が音を立てた。


 朝自然に目を覚まして体を起こすと、俺の体に乗せられていた2人の腕がパタリとシーツの上に落ちた。
 そんな俺の左右で眠る2人を見下ろした後、大きな欠伸を一つしてベッドから降りる。
 全裸のままペタペタと歩き、椅子に放り投げられていた下着を取ると、そのままバスルームに向かう。
 バスルームの片隅にある洗面ボウルの前に立ち、鏡に写った上半身を見て苦笑する。
 首筋、胸、肩、二の腕の至る所にキスマークが散りばめられていた。下を向いて他の場所も確認すると、腹や足。特に内腿に多くのキスマークが残り、顔を赤く染める。
 まるで虫に何箇所も刺されたみたいだ、と苦笑しつつ、今が秋の終わりで、厚着で良かったと心から思う。
 顔を洗うと備え付けのタオルで拭き、置いてあったブラシで髪を梳かしていると、バスルームにディーが入ってきた。
「おはようございます」
 ふあぁぁと大きな欠伸をしながら俺に近寄り、背後から腕を回し抱きついてきた。
「おはよう」
 俺の首の後ろ、うなじに顔を寄せてスンスンと匂いを嗅ぐロイと同じ行動にクスッと笑う。
 チュッチュッと首筋や耳にキスを落とし、振り返った俺の唇にもキスをする。
「ん…」
 チュム、チウ、と軽く吸い付くようなキスに笑い、こんな朝の何気ない行動にとても幸せを感じる。
「朝食までまだ時間がありますけど、散歩でも行きますか?」
「行く」
 服を着ながら言われ即答する。
 ロイは、と思ったがベッドで気持ちよさそうに大の字になって寝ている姿を見て起こすのを止めた。

 静かに部屋を出て静かな廊下を進み玄関に来ると、警備についていたコナーが俺たちに気付いた。
「おはようございます」
 互いに朝の挨拶をにこやかに交わし、散策してきます、と行先を告げて見送られる。


 森の中を歩くと、時折鳥の鳴き声がしてその姿を探すが見当たらない。
「寒くないですか?」
「大丈夫」
 時折気遣ってくれるディーの言葉が嬉しい。
 遊歩道にあるちょっとした段差でも、ディーが手を繋いだまま俺の歩みを助けるような動きをするので、本当にそのイケメンっぷりに照れてしまう。
 こんな行動が素で出来てしまうディーに同じ男として嫉妬すら覚えてしまった。
 しばらく森の中を歩き続けていると、目の前が開けて、森を抜けた。
 展望台になっているようで、木の柵とベンチが備え付けられている。その先には、昨日車窓から見えた広大な丘陵地帯が眼前に広がった。
「うわぁ、綺麗だな~」
 柵に近寄り、目の前に広がる緩やかな丘陵と、さまざまな色合いに感嘆のため息をついた。
「春から夏にかけて、花が咲き乱れますから、今以上に綺麗ですよ。
 またその時期に来ましょうね」
「ああ」
 ディーを振り返ってニコリと微笑むと、ディーも頬を染めて嬉しそうに笑った。
 それからしばらくベンチに座って、じっと美しい景色を黙って堪能した。
 周囲に誰もいないことはわかっていたので、隣に座るディーにもたれかかり、肩に頭を乗せて思う存分甘える。ディーも俺の肩を抱き寄せて、額に頬にキスを落とす。
 そんな甘くうっとりする時間を満喫し、そろそろみんな起きてくる時間だと、部屋に戻ることにした。
 戻る前にもう一度甘いキスをかわす。長めの重ねるだけのキスと、啄むようなキスに互いに微笑み、元来た道を引き返す。
 だが、歩き始めてすぐに、冷えたのか鼻がむずむずしてしまった。
「ぶぇっくしょい!…ちくしょう」
 思い切りくしゃみをした後に、ついつい出てしまった言葉の後、鼻をすする。
「うわぁ…雰囲気台無しw」
 そう言われて笑い合った。

 部屋に戻ると、すっかり身支度を整えたロイが椅子に座ってムスッとしていた。
「起きたんですね」
「どこ行ってたんだよ」
 ジロッと俺たちを見るロイに笑う。
「散歩だよ。気持ちよさそうに寝てたから起こさなかった」
「そこは起こせよ」
 言いながら俺に近寄ると頬に両手を添えた。
「冷たくなってるじゃねぇか」
 部屋に居たロイの両手は温かく、その手に俺も重ねて頬に押し付ける。
「ん」
 そのまま口をロイに向かって突き出すと、ロイがニヤァと笑い唇を重ねた。
「唇も冷たい」
 言いながら何度も何度も温めるようにキスをしてくる。
 そのキスで機嫌を直したロイに笑い、3人で朝食を食べに行った。

 食堂で皆に会い、他愛のない会話をしながら食事を済ませる。
 午前9時に宿を出て、あとは王都まで5日間かけて戻ることになった。





 馬車の中で色々な話をして、聞いた。

 狩猟祭の賞金と魔石の話になった時には、お金の話に唖然としてしまう。
 1位のロイは白金貨30枚、2位のアランは25枚、3位は20枚。10位のティムも5枚という賞金を貰える。
 さらにロイにはあの巨大な魔石がある。
 聞けば、あの23センチの魔石はシェリーに依頼して、オークションにかけることにしたそうだ。手数料や税金を引かれて300枚ほどの白金貨がロイの口座に振り込まれるらしい。


 300枚…3,600万円…。


 ロイはこの狩猟祭で4,000万近く稼いだことになる。
 その金額に冷や汗が出た。
「ロ、ロイってさ、実はかなりお金持ちなんだな」
 あははと笑って茶化し、誤魔化すように言うと、ロイがキョトンとした顔で俺を見た。
「いくら持ってたかな…」
 まるで金に興味がないと言った感じで言われ、ディーが笑う。
「ロイはそういうところ、かなり無頓着ですからね。獣士団時代もロイの個人資産の管理は私がしてたくらいです。
 多分、口座に1万枚はくだらないんじゃないですか?」
 呆れたようにディーが言い、1万と聞いて鳥肌が立った。
「結婚したら、ショーへーに管理してもらうから、よろしく」
 ロイに軽く言われ、ヒュッと息を飲み込んだ。
「そ、そんな大金…」
「大丈夫ですよ。資産管理専門の執事を雇えばいいですよ」
 キースに言われてコクコクと頷いた。
「ゆくゆくはディーゼルとロイと結婚して世帯を持つんだからな。
 屋敷も建てて、使用人も雇って、そういう家の管理を任せる体制を作らにゃならん。
 お前自身、聖女として、ジュノーとしての対価も受け取るわけだしな」
 アランにも言われ、そうか、俺も報酬を受け取るのか、と呆けてしまった。


 そっか。結婚するって、そういうことも考えなきゃならないのか。


 単純に結婚しました、めでたしめでたし、ではないと、付属する結婚後の生活のことも考えなくてはならないことを改めて思い出した。
 そういえば、9年前に結婚しようと思った時も色々な手続きが面倒だと思ったことを思い出し、この世界でも同じなんだと思った。


 魔石繋がりで、贈られた魔石はどうすればいいのかも聞いてみる。
 自分で取った4つの内、2人に贈る以外の残り2つの魔石は獲物と一緒に街で売却してしまった。
 全部で白金貨1枚と金貨2枚になり、オスカーとジャニスと3人で山分けにしたのだ。
 今俺は個人のお小遣いとして巾着に金貨4枚を持ち歩いていた。
「売却するか、加工するかですね」
「加工か…」
 出来れば、2人にもらった魔石は加工して身につけたいと思った。
「加工しようかな…。
 お前達から貰った魔石、ピアスにしようかな。
 ペアピアスじゃなくて、両耳にさ」
 自分の耳たぶをつまみながら言った。
「じゃあ、そうしましょうか。防御魔法の付与もやってもらいましょう」
 ディーが嬉しそうに笑う。
 両耳になるからまたピアスホールを新たに開けなくてはならないが、どうしても身につけたかった。
「戻ったら加工師をお呼びしますね」
 キースがニコリと頷き、アランも付け足す。
「キースも俺が贈った魔石、加工してもらえ。請求は俺で」
「じゃあ、俺らもその時一緒に依頼するか」
「そうですね。バラバラに依頼するより、一気にお願いしちゃいましょう」
 ロイとディーも俺からの魔石を加工する気らしくニコニコする。
「他の魔石は売却でいいかな」
「いいと思いますよ。ただ持っていても宝の持ち腐れですし」
「贈ってくれた人には申し訳ないけど…」
 苦笑しながら言うと、そこは気にすることはない、とアランが笑った。


 その日から3日連続で野営となる。
 王族用、聖女用、騎士用が2張り、メイド用、執事用、合計6張りの天幕を総出で張り、その間メイド達が食事の準備をする。
 アランやディーも作業をしているのに、俺だけがやることがないのが嫌で、メイド達に混ざって食事の準備を手伝った。
 最初はかなり恐縮されたが、自炊歴16年のキャリアがものをいった。
「お上手ですね」
 じゃがいもに似た野菜の皮をナイフで器用に剥いているのを見て褒められて、ドヤ顔で微笑む。
 ポトフのようなスープを作り、全員で焚き火を囲んで食べるのは楽しかった。
 食事が終わっても全員で談笑が続く。


 オスカーがいつの間に持ち込んでいたのか、自分の荷物の中から酒瓶を出してきた。
「儲けさせてもらったからな。アストリアの街で買っといた」
 ニヤリと笑い、全員に酒を振る舞う。
「儲け…?」
 その言葉に首を捻ると、キースが覚えていませんか?と賭けの話をし、あぁ、と思い出した。
「ロイに賭けたんですか?」
 ディーが聞くと首を振る。
「ロイは当然優勝だと思ったからな。みんなそう思うから当然オッズも低くてよ」
 オスカーがニヤニヤしながら笑う。
「誰に賭けたんだ?」
「あたしよ」
 そこにアビゲイルが答えた。
「アビーの実力は知ってるからな。絶対に5位以内に入ると思ってた」
 同じ第1部隊で彼女の強さはよくわかっている、とオスカーが笑う。
「それに、アビーは狩猟コンテスト初参加で無名だ。大穴っちゃ大穴だな」
「思った通り、オッズが高くてよ。
 いやぁ、ありがとうな。かなり潤ったわ」
 ガハハと笑うオスカーに数人が苦笑するが、数人は同じようにニヤニヤと笑う。
「もしかして、他にも?」
「実は俺も…」
「俺もだ」
 近衞のウェスリーとオーウェン、コナーが手を上げた。
「お前達…」
 リーダーのシドニーが呆れたように部下を見つめる。
「俺はまぁそんなに儲けは出なかったが、負けはしなかったな」
 とアールが言い、メルヒオールに賭けたと笑った。
「すっかり忘れてたよ。俺も賭ければ良かったなぁ」
 笑いながらオスカーから回ってきた酒をマグカップに手酌で注いで飲んだ。


 帰路の4、5、6日目と野営が続き、キャンプをしながら旅をしているような楽しい日が続く。
 そして7日目、王領に入ってすぐの街で最後の宿に宿泊する。ここで一泊して、明日の夕方には王都に到着することになっていた。

 宿はホテルような大きい建物であったが、全館貸切ではなく宿泊する階のフロアのみを貸し切り、一般人がそのフロアに入れないように立入禁止にしていた。
 当然ロビーや他フロアには大勢の宿泊客がいて、現れたアラン、ディー、ロイ、騎士達の姿に、好奇の視線を向けてくる。
 中には挨拶しようと近づこうとする者もいたが、そこは近衞がサッと壁になって立ち塞がる。
 食事も一般客とは分けられて、大会議室のような場所に用意された。
「明日の朝食は一般と一緒になるので、各々認識阻害を使って個々にとるようにしてください」
 シドニーが連絡事項を告げ食事が始まるが、その途中、伝達魔鳥が窓をノックした。
 近くに居たオーウェンが小さく窓を開けると、中に入ってきた魔鳥がシドニーの手に止まる。
 その連絡を受け取ったシドニーの顔が顰められた。
「何だ」
 アランがすかさず問う。
「キドナのバシリオ殿下が、行方をくらましたそうです」
 それを聞いてガチャッと持っていたフォークを落とした。
「場所は?」
「ベネット領北部の森林地帯です」
 シドニーが答え、アランの眉間に皺が寄った。
「よりにもよって、国内でか…」
 チッと舌打ちして独り言のように呟き、持っていたフォークで、サラダをカチカチと突く。
「アラン、動かしましょう」
 ディーが進言する。
「そうだな」
 フォークを置き、伝達魔鳥をその手に出現させると、その鳥に向かって指示を出す。
「魔導士団第3部隊と、現在シュターゲンに駐留している騎士団第2部隊をキドナとの国境沿いに派遣。
 獣士団第4部隊を王都に帰還させ、第2部隊を新たにシュターゲンに派遣する。
 歩兵、騎兵を各3部隊、弓兵2部隊の準備をさせておくように」
 じっとアランの言葉を聞いていた魔鳥が、言葉が終わるとパタパタと飛び立ち、オーウェンが開けた窓から外に飛び出して行く。
「グレイ、帰って早々悪いが、シュターゲンの治安維持部隊として発ってくれ」
「ああ。わかった」
「ショーへーの専属護衛が1人減るが、問題ないだろう。
 必要な場合はフィン、オリヴィエ、エミリアの誰かを新たにつける」
 ピリピリした空気に包まれて、全員が食べることをやめていた。
 俺も突然起こった事態に、頭の情報を一つ一つ整理していく。
「とりあえず、食おう。後は明日帰ってからだ」
 アランがニコリと笑い、張り詰めていた空気が少しだけ緩和された。



 当てがわれた部屋に入ると、ベッドに腰掛ける。当然ロイとディーが同室だ。
「なぁ、質問していいか?」
 2人に問いかける。
 そんな俺の質問にディーが苦笑した。
「貴方は気にすることないですよ…、と言いたいですが、知りたいんですよね?」
「ごめん」
 俺も苦笑いを浮かべた。
 先ほどの話は俺にはまるで関係ない。
 国同士の政治的な話が絡んでくるから、口を出す資格も権利もない。それはよくわかっている。
 だが、蚊帳の外に置かれるのは嫌だった。
 何も出来なくても、知らない、関係ない、でいたくはなかった。
「バシリオが公国内で行方不明になったって、かなりマズいことだよな」
「…おっしゃる通りです」
「国境を越えて、キドナ国内で行方がわからなくなったのなら、何の問題もないんだがな…」
 ロイも呆れたようにため息をつく。
「王太子か、バシリオか、どっちかの策謀だろう」
 言いながらドサッと俺の隣に座ると、俺の腰に手を回してくる。
「お前はどっちだと思う?」
 ん?とロイに覗き込まれて苦笑する。
「それはわかんないよ。
 けど、王太子側だと思いたい、かな」
「私もです」
 ディーも反対側に座り、2人で俺をはさむ。
「もしこれではっきりとバシリオが殺されたとなれば、王太子の謀略だってすぐにわかるけど、生死不明だからな」
 その王太子の謀略と、バシリオの考えをそれぞれ頭に思い浮かべた。頭の中にある情報を元にフル回転させて思考を巡らせる。
 俯いて、唇を触る翔平の癖を見て、左右の2人がクスッと笑う。


 前にも話したバシリオ暗殺の憶測がこれで現実味を帯びてきた。

 バシリオの考えだとすれば、公国内でわざと行方をくらませることで、王太子がサンドラークに難癖をつけるのを逆手にとるつもりだろう。
 一度は身を隠し、人知れずキドナに戻って自分を暗殺しようとしたと王太子を断罪することが目的か。
 もしくは、バシリオが腹黒い考えを持っているなら、サンドラークを巻き込んで、国同士の争いに持ち込むことも出来る。
 だが、友好な関係を築きたいと言っていたバシリオがそこまでするだろうか。
 キドナの派遣争いに他国を巻き込むことに、なんのメリットがあるのか。

 数回しか会ったことのないバシリオを擁護するつもりもないが、それでも、そんな腹黒いことを考えるようなタイプには見えなかった。

 それよりも、ジュノーを手に入れるために2度も間者を送りつけてきた王太子の謀略だと考えた方が無難だ。

 王太子側の謀略だとすれば、公国内でバシリオを襲撃し、その犯人を強盗でも野盗でもなんでもいい、とにかく公国側の手によるものとする。
 邪魔なバシリオを消せて、サンドラークにも難癖をつけて賠償金なりなんなり、何かしらを求めることが出来て一石二鳥だ。

 何かしらを求めてくる。
 そうだ。俺だ。
 弟を、第2王子を他国の人間に殺され、その代償としてジュノーを寄越せ。
 王子とジュノーで、釣り合いは取れる…のか?

 もしかしたらバシリオはその王太子の謀略に乗っかって機会を狙っているつもりかもしれない。

 どちらにしても、公国内でバシリオが行方不明になって、両国間の緊張が高まるのは必須だ。
 だからアランが国境沿いに騎士団と兵の派遣を決めた。

 まずはキドナがどう出るのか。
 行方がわからないという状況で、すぐに報復に出てくるわけではないだろう。
 だとしたら、まずは使者なりを送り込んでくるはず。
 それなら…まずは対話で…。


 ブツブツと呟く翔平に2人が呆れる。
「ショーへー」
「ショーヘイさん」
 2人に呼ばれても、考えに集中して一切耳に入らない翔平に苦笑し、ふぅと息を吐くと、ほぼ同時に2人の腕が動いた。
「わぁ!」
 突然2人の腕に肩や胸を押され、そのままベッドにひっくり返された。
「な!何!どうした!?」
「どうしたじゃねぇよw」
 ロイが笑いながら、仰向けに倒れた俺の顔を覗き込む。
「何考えてたのかわかりますけどねw」
 ディーもクスクス笑う。
 そして、交互にキスされた。
「お前は政治家でも外務局員でもないだろ」
「そうそう。貴方が考えることはないんですよ」
「…そ、そうだけど…」
 もしかしたら、全く関係がないとは言い切れない、王太子はジュノーを狙って…、と言い掛けて止めた。
 全部俺の妄想。
 少ない情報で憶測だけで話をすることは出来ない。キドナという国のことも、その王家や王太子のことも何も知らない。
 瑠璃宮に戻ったら調べようと心に決める。
「ショーへー、そんな難しい顔をしてるお前も好きだ」
 ロイがじっと俺の顔を見つめて頬を染めてデレデレする。
「キリッとした顔も可愛い」
 ディーが同じようにデレながら俺の頬を突く。
「可愛い言うなー」
「可愛いぞ」
「可愛いです」
 ギュウギュウと左右から抱きしめられて、思考が中断されてしまいつつ、頬を赤く染めた。
「照れるのもちょー可愛い」
「もう全部可愛い」
 2人の顔が近づき、何度も何度もキスされて、緊張していた脳が絆されてふやけて行く。
「え?あ?ああ!?」
 そして、いつのまにかシャツのボタンが全て外され、ズボンのベルトも外されようとしていて、大きな声を上げた。
「ここも可愛い」
 つんと乳首を突かれる。
「こっちも可愛いです」
 緩められたズボンの中にディーの手がズボッと入れられて、ペニスを直に握られた。
「ちょ!ちょっと!!」
 一応抗議の声を上げたが、あれよあれよという間に2人から与えられる快楽の波に飲み込まれて行った。



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