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王都編 〜狩猟祭 ハニートラップ〜
おっさん、うなされる
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キースが淹れてくれたお茶を飲みながら一息つく。
「ショーヘイさん。疲れたでしょう?今日はもう休んでください」
「ああ、うん。そうさせてもらおうかな…」
まだ夜10時を過ぎたばかりだが、キースに言われた通り早めにベッドに入ることにした。
今日1日で、本当に色々なことがあった。内容が濃過ぎて、精神的にかなり疲れてしまっていたのも事実だった。
会ったばかりの王子達に伴侶候補にと名乗りを上げられてパニックを起こし、さらにアレらに身体を弄られた。
両腕を封じられて胸や股間を弄られたのを思い出し、ゾクッと鳥肌が立つ。
思わず布団の中で身を守るように背中を丸めて縮こまると、ギュッと布団を握りしめて、胎児のように丸まって目を閉じた。
騎士服から普段着に着替えて天幕を出る。
「ブラッド達の天幕わかるのか?」
「ああ。さっきシェリーに聞いた」
同じく普段着のグレイが天幕から出てくると、ディー達の天幕の前で立番をしていたオーウェンと目が合った。
「どっか行くのか?」
「ああ、ちょっとダチと飲んでくるわ」
ニカッと笑いながら手に持った酒瓶を見せるとオーウェンが苦笑する。
「明日が狩り本番なのに余裕だな」
「まあな」
笑いながら手を振り、グレイと共に立入禁止区域の端にある、ブラットとエドワードの天幕に向かう。
歩いて20分ほどで目的の天幕の前に到着し、出入口の幕の脇にぶら下がっている紐を引く。中で鈴が鳴り響き、その後2、3分程してから幕の隙間からブラッドの顔だけがニュッと出てきた。
「なんだロイか」
「遊びに来てやったぞー」
言いながら酒瓶を見せるとブラッドが、お、と嬉しそうに破顔した。
「ちょっと待ってろ」
ヒュッっと顔を引っ込め、さらに1、2分後にようやっと幕を開けてくれる。
「グレイも一緒か。適当に座ってくれや」
招き入れられ遠慮なく中に入ると、大きなクッションの上に腰を下ろした。
ブラッドはゆったりしたズボンに素足でシャツの前をはだけて羽織っただけの状態だった。
「やぁ、いらっしゃい」
衝立の奥から、ローブを羽織ったエドワードが出てくる。
「お邪魔してまーす」
ロイがニヤニヤしながら言い、ついさっきまで2人が何をしていたのかをすぐに察した。
グレイも察して苦笑いを浮かべる。
「僕、邪魔?どっか行こうか?」
恋人の戦友が訪ねて来て、エドワードが気を利かせて言ったが、ロイはそれを止めた。
「こっちは口実だよ」
酒瓶を振って見せると、エドワードがすぐに、ああそう、とロイ達と同じように大きなクッションの上に座った。
ブラッドが全員分のコップを用意して手渡すと、持ってきた酒を注ぐ。
「じゃぁ、盟友とその恋人に、かんぱ~い」
ロイがニコニコしながら言い、グラスを掲げた。
「で?ハイメのことだろ?」
ブラッドが早速切り出す。
「そ。昼間のお礼っちゅーことで、そいつの情報を持ってきた」
ロイの言葉にブラッドはエドワードを見る。
「聞きましょう」
エドワードが答える。
「招き入れられたのは全部で5人。それはわかってるよな。
んで、その内の2人がコンテストに参加するそうだ」
「2人だけ?」
「ああ。その内の1人がハイメかもしれないが、俺たちは奴の顔を知らん。
おそらく偽名を使っているだろうから、参加登録名を確認しても当てにならんし」
グレイが酒を飲みながら言う。
「情報ってそれだけか」
「待て待て、焦るなよ」
ロイがコップの酒を飲み干すと、手酌で新たに注ぐ。
「エド、一つ質問なんだが、私兵の情報が俺たちへの貸しになると、何故そう思った?」
ロイに聞かれ、ブラッドが顔を顰め、エドワードを見た。
エドワードは口角を上げて薄く笑っている。
「指名手配中のハイメをシギアーノが雇ったと聞いて、この狩猟祭で何かする気だって思ったんですよ」
「何かって?」
「さぁ、それはわかりません」
ニコリとエドワードが微笑む。
ロイが顎を手で摩りながらエドを見る。その顔は楽しそうで、グレイは小さくため息をついた。
「何かはわからないが、指名手配中の男を雇う理由がジャレッドにあるんだろ?」
ニヤニヤしながら問いかけると、エドワードがキョトンとする。
「さぁ…知らないですね」
グレイがコップの中の酒を回しつつ、その場の空気に酒が不味くなると思った。
ロイはハイメを雇ったのがシギアーノではなく、ジャレッド個人だと言い切った。多分だが、ロイはもう確信している。
貴族が自分達の護衛のために私兵を雇うのはよくあることだ。
だが、それでも身元はきちんと確認する。傭兵ギルドを介することがほとんどで、年間契約だったり、その都度だったりするが、全てギルドから紹介を受けて雇い入れる。
当たり前だが、犯罪歴があったり、ましてや指名手配中の傭兵はギルドに所属出来ず、今回のハイメのような奴は、裏ルートから私兵に雇い入れたのは間違いない。
そんな奴を雇うこと自体、何かしようとしていると言っているのと同義で、その目的は護衛ではなく、人には言えない悪いことと相場は決まっている。
では何故シギアーノではなく、ジャレット個人だと言いきったのか。
ロイの頭の中がわからず、グレイはため息をつく。
現段階で、シギアーノ家が、ジェロームが何かを企んでいるようには見えない。ましてや自分達が主催するイベントを利用するなんて、一歩間違えば、イベントが中止になるどころか、今後の開催も危ぶまれ、侯爵家の沽券に関わる。
さらに先ほどの翔平の話。
家じゃないなら、個人が雇い主。
そしてロイは、さらに情報を持っていると踏んだエドワードに揺さぶりをかけた。
エドワードの返事の後、1分は沈黙が続いた。
「エド。もういいだろ」
ブラッドがため息をつきながら沈黙を破った。
「黙ってても俺がやりにくくなるだけだ。もうこいつはあらかた予測してるだろうよ」
少しだけ怒ったように恋人に言う。
「予測というか、憶測な」
「その憶測を先に聞かせてもらってもいいですか?」
エドワードが恋人に怒られながらも、好奇心には勝てなかったのか、少しだけ身を乗り出しながらロイに聞いた。
「ハイメは帝国、シグルド、メイフォールに指名手配されているって言ってたろ。
ってことは、逃亡するには公国かマールデンを通るしかねぇ。
通常ルートで国境を越えることももう不可能で、残りは深い森を何日もかけてそれこそ命懸けで越えるか…偽の身分証を用意するか…」
「協力者に密入国を手引きしてもらうか、か」
グレイが最後の一つを言い、なるほどね、と自分でも納得したように頷く。
「森を抜けるのは追手がかかっている以上、まず無理だろうな。
身分証の偽造は時間がかかり過ぎるし、その高額な代金を払えるほど金を持ってるとも思えねぇ。
なら残りは、協力者の存在だろ」
グラスの酒で口の中を潤して続ける。
「コークス家関係以外にも色々やってんだろ、そのハイメってヤローは。
ハイメが捕まると不味いことになる奴がいるんじゃねーのか?
だからそいつがハイメを逃すために、ジャレッドを利用した。
ジャレッドは、そいつに弱みを握られていて、ハイメを公国に引き入れ匿うことになったってわけだ」
エドワードの顔がニコニコと楽しそうに笑い、うんうんと相槌を打つ。
「ただな、ジャレッドはアホだが馬鹿じゃねぇ。ハイメを何かに利用しようと思ったわけだな」
「その何かっていうのも憶測ですか?」
「ああ、全部憶測だ」
ロイもニカッと笑う。
「ジャレッドの弱みは借金じゃねーのか?
ジャレッドは今すぐ金が欲しい。だが、父親の侯爵が邪魔だ」
ニヤリと口の端を釣り上げて笑う。
「……ハイメの目的は…侯爵の暗殺か」
ブラッドがポカンとしながら呟く。
「ジャレッドが侯爵になれば自由に金が使える。当然借金も返せる。
ハイメには仕事の代金に幾らか上乗せすればいいだけだ。
この計画が全部上手く行けば、ハイメは逃亡出来て、元締めも捕まらず、ジャレッドは借金が返せて、晴れてめでたしめでたしってわけだな」
空になったコップに酒を注ごうとするが、すでに瓶が空っぽになっていた。
エドワードが立ち上がると、奥の方から新たな酒瓶を手に戻ってきて開封し、ロイのコップに、グレイにもブラッドにも注いで回る。
「っふ…ふふ…ははは」
エドワードが堪えきれなくなったように、笑い出す。
「エド?」
ブラッドが訝しげに恋人を見る。
「ロイ様、流石ですね」
「当たりか?」
「ハイメの目的云々は僕も憶測なのでわかりませんが、ハイメの逃亡、元締めの存在、ジャレットの借金、全て正解です」
エドワードがスラスラと持っている情報を話し始める。
「ハイメはとある犯罪組織の幹部の1人で、彼が捕まると芋づる式に捕まって組織が壊滅に追い込まれます。
ジャレットは、その犯罪組織が経営する賭博場で多額の借金を作っていて、その借金を減額する代わりに、逃亡の片棒をかつがされたんでしょうね」
「今回俺がギルドから受けた依頼はハイメを生きたまま捕縛すること。さらに協力者の存在を明らかにすることだ」
「ってことは、帝国の治安当局からの依頼ってことか」
「おそらくそうだろうな。ギルマスから俺に指名が入ったって聞いたし、そんなところだろ」
やれやれとブラットが一気にグラスを空にし、エドワードがすぐに酒を注ぐ。
そんなエドワードの肩を抱くと、エドワードもブラッドにピッタリと寄り添った。
「でだ、この憶測が正しいとするなら、ハイメが侯爵を暗殺しようとしているわけだが…」
「俺たちはそれを食い止めたい」
「その理由は教えてくれないんですね?」
「んーまぁな。それは言えねぇが、とにかく死なれちゃ困るんだわ」
「食い止めれば、自ずと理由は見えてくる」
「ふ~ん…」
エドワードがニヤニヤと含み笑いを漏らす。
「この憶測ってロイ様だけの考えですか?」
「いいや、俺は補足しただけで、言い出したのはショーへーだ」
「へぇ…ショーヘイさんが…」
エドワードがニヤリと笑う。
「いいなぁ~。やっぱり欲しいなぁ~。
ねぇ、ロイ様、僕にくれませんか?絶対大切にしますから」
「やらねぇよ!」
「じゃぁ、僕も伴侶候補に立候補しようかな~」
「はぁ!?」
ロイは当然だが、ブラッドも大声を上げた。
「冗談ですよ」
冗談に対して声を上げた2人にケラケラと笑う。
「お前のは冗談に聞こえねぇんだよ」
ブツブツとブラッドが文句を言い、そんな恋人が可愛くて、ロイとグレイの前にも関わらず、ブラッドの顔を引き寄せると唇を重ねた。
「それで、俺に何をしろって?」
ロイとグレイを放置して、何度もキスを繰り返してしばらくした後、やっとブラッドの機嫌が直る。
「お前が、というより俺たちだな」
グレイが場の雰囲気が変わって美味しくなった酒をおかわりしながら言う。
「俺たち2人で、お前に協力するわ。
もちろん、タダで」
タダ、という言葉を強調しながらロイが言い悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「俺たちを顎で使っていいぞ」
グレイも同じように笑うが、ブラッドは眉間に皺を寄せた。
「……条件は…」
「明日、本祭1日目の終了までに決着すること」
即答したロイに大きなため息をつく。
「ブラッド、どうするの?」
ブラッドに寄り添ったエドワードが、恋人を見上げ、首を傾げる。だが、その目ははっきりと何かを期待していた。
「…わかったよ。明日の終了までってことは、午後5時までだな。
それまでに、ハイメを捕らえる。
お前ら、ちゃんと言うこと聞けよ」
「わかっております!隊長!なんなりとご命令を!」
ロイとグレイが茶化すようにブラッドに向かって敬礼した。
「面白くなってきたね」
エドワードがふふふと意地の悪い笑みを浮かべ、ブラッドが脱力した。
体が動かせない。
仰向けになった状態で誰かに押さえつけられて、必死に動こうとするが、両手足をがっちり掴まれて僅かに動かすことしか出来なかった。
必死に体を捩ったり、捻ったり、何とか動かそうとするが、両手足は全く動かせない。
何故、怖い、誰か。
誰か助けて。
必死に体を動かそうとするが全く動かせず、助けを求めた。
だが、押さえつけられた足や腕を複数の腕が撫で、両手足から顔、首、胸、腹、全身を弄られる。
止めろ、離せ、触るな
必死に抵抗するが、全身を弄る手の数は増え、ありとあらゆる場所を触られる。
止めろ、止めて
誰か
誰か助けて
恐怖が体を頭を支配する。
必死に抵抗を続け、叫び続ける。
「うぅ…ん…や…」
微かに聞こえた声に、円卓で明日の狩猟コンテストの参加者名簿に目を通していたキースが書類から顔を上げた。
「う……けて」
また聞こえた声に、すぐに翔平の声だと気付き、慌てて立ち上がると衝立の向こう側のベッドで眠る翔平の元に駆け寄った
「た…けて…」
そこに苦しそうに呻き、背中を丸めて拳を握りしめた翔平が眠っていた。
「ショーヘイさん」
すぐに翔平に近付き、肩に触れると、その体がビクリと大きく反応した。
「止めろ、触るな」
はっきりと翔平が言った。
思わずバッと手を離したが、汗を掻いた翔平の目が開いておらず、自分に向けられた言葉ではないとすぐにわかった。
悪夢にうなされているとわかり、翔平の肩を揺らし、眠りから覚醒させる。
「ショーヘイさん!」
揺さぶられ大声で呼ばれて、翔平が目を開けた。
「ぁ…キース…」
ハッハッと短い息を吐き、キースが視界に入ると安堵の表情を浮かべ、ゆっくりと体を起こした。
「大丈夫ですか」
「…夢か…」
はぁと長く深い息を吐き、見てた悪夢から起こしてくれたキースに礼を言う。
「嫌な夢だった」
「どうしたの~?大丈夫~?」
ジャニスが衝立の向こうから顔を覗かせて聞いてくる。
「ごめん、起こしちゃった?ちょっと夢見が悪くて」
汗を拭うと力なく笑い、ゆっくりと深呼吸する。
「大丈夫。落ち着いたから」
いつもの表情に戻り、ニコリと笑う。
「眠れそうですか?」
「ああ、大丈夫」
翔平はそう言うが、キースの眉間に皺が寄る。
「大丈夫だから」
大丈夫、大丈夫と繰り返す翔平に何も言えず、再び横になった翔平から離れる。
2人でしばらく翔平の様子を見ていたが、やがて布団が規則正しく上下に動き始めて眠ったことを確認すると、その場から離れた。
「ねぇ…。ロイとディー呼んできた方が良くない?」
ジャニスが真剣に言う。
「そうですね…」
時計を見ると深夜0時を回っており、もう2人は寝ただろうか、と考えつつ、ジャニスに翔平を見ててもらうよう頼み、2人を呼びに走った。
翔平は平然としていたが、おそらく以前に負った見えない心の傷が開いたのだと悟った。
起きている時は感じないのだろうが、眠りについて意識が無防備になると、その傷から恐怖が染み出してくる。
キースは走って王族用天幕に向かった。
立番をしていたオーウェンがキースを見つけ、すぐに中に通してくれる。
「どうした?」
寝る準備をしていたアランが嬉しそうにキースに声をかける。だが、キースが焦った表情と真剣な目を見てすぐに真顔になった。
「ディーゼル様、すぐにこっちに、ショーヘイさんの所に。
ロイ様は?」
「ロイはブラッドの所に」
ディーが何かあったんだとすぐに気付き、すぐにコートを手にとると、寝夜着の上に羽織る。
「先に行っててください」
キースが声をかけながら、素早く隠蔽魔法をかけ、ディーが真夜中に聖女の天幕に駆けつけるのを誰にも見られないようにする。
「何があった」
残ったキースがアランに事情を説明した。
ディーが数分後に翔平の天幕につくと、立番のフィンがすぐにディーを中に入れた。
「ディー、早く。またうなされてるのよ」
ジャニスが慌てた様子で声をかける。
ディーが翔平のベッドに近寄ると、先ほどと同じように悪夢にうなされている翔平を見下ろした。
子供のように丸まって、自分を何かから守るようにギュッと両手を握りしめていた。
その姿を見てディーの顔が歪む。
2度のレイプ未遂を経験して、傷つかないなんてあり得ない。
まして、翔平は元の世界で男からそういう目で見られたことがなく、それだけでもショックだろうに、襲われたのだ。
このハニートラップは、3度目のレイプ未遂だ。
何故止めなかった。
何が何でも止めるべきだった。
翔平の優しさは、いずれその身を傷付けると、そう懸念していたのに。
その場にしゃがみ、強く握りしめて白くなった両手を握る。
「ショーヘイさん…ショーヘイさん…」
何度も名前を呼び、覆い被さるように隣に滑り込むと、丸まっている翔平を抱きしめる。
「ショーヘイさん…愛しています。
私はここにいます。
絶対に守りますから」
翔平の頭を引き寄せると、自分の胸に押し付け、頭を、背中を撫で続け、自分の魔力を翔平にゆっくりと流し、包み込む。
気持ち悪い。
何本もの手が体を弄って、逃げようと体を捩っても、その手で押さえ付けられる。
着ていた服もすでに取り払われて、直接肌を嬲られ続けた。
何度止めろと叫んでも、悲鳴を上げても止まらない。
気持ち悪い
気持ち悪い
気持ち悪い
だが、不意に背中を優しい手が撫でた。その背中から温かい光が体を包み始めると、その光から逃げるように、体を弄っていた手が消えて行く。
温かい
知ってる温かさ
ディーだ
ディーが助けてくれた
その光にしがみつきたくて腕を伸ばす。
押さえ付けられていた両手が動く。
その手を伸ばし、必死にしがみつく。
「ショーヘイさん…」
翔平の握られていた手が開き、無意識だろうが、ディーの胸のあたりを握りしめ、自分から顔と体を寄せてくる。
苦しんでいた表情が徐々に柔らかくなり、短かった呼吸も落ち着いて普通の状態に戻って行った。
やがて翔平の全身から力が抜け、スウスウと静かな寝息が聞こえてくるようになり、ホッとする。
「ディー、今日はこのままお願いね」
ジャニスが小さな声で言い、ディーは頷くとそのまま翔平を抱きしめたまま目を閉じた。
もう止めさせたい。
こんな風になってまで続けることなのか。
ディーの中で葛藤が激しく渦巻いた。
「ショーヘイさん。疲れたでしょう?今日はもう休んでください」
「ああ、うん。そうさせてもらおうかな…」
まだ夜10時を過ぎたばかりだが、キースに言われた通り早めにベッドに入ることにした。
今日1日で、本当に色々なことがあった。内容が濃過ぎて、精神的にかなり疲れてしまっていたのも事実だった。
会ったばかりの王子達に伴侶候補にと名乗りを上げられてパニックを起こし、さらにアレらに身体を弄られた。
両腕を封じられて胸や股間を弄られたのを思い出し、ゾクッと鳥肌が立つ。
思わず布団の中で身を守るように背中を丸めて縮こまると、ギュッと布団を握りしめて、胎児のように丸まって目を閉じた。
騎士服から普段着に着替えて天幕を出る。
「ブラッド達の天幕わかるのか?」
「ああ。さっきシェリーに聞いた」
同じく普段着のグレイが天幕から出てくると、ディー達の天幕の前で立番をしていたオーウェンと目が合った。
「どっか行くのか?」
「ああ、ちょっとダチと飲んでくるわ」
ニカッと笑いながら手に持った酒瓶を見せるとオーウェンが苦笑する。
「明日が狩り本番なのに余裕だな」
「まあな」
笑いながら手を振り、グレイと共に立入禁止区域の端にある、ブラットとエドワードの天幕に向かう。
歩いて20分ほどで目的の天幕の前に到着し、出入口の幕の脇にぶら下がっている紐を引く。中で鈴が鳴り響き、その後2、3分程してから幕の隙間からブラッドの顔だけがニュッと出てきた。
「なんだロイか」
「遊びに来てやったぞー」
言いながら酒瓶を見せるとブラッドが、お、と嬉しそうに破顔した。
「ちょっと待ってろ」
ヒュッっと顔を引っ込め、さらに1、2分後にようやっと幕を開けてくれる。
「グレイも一緒か。適当に座ってくれや」
招き入れられ遠慮なく中に入ると、大きなクッションの上に腰を下ろした。
ブラッドはゆったりしたズボンに素足でシャツの前をはだけて羽織っただけの状態だった。
「やぁ、いらっしゃい」
衝立の奥から、ローブを羽織ったエドワードが出てくる。
「お邪魔してまーす」
ロイがニヤニヤしながら言い、ついさっきまで2人が何をしていたのかをすぐに察した。
グレイも察して苦笑いを浮かべる。
「僕、邪魔?どっか行こうか?」
恋人の戦友が訪ねて来て、エドワードが気を利かせて言ったが、ロイはそれを止めた。
「こっちは口実だよ」
酒瓶を振って見せると、エドワードがすぐに、ああそう、とロイ達と同じように大きなクッションの上に座った。
ブラッドが全員分のコップを用意して手渡すと、持ってきた酒を注ぐ。
「じゃぁ、盟友とその恋人に、かんぱ~い」
ロイがニコニコしながら言い、グラスを掲げた。
「で?ハイメのことだろ?」
ブラッドが早速切り出す。
「そ。昼間のお礼っちゅーことで、そいつの情報を持ってきた」
ロイの言葉にブラッドはエドワードを見る。
「聞きましょう」
エドワードが答える。
「招き入れられたのは全部で5人。それはわかってるよな。
んで、その内の2人がコンテストに参加するそうだ」
「2人だけ?」
「ああ。その内の1人がハイメかもしれないが、俺たちは奴の顔を知らん。
おそらく偽名を使っているだろうから、参加登録名を確認しても当てにならんし」
グレイが酒を飲みながら言う。
「情報ってそれだけか」
「待て待て、焦るなよ」
ロイがコップの酒を飲み干すと、手酌で新たに注ぐ。
「エド、一つ質問なんだが、私兵の情報が俺たちへの貸しになると、何故そう思った?」
ロイに聞かれ、ブラッドが顔を顰め、エドワードを見た。
エドワードは口角を上げて薄く笑っている。
「指名手配中のハイメをシギアーノが雇ったと聞いて、この狩猟祭で何かする気だって思ったんですよ」
「何かって?」
「さぁ、それはわかりません」
ニコリとエドワードが微笑む。
ロイが顎を手で摩りながらエドを見る。その顔は楽しそうで、グレイは小さくため息をついた。
「何かはわからないが、指名手配中の男を雇う理由がジャレッドにあるんだろ?」
ニヤニヤしながら問いかけると、エドワードがキョトンとする。
「さぁ…知らないですね」
グレイがコップの中の酒を回しつつ、その場の空気に酒が不味くなると思った。
ロイはハイメを雇ったのがシギアーノではなく、ジャレッド個人だと言い切った。多分だが、ロイはもう確信している。
貴族が自分達の護衛のために私兵を雇うのはよくあることだ。
だが、それでも身元はきちんと確認する。傭兵ギルドを介することがほとんどで、年間契約だったり、その都度だったりするが、全てギルドから紹介を受けて雇い入れる。
当たり前だが、犯罪歴があったり、ましてや指名手配中の傭兵はギルドに所属出来ず、今回のハイメのような奴は、裏ルートから私兵に雇い入れたのは間違いない。
そんな奴を雇うこと自体、何かしようとしていると言っているのと同義で、その目的は護衛ではなく、人には言えない悪いことと相場は決まっている。
では何故シギアーノではなく、ジャレット個人だと言いきったのか。
ロイの頭の中がわからず、グレイはため息をつく。
現段階で、シギアーノ家が、ジェロームが何かを企んでいるようには見えない。ましてや自分達が主催するイベントを利用するなんて、一歩間違えば、イベントが中止になるどころか、今後の開催も危ぶまれ、侯爵家の沽券に関わる。
さらに先ほどの翔平の話。
家じゃないなら、個人が雇い主。
そしてロイは、さらに情報を持っていると踏んだエドワードに揺さぶりをかけた。
エドワードの返事の後、1分は沈黙が続いた。
「エド。もういいだろ」
ブラッドがため息をつきながら沈黙を破った。
「黙ってても俺がやりにくくなるだけだ。もうこいつはあらかた予測してるだろうよ」
少しだけ怒ったように恋人に言う。
「予測というか、憶測な」
「その憶測を先に聞かせてもらってもいいですか?」
エドワードが恋人に怒られながらも、好奇心には勝てなかったのか、少しだけ身を乗り出しながらロイに聞いた。
「ハイメは帝国、シグルド、メイフォールに指名手配されているって言ってたろ。
ってことは、逃亡するには公国かマールデンを通るしかねぇ。
通常ルートで国境を越えることももう不可能で、残りは深い森を何日もかけてそれこそ命懸けで越えるか…偽の身分証を用意するか…」
「協力者に密入国を手引きしてもらうか、か」
グレイが最後の一つを言い、なるほどね、と自分でも納得したように頷く。
「森を抜けるのは追手がかかっている以上、まず無理だろうな。
身分証の偽造は時間がかかり過ぎるし、その高額な代金を払えるほど金を持ってるとも思えねぇ。
なら残りは、協力者の存在だろ」
グラスの酒で口の中を潤して続ける。
「コークス家関係以外にも色々やってんだろ、そのハイメってヤローは。
ハイメが捕まると不味いことになる奴がいるんじゃねーのか?
だからそいつがハイメを逃すために、ジャレッドを利用した。
ジャレッドは、そいつに弱みを握られていて、ハイメを公国に引き入れ匿うことになったってわけだ」
エドワードの顔がニコニコと楽しそうに笑い、うんうんと相槌を打つ。
「ただな、ジャレッドはアホだが馬鹿じゃねぇ。ハイメを何かに利用しようと思ったわけだな」
「その何かっていうのも憶測ですか?」
「ああ、全部憶測だ」
ロイもニカッと笑う。
「ジャレッドの弱みは借金じゃねーのか?
ジャレッドは今すぐ金が欲しい。だが、父親の侯爵が邪魔だ」
ニヤリと口の端を釣り上げて笑う。
「……ハイメの目的は…侯爵の暗殺か」
ブラッドがポカンとしながら呟く。
「ジャレッドが侯爵になれば自由に金が使える。当然借金も返せる。
ハイメには仕事の代金に幾らか上乗せすればいいだけだ。
この計画が全部上手く行けば、ハイメは逃亡出来て、元締めも捕まらず、ジャレッドは借金が返せて、晴れてめでたしめでたしってわけだな」
空になったコップに酒を注ごうとするが、すでに瓶が空っぽになっていた。
エドワードが立ち上がると、奥の方から新たな酒瓶を手に戻ってきて開封し、ロイのコップに、グレイにもブラッドにも注いで回る。
「っふ…ふふ…ははは」
エドワードが堪えきれなくなったように、笑い出す。
「エド?」
ブラッドが訝しげに恋人を見る。
「ロイ様、流石ですね」
「当たりか?」
「ハイメの目的云々は僕も憶測なのでわかりませんが、ハイメの逃亡、元締めの存在、ジャレットの借金、全て正解です」
エドワードがスラスラと持っている情報を話し始める。
「ハイメはとある犯罪組織の幹部の1人で、彼が捕まると芋づる式に捕まって組織が壊滅に追い込まれます。
ジャレットは、その犯罪組織が経営する賭博場で多額の借金を作っていて、その借金を減額する代わりに、逃亡の片棒をかつがされたんでしょうね」
「今回俺がギルドから受けた依頼はハイメを生きたまま捕縛すること。さらに協力者の存在を明らかにすることだ」
「ってことは、帝国の治安当局からの依頼ってことか」
「おそらくそうだろうな。ギルマスから俺に指名が入ったって聞いたし、そんなところだろ」
やれやれとブラットが一気にグラスを空にし、エドワードがすぐに酒を注ぐ。
そんなエドワードの肩を抱くと、エドワードもブラッドにピッタリと寄り添った。
「でだ、この憶測が正しいとするなら、ハイメが侯爵を暗殺しようとしているわけだが…」
「俺たちはそれを食い止めたい」
「その理由は教えてくれないんですね?」
「んーまぁな。それは言えねぇが、とにかく死なれちゃ困るんだわ」
「食い止めれば、自ずと理由は見えてくる」
「ふ~ん…」
エドワードがニヤニヤと含み笑いを漏らす。
「この憶測ってロイ様だけの考えですか?」
「いいや、俺は補足しただけで、言い出したのはショーへーだ」
「へぇ…ショーヘイさんが…」
エドワードがニヤリと笑う。
「いいなぁ~。やっぱり欲しいなぁ~。
ねぇ、ロイ様、僕にくれませんか?絶対大切にしますから」
「やらねぇよ!」
「じゃぁ、僕も伴侶候補に立候補しようかな~」
「はぁ!?」
ロイは当然だが、ブラッドも大声を上げた。
「冗談ですよ」
冗談に対して声を上げた2人にケラケラと笑う。
「お前のは冗談に聞こえねぇんだよ」
ブツブツとブラッドが文句を言い、そんな恋人が可愛くて、ロイとグレイの前にも関わらず、ブラッドの顔を引き寄せると唇を重ねた。
「それで、俺に何をしろって?」
ロイとグレイを放置して、何度もキスを繰り返してしばらくした後、やっとブラッドの機嫌が直る。
「お前が、というより俺たちだな」
グレイが場の雰囲気が変わって美味しくなった酒をおかわりしながら言う。
「俺たち2人で、お前に協力するわ。
もちろん、タダで」
タダ、という言葉を強調しながらロイが言い悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「俺たちを顎で使っていいぞ」
グレイも同じように笑うが、ブラッドは眉間に皺を寄せた。
「……条件は…」
「明日、本祭1日目の終了までに決着すること」
即答したロイに大きなため息をつく。
「ブラッド、どうするの?」
ブラッドに寄り添ったエドワードが、恋人を見上げ、首を傾げる。だが、その目ははっきりと何かを期待していた。
「…わかったよ。明日の終了までってことは、午後5時までだな。
それまでに、ハイメを捕らえる。
お前ら、ちゃんと言うこと聞けよ」
「わかっております!隊長!なんなりとご命令を!」
ロイとグレイが茶化すようにブラッドに向かって敬礼した。
「面白くなってきたね」
エドワードがふふふと意地の悪い笑みを浮かべ、ブラッドが脱力した。
体が動かせない。
仰向けになった状態で誰かに押さえつけられて、必死に動こうとするが、両手足をがっちり掴まれて僅かに動かすことしか出来なかった。
必死に体を捩ったり、捻ったり、何とか動かそうとするが、両手足は全く動かせない。
何故、怖い、誰か。
誰か助けて。
必死に体を動かそうとするが全く動かせず、助けを求めた。
だが、押さえつけられた足や腕を複数の腕が撫で、両手足から顔、首、胸、腹、全身を弄られる。
止めろ、離せ、触るな
必死に抵抗するが、全身を弄る手の数は増え、ありとあらゆる場所を触られる。
止めろ、止めて
誰か
誰か助けて
恐怖が体を頭を支配する。
必死に抵抗を続け、叫び続ける。
「うぅ…ん…や…」
微かに聞こえた声に、円卓で明日の狩猟コンテストの参加者名簿に目を通していたキースが書類から顔を上げた。
「う……けて」
また聞こえた声に、すぐに翔平の声だと気付き、慌てて立ち上がると衝立の向こう側のベッドで眠る翔平の元に駆け寄った
「た…けて…」
そこに苦しそうに呻き、背中を丸めて拳を握りしめた翔平が眠っていた。
「ショーヘイさん」
すぐに翔平に近付き、肩に触れると、その体がビクリと大きく反応した。
「止めろ、触るな」
はっきりと翔平が言った。
思わずバッと手を離したが、汗を掻いた翔平の目が開いておらず、自分に向けられた言葉ではないとすぐにわかった。
悪夢にうなされているとわかり、翔平の肩を揺らし、眠りから覚醒させる。
「ショーヘイさん!」
揺さぶられ大声で呼ばれて、翔平が目を開けた。
「ぁ…キース…」
ハッハッと短い息を吐き、キースが視界に入ると安堵の表情を浮かべ、ゆっくりと体を起こした。
「大丈夫ですか」
「…夢か…」
はぁと長く深い息を吐き、見てた悪夢から起こしてくれたキースに礼を言う。
「嫌な夢だった」
「どうしたの~?大丈夫~?」
ジャニスが衝立の向こうから顔を覗かせて聞いてくる。
「ごめん、起こしちゃった?ちょっと夢見が悪くて」
汗を拭うと力なく笑い、ゆっくりと深呼吸する。
「大丈夫。落ち着いたから」
いつもの表情に戻り、ニコリと笑う。
「眠れそうですか?」
「ああ、大丈夫」
翔平はそう言うが、キースの眉間に皺が寄る。
「大丈夫だから」
大丈夫、大丈夫と繰り返す翔平に何も言えず、再び横になった翔平から離れる。
2人でしばらく翔平の様子を見ていたが、やがて布団が規則正しく上下に動き始めて眠ったことを確認すると、その場から離れた。
「ねぇ…。ロイとディー呼んできた方が良くない?」
ジャニスが真剣に言う。
「そうですね…」
時計を見ると深夜0時を回っており、もう2人は寝ただろうか、と考えつつ、ジャニスに翔平を見ててもらうよう頼み、2人を呼びに走った。
翔平は平然としていたが、おそらく以前に負った見えない心の傷が開いたのだと悟った。
起きている時は感じないのだろうが、眠りについて意識が無防備になると、その傷から恐怖が染み出してくる。
キースは走って王族用天幕に向かった。
立番をしていたオーウェンがキースを見つけ、すぐに中に通してくれる。
「どうした?」
寝る準備をしていたアランが嬉しそうにキースに声をかける。だが、キースが焦った表情と真剣な目を見てすぐに真顔になった。
「ディーゼル様、すぐにこっちに、ショーヘイさんの所に。
ロイ様は?」
「ロイはブラッドの所に」
ディーが何かあったんだとすぐに気付き、すぐにコートを手にとると、寝夜着の上に羽織る。
「先に行っててください」
キースが声をかけながら、素早く隠蔽魔法をかけ、ディーが真夜中に聖女の天幕に駆けつけるのを誰にも見られないようにする。
「何があった」
残ったキースがアランに事情を説明した。
ディーが数分後に翔平の天幕につくと、立番のフィンがすぐにディーを中に入れた。
「ディー、早く。またうなされてるのよ」
ジャニスが慌てた様子で声をかける。
ディーが翔平のベッドに近寄ると、先ほどと同じように悪夢にうなされている翔平を見下ろした。
子供のように丸まって、自分を何かから守るようにギュッと両手を握りしめていた。
その姿を見てディーの顔が歪む。
2度のレイプ未遂を経験して、傷つかないなんてあり得ない。
まして、翔平は元の世界で男からそういう目で見られたことがなく、それだけでもショックだろうに、襲われたのだ。
このハニートラップは、3度目のレイプ未遂だ。
何故止めなかった。
何が何でも止めるべきだった。
翔平の優しさは、いずれその身を傷付けると、そう懸念していたのに。
その場にしゃがみ、強く握りしめて白くなった両手を握る。
「ショーヘイさん…ショーヘイさん…」
何度も名前を呼び、覆い被さるように隣に滑り込むと、丸まっている翔平を抱きしめる。
「ショーヘイさん…愛しています。
私はここにいます。
絶対に守りますから」
翔平の頭を引き寄せると、自分の胸に押し付け、頭を、背中を撫で続け、自分の魔力を翔平にゆっくりと流し、包み込む。
気持ち悪い。
何本もの手が体を弄って、逃げようと体を捩っても、その手で押さえ付けられる。
着ていた服もすでに取り払われて、直接肌を嬲られ続けた。
何度止めろと叫んでも、悲鳴を上げても止まらない。
気持ち悪い
気持ち悪い
気持ち悪い
だが、不意に背中を優しい手が撫でた。その背中から温かい光が体を包み始めると、その光から逃げるように、体を弄っていた手が消えて行く。
温かい
知ってる温かさ
ディーだ
ディーが助けてくれた
その光にしがみつきたくて腕を伸ばす。
押さえ付けられていた両手が動く。
その手を伸ばし、必死にしがみつく。
「ショーヘイさん…」
翔平の握られていた手が開き、無意識だろうが、ディーの胸のあたりを握りしめ、自分から顔と体を寄せてくる。
苦しんでいた表情が徐々に柔らかくなり、短かった呼吸も落ち着いて普通の状態に戻って行った。
やがて翔平の全身から力が抜け、スウスウと静かな寝息が聞こえてくるようになり、ホッとする。
「ディー、今日はこのままお願いね」
ジャニスが小さな声で言い、ディーは頷くとそのまま翔平を抱きしめたまま目を閉じた。
もう止めさせたい。
こんな風になってまで続けることなのか。
ディーの中で葛藤が激しく渦巻いた。
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