おっさんが願うもの

猫の手

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王都編 〜狩猟祭 アストリアへ〜

おっさん、試してみる

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 王都を出て1日目が終わろうとしている。
 いや、もう何がすごいって。とにかく早い。
 王家の馬車は、大きいせいもあるのか、今まで乗った馬車の中では断トツに振動が少なく、馬車酔いを起こすことはなかった。
 だが、今回は通常のスピードの1.5から2倍のペースで進んでいる。
 聞こえてくる馬の蹄の音が、パカッパカッという可愛らしい物ではなく、バカラッバカラッと明らかに駆け足のものだった。
 馬もかなり疲れるだろうな、と思いつつ、馬車の中の手すりにしがみつく。

 そしてやっぱり襲ってきた馬車酔い。

 乗り込んですぐ後、キースが酔い止めをくれた。
 それを飲んでも、揺れには勝てなかった。
「ぎぼぢわるい…」
 吐くことはしなかったが、かなりグロッキーになってしまい、青ざめた顔で吐き気に耐える。
「2日くらいの辛抱です。頑張ってください」
「明日1日耐えれば、ある程度まで進めるから、後は普通の速度に戻る。
 今は遅れを取り戻さないとならんから。耐えてくれ」
 アランが苦笑する。
「頑張ります…」
 日も沈み、予定していた野営地に到着すると、野営の準備を始める騎士や使用人達を尻目に、俺は1人馬車の中で馬車酔いと戦っていた。
 今日一日で、2日分の行程を一気に進んだ。また明日も2日分の距離を駆け抜け、3日目の午前中あたりで、当初の予定だった距離まで進むと聞いていた。

 天幕の中で横になっていると、キースが果物を持ってきてくれた。
 食欲があまりなく、それでも何か口にしないと持たないからと、そばのテーブルに置く。
「ありがとう…」
 それを口にして少しだけ気分が楽になった。
「キース…。ロイの話聞いた?」
「ええ、ディーゼル様から聞きましたよ。貴方がロイ様を救うことが出来たって」
 本当は自分で話したかったが、馬車酔いでそれどころではなくなって、ディーに頼んでおいた。
「やはり、貴方は素晴らしい人だ」
 キースに言われ照れてしまう。
「そんな大層なことしてないよ…。ただ助けたいと思ったから助けただけで…」
「そう言って、きっとこれからも大勢の人を救うんでしょうね」
 キースがニコニコと笑う。


 先ほど夕食時にディーと話し、言われた言葉を思い出す。

「ショーヘイさんは、癒しの聖女ですよ」
 そう言った時のディーの目は深い愛情が込められていた。
 その目を見て、きっとディーも救われたんだろうと思った。

 翔平の手が果物に伸び、少し回復したのか、モグモグと果物を口に頬張って咀嚼する姿をニコニコしながら見た。
「何?」
「いえ、可愛いなと思って」
 そう言うと、翔平の顔が嫌そうに歪む。
「お前までそれを言うのか」
 ムスッとした口調で文句を言うが、果物を食べるのは止めない。


 本当に可愛い。


 キースの中で、微かな劣情が湧き起こる。本当に微かなもので、翔平をどうにかしたいと思うほどではないが、以前翔平とパジャマトークした時に、翔平に冗談でキスしてもいいか、と聞いた言葉を思い出していた。
 今ならはっきりと思う。
 翔平とキスがしたいと。
 これは、恋愛感情ではなく、単なる性の欲望だというのもわかる。翔平とキスしたいと思うのは、自分も男で正常な性欲があるのだから仕方がない。男じゃなくても、女でもそう思うだろう。

 だからこそ、絶対に守らなくては。
 アランを愛している自分でも微かな劣情を抱くくらいなのだから、それ以上の欲望を抱く輩はかなりいるだろう。


 ディーゼル様も、ロイ様も、メロメロになるのがわかるなぁ。


 ニコニコしながら翔平を見つめた。






 移動2日目も馬車酔いにやられた。
 揺れが激しすぎて馬車の中で横になることも叶わず、休憩中に外に出て冷たい空気を吸って吐き気を堪える。
 外はもうだいぶ寒くなっている。
 コート無しでは長時間外にいられなくなっていた。

 外気温は11度。10月末でこの気温なら、冬は確実にマイナス気温だな、と外の空気を吸いながら、寒さから耳を守るためにコートのファー付きの帽子を頭にかぶり、襟元を手繰り寄せた。
 それにしても、なんでこんな可愛らしいコートなんだ、と改めてコートを眺める。
 以前、峠を越える時にもコートを買ったが、その時もロイとグレイに今回のようなコートにすり替えられた。
 どちらかというと、女性物のようなコートだと思ってしまうのは、元の世界の認識のせいだ。
 見れば、ディーもアランも似たようなファー付きのモコモコを着ている。着方のせいなのか、着ている当人の差なのか、自分が着ているものと違うものに見えてしまう謎現象に首を傾げた。
「寒くないですか?」
 ディーがそばに寄ってきて、温かいお茶が入ったカップを差し出してきた。
「寒い方が吐き気が治る気がするよ」
 カップを受け取りながら答え、フーフーとお茶に息を吹きかけて冷ましながら飲む。
「うま…」
 甘いお茶がじんわりと体に染み込み、ほぅと息を吐き、温まって頬をピンク色に染めた。
「あともう少しの辛抱ですから」
 ディーに肩を抱かれて隣で微笑まれ、ささっと周囲をすばやく見渡し、誰にも見られていないことを確認した後、そのまま唇を重ねてきた。
 コートのフードに隠れてキスは見えないだろうが、それでも少し恥ずかしくなった。
「いつになったら気にせずキス出来るんでしょうか…」
 ディーがコソコソと呟き俺も笑った。






 移動3日目にして、ようやく元の行程に近づいて速度が落ちた。
 それでもまだ少し早いが、馬車の揺れがだいぶ落ち着き、馬車酔いを引き起こすことはなかった。
「やっと落ち着いて会話出来るな」
 アランが言う。
 今までは俺の馬車酔いのせいと、速い移動のせいで振動も車輪の音も凄くて会話という会話がまともに出来なかった。
 キースが書類ケースから中身を取り出すと、それをアランに渡す。
「馬車の中で読むとまた酔っちまうから、まずは口頭で説明するぞ。
 今夜は街の宿に泊まる予定だからその時にじっくり中身を確認してくれ」
 そう言って、ジェローム・シギアーノを嵌めるハニートラップ計画の説明が始まった。


「あー、えっと…作戦名シークレットパフ…。なんじゃこりゃ」
 それを聞いて思わず噴き出した。
「秘密の変態ってwww」
「俺じゃねぇぞ。ユリアだw」
「上手いですねww」
 4人で作戦名に爆笑した。



 最終的な作戦案を出したのはユリアだった。
 シェリーへの協力が決まり、最初はサイファーもアランもその罠の内容についてシェリーと打ち合わせをする予定だったのが、赤い月の件でそれどころではなくなってしまった。
 結局シェリーが考えた内容に、ユリアが補足・修正を加えるという形になったそうで、罠の最終稿が出たのが、出発前日となってしまった。
 シェリーはすでにアストリアに現地入りしているので、黒騎士の伝達魔鳥を利用して、最終稿を伝えるだけという形になったという。

「まぁ、全てが計画通りとはいかないだろうが、そこは臨機応変に、となるだろう」
 アランが話し始める前に俺の顔を見て苦笑し、同情するような目を向けた。



 狩猟祭では、翔平とキース、護衛騎士1人がシギアーノ側が用意した天幕で宿泊することになる。
 そこはジェロームと後継ジャレッドの天幕のすぐ隣で、アランやディー、王族とは少し離れた場所になる。
 ジェロームはホストとして、聖女をエスコートする立場を利用し、べったりくっついてくるだろうと予測した。
 おそらくあからさまに体に触れ、周囲の者達に、聖女はシギアーノ家のものであるというアピールをしてくるだろう。
 ジェロームだけではなく、ジャレッドもまた翔平にアプローチを仕掛けてくるはずであった。

 そこで、翔平の態度が重要となってくる。
 ジェロームのアプローチに恥ずかしがり、かつ嬉しそうにして欲しい。
 さらに、翔平からもジェロームにボディタッチなどの誘いをかけて欲しい。
 はっきりとジェロームとSEXする気があると見せかけて欲しい。

 この3つを前夜祭から行い、これが上手く行けば、次の段階に進む。

 その気になったジェロームにシェリーが発破をかける。
 ジェロームが手を出しやすいよう、シェリーが父親のために、翔平と事に及ぶための場所と状況を用意する。    
 ジェロームがそこに翔平を誘い出すように仕向け、翔平もそれについて行く。
 そこで間違いなくジェロームは翔平に手を出してくる。
 ここで翔平は初めて抵抗して逃げ出し、翔平を探していた護衛騎士に発見される。
 後は護衛騎士とアランやディーの仕事になるので、翔平はお役御免となる。

「ざっと流れはこんな感じか」
 口頭であらすじを説明され頷いた。
「後はまぁ…、夜にでも読んどいてくれ…」
 アランが言いにくそうに視線を逸らした。ディーもものすごく嫌そうな顔をしている。
 それを見て、文書の方にはさらに詳しく際どいことが書いてあるわけか、と察した。
 




 夜、街の宿にチェックインする。
 宿は完全に貸切で他の宿泊客の姿はなかった。
 当然のように宿周辺を近衞が交代で巡回し、街の自警団も宿の警備にあたっていた。
 たまに宿のそばを通りかかる人たちが足を止め、自警団や近衛騎士の厳重な警備体制を見て、興味深げに覗き込んでいるが、どの人もアストリア狩猟祭が近いことを知っているため、そのために王族が立ち寄ったのか、という体で通り過ぎて行った。
 街の他の宿にも、数人の貴族や富裕層が泊まっているようで、こちらの宿にいるアランやディーに挨拶に来ようとした者もいたが、会場で会えると断った。


 部屋割りは、俺とキース、アランとディーで別れることになっていたが、それは建前上で、俺とディー、アランとキースが同室になった。

 部屋の椅子に座り、渡された罠の詳細が書かれた書類を読みながら、ずっと眉間に皺を寄せていた。
 ディーは先に風呂に入っているので、1人で書いてある内容を熟読する。


 ジェロームに対して行う、挑発行為が詳細に書かれていた。
 これをシェリーとユリアという可愛らしい女性2人が考えたということに苦笑いしか浮かばない。

 手を繋がれたら、握り返す。
 肩を抱かれたら、しなだれかかる。
 上目遣いで目を潤ませ、頬を染めればなお良し。
 自ら足や腰を密着させる。
 臀部を触られたら恥じらつつも、擦り寄る。
 甘い声で囁く。
 耳元で囁き、吐息を漏らす。
 自ら手を取り、体に触れさせる。
 腰に手を回させ、触って欲しいような動きをする。でも、絶対に寸での所で止め、焦らす。
 
 などなどなど…。
 箇条書きに、俺がやるべき態度と行動が書かれていた。
 ここまで書いてくれればわかりやすい。問題は、俺にこんなことが出来るか、ということだ。
 それを2人ともわかっているからここまで詳しく書いてくれたんだろうと思った。
「はぁ…」
 深く長いため息をついた。

 俺に、クラブのホステスさんになれってことか。
 サラリーマン時代、営業職という立場で、何度か得意先の上役を連れてそういうお店で接待をしたことがある。
 彼女達は、自分を指名する客を獲得するために、あれこれと色目を使い、媚びを売ってくる。
 こっちは接待する側だったから、特に何もなかったが、連れて行った得意先の人はかなり喜んでいたことを思い出した。
 あの時のホステスさんの態度や行動を思い出しながら、参考になるかなと考えていた。
 1人で悶々と考え込むが、実際に出来るかどうかは別として、やるしかない。
 アレを失脚させるのは、俺の演技にかかっていると言っても過言ではない、と何故か高揚してきた。
 やってみるか、と心の中で呟いた。


「お風呂どうぞ」
 ディーがタオルを首にかけて寝夜着にガウンという姿で出てくると、入れ違いに風呂に向かう。
 お湯に浸かりながら、頭の中でホステスさんの態度や行動をじっくりと思い出しながら反復しつつ、妄想で予行演習を重ねる。
 お湯から出た後は、鏡に自分の顔を映し、男を誘う視線、というものを研究しつつ自分と睨めっこする。
 流し目や上目遣い、色気のある表情、色々な角度から、色々な表情を試し、練習してみた。

 そしてふと正気に戻る。

 何やってんだ、俺。
 アホか…。

 いきなり素に戻り、自分のやっていたことに思い切り恥ずかしくなり、真っ赤になりながら、バカみたいだ、とガックリと項垂れ、あまりな自分の醜態に涙目になった。
「はぁ…」
 深い深いため息をつき、バスルームから出ると、ディーと目が合う。
「読みました?これ」
 ディーが机の上の書類を指差す。
「ああ、うん。読んだよ」
「無理してこんなことしなくてもいいんですよ。貴方は何もしなくても可愛いですから」
 ディーがニコリと笑うが、俺は何故かカチンときた。
 可愛いと言われたこともムッとしたが、何もしなくてもいいと言われたことにムカついた。
 それって、何もしなくても俺が男を誘ってるって言いたいのか、と思ってしまったのだ。
 そして、ある考えが閃く。


 再び書類に目を落としたディーに静かに近寄ると、そばに立つ。
 書類に俺の影が落ち、ディーがキョトンとして俺を見上げる。それと同時にゆっくりとディーの背後を歩きながら、左肩から背中を通って右肩まで、左手でツーッとなぞった。
 ディーの背中にゾクッと悪寒のようなものが走ったようで、俺の行動に驚愕した表情で慌てたように俺を振り返った。
 その時俺はベッドに座り、上体を後ろに少し倒して両手で支えると、ディーを見ながらゆっくりと足を組む。
「……」
 ディーの喉が唾を飲み込んだのがわかり、心の中でほくそ笑みながら、薄く微笑みを浮かべて、ディーをじっと見つめながら、ぺろっと上唇を少し舐めた。
 ディーが静かに立ち上がり、俺の正面に立つと、俺の足に跨るように片膝をベッドに着き見下ろしてくる。
「ショーヘイさん…」
 はっきりとディーの頬が上気して赤らんでいた。
 ディーの手が俺の右肩を掴んだので、俺はそっとその手に自分の手を重ねると、手の甲や指の間を優しく撫でる。
「!」
 がばっとディーが覆い被さってきた。
 そのまま俺を押し倒して、唇を奪おうと顔を寄せてくる。
「っぶ!ぶあっははは!!!」
 ここで俺が耐えきれなくなった。
「は?」
 突然笑い出した俺にディーが混乱した表情を見せる。
「騙されてやんの。
 演技だよ演技。そこに書いてあったことが俺に出来るかどうかやってみただけ」
 ゲラゲラと笑いながら言った。
「え、演技…」
 ディーがカーッと赤くなり、騙されたことに恥ずかしいのか悔しいのか、プルプルと震えた。
「この!」
 ディーが再びガバッと覆い被さる。
「ひー!止めれ!」
 ディーの手が脇腹をくすぐり、俺はさらにゲラゲラと笑いながら身を捩った。
 執拗にくすぐられて涙を流して笑いディーの手から逃げるようにうつ伏せになるとベッドの上を這いずる。
「責任、取ってもらいますからね」
「はい?」
 うつ伏せでのしかかられ、完全に押しつぶされる形になると、頭の真後ろでそう言われる、
 思わず聞き返したが、後ろ髪をかきあげられてその首を甘噛みされた。
 カプカプと噛みつかれて、くすぐったくて笑いながら体を捻ってディーの体を押し返すが、両手を取られてそのまま指を絡め取られ、仰向けでベッド縫い付けられた。
 腰にグリッと下半身を押し付け、すでに大きく主張している存在を示す。
「あ…あの…、ロイに抜け駆けするなって…」
「ショーヘイさんに誘われたって言います」
 ニコリと笑うディーの目が笑っていなかった。
「いや、あれはお試しで…」
 文句を口で塞がれた。
 すぐに舌が絡め取られて、ジワッと快感が襲ってくる。
「ん…」
 チュプ、チュウ、と濡れた音が響き、気持ちよくてピクピクと体が反応し、握られた手を強く握り返す。
「はぁ…」
 唾液が糸を引き唇が離れた所で、廊下を走る音がした。
「待たせたな!急いで来たぞ!!」
 バン!と勢い良くドアが開けられ、意気揚々とロイが登場した。
 ベッドで重なる俺たちと、ロイの目線がバチッと合う。
「ディー!てめぇ!抜け駆け!!」
 バタンとドアが閉まり、ロイがディーに飛び掛かった。
「仕方ないでしょ!ショーヘイさんに誘われたんだから!!」
 髪を引っ張られながらディーが叫ぶ。
「だからあれは演技だってば!」
 俺も言い返しながら、ベッドから降りて、かけ忘れていた鍵を掛けにドアに向かう。
「演技ってなんだよ!」
「ショーヘイさんが!」
 ギャーギャーと言い合い、掴み合いの喧嘩をする2人を見て、また始まったと呆れた。

 だが、突然クルリと俺を見て、ギョッとする間もなく2人に迫られてそのまま両腕を引かれてベッドに放り投げられた。
「ショーへー、約束な。でろんでろんになるまで2人で可愛がってやるから」
「は!?なんでそーなる!?」
「ショーヘイさんから誘ったんですから」
「だから!あれは!!」
 2人の手が俺のガウンや寝夜着を脱がしにかかる。
「来てそうそうこれかよ!」
「時は有限だ!」
 さっきまで喧嘩のように言い合いをしていたロイとディーが連携した動きで、俺から着衣を剥ぎ取って行く。
「ちょ!」
 抗議の声も虚しく、あっという間に裸にひん剥かれ、ロイの宣言通り、2人にでろんでろんになるまで可愛がられることになった。




 2人に翻弄され身体中が性感帯になったかのように、快感に乗っ取られた。
 順番に2人を受け入れて、何度も絶頂を味わう。
 ロイに言われた通り、どろどろに溶かされた。
「おね…が…も…やめ」
 何度も意識が飛びかけては快感で引きずり戻される。
 まだ、もうちょっと、と言いながら愛撫の手をやめない2人に懇願しながら、快感に濡れた涙を流した。
「ごめん…これで最後にするから…」
 ロイが激しく翔平を突き上げ、何度目かの射精をすると、腹の中に伝わる熱さに体が震えた。




 グッタリした翔平の体を綺麗にしてベッドに横たえる。
 そのまま眠ってしまった翔平の頭を撫でながら、愛おしげに見つめた。
「ロイ、もう大丈夫なんですか?」
「あーまあな。何とか」
 その返事に呆れた。
 きっとまだ本調子じゃないのだ。
 本能全開で暴れまくって数日で元に戻るなんてあり得ない。でも、ロイは翔平が心配で居ても居られなかったんだろうと思った。

 翔平がこれからやることは、彼にとって今までの性の認識を自ら覆すことに等しい。
 それなのに翔平は最善を尽くそうとしてくれている。

「全力で守りましょう」
「当然だ」

 2人で翔平の手を握り、改めて誓った。



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