おっさんが願うもの

猫の手

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王都編 〜演奏会〜

おっさん、昼間から…

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 瑠璃宮に戻るとすぐにキャビネットの中から紙箱を取り出し、中にあった2対のペアピアスを取り出す。
 キースがクッションに、と綿も用意してくれたので、綿の上に綺麗に並べ、蓋を閉める前に1人でニヤニヤしながら眺めた。
「もぉ、ショーヘーちゃんも恋する乙女ねぇ。気持ち、よぉくわかるわよぉ」
 ジャニスが体をくねらせる。
「お、おと」
 ハッとして真っ赤になりながら、そんなんじゃない、と蓋をしめた。
 だが、ジャニスに言われたように、このピアスを眺めているだけで、心が満たされて体がポカポカするのは事実だった。

 恋かぁ…。
 おっさんになっても恋はするんだなぁ。

 自然にニヨニヨと顔が緩みながら、そっと優しく小物入れをキャビネットにしまった。




 着替え終わった後、3人で自室のダイニングで軽い夜食をとる。
「オスカー、今日は帰って来れない?」
「おそらく事情聴取などもありますし、貴族絡みですから司法局もすぐに動きます」
「そうねぇ。早くても明日の午前中か…昼近くまでかかるかもね」
「そっか…」
 野菜とハムがはさまったパンを手に取って一口頬張る。
「なんか、探りを入れにいったのに、あれのせいでめちゃくちゃになっちゃったな」
「そうですね。結果的にはこちらの目的は侯爵によって果たされたことになりますけど」
 キースがお茶を飲みながら苦笑する。
 確かに、ジェロームが煽りに煽って、キレたウォルターが自爆した結果になったわけで、俺も苦笑する。
「かわいそうなのはヴィンスちゃんとダミアンちゃんよ。
 ウォルターを信じていたんでしょうに」
「芸術を愛する会、どうなるかな」
「そうねぇ…」
 リーダーが侯爵への暴行未遂で捕まり、単純に考えれば会は解散だと思われるが、ヴィンスとダミアンは本当に心から芸術を愛していた。その熱量は本物で勿体無いと、ほんの少しだけ応援したい、と思った。
 テーブルに置いてあった、ダミアンから貰った小箱の蓋を開ける。
 すぐに優しい音色の穏やかな音楽が流れ、場の空気が和む。
「あれ、そういえばヴァージルはどこに行ったんだ?」
 演奏会の後姿を消したヴァージルを思い出す。
 キースもジャニスも首を捻った。




 翌朝は何事もなく、昨日の演奏会の報告をいつやるのかも決まらないまま、時間だけが過ぎた。
 日課である運動と、手紙へのサイン、贈り物の目録の確認が終われば、やることが何もない。
 時間を持て余して、図書室から本を持ってきて読み耽る。

 元々本は嫌いなわけではない。
 元の世界でも、話題になった書物を中心に読むことは多かった。
 それこそジャンル問わずで、ビジネス書から心理学、経済学、社会学、娯楽本まで、書店で平置きされ、オススメ!というポップがついた本を手当たり次第読んでいた。
 何せ、彼女がいないせいで1人の時間が多かったのだ。
 毎日定時に上がり、帰宅して夕飯を作り1人で食べる。そして寝るまでの1時間ほど読書をする。
 今思うと、なんてつまらない日常なんだと思ってしまった。

 円卓で本を広げ、その文字に目を走らせる。
「それ、ショーヘイさんの癖ですよね」
 ふと、キースに言われた。
「え?」
 顔を上げてキョトンとキースを見る。
「気付いていないんですか?
 本を読んでいる時、手で口を触っていますよ」
 そう言われて初めて唇に指が触れていることに気付いた。
「本を読む時ばかりじゃないですよ。何か考えている時とか、口を触ってます」
「可愛い癖よねー」
 ジャニスが笑い、恥ずかしくなってすぐに手を離した。
「そういえば、ロイも難しい事を考える時、顎とか口を触るわね」
「ああ、それは多分ギル様の癖がうつったんですね」
 キースが笑う。
 言われて確かにロイもギルバートも報告会の時、似たような仕草をしていたことを思い出す。
「あはは。なんだかんだ言って親子だよな」
 ギルバートに息子のように愛されたロイは、やはりギルバートを父親だと思っているんだと笑った。
 それから色々な人の癖の話になり、面白い癖や変な癖の話をたくさん聞いて笑い合った。


 昼近くになって、瑠璃宮にサイファー、アラン、ディー、ギルバート、オスカーがやってきた。
 いつもの報告会よりも少ないメンバーに首を捻る。
 いつもの会議室ではなく、談話室に収まる人数なので、そちらで話をすることになった。
 瑠璃宮のメイドがお茶を淹れて退室すると、早速サイファーが切り出す。
「オスカーから全部聞いたよ」
 深いため息混じりに言う。
「結果的に、こちらの目的は達成されましたね」
 ギルバートも苦笑していた。

 簡単に説明してくれたが、ジェロームがウォルターに言ったことは全て事実で、捕縛後の事情聴取でも、本人の口からも自白があった。

 ウォルターはやはり聖女を手にいれて、兄を、父親を追い抜き、公爵の爵位を狙っていた。
 自分は優秀で、その資格があると自信満々に話したそうだ。

「確かに仕事は出来る。局長秘書官としてではなく、局長の仕事もこなしていたのは、周知の事実だ。
 アーノルド侯爵も優秀なウォルターに頼り切りで、おそらく数年とかからず局長の仕事はウォルターが取って代わることになっていただろう」
 優秀なのに、血筋を重んじる制度のせいで立場が変わることがない。
 自分よりも劣っている兄や父に一生頭が上がらず、ただ自分は利用されるだけ。おそらくはそう考えたのだろう。
「ですが、あれに煽られたくらいでキレるんだから、仕事は出来ても性格がねぇ…」
 ははっと声に出して笑うと、視線が俺に集まった。
「ショーヘーもなかなか言うな」
 サイファーが笑う。
「確かにあれは性格が悪いですね。
 言葉巧みに狙った者に近付き、本人ではなく周囲に圧をかけてウォルターに頼らざるを得ない状況を作る。
 そうやって追い込み、優しい言葉をかけ自分だけは味方だと思い込ませて支配する。
 そういう事を平気でやってのける輩です」
 ギルバートが言った。
 それを聞いて、ヴィンスを思い出す。
 ヴィンスもまたウォルターにいいように利用されていた。彼もまた支配されていた。
 もし、昨日の事が無ければ、俺も同じようにされていた可能性がある、と今更ながら考えて、少しだけ身震いした。
「大丈夫ですよ。君はあんなのに騙されるタマじゃないでしょう?」
 ギルバートが俺の考えを見抜き、笑顔で言った。
 そんなタマじゃない、とは随分な言い方だと思い、ただ苦笑した。
「ウォルターはどうなりますか?」
「おそらくは廃嫡されて平民に降格、だろうな」
 アランがふぅと息を吐く。
「ですね。平民になっても彼ならやっていけるでしょうが、この国にいることは出来ないでしょうね」
 ディーが、自ら国を出るだろうと教えてくれた。
「大変なのはジェンキンス家だ。
 おそらくジェロームは多額の賠償金を請求するだろうしな」
 サイファーがまた深いため息をついた。
「とりあえず、芸術を愛する会は事実上破綻だろう。
 主要メンバーだった5人は簒奪とは無関係ということで結論を出す」
 アランが締め括った。
「あ、ちょっと待ってください。ヴァージルは?」
 姿が見えなくなったヴァージルの話が飛ばされていて慌てて確認する。
「あー…あれな…」
 オスカーが苦笑する。
「?」
 その表情に俺もキースもジャニスも首を捻った。
「あれの頭ん中はSEXのことだけだ。
 演奏会が終わった後姿を消したのは、あの後演奏者の数人とヤッてたからだ」
「はぁ!?」
 その事実に素っ頓狂な声を上げてしまった。
「そういうことなのね…」
 ジャニスもヴァージルを馬鹿にするように鼻で笑う。
 オスカーが談話室の外で警護のためドアの前に立っていた時、演奏者達の控室から物音と喘ぎ声が聞こえてくる。
 オスカーはため息をつき、そっと控室に近寄るとチラッと中を覗き、4人で乱行に耽けるヴァージルの姿を確認した。
 呆れながら、かけ忘れている遮音魔法を外側からかけて、元の位置に戻った、というわけだった。
 それを聞いて赤面しつつ、この世界の性行為の壁の低さに顔を顰めた。



 会の話が終わり、次の話に移る。
「ジェロームはどうだった」
「思い切り痴漢されました」
 顔を引き攣らせて笑顔で言った。
 演奏を聴いている間、足を撫でまわされ、別れる時は尻を揉まれたと言うと、俺の背後にいたキースが思い出して怒りの魔力をまとう。
「あれの性格や嗜好をシェリーから聞いたので、なるべくそれに添うように演技をしたつもりなんですけど」
「効果絶大よ。思い切り勘違いしてたわ」
 ジャニスが、名演技だったわ、と笑う。
 それにディーが思い切り顔を顰め不貞腐れる。
「触られて、嫌な顔をせずに受け入れたんですか…?」
「仕方ないだろ。殴るわけにもいかんし」
 本当は殴り飛ばしたかったと暗に言う。
「私の方が先にキレそうです」
 キースが拳を握り、アランが苦笑する。
「あれが勘違いしたなら好都合だな」
 サイファーが頷き、俺をじっと見る。
「まだ罠について詳しい内容は未定だが、昨日シェリーとも話して、今度の狩猟祭で決着をつけるつもりでいる」
「王侯貴族が揃い踏みだし、状況としても丁度良いからな」
「わかりました」
「近いうちにシェリーを交えて計画を練るから、その、なんだ、覚悟を、心の準備をしておいてくれ」
 罠の内容をもうある程度は計画しているのか、言い方に戸惑いを見せた。
 ああ、これはきっとかなり際どい内容だな、と言葉から察する。
「善処します」
 苦笑しつつ答える。
「大丈夫ですよ。貴方の貞操は絶対に守りますからね」
 ギルバートがにこやかに言い、はははと乾いた笑いを漏らすことしか出来なかった。



 その後、関係のない話で盛り上がり、談話室に笑い声が響いていたが、執事の1人がキースを呼びに来た。
 ドアの付近でキースが執事と言葉を交わした後、少し席を外しますと出て行く。

 チャンスだ!

 その状況に俺は話していた内容を切り替えて、目を輝かせてアランに声をかける。
「アラン、狩猟祭でキースにプロポーズしろ」
「…は?」
「ユリア様にプロポーズやり直せって言われたろ。だから狩猟祭で仕切り直すんだよ」
 そう言われ、アランが面食らいつつ、みるみるうちに赤くなる。
「なになに~。面白そうじゃない。キースちゃんに内緒でってことでしょ?」
「そう。いいだろ?」
「あ…、いや…、その…」
 アランが真っ赤になって狼狽える。
「面白そうですねぇ」
 ギルバートもニヤニヤとアランを見る。
「なるほどな…。それならユリアも一口噛ませるか」
 サイファーもニヤニヤが止まらない。
「そうですね。ユリアなら良い案がありそうです」
 ディーも笑う。
「あ、あの、お、俺は」
 アランが吃る。
「もう決定だから」
 アランの言葉をピシャリと遮る。
「私は狩猟祭には参加しませんが、案だけは出しましょう」
「オスカーもジャニスも何か考えてよ」
「いいわねぇ。こうなったら思い切り派手にやりましょうよ。
 キースちゃんが泣いて喜ぶような」
「こりゃ面白くなってきたな」
「あ、あの…、俺の、意思は…」

「ない」

 全員に突っ込まれてアランが小さくなった。

「それともう一つ成功させたい案件があって」
 そして、アビゲイルの件も話す。
「アビーがシェリーを!?」
 オスカーとジャニスが大きな声を出す。
「うっそぉ…」
「マジかよ…」
 2人とも驚きが隠せないようだった。
「アビーは無理無理って言ってたけどさ、実はシェリーもアビーをかなり気にしてて」
「確かにデートの時、かなり良い雰囲気でしたよね」
 ディーも頷き、だろ?とディーに微笑む。
「昨日シェリーに会った時も、アビーを探してたんだよ。もうこれって確定だよな?」
 そう言うと、へぇとディーがほくそ笑む。
「狩猟祭でジェロームを失脚させるんだから、シェリーへの告白に文句を言う人はいなくなるだろ」
 ジェロームはシェリーの相手は侯爵以上の貴族と限定している。平民だなんて絶対に許さないし、激怒するだろう。
 だが、そのジェロームがいなくなれば、シェリーは晴れて自由恋愛が出来る。
「そうなると、アビーの告白は罠が成功した後ってことになるな」
「うん。だからアランとは別件で」
 ニコニコしながら全員の顔を見渡す。
「これは考えることが多くて大変だな」
 大変だとサイファーが言うが、その表情はとても楽しそうだった。
「それじゃそういうことで、協力よろしくお願いします」
 ペコリと頭を下げると、全員が了解と微笑んだ。
 そのタイミングでキースが戻り、昼食の準備が出来たと告げた。







 昼食を終え、ディーを残して全員がそれぞれ戻って行った。
 キースも罠について話合いをすると、アランと共に王城へ行った。
 キースは罠の内容をすごく気にしていて、際どい内容にならないように私がストッパーになると意気込んでいた。

 自室に戻ると、ディーがすぐに俺に近寄り、そのまま俺を抱きしめる。
 そのまま俺の顔に触れて、顔中に軽いキスを何度も落とす。
「ディー、くすぐったい」
 クスクス笑いながら身を捩ると、ディーの腕の中から逃れて、ディーに見せたかった小物入れを取りに行った。
「これ」
 テーブルの上に青い綺麗な小物入れを置く。
「これって…」
 デートで買ってあげようとした、あの時の物だとすぐに気付いた。
「シェリーがくれたんだ。
 渡してくれたのはジェロームだけどな。選んだのはシェリーだから、彼女から貰った」
 言いながら蓋を開け、中にしまったペアピアスを見せる。
 ちょうど良い大きさで、綺麗に並べられてしまわれたピアスに、ディーが嬉しそうに微笑むと、少し乱暴な感じで俺の首の後ろに手を回し、そのまま唇を重ねる。
 ディーの手が俺の腰に周り、頬を撫でる。
 重ねられるだけだったキスから、舌が触れて濃厚なものに変わるのに、さほど時間はかからなかった。
「デートの日の夜…」
 ディーが耳元で囁きつつ、ふぅと息を吹きかけ、舌で舐める。
「ロイと…SEXしたんですか…?」
 そのまま耳を嬲られ、逆の耳も指で弄られると、ゾクゾクした快感が背筋を這い上がる。
「ぁ…」
 真っ赤になりながら、小さく頷くと、ディーがゾロリと耳を舐め、そのまま食べられるんじゃないかと思うほど、舐められ、口に含まれ、甘噛みされた。
「ん…あ」
 快感に肌が粟立ち、ディーの口から逃げるように耳を庇う。
「私がしたかったのに…」
 ディーがグイグイと俺を押し、押されるまま移動する。
「あ、ちょ、ちょっと…」
 体を撫でられ、キスされ、耳を責められて、フラつきながらディーに押され続け、あっという間に寝室へ連れて行かれた。
「まだ昼間だぞ…」
 ベッドに押し倒されて、ディーがのしかかってくる。
「関係ありません」
 俺の両手を掴み指を絡ませながら、ベッドに押し付けられて、首すじを舐められる。
「ぁ…ん」
 ビクビクとディーの舌に反応し、上気した頬がさらに赤く染まった。
「駄目ですか…?」
 顔を離し、上から見下ろされ聞かれる。その時はもうディーの愛撫によって下半身がすっかり反応してしまっていた。
「駄目って言ったら止めてくれるのか?」
「止めません」
 ニコリと微笑み、再び濃厚なキスをする。
 互いに舌を舐め合って絡ませると、どんどん体が熱くなり、熱い吐息を吐いた。
「あぁ…」
 ディーの手が俺のベルトにかかり、片手で器用に外すと、ずるんと下着ごと下ろされて、残りは足を使って脱がされる。
 その間手はシャツの中に侵入し、指先で乳首をクリクリと弄られた。
「ん、ぁ」
 クリッと弾かれると、ビクッと反応するのが面白いのか、ディーは何度も同じことを繰り返し、俺の顔を見ながら、乳首を弄ぶ。
「あ、ディーも、なんで、そこばっかり」
 両手で乳首を嬲られてビクビクと体を震わせながら抗議すると、ディーが笑った。
「貴方が気持ちいい場所だからですよ」
 言いながらシャツを捲ると、チウと吸い付き、舌先で転がされた。
「あ!あ、ん」
 乳首の形が変わって来ている。それに気づいたのは1ヶ月ほど前で、さんざん2人に嬲られて、乳首が以前よりも大きく膨らんでいた。
「私もここ好きです」
 執拗に乳首を責められると、ダイレクトに下半身に快感が伝わって、無意識に腰が揺れた。
 もしかしたら、そう遠くない未来、乳首だけでイくことになるかもしれない、とそんなことまで考えていた。
 ディーの指がペニスに触れ、その指に鈴口から溢れる蜜を掬い取ると、アナルの入口を撫でる。
 そこはもう挿入を待ちわびてヒクヒクと収縮を繰り返していた。
「ショーヘイさん、ここ、欲しがってピクピクしてますよ」
 つぷりと指を入れるのと同時に囁かれ、あまりの恥ずかしさに涙が出る。
「んなこと、言うな!」
 クプクプと指が出し入れされると、その感触がさらに快感を引き起こす。
 恥ずかしがる翔平にクスッと笑うと、素早く己のペニスを曝け出して、すでに怒張したその先端をアナルにあてがう。
「力抜いてくださいね」
 翔平の足を大きく開き、まだ慣らし始めて少ししか経っていないのに、挿入が始まる。
「んぅ!」
 まだ熟れていない入口がギチッとペニスの挿入を拒み固くなる。
 だが、ディーは挿入を止めず、代わりに翔平のペニスを掴むとチュコチュコと濡れた音を立てて扱く。
「あ、あ、あ」
 その前への刺激に声をあげ、感じる度に力が抜けて、ずっずっとディーを受け入れて行く。
「きつ…」
 そんなに濡らしていなかったせいで、ギュウギュウに締め付けてくる腸壁に、はぁと息を吐く。
「すみません、我慢できない」
 強い締め付けに、腸壁が傷付かないように腰をゆっくり動かすと、我慢せずに素直に中に軽く射精した。
 だが、その硬さが萎えることなく、そのまま慎重に奥まで挿入する。
 その間も翔平のペニスへの愛撫を止めず、自分の挿入のペースに合わせて優しく愛撫した。
「ふ…うぅ…ん」
 ディーのペニスがアナルをゆっくりと出入りすると、その動きに翔平が体を震わせる。
 一度中に放たれた精液が潤滑油がわりになり、ゆっくりした動きが中を濡らして行く。
「ふぅ…あ、あぁ…」
 ペニスへの愛撫と、中をゆっくり擦られる刺激に、いつもと違う快感に襲われた。
「ディー…、ゆっく、り、ダメ」
 ジワジワと痺れてくるような快感に翻弄される。
「どうして…?」
 それでも、ゆっくりした動きを止めず、翔平の中を味わうように繰り返す。
「か、形…が…」
「形?」
「お前、の、形が、わかって…」
 中に収められたディーのペニスの形がゆっくりした動きによって、亀頭やカリの部分がダイレクトに伝わってくる。
 それが今までにない快感を引き起こし、脳内をも犯し始めていた。
 その言葉を聞いたディーが、ボッと一瞬で赤面し興奮する。
「あ“」
 ギュンと中のディーがさらに膨れ上がった。
 そして、ドチュッと一気に奥を突き上げる。
「あ”、あ!」
 それからは、腰を揺すり、中を抉るように突き上げた。
「あ!お、奥!」
 何度も奥にぶつかる感覚に、荒い呼吸と喘ぎを漏らした。
 翔平の腰を掴み、最奥を目指して突き上げると、その壁を抜けてグポッとハマった。
「あ“ー!!」
 目の前にチカチカと星が飛ぶ。
「はぁ!あ、ショーヘイさん!」
 ドチュンドチュンと何度も最奥の壁を突き上げ、翔平のペニスを掴むと、律動に合わせて扱く。
「あ!イ、イく!」
「イッて、一緒に!」
 律動がさらに早くなり、ディーの呼吸も荒くなる。
 そして、一際大きく腰を揺らし、前立腺から最奥を一気に突き上げた瞬間、ほぼ同時に射精した。
 翔平のペニスから精液が勢い良く飛び出し、ディーも中に熱い精液を注いだ。
「は…」
 2人して荒い呼吸を繰り返しながら、絶頂の余韻に浸る。
 ディーが上半身を倒し、翔平に覆い被さると、そのまま唇を重ねた。
 舌を絡ませ、何度も角度を変えて甘い余韻に浸る。
「ショーヘイさん、煽るから…」
 唇を離して、紅潮した顔でじっと目を見る。
 そんなことをした覚えはないので、何が引き金になったのか少し考えた。
 だが、グンと中を突き上げられて思考が中断される。
「もう一回…していいですか…?」
 うっとりとした熱の籠った声で囁かれ、快感に濡れた目で見つめられてゾクゾクと背筋に快感が走る。
 さらに、ペニスが引き抜かれる時にも快感に襲われて、あれよあれよという間に体勢を変えられて四つ這いにされた。
 ディーのペニスは見事に復活しており、濡れそぼったアナルにゆっくり挿入されると、もう快感の波にのまれてひたすら喘ぐことしか出来なかった。





「ないわー、ほんとないわー」
 バシバシとディーの腕を叩く。
「あははは、ごめんなさい、ごめんなさい」
 ディーが笑いながら、抗議を受け入れる。
「真昼間っから…」
 ベッドの上で2人で裸のまま横になり、窓を見てもまだ陽は高い。
「たまにはいいんじゃないですか?」
 クスクス笑いながらチュッと頬にキスをする。
 嬉しそうに笑うディーを見ていると、怒っている俺が悪いような気がしてくる。

 惚れた弱みっていうやつかな。

 その笑顔を見ているだけで、嬉しくて、満たされる。
「あーもー…」
 顔を真っ赤にしながら枕に突っ伏し、文句を言いつつ照れを隠した。
「愛してますよ。可愛い人」
 チュッとディーが俺の肩にキスを落とす。
「あー、起きよう。だらけすぎだ」
 照れ隠しにガバッと起き上がる。だが、その耳は真っ赤で、ディーには照れていることがバレバレだった。
「このまま朝までイチャイチャしててもいいんですよ」
 ベッドから降りて、服を着ていると、ディーが再びベッドに誘うような仕草をする。
「馬鹿な事言ってないで、お前も起きろ」
 そんなディーに脱ぎ散らかされた騎士服を拾い投げつけると、先に寝室を出た。
 バスルームで乱れた髪を直し、前髪をピンで留めてリヴィングに戻ると、ディーはもうそこにいた。

「何しようかな…」
 起きたはいいが、何もすることはない。
「あ、じゃぁ、膝枕してください」
 数日前にしてやると言った膝枕を要望され、仕方ないな、と破顔した。





 キースが戻り、3人で夕食を済ませた後、打ち合わせしてきた内容を聞いていた。
「ほんとショーヘイさんに何させようとしているんだか」
 キースはずっとプリプリと怒っていた。
 何を言われたのかはわからないが、その様子からして、際どい内容だったんだな、とは思った。
 だが、キースに出来ないことははっきりと伝えておいた方がいいと言われて、それもそうだな、と3人で考えることになった。


 だが、瑠璃宮に珍しい客が現れて話し合いが中断される。




 部屋に招き入れ、ソファに座ってもらうと、キースがサッとお茶を出した。
「ありがとう」
 よっぽど急いできて喉が渇いていたのか、半分ほどを一気に飲み干した。
「どうしたんですか?ロマ様。珍しい」
 慌てたような感じのロマに、ディーが不思議そうに聞く。
「さっきレイブン達にも報告してきたんだけどね」
 真剣な表情でロマが話す。



「ロイを、しばらく隔離することになるよ」



 その言葉に意味が分からず思考が停止した。



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