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王都編 〜密会とデート〜
おっさん、閃く
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瑠璃宮に21時少し前に着くと、ロイが玄関ロビーでソワソワして待っていた。
「おかえりー!!」
帰ってきた俺の姿を見ると、両手を広げ、尻尾をバタバタ振り回しながら飛びついてきた。
「待ってたぞー」
俺の頭を両手で押さえ、顔中にキスされる。
「た、ただ、いま」
帰りの挨拶をするのがやっとの状態で抱きしめられて、キスされ、顔をすりすりしてくる姿に、やはりその場にいた全員が「犬だ」と思った。
「もうね…大変だったんです」
自室に戻ってすぐにキースがため息混じりに言った。
「何が?」
「獲物ですよ」
キースが顔を顰める。
「いっぱい狩ってきた!」
尻尾をバタバタさせて、褒めて褒めてと目を輝かせる。
「官舎のコックも呼んで、執事やメイドも総出で処理したんです…」
その光景がわかるのか、ディーもアビゲイルもうわぁと顔を顰めた。
「保管庫が肉で溢れかえってしまって…」
「いーじゃん。たくさん食える」
「多分…しばらく肉料理が続きますので覚悟しておいてください」
はぁとキースがため息をついた。
「アントニーはどうでした?」
「ああ、なかなか筋がいいぞ。多分今までの先生が悪かったんだな」
ロイがニヤリと笑う。
「今度の狩猟祭でプロポーズしたい相手がいるんだと。
だから何としても良い獲物を狩りたいんだそうだ」
「へ~。そうだったんだ。上手く行くといいな」
アントニーの顔はいまいちよく覚えていないが、マキアスの息子で、インテリ美人のニコールの弟だから、きっといい男なんだろうな、と思った。
狩猟祭でアントニーが誰かにプロポーズするのを想像して1人ニヤついた。
そしてふととある考えが閃く。
あー…。そっか。狩猟祭でプロポーズね…。
「ショーヘーちゃん、顔が変」
へへへとニヤついた俺にアビゲイルが突っ込みを入れる。
「どうかしたんですか?」
「いや、なんでもない」
ニヤつく顔を堪え、普通に戻る。
「ショーヘイさん、一つご報告が」
キースが俺に1通の招待状を差し出した。
「すみません、シェリー様の件で後回しになってしまいまして。
実は4日前にヴィンス様から演奏会の招待状が届いていました」
「そーなの?」
「シェリー様との密会の後で、今後の動き方が不明だったので、保留にしていたんですが…」
キースの話を聞きながら招待状の内容を確認した。
「相談した結果、出席ということに決まりました。
明後日と急なのですが…」
「うん、わかった」
観劇でヴィンスが言っていたように、ブルーノ男爵邸の離れで行われることが書いてあった。
「今回は騎士と一緒に私も同行しますので」
キースも一緒と聞いてホッとする。
「明日、改めてギル様から会のメンバーについてお話しがあるそうです」
「はい。了解しました」
真顔で頷く。
「それと、ディーゼル様、今日の事をすぐに報告にくるようにと」
「え!すぐですか!?」
ディーはこのまま瑠璃宮に泊まって、翔平との蜜月を楽しもうとしていたのに、出鼻をくじかれてがっかりする。
「今日一日ショーヘーを独占した罰だ」
ザマーミロと笑うロイを睨み、その足を蹴った。
「デート、ものすごく楽しかったですよ。ずっと手を繋いで歩いて、イチャイチャしました」
フンとロイに向かってドヤ顔を決めると、ロイが明らかにムッとした。
「ショーヘイさんが欲しがった物も買ってあげたんです」
どうだ、羨ましいだろ、とロイに向かってフンと鼻を鳴らす。
「っく…」
ムカッとしたロイがディーに飛びかかった。
ドタンバタンと人の部屋で掴み合いの喧嘩を始めた2人を放置して、キースとアビゲイルの3人で話を始めた。
「キースに言ってもいいよね?」
アビゲイルに言い、キースならと了承をもらう。
「実はな、アビー、シェリーに惚れたんだって」
「え!?」
「今までにも何回か会ったことはあるけど、それまではもうとにかく嫌な女っていう印象しかなくて。
でも、今日デートしたらさ…、無茶苦茶可愛いくて…」
アビーが両手で顔を覆い、耳まで赤くした。
「うん。確かに可愛かった」
その容姿はもちろんだが、仕草がとにかく可愛いと思った。
「でしょぉ?しかも、今まで見てた姿が全部演技だってわかって、もう切ないっていうか…」
「それな…」
「ど、どういうことですか?」
キースが身を乗り出して聞いて来る。
「シェリーは、とにかく目的のために嫌な女を演じてたんだよ。
もうずっと何年も。ずっと1人で」
「ショーヘーちゃんが、1人じゃないよって言ってあげたら、彼女、泣き崩れちゃって。
辛かったのね…」
キースはなんとなく察した。
ああ、この人はまた救ったんだ。
本当に自然体で人を救う…。
自分も翔平の言葉で救われたことを思い出し、脱力し、そのまま笑う。
「アビー、可愛い子がタイプって言ってたもんな。
あれだろ、守ってあげたい可愛さってことだろ」
「……そうよぉ。まさにドンピシャなのよ~」
アビゲイルがテーブルに突っ伏す。
「マジでヤバいわ。
まだ心臓がバクバクしてる。
こんなの初めてよ」
そんなアビゲイルに声に出して笑った。
「アビー」
そして、ニヤニヤしながらアビゲイルに言った。
「今度の狩猟祭、参加するよねぇ?」
俺の言葉にバッとアビゲイルが顔を上げた。
「……え?」
「狩猟祭のサブイベント、楽しみだって言ってたよな?」
「…ぁ…。む!無理よ!」
「なんで~?ちょうどいいじゃん。お付き合いしてくださいって、告れば?」
俺が揶揄うように言うと、アビゲイルが目に見えて狼狽え、そして真っ赤になった。
「無理よ、絶対無理。
み、身分だって…」
「何言ってるんですか。私なんて執事ですよ」
サラッとキースが突っ込む。
「これは、何か作戦を考えないといけないですね」
不意に後ろから声がする。
見ると、髪がグシャグシャに、服も乱れた2人がいつのまにか喧嘩を止めて、俺たちの話を聞いていた。
「そうだな。俺がアビーの代わりに大物を仕留めてだな」
ロイが真剣に言うが、それは即座に全員に却下され、ロイが何でだよ!と叫んだ。
「な!何よ皆して!揶揄わないでよ!」
椅子から立ち上がり、アビゲイルが叫ぶ。
「揶揄ってませんよ。こちらも真剣です」
そんなアビゲイルの肩をポンと叩き、ディーが真剣な表情で言ったが、数秒後に、ニヤァと口元を歪めた。
「!」
そのディーの表情にアビゲイルが顔を真っ赤にした。
「まぁまぁ…。今日はもう遅いからまた今度話そうよ。
まだ時間はあるし」
「そうですね。あ、アビーのコンテスト登録は私がやっておきますね」
キースがしれっと言った。
「もう!何なのよ!もう帰る!」
そう言って、帰ろうとした。
そんな照れているアビゲイルを全員が生暖かい目で見る。
「アビー、今日はありがとう。
お疲れ様でした」
そんなアビゲイルを追いかけ、ドアの前で言った。
「お疲れ様…」
顔を顰めて返事したアビゲイルが、ふと真顔になる。
「あの…。シェリーを救ってくれて、ありがとう。おやすみ」
照れながら言ったアビゲイルに破顔しながら、おやすみと返した。
「ディーゼル様、そろそろ我々も行きましょう」
キースがササッと片付け、ディーに声をかける。
「明日にしましょうよ」
「駄目ですよ。皆さんお待ちです」
キースにピシャリと言われ、残業確定のディーががっくりと項垂れる。
「早よ行け。今からは俺がショーヘーを独占する時間だ」
そんな項垂れたディーに、ロイが止めを刺した。
「はぁ~生き返る~」
湯船に体を投げ出して温めのお湯をバシャバシャと顔にかける。
「そのおっさんくさいの止めろ」
「あ“~」
そう言われても止められない。
「まさかアビーがシェリーになぁ…」
バスタブの中で向かい合ってお湯に浸かり、ロイが俺の片足を持ち上げてふくらはぎをもみもみとマッサージしてくれる。
たくさん歩いたから、そのマッサージが気持ちよくてされるがままになっていた。
「それなんだけどさ」
だらけていた上半身を起こすと、足を下げ少し身を乗り出す。
「多分、シェリーもまんざらじゃないぞ」
ロイが目を見開き身を乗り出す。
「マジか」
「うん。デート中、いい感じになってたし」
「へぇ~」
ロイがニヤニヤした。
「こりゃぁ、狩猟祭が楽しみになってきたな」
「あと、それとさ、俺、ちょっと閃いちゃったんだけど」
ザバザバとロイに近寄り、悪巧みをするように笑った。
だが、ロイは近付いた俺に顔を寄せ、そのまま口付ける。
「朝、約束しただろ?続きはベッドでって」
それを聞いて、出掛ける前にした濃厚なキスを思い出し顔を赤く染めた。
「約束だ」
俺の脇に手を入れると、簡単に腕の力だけで持ち上げられた。
60kgは確実にあって、そんなに軽いわけじゃないのに、そのままバスタブから出されて、キスを繰り返しながら簡単にタオルで拭かれ、まだ濡れているのにそのまま姫抱きに抱えられた。
「ちょ!話がまだ途中!」
「後で」
ロイが裸のまま急いで寝室に俺を連れて行く。
乱暴にドアを開け、行儀悪く足で閉めると、どさっとベッドに降ろされた。
「やっぱ狩りはいいわ。すげー楽しかった」
「俺は今日最後の獲物ってことかよ」
「俺の可愛い珍獣ちゃんだもんな」
笑いながら俺に覆い被さると、唇を重ねる。そのまま舌を絡ませ合い、口内の性感帯を煽られると、すぐに俺も快感の波に飲まれていく。
「ん、んぁ」
キスをしながら乳首をこねられ、ロイの舌が頬や耳を嬲るとゾクゾクと電流が背筋を走った。
「あ、はぁ…」
乳首を舐められ、すでに勃ち上がったペニスをクチクチと音を立てて扱かれると、自然とアナルが収縮を始め、挿入される喜びを待つ。
「ん、ん、んぅ」
「可愛い。ピンク色でコリコリしてて」
ロイがチュウと乳首を含み吸い上げ、舌で何度も舐めた。
「ち、乳首ばっか」
「だって…ここ、美味しい」
「あ、あ」
舌で、指で何度も擦りあげると、ビクビクと小さく体が跳ねた。
「はぁ…」
ちゅぽんと音をたてて口を離すと上半身を起こし、興奮したため息を漏らしながら快感に震える翔平を見下ろした。
「やっば…すげー可愛い…」
独り言のように呟くと、翔平の両足を開き持ち上げて尻を真上に向け、そのままむしゃぶりつくようにアナルに舌を這わせた。
「ひゃ、あ!あ、ん」
ピチャピチャと濡れた音を立てて入口を舐め回し、その中まで濡らすように舌を入れられると、グリグリと舌を動かす。
「あ、あぁ、あ」
舌で、指でアナルを掻き回され、散々濡らされた後、ようやっと離された。
「はぁ…あ…」
アナルにロイのペニスが触れる。
「ん」
ヒクヒクと挿入を待ちわびて収縮を繰り返すアナルに、ロイの鈴口から漏れる蜜を擦り付けられた。
「あ、ん」
ぬちゅぬちゅと卑猥な音が連続して聞こえ、顔を真っ赤に染めながら、挿入してこないロイを薄目を開けて見た。
ロイは自分のペニスを握り、遊ぶようにアナルに擦り付け、興奮した目でその場所を見ていた。
「ロイ…もぅ…」
挿れて欲しい。さっきから疼く腹の中にそう思ったが、恥ずかしすぎて声に出せなかった。
「挿れて欲しい?」
それでもまだ擦りつけるのを止めず、グチュグチュと濡れた音が響いた。
そして、ツプッとその先端が入口を押し広げる。
「んぅ…」
やっと挿れてもらえる、と、これから襲ってくる快感に身構えたが、ほんの少しだけ挿れただけで、すぐに引き抜かれた。
そしてまたクチュクチュと擦りつける。
「ロイ!」
中途半端な行動に、抗議の声を上げたが、ロイはただニヤニヤするだけで挿れようとはしなかった。
「ん…ふぅ…」
またクプッと少しだけ、亀頭部分の三分の一程度が挿入され、すぐに抜かれる。
「あ…、んぅ…ん」
ジクジクと下半身を襲う疼きにもう限界だった。
ロイの意地悪な行動に、息が上がり、苛立ちが募っていく。
「ロイ!」
「まだ挿れない」
懇願するように名を呼んだが、ロイが俺の痴態に興奮して嬲り続けようした。
もう無理!
俺の中で、理性の糸が切れた音がした。
ガバッと起き上がると、驚いたロイの腕を掴み引っ張ると、そのまま仰向けに倒した。
そして、その上に自分から跨る。
はぁはぁと呼吸を荒くして、快感に耐えて涙を浮かべた目でロイを見下ろす。
「ショーヘー…?」
口で息をしながら、おもむろにロイのペニスを掴むと、自分でアナルに当てがい、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「!」
ロイが翔平の行動に驚き、目を見開く。
だが、すぐにニヤッと笑い、翔平の行動を黙って見守った。
アナルにペニスを添えたのはいいが、挿入する角度がわからず、ツルンと滑って挿れられない。
「うぅ…う」
ポロッと涙を溢して、小さく唸りながら何度もチャレンジし、数回目でようやっとペニスを受け入れられた。
「はぁ…」
ゆっくりと腰を下ろしながら、腸壁を広げ奥に入ってくるロイに、恍惚とした表情を浮かべる。
ロイの手が自分の腹に乗った翔平の手を取り指を絡ませて手を繋ぐと、翔平もその手を握り返し、体重をかけて支えにした。
「あぁ、あ~…」
中を埋められていく快感に、翔平が歓喜の声を上げる。
「ショーヘー、自分で動いていいよ。
いいところにあててごらん」
そう言われ、その言葉に従うように腰を揺らした。
前後に揺らし、上下に跳ねるように動き始めた翔平を見つめ、その姿にロイは嬉しそうに笑う。
「あ!」
コリっと前立腺を擦り、翔平が声を上げると、場所を見つけて、そこにぶつけるように腰が動き出す。
「あ!あ“、ん”」
ガクガクと体が痙攣するように震え、快感の涙が溢れた。
「ロ、イ…。おね、が…」
自分で動くには限界がある。
いつもロイに与えてもらう快感には程遠く、物足りなさに泣いた。
「動い…て…」
ロイも限界が近かった。
翔平から与えられる快感に、さっきからずっとイキたいのを堪えていた。
繋いだ手を離すと、翔平の腰に両手を添え、一気に下から突き上げる。
「が!あ“ぁ!」
バチュンバチュンと何度も大きく突き上げ、よく知っている翔平が感じる部分を狙い打つ。
「~!!」
ガクガクと揺さぶられ、跳ねるたびに翔平のペニスが上下にブルンブルン揺れて、蜜を撒き散らす。
「ショーヘー!」
腰を引き下ろすのと突き上げを同時に行い、翔平の奥に射精した。
「あ”ー…」
どくどくと腹の中に放たれたロイの熱い精液を感じて、翔平も射精した。
ビクビクと翔平の体が射精後の余韻に波打ち、そのまま脱力し崩れ落ちる所をロイが繋がったまま起き上がり、抱きしめる。
「意地悪してごめん」
口を塞ぎ、舌を奪い取るように絡ませながら翔平の体を持ち上げ、今度は組み敷いた。
「あ、また」
グググとアナルが広がって行くのを感じた。
「ショーヘー、愛してるよ」
一度途中までペニスを引き抜き、一気に奥まで挿入する。
「あ!」
バチュンバチュンと何度も強く突き上げられ、悲鳴なような嬌声を上げた。
「腰がだるい…」
ベッドにうつ伏せになり、ぐったりと両手足を投げ出す。
「悪い悪い。すげー興奮しちゃってさ」
ロイが優しく背中を撫でながら笑う。
なんで興奮したのか、その理由は俺の理性が吹っ飛んだせいだとわかっている。
意地悪されて中々挿入されず、体が疼いて疼いて理性が飛んだ。
なんか俺、どんどん新しい世界が開けていってるような…。
むうーと口を横に結び、耳まで真っ赤になりながらロイとディーに開発されまくった体に呆れ返る。
これも全部気持ち良いのが悪いんだ、とため息をつきながら、ゴロリと仰向けになった。
そんな俺をロイが覗き込み、顔が近づく。
ちう、と吸い付くようなキスをされて、やっぱりそれが嬉しくて、自分から手を伸ばし、キスをせがんだ。
「でさぁ、閃いたんだけど」
「ん?」
ロイに腕枕されて横になりながら話しかける。
「何が?」
「プロポーズだよ。プロポーズ」
「? もっかいプロポーズして欲しいのか?」
言いながら、俺のおでこにチュッとキスしてきた。
「いや、俺じゃなくて」
そんなキスにクスクス笑う。
「アランだよ。
ユリア様にさ、キースへのプロポーズをやり直せって言われたの聞いてるか?」
「あー、そういやそんなこと言ってたな」
この話が出た時、ロイはいなかった。
だが、ディーから聞いているはずだと思って言った。
「でもあれからアランは何もしてないと思ってさ」
「ああ…だから狩猟祭か」
「そう。キースに内緒でさ、サプライズ的な?」
「…そりゃおもしれーかもな」
ロイがシシシと笑う。
「一緒にアビーの告白タイムも企画して…」
「ディーと、アランと、オスカーやジャニスにも手伝ってもらおう」
「いいな。面白そうだ」
ロイが声に出して笑う。
「キースがいない時、打ち合わせしよう。具体的に何をするか決めないと…」
言いながら欠伸をする。
ロイに抱きしめられて体が温められ、だんだんと睡魔が襲ってきていた。
「そうだな…」
ロイも眠そうな声を出す。
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
ロイがさらに俺を抱きしめ、その心地良さに浸りながら眠りに落ちた。
夢を見ることなくぐっすり眠ることが出来、頭がスッキリした状態で目が覚める。
ロイはまだ眠っていたが、そのままにしてベッドから降りてリヴィングに行った。
すぐに顔を洗って、濡れた顔をタオルで拭きながら正面の鏡を見た。
「……ん?」
思わず顔を触る。
思い違いだろうか。
己の顔を色んな角度から見て、眉間に皺が寄る。
この世界に来て、こんなにじっと自分の顔を見たのは久しぶりで、勘違いかと思いながら伸びた前髪をかきあげてしっかりと顔を見た。
「そんな馬鹿な…」
1人呟く。
若返ってる。
なぜかそう感じた。
40代を目前に控えているが、出来始めていたほうれい線が薄くなっているような気がした。
「まさか…」
この世界の人族の寿命は、元の世界の約2倍。
寿命の話を聞いてから、実は色々な人に年齢を聞いて回った。
それで、0歳から20代までの成長スピードはほぼ同じだとわかった。
だが、93歳のオスカーは50代に見える。100歳越えの第1部隊のおっさん達も50~60代。
ヴィンスもロドニーも38歳で俺とほぼ一緒だったが、20代後半から30代前半に見えた。
総合的に判断して、どうやら20代後半あたりから老化がかなり緩やかになることがわかった。
俺は今39歳。
この世界では童顔の部類らしく若く見られることが多かったが、今、鏡に映る俺の顔は、実際に若返ったように見えて愕然とした。
この世界に来て5ヶ月余り。
その間魔素を体に取り込んでいる。
体がこの世界に順応してきている。
ゾクっと背筋に悪寒が走った。
まるでそれは、体が作り変えられるのと同義だと感じて怖くなった。
その体は本当にお前のか?
突然頭の中に浮かんだ言葉に、バッと背後を振り返った。
そのまま心臓がバクバクと脈打つ。
魔素とは何か。
ずっとこの疑問が頭の中にひっかかっている。
いつか、このひっかかりが解消される時がくるのだろうか。
でも、今は考えるのを止めよう。
それよりもやるべきこと、しなければならないことがたくさんある。
そう考えながら、再び鏡を見て、伸びた前髪をピンで留めた。
「おかえりー!!」
帰ってきた俺の姿を見ると、両手を広げ、尻尾をバタバタ振り回しながら飛びついてきた。
「待ってたぞー」
俺の頭を両手で押さえ、顔中にキスされる。
「た、ただ、いま」
帰りの挨拶をするのがやっとの状態で抱きしめられて、キスされ、顔をすりすりしてくる姿に、やはりその場にいた全員が「犬だ」と思った。
「もうね…大変だったんです」
自室に戻ってすぐにキースがため息混じりに言った。
「何が?」
「獲物ですよ」
キースが顔を顰める。
「いっぱい狩ってきた!」
尻尾をバタバタさせて、褒めて褒めてと目を輝かせる。
「官舎のコックも呼んで、執事やメイドも総出で処理したんです…」
その光景がわかるのか、ディーもアビゲイルもうわぁと顔を顰めた。
「保管庫が肉で溢れかえってしまって…」
「いーじゃん。たくさん食える」
「多分…しばらく肉料理が続きますので覚悟しておいてください」
はぁとキースがため息をついた。
「アントニーはどうでした?」
「ああ、なかなか筋がいいぞ。多分今までの先生が悪かったんだな」
ロイがニヤリと笑う。
「今度の狩猟祭でプロポーズしたい相手がいるんだと。
だから何としても良い獲物を狩りたいんだそうだ」
「へ~。そうだったんだ。上手く行くといいな」
アントニーの顔はいまいちよく覚えていないが、マキアスの息子で、インテリ美人のニコールの弟だから、きっといい男なんだろうな、と思った。
狩猟祭でアントニーが誰かにプロポーズするのを想像して1人ニヤついた。
そしてふととある考えが閃く。
あー…。そっか。狩猟祭でプロポーズね…。
「ショーヘーちゃん、顔が変」
へへへとニヤついた俺にアビゲイルが突っ込みを入れる。
「どうかしたんですか?」
「いや、なんでもない」
ニヤつく顔を堪え、普通に戻る。
「ショーヘイさん、一つご報告が」
キースが俺に1通の招待状を差し出した。
「すみません、シェリー様の件で後回しになってしまいまして。
実は4日前にヴィンス様から演奏会の招待状が届いていました」
「そーなの?」
「シェリー様との密会の後で、今後の動き方が不明だったので、保留にしていたんですが…」
キースの話を聞きながら招待状の内容を確認した。
「相談した結果、出席ということに決まりました。
明後日と急なのですが…」
「うん、わかった」
観劇でヴィンスが言っていたように、ブルーノ男爵邸の離れで行われることが書いてあった。
「今回は騎士と一緒に私も同行しますので」
キースも一緒と聞いてホッとする。
「明日、改めてギル様から会のメンバーについてお話しがあるそうです」
「はい。了解しました」
真顔で頷く。
「それと、ディーゼル様、今日の事をすぐに報告にくるようにと」
「え!すぐですか!?」
ディーはこのまま瑠璃宮に泊まって、翔平との蜜月を楽しもうとしていたのに、出鼻をくじかれてがっかりする。
「今日一日ショーヘーを独占した罰だ」
ザマーミロと笑うロイを睨み、その足を蹴った。
「デート、ものすごく楽しかったですよ。ずっと手を繋いで歩いて、イチャイチャしました」
フンとロイに向かってドヤ顔を決めると、ロイが明らかにムッとした。
「ショーヘイさんが欲しがった物も買ってあげたんです」
どうだ、羨ましいだろ、とロイに向かってフンと鼻を鳴らす。
「っく…」
ムカッとしたロイがディーに飛びかかった。
ドタンバタンと人の部屋で掴み合いの喧嘩を始めた2人を放置して、キースとアビゲイルの3人で話を始めた。
「キースに言ってもいいよね?」
アビゲイルに言い、キースならと了承をもらう。
「実はな、アビー、シェリーに惚れたんだって」
「え!?」
「今までにも何回か会ったことはあるけど、それまではもうとにかく嫌な女っていう印象しかなくて。
でも、今日デートしたらさ…、無茶苦茶可愛いくて…」
アビーが両手で顔を覆い、耳まで赤くした。
「うん。確かに可愛かった」
その容姿はもちろんだが、仕草がとにかく可愛いと思った。
「でしょぉ?しかも、今まで見てた姿が全部演技だってわかって、もう切ないっていうか…」
「それな…」
「ど、どういうことですか?」
キースが身を乗り出して聞いて来る。
「シェリーは、とにかく目的のために嫌な女を演じてたんだよ。
もうずっと何年も。ずっと1人で」
「ショーヘーちゃんが、1人じゃないよって言ってあげたら、彼女、泣き崩れちゃって。
辛かったのね…」
キースはなんとなく察した。
ああ、この人はまた救ったんだ。
本当に自然体で人を救う…。
自分も翔平の言葉で救われたことを思い出し、脱力し、そのまま笑う。
「アビー、可愛い子がタイプって言ってたもんな。
あれだろ、守ってあげたい可愛さってことだろ」
「……そうよぉ。まさにドンピシャなのよ~」
アビゲイルがテーブルに突っ伏す。
「マジでヤバいわ。
まだ心臓がバクバクしてる。
こんなの初めてよ」
そんなアビゲイルに声に出して笑った。
「アビー」
そして、ニヤニヤしながらアビゲイルに言った。
「今度の狩猟祭、参加するよねぇ?」
俺の言葉にバッとアビゲイルが顔を上げた。
「……え?」
「狩猟祭のサブイベント、楽しみだって言ってたよな?」
「…ぁ…。む!無理よ!」
「なんで~?ちょうどいいじゃん。お付き合いしてくださいって、告れば?」
俺が揶揄うように言うと、アビゲイルが目に見えて狼狽え、そして真っ赤になった。
「無理よ、絶対無理。
み、身分だって…」
「何言ってるんですか。私なんて執事ですよ」
サラッとキースが突っ込む。
「これは、何か作戦を考えないといけないですね」
不意に後ろから声がする。
見ると、髪がグシャグシャに、服も乱れた2人がいつのまにか喧嘩を止めて、俺たちの話を聞いていた。
「そうだな。俺がアビーの代わりに大物を仕留めてだな」
ロイが真剣に言うが、それは即座に全員に却下され、ロイが何でだよ!と叫んだ。
「な!何よ皆して!揶揄わないでよ!」
椅子から立ち上がり、アビゲイルが叫ぶ。
「揶揄ってませんよ。こちらも真剣です」
そんなアビゲイルの肩をポンと叩き、ディーが真剣な表情で言ったが、数秒後に、ニヤァと口元を歪めた。
「!」
そのディーの表情にアビゲイルが顔を真っ赤にした。
「まぁまぁ…。今日はもう遅いからまた今度話そうよ。
まだ時間はあるし」
「そうですね。あ、アビーのコンテスト登録は私がやっておきますね」
キースがしれっと言った。
「もう!何なのよ!もう帰る!」
そう言って、帰ろうとした。
そんな照れているアビゲイルを全員が生暖かい目で見る。
「アビー、今日はありがとう。
お疲れ様でした」
そんなアビゲイルを追いかけ、ドアの前で言った。
「お疲れ様…」
顔を顰めて返事したアビゲイルが、ふと真顔になる。
「あの…。シェリーを救ってくれて、ありがとう。おやすみ」
照れながら言ったアビゲイルに破顔しながら、おやすみと返した。
「ディーゼル様、そろそろ我々も行きましょう」
キースがササッと片付け、ディーに声をかける。
「明日にしましょうよ」
「駄目ですよ。皆さんお待ちです」
キースにピシャリと言われ、残業確定のディーががっくりと項垂れる。
「早よ行け。今からは俺がショーヘーを独占する時間だ」
そんな項垂れたディーに、ロイが止めを刺した。
「はぁ~生き返る~」
湯船に体を投げ出して温めのお湯をバシャバシャと顔にかける。
「そのおっさんくさいの止めろ」
「あ“~」
そう言われても止められない。
「まさかアビーがシェリーになぁ…」
バスタブの中で向かい合ってお湯に浸かり、ロイが俺の片足を持ち上げてふくらはぎをもみもみとマッサージしてくれる。
たくさん歩いたから、そのマッサージが気持ちよくてされるがままになっていた。
「それなんだけどさ」
だらけていた上半身を起こすと、足を下げ少し身を乗り出す。
「多分、シェリーもまんざらじゃないぞ」
ロイが目を見開き身を乗り出す。
「マジか」
「うん。デート中、いい感じになってたし」
「へぇ~」
ロイがニヤニヤした。
「こりゃぁ、狩猟祭が楽しみになってきたな」
「あと、それとさ、俺、ちょっと閃いちゃったんだけど」
ザバザバとロイに近寄り、悪巧みをするように笑った。
だが、ロイは近付いた俺に顔を寄せ、そのまま口付ける。
「朝、約束しただろ?続きはベッドでって」
それを聞いて、出掛ける前にした濃厚なキスを思い出し顔を赤く染めた。
「約束だ」
俺の脇に手を入れると、簡単に腕の力だけで持ち上げられた。
60kgは確実にあって、そんなに軽いわけじゃないのに、そのままバスタブから出されて、キスを繰り返しながら簡単にタオルで拭かれ、まだ濡れているのにそのまま姫抱きに抱えられた。
「ちょ!話がまだ途中!」
「後で」
ロイが裸のまま急いで寝室に俺を連れて行く。
乱暴にドアを開け、行儀悪く足で閉めると、どさっとベッドに降ろされた。
「やっぱ狩りはいいわ。すげー楽しかった」
「俺は今日最後の獲物ってことかよ」
「俺の可愛い珍獣ちゃんだもんな」
笑いながら俺に覆い被さると、唇を重ねる。そのまま舌を絡ませ合い、口内の性感帯を煽られると、すぐに俺も快感の波に飲まれていく。
「ん、んぁ」
キスをしながら乳首をこねられ、ロイの舌が頬や耳を嬲るとゾクゾクと電流が背筋を走った。
「あ、はぁ…」
乳首を舐められ、すでに勃ち上がったペニスをクチクチと音を立てて扱かれると、自然とアナルが収縮を始め、挿入される喜びを待つ。
「ん、ん、んぅ」
「可愛い。ピンク色でコリコリしてて」
ロイがチュウと乳首を含み吸い上げ、舌で何度も舐めた。
「ち、乳首ばっか」
「だって…ここ、美味しい」
「あ、あ」
舌で、指で何度も擦りあげると、ビクビクと小さく体が跳ねた。
「はぁ…」
ちゅぽんと音をたてて口を離すと上半身を起こし、興奮したため息を漏らしながら快感に震える翔平を見下ろした。
「やっば…すげー可愛い…」
独り言のように呟くと、翔平の両足を開き持ち上げて尻を真上に向け、そのままむしゃぶりつくようにアナルに舌を這わせた。
「ひゃ、あ!あ、ん」
ピチャピチャと濡れた音を立てて入口を舐め回し、その中まで濡らすように舌を入れられると、グリグリと舌を動かす。
「あ、あぁ、あ」
舌で、指でアナルを掻き回され、散々濡らされた後、ようやっと離された。
「はぁ…あ…」
アナルにロイのペニスが触れる。
「ん」
ヒクヒクと挿入を待ちわびて収縮を繰り返すアナルに、ロイの鈴口から漏れる蜜を擦り付けられた。
「あ、ん」
ぬちゅぬちゅと卑猥な音が連続して聞こえ、顔を真っ赤に染めながら、挿入してこないロイを薄目を開けて見た。
ロイは自分のペニスを握り、遊ぶようにアナルに擦り付け、興奮した目でその場所を見ていた。
「ロイ…もぅ…」
挿れて欲しい。さっきから疼く腹の中にそう思ったが、恥ずかしすぎて声に出せなかった。
「挿れて欲しい?」
それでもまだ擦りつけるのを止めず、グチュグチュと濡れた音が響いた。
そして、ツプッとその先端が入口を押し広げる。
「んぅ…」
やっと挿れてもらえる、と、これから襲ってくる快感に身構えたが、ほんの少しだけ挿れただけで、すぐに引き抜かれた。
そしてまたクチュクチュと擦りつける。
「ロイ!」
中途半端な行動に、抗議の声を上げたが、ロイはただニヤニヤするだけで挿れようとはしなかった。
「ん…ふぅ…」
またクプッと少しだけ、亀頭部分の三分の一程度が挿入され、すぐに抜かれる。
「あ…、んぅ…ん」
ジクジクと下半身を襲う疼きにもう限界だった。
ロイの意地悪な行動に、息が上がり、苛立ちが募っていく。
「ロイ!」
「まだ挿れない」
懇願するように名を呼んだが、ロイが俺の痴態に興奮して嬲り続けようした。
もう無理!
俺の中で、理性の糸が切れた音がした。
ガバッと起き上がると、驚いたロイの腕を掴み引っ張ると、そのまま仰向けに倒した。
そして、その上に自分から跨る。
はぁはぁと呼吸を荒くして、快感に耐えて涙を浮かべた目でロイを見下ろす。
「ショーヘー…?」
口で息をしながら、おもむろにロイのペニスを掴むと、自分でアナルに当てがい、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「!」
ロイが翔平の行動に驚き、目を見開く。
だが、すぐにニヤッと笑い、翔平の行動を黙って見守った。
アナルにペニスを添えたのはいいが、挿入する角度がわからず、ツルンと滑って挿れられない。
「うぅ…う」
ポロッと涙を溢して、小さく唸りながら何度もチャレンジし、数回目でようやっとペニスを受け入れられた。
「はぁ…」
ゆっくりと腰を下ろしながら、腸壁を広げ奥に入ってくるロイに、恍惚とした表情を浮かべる。
ロイの手が自分の腹に乗った翔平の手を取り指を絡ませて手を繋ぐと、翔平もその手を握り返し、体重をかけて支えにした。
「あぁ、あ~…」
中を埋められていく快感に、翔平が歓喜の声を上げる。
「ショーヘー、自分で動いていいよ。
いいところにあててごらん」
そう言われ、その言葉に従うように腰を揺らした。
前後に揺らし、上下に跳ねるように動き始めた翔平を見つめ、その姿にロイは嬉しそうに笑う。
「あ!」
コリっと前立腺を擦り、翔平が声を上げると、場所を見つけて、そこにぶつけるように腰が動き出す。
「あ!あ“、ん”」
ガクガクと体が痙攣するように震え、快感の涙が溢れた。
「ロ、イ…。おね、が…」
自分で動くには限界がある。
いつもロイに与えてもらう快感には程遠く、物足りなさに泣いた。
「動い…て…」
ロイも限界が近かった。
翔平から与えられる快感に、さっきからずっとイキたいのを堪えていた。
繋いだ手を離すと、翔平の腰に両手を添え、一気に下から突き上げる。
「が!あ“ぁ!」
バチュンバチュンと何度も大きく突き上げ、よく知っている翔平が感じる部分を狙い打つ。
「~!!」
ガクガクと揺さぶられ、跳ねるたびに翔平のペニスが上下にブルンブルン揺れて、蜜を撒き散らす。
「ショーヘー!」
腰を引き下ろすのと突き上げを同時に行い、翔平の奥に射精した。
「あ”ー…」
どくどくと腹の中に放たれたロイの熱い精液を感じて、翔平も射精した。
ビクビクと翔平の体が射精後の余韻に波打ち、そのまま脱力し崩れ落ちる所をロイが繋がったまま起き上がり、抱きしめる。
「意地悪してごめん」
口を塞ぎ、舌を奪い取るように絡ませながら翔平の体を持ち上げ、今度は組み敷いた。
「あ、また」
グググとアナルが広がって行くのを感じた。
「ショーヘー、愛してるよ」
一度途中までペニスを引き抜き、一気に奥まで挿入する。
「あ!」
バチュンバチュンと何度も強く突き上げられ、悲鳴なような嬌声を上げた。
「腰がだるい…」
ベッドにうつ伏せになり、ぐったりと両手足を投げ出す。
「悪い悪い。すげー興奮しちゃってさ」
ロイが優しく背中を撫でながら笑う。
なんで興奮したのか、その理由は俺の理性が吹っ飛んだせいだとわかっている。
意地悪されて中々挿入されず、体が疼いて疼いて理性が飛んだ。
なんか俺、どんどん新しい世界が開けていってるような…。
むうーと口を横に結び、耳まで真っ赤になりながらロイとディーに開発されまくった体に呆れ返る。
これも全部気持ち良いのが悪いんだ、とため息をつきながら、ゴロリと仰向けになった。
そんな俺をロイが覗き込み、顔が近づく。
ちう、と吸い付くようなキスをされて、やっぱりそれが嬉しくて、自分から手を伸ばし、キスをせがんだ。
「でさぁ、閃いたんだけど」
「ん?」
ロイに腕枕されて横になりながら話しかける。
「何が?」
「プロポーズだよ。プロポーズ」
「? もっかいプロポーズして欲しいのか?」
言いながら、俺のおでこにチュッとキスしてきた。
「いや、俺じゃなくて」
そんなキスにクスクス笑う。
「アランだよ。
ユリア様にさ、キースへのプロポーズをやり直せって言われたの聞いてるか?」
「あー、そういやそんなこと言ってたな」
この話が出た時、ロイはいなかった。
だが、ディーから聞いているはずだと思って言った。
「でもあれからアランは何もしてないと思ってさ」
「ああ…だから狩猟祭か」
「そう。キースに内緒でさ、サプライズ的な?」
「…そりゃおもしれーかもな」
ロイがシシシと笑う。
「一緒にアビーの告白タイムも企画して…」
「ディーと、アランと、オスカーやジャニスにも手伝ってもらおう」
「いいな。面白そうだ」
ロイが声に出して笑う。
「キースがいない時、打ち合わせしよう。具体的に何をするか決めないと…」
言いながら欠伸をする。
ロイに抱きしめられて体が温められ、だんだんと睡魔が襲ってきていた。
「そうだな…」
ロイも眠そうな声を出す。
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
ロイがさらに俺を抱きしめ、その心地良さに浸りながら眠りに落ちた。
夢を見ることなくぐっすり眠ることが出来、頭がスッキリした状態で目が覚める。
ロイはまだ眠っていたが、そのままにしてベッドから降りてリヴィングに行った。
すぐに顔を洗って、濡れた顔をタオルで拭きながら正面の鏡を見た。
「……ん?」
思わず顔を触る。
思い違いだろうか。
己の顔を色んな角度から見て、眉間に皺が寄る。
この世界に来て、こんなにじっと自分の顔を見たのは久しぶりで、勘違いかと思いながら伸びた前髪をかきあげてしっかりと顔を見た。
「そんな馬鹿な…」
1人呟く。
若返ってる。
なぜかそう感じた。
40代を目前に控えているが、出来始めていたほうれい線が薄くなっているような気がした。
「まさか…」
この世界の人族の寿命は、元の世界の約2倍。
寿命の話を聞いてから、実は色々な人に年齢を聞いて回った。
それで、0歳から20代までの成長スピードはほぼ同じだとわかった。
だが、93歳のオスカーは50代に見える。100歳越えの第1部隊のおっさん達も50~60代。
ヴィンスもロドニーも38歳で俺とほぼ一緒だったが、20代後半から30代前半に見えた。
総合的に判断して、どうやら20代後半あたりから老化がかなり緩やかになることがわかった。
俺は今39歳。
この世界では童顔の部類らしく若く見られることが多かったが、今、鏡に映る俺の顔は、実際に若返ったように見えて愕然とした。
この世界に来て5ヶ月余り。
その間魔素を体に取り込んでいる。
体がこの世界に順応してきている。
ゾクっと背筋に悪寒が走った。
まるでそれは、体が作り変えられるのと同義だと感じて怖くなった。
その体は本当にお前のか?
突然頭の中に浮かんだ言葉に、バッと背後を振り返った。
そのまま心臓がバクバクと脈打つ。
魔素とは何か。
ずっとこの疑問が頭の中にひっかかっている。
いつか、このひっかかりが解消される時がくるのだろうか。
でも、今は考えるのを止めよう。
それよりもやるべきこと、しなければならないことがたくさんある。
そう考えながら、再び鏡を見て、伸びた前髪をピンで留めた。
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