おっさんが願うもの

猫の手

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王都編 〜観劇〜

122.おっさん、慰める

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 一瞬で部屋の中が大騒ぎになった。
「キース!本当に受けるのか!?アランと結婚するんだな!?」
 サイファーがもう一度言質を取る。
「はい」
 キースが頷きながら返事を返す。
 その途端、サイファーの顔が歪むとポロっと涙を流した。
「なんで兄貴が泣くんだよ」
 アランが笑う。
「いや…、やっと…やっと報われると思って…お前ずっとキース一筋で、このまま結婚出来ないかと思って…」
 グスグスと手で涙を拭いながら泣くサイファーに全員が笑う。
「アラン様、おめでとうございます」
 ギルバートが微笑みながら祝福し、オスカーもアビゲイルも、口々にお祝いの言葉を告げた。
「ディーゼル、ロイ、ショーへー」
 アランが俺たち3人へ向き直ると、突然頭を下げる。
「申し訳ない。お前達に我慢させておきながら…」
「兄さん、それとこれとは話は別ですよ」
 ディーがアランの肩を叩いて頭を上げさせる。
「そうだ。気にする必要なんてない」
 ロイも笑いながら言った。
「おめでとう。アラン、キース」
 2人がアランとキース、それぞれを抱きしめる。
「キース、アランをよろしくお願いします。
 この人はキースがいないとほんとダメですから」
 ディーもうっすら涙を目に浮かべていた。
「アラン、良かったなぁ」
 ロイがバシバシとアランの背中を叩き、その後、この野郎抜け駆けしやがって、とアランにヘッドロックをかけていた。
「ショーヘイ様…」
 キースが俺を切なげな表情で見てくる。なので、ソファから立ち上がると、キースのそばに行き、ギュッとキースを抱きしめた。
「おめでとう、キース。良かったなぁ。俺も嬉しいよ」
 キースの両手を握って笑顔を向けると、キースの目からポロっと涙が落ちた。
「ショーヘイ様…ありがとうございます…」
 そしてキースから抱きしめられた。
「ありがとうございます。本当に…。貴方のおかげです…」
 そのキースの背中をポンポンと優しく叩き宥めながら、俺もじわりと嬉し涙を浮かばせた。
「キースとも話したんだが、婚約はするが、今回の件が終わるまで、結婚はまだ先に延ばすことにした」
「え!?なんで!?」
「状況的に難しいからな。
 ただ、婚約式はやらんとならんので、それだけは先にさせてもらうつもりだ。まぁそれも身内だけで小さくやるが」
 以前、婚約は王の前で宣言し、誓約書にサインすると聞いたのを思い出した。
「そっか…」
 すぐ結婚しちゃえばいいのに、と思うが、2人で決めたのなら何も言うことはないと思った。
「レイブン様には明日報告するんですか?」
「そうだな。悪いが、明日キースを借りるぞ」
「あ、アラン様、出来れば午後にしてください」
 キースが言い、アランがキョトンとする。
「午前中はショーヘイ様の訓練がありますので」
 ここにきてもやっぱりキースはキースなんだと思った。
 こんな時くらい自分のことを優先させればいいのに、と思ったが顔にも口にも出さなかった。
「訓練?」
 アランもロイもディーも不思議そうな顔をする。
「ショーへー、ダイエットも兼ねてキースに護身術を習うんだと」
 グレイが笑いを堪えながら言い、アビゲイルも吹き出しそうになっている。
「お前、太ったのか」
 アランに真顔で聞かれ、ふぐっと口を真横に結んだ。
「そんなに太ってないと思うけど…」
「ですよねぇ…」
 ロイに両手で腰回りを撫でられ、さらにディーにもお尻のあたりを触られて確認された。
「むしろ、このくらいの肉付きの方が好ましいんですが…」
 さらに一瞬で近寄ったギルバートにまで俺の腰周りを撫でられた。
「まぁまぁ、本人が気にしているようだしな」
 グレイが笑う。
 アランとキースの婚約話の幸せモードから、一気に俺のダイエットのお笑いモードへシフトしてしまった。




 すっかり遅くなってしまったが、各自解散していく。
 アランはキースと離れるのが名残り惜しいようで、こそこそと部屋に来いと誘いをかけていたが、そこは専属執事としてきっちり断るのがキースらしいと思った。
 ロイもディーも当然のように居座ろうとするが、やはり俺も断固として断ると、すごすごと肩を落として王宮へ戻って行く。
 グレイとアビゲイルも自室へ戻り、全員が部屋を出たのを見計らったのか、ギルバートが帰ったと見せかけてすぐに戻ってくる。
「すみません、どうしても伝えたいことがありまして」
 警戒心丸出しでキースが俺とギルバートの間に立ち塞がり、絶対に触れられないように壁になってくれる。
「何もしませんよ。一言だけです」
 そんなキースに顔を顰めながらギルバートが言った。
「ショーヘイ君、キースを救ってくれてありがとう」
 そのギルバートの言葉に、俺もキースも驚いた。

 夜会の夜、ギルバートにキースをお願いします、と言われたのを思い出す。
 ギルバートは、キースが、自分の弟子が変に拗らせていることに気付いていた。
 だが、ギルバートが何か言ったとしても、きっとキースは師匠と弟子、という立場でしか話を聞き入れないとわかっていたから、何も言えなかった。
 なんとかしたいが何も出来ない。
 そのもどかしさをギルバートも感じていた。
 あの時の言葉は、その思いを俺に託した、ということなのだと、ギルバートの表情と言葉で理解した。
 
「キース、幸せになりなさい。君にはその権利があるんですよ」
 そう言ってギルバートがキースの頭を撫でた。
 ではおやすみ、と本当に何もせず、一言だけ言って立ち去って行く。
「キース…」
「ふ…ぅ…」
 キースが嗚咽を漏らし、その場に泣き崩れた。
 そんなキースを黙って抱きしめて、頭を、背中を撫でる。

 浮浪児だったキースを拾い、一人前の戦闘執事に育て上げたギルバート。
 自分の手を離れた今でも、誰よりもキースのことを心配し、見守っていた。
 師匠として、親として。
 
 あの人も大概不器用だよな。

 キースを慰めながら、微笑んだ。






 翌日、午前中は柔軟から始まる護身術の訓練。痛みで涙を滲ませつつ、基礎訓練を行なった。
 今日の護衛担当のディーとジャニスも筋トレを始め、暑くなって上着を脱いだその体を見て、とても羨ましいと思った。
 1ヶ月後には俺も、と頑張る。
 
 午後になってキースと一緒に王城へ向かう。
 ジャニスには、今日はもう大丈夫と早々に切り上げてもらうと、急に休みになって嬉しそうに何しようかしら、と官舎へ戻って行った。
 出迎えたアランがニコニコとキースの手を取る。
 レイブンの執務室に入ると、レイブンが満面の笑みでアランとキースを出迎える。
「キース!!やっとか!!」
 大声で言い、わはははと2人に近寄ると両手で2人を抱きしめた。
「それで、結婚式はいつにする!?」
「いや、だから結婚はまだ…」
「各国に連絡しないとな!」
「だから、結婚式はまだ…」
「ああ!この際だからディーゼル達と合同で!」
「だから聞けよ!!まだしねーって言ってんだろうが!!」
 全く話の聞かないレイブンにアランが怒鳴る。
 キースも俺も噛み合わない親子の会話に肩を震わせて笑った。
「なんで?」
「説明したでしょ」
 サイファーがため息混じりに、再び説明する。
「なんじゃ、そうなのか…」
 途端にしゅんとするレイブンが可愛く思える。
「やっとアランとキースが結ばれると思ったのに…」
 今度はいじけたように口を尖らせる。
「婚約だけは済ますから。
 後は例の件が片付いてからだ」
 ふぅとレイブンがため息をつき、アランとキース、そして俺とディーをじっと見た。
「息子達がきちんと伴侶を迎えようとしているのに…、なんでこんなことに…」
 今度はメソメソし始めた。
「仕方ねーだろ」
 開き直ったようにアランが言う。
「それより、明日ショーへーがリンドバーグの3男と観劇に行く。そこで新たな情報が掴めればいいんだが…」
「リンドバーグね…」
 一瞬でレイブンの顔が父親から王になる。
「父親のチェスター卿は、右向け右の男だよ。人に媚びへつらうのが上手くてね。子爵位でありながら環境局副局長でいられるのも、局長であるジェンキンス卿の言いなりになっているからだ」
「そうだな。その長男のエルマーも似たようなもんだ」
「そういう家風なのだろう」
「3男だけが別な思考を持って行動しているとも思えんよ」
 レイブンが腕を組み、何度か話したことのあるヴィンスを思い出しながら言う。
「となると、やはりジェンキンス家が絡むと?」
「単純に考えるとそうなるだろうな。
 まずは下っ端のヴィンスに声掛けさせ、それに乗ってくれば真打登場と」
「ジェンキンスの次男ウォルターだったか。奴も環境局で働いてるな」
「ああ。ジェンキンスの後継であるビバリー嬢は家は継ぐが環境局長の座は継がん。となると、長男のヒューか、次男のウォルター、どちらかになる。
 序列でいけばヒューになるが…」
「ウォルターがショーヘーを手に入れれば…」
「環境局局長どころか、新たな侯爵、もしくは父親以上の公爵への叙爵、もしくは…」
「王」
 レイブン達の会話にゾクッと鳥肌が立った。
「ヴィンス個人が俺を狙っているのか、それとも指示している誰かが存在するのか。
 それを見極める必要がありますね」
「おそらく明日だけでは終わらんだろう。数度の逢瀬を重ねる必要がある」
 レイブンが眉を顰めて俺を見る。
 ディーが心底嫌そうな表情をした。
「ヴィンスの件に限らず、今後いろんな輩からの誘いを受けることになるから、ショーヘーにとっては良からぬ噂がたつやもしれん」
 サイファーが申し訳なさそうに言って、頭痛を和らげるようにこめかみを揉んだ。
「あー…要するに不特定多数と逢瀬を繰り返すことで、ふしだらとか、そういう噂ですか…?」
 サイファーの言いたいことがわかった。
 俺の言葉にサイファーが苦笑する。
「その噂を覆すような何かを考えましょう」
 キースが言った。
「幸い、ショーヘイ様が記憶喪失であることは知られています。
 ですので、記憶を取り戻すために、いろいろな方とお話ししようとしているとか、決して邪な意味ではない、とこちらから噂を流せばいいと思います」
 それでも、変な勘繰りをする輩はいると思いますが、とキースが言った。
「そうだな。その線で行こう」
 アランがキースに微笑みかけ、さりげなく腕を撫でるのも忘れない。
「我が家の嫁はみんな優秀でワシ嬉しい」
 王から父親の顔になったレイブンに破顔した。


 夕食は王宮でレイブン達とすることになった。
 ロイがここにいないのが少し寂しいと思うが、急遽決まったことなので仕方ない。
 ユリアは、キースがアランのプロポーズを受けたと聞いて、頬を膨らませた。
 王族として最後に報告されたことが悔しかったらしい。
「もう、私もその場にいたかったわ」
 プンプンと怒りながら昨日のプロポーズ現場にいなかったことに文句を言う。
「それにしてもアラン兄様。
 そのプロポーズの仕方はどうかと思いますわ」
 そしてユリアの説教が始まった。
 一生に一度の行為なのに、そんなあっさり、日常の延長みたいに簡単に済ませるなんてあり得ない、と怒る。
 そして極め付けには、やり直せ、とまで言い出した。
「ショーへー兄様もそう思うでしょ?」
 俺に振られて、実は俺もユリアに共感する所はあったので、そうだね、と答える。
「そうだなぁ…確かにいつもと同じ挨拶みたいなプロポーズだったな…」
 サイファーも便乗し始め、アランが次第に小さくなって行く。
「んなこと言ったって…」
 ブツブツと口を尖らせながら呟くアランを気の毒に思いつつも笑ってしまう。
 キースもすごく困った表情をしていた。
「ディー兄様とロイ兄様はどんなプロポーズをなさったの?」
 突然話を振られたディーが、グッと食べ物を喉に詰まらせる。
「い、いや、普通に…」
「夜にね、夜行花が咲き乱れる花畑でプロポーズされたんだ」
 綺麗だったよ、とユリアに教えてあげると、ユリアが満面の笑みを浮かべ、ディーは真っ赤になって俺を小突く。
「ほら!ディー兄様もちゃんとシチュエーションを考えてるのに!」
 いや夜行花はたまたま偶然だったんだけどね、と思ったが口にはしない。
 それでも、夜行花の淡い光の中でプロポーズされたのは、感動的だったと思う。
「すまん…」
 アランがさらに縮こまった。
「アラン様…、別に私は…」
 キースが凹むアランを慰めるように背中を撫でる。
「キース兄様!甘やかさないで!
 いいですこと!?絶対にやり直ししてくださいませね!」
「…はい…」
 アランもキースも小さく返事をして、俺もディーも、みんな声に出して笑った。





 瑠璃宮に戻ってから、ずっとディーがため息をついている。
 もうずっとだ。
「もう諦めろ」
 明日、俺がヴィンスと観劇に行くのが本当に辛いらしい。
「心配なんですよ…。狭い個室であいつと2人きりに…」
「ならないって。ジャニスもアビーもいるんだからw」
「それでも心配なんですよー」
 そう言いながら俺に抱きついてくる。
「どうしよう…、あんなことやこんなことされたら…」
 何を妄想しているのか、ブツブツ言いながら青ざめる。
「あのなぁ…w」
「ディーゼル様の気持ちもわかりますよ」
 キースが苦笑しながら言う。
「好きな人が他の男とデートに行くんですから。
 例え別の目的があったとしても、残される方はたまったもんじゃありません」
「まぁ…そりゃあね…」
 もし逆の立場だったら。
 ディーが他の人とデートに行くと考えたら、それこそ嫉妬と不安で狂いそうになる。
「よしよし」
 思わず抱きついてくるディーの頭を撫でた。
「本当に大丈夫だから。
 俺は仕事として行くんだよ。ちゃんと仕事してくるから」
「う~」
 それでもディーは嫌そうに顔を顰めた。
「ショーヘイさん…」
「ん?」
「今日は一緒に寝てもいいですか?」
 キースがいるのにそう聞かれ返答に困る。
 キースはススっと離れると、明日の訓練着の準備をします、とフィッティングルームに消える。
「明日のために体力温存してほしいのでSEXはしません。でも一緒にいたい」
 俺が言い淀んだ理由を言い当てられて苦笑する。
 観劇するだけだが、万が一のことも考えなくてはならない。
 たっぷり睡眠を取って、体力を温存しなくては、と考えていた。
 でも明日の午前中も訓練するし、結局は体力を使うのだが。
「ディー」
 抱きつくディーの顔を上げさせると、自分からキスをする。
「いいよ。一緒に寝よ」
 パアッとディーの表情が明るくなり、ディーからも口付けられる。
 唇を重ねるだけのキスを何度か繰り返した。

 しばらくしてキースがリヴィングに戻り、それでは、と自室に下がって行った。
「もうこれからはアランの所に帰ればいいのに」
「そこがキースなんですよね…」
 執事として、完璧に仕事をこなす姿には感服する。
「じゃあ、俺たちも寝るか」
「はい」
 いそいそと寝室に向かうディーが面白い。
 フィッティングルームでクリーンをかけた後寝夜着に着替えて寝室に向かうと、すでにディーは上着を脱いで布団に潜り込んでいた。
「寝夜着、着ないの?」
 そういえば、ロイも騎士服を脱いだだけで寝夜着に着替えていたわけではなかったなと思い聞いてみた。
「一応貴方の護衛ですからw」
 ああ、そうか。と万が一のために騎士服のままなのか、と納得した。
 2人でベッドに入って向かい合い、話をする。
「ディーはお芝居とか観に行ったことあんの?」
「何度か。あんまり興味がないので、寝ちゃった時もありますけどw」
「へぇ。誰と?」
「当時付き合ってた彼女…と…」
 言って、しまった、という顔になる。
「へぇ…。彼女いたんだ」
「も、もう何年も前の話ですよ」
 焦りながらディーが弁解するように言う。別に過去のことなんだから、今更取り繕わなくてもいいのに、と思うが、やはり少しだけモヤっとしてしまう。
 ロイの時もそうだった。
 過去の、もう終わった彼女や彼氏に嫉妬してしまうほど、ディーが好きなんだと改めて気付かされる。
「いても不思議じゃないだろ。ディー、美人だし」
 そう言うが、ディーは微妙な表情をして、俺をギュッと抱きしめてきた。
「今はショーヘイさんだけですから」
「うん。知ってる」
「ほんとのほんとです。もうショーヘイさんのこと考えるだけで…」
 ディーの胸に顔を押し付けられると、ドッドッドっと鼓動が少し早くなっていることに笑った。
「俺もだよ」
 ディーの手を俺の胸に当て、その早さを伝えた。
「今すごい我慢してます」
「だろうね」
 クスッと笑う。
 一緒のベッドで寝て、SEXしたいと思うのは俺も同じだ。でも、せっかくディーが我慢してくれているのだから、その行動に甘えさえてもらう。
「そういえば、護身術はどうですか?」
「まだ2日目だよ。もう柔軟で悲鳴上げてるw」
「ショーヘイさん、体硬いですもんね」
「…なんで硬いって知ってんの?」
「…なんでって…」
 ディーが俺から視線を逸らして少し赤くなった。
「…SEXでわかりますよ。硬いんだなって…」
 ディーの言葉に俺も真っ赤になった。
「ああ…そういうこと…」
 少し激しめのSEXした後に体が痛くなるのは、体が硬いせいだと初めて気付いた。
 どおりで内腿や背中が痛いはずだと思った。
「柔らかくなれば、もっといろんな体位が出来ますよ」
 ディーがニヤニヤと笑いながら言い、真っ赤になりながらディーを小突いた。
 この話を聞いてしまうと、SEXのために柔軟するように思えて顔を顰めた。
「ショーヘイさん、手足冷たいですよね」
 すりっと素足を擦り付けてディーが言う。
「ああ、そうなんだよね。末端冷え性ってやつ。
 ディーはあったかいな」
 そう言いながら、冷たい手をディーの頬に触れさせた。
 そんな俺の手をディーが握ると、指先にキスをする。
「やめろ、なんかエロいw」
 クスクスと笑いながら言い、冷たい手でディーの首筋や腕に触れさせた。
「冷た。夏は丁度良いです」
「すぐ温くなるけどなw」
 言いながら、ディーの温かい肌に手足を擦りつけて温める。
 モゾモゾと動きながら手足が温まってくると睡魔も襲ってきた。
「ディー…ディーゼル…、キスして…」
 瞼が閉じかけながら、そうお願いした。
 ディーが体を密着させ、頭を引き寄せると、キスしてくれる。
 重ねるだけの甘いキスにうっとりしながら、瞼を閉じた。




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