おっさんが願うもの

猫の手

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王都編 〜歴史〜

おっさん、恋愛本を読む

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 図書室に朝から入り浸る。
 朝食に行く前に図書室に行き、昨日の本をしまうと、アビゲイルが教えてくれたギルバートとシュウの恋愛本を探した。
 だが見つからなかったため、とりあえずご飯を食べに食堂へ行く。
「何か探している本でもあるんですか?」
 隣に座って一緒に朝食を食べていたキースに聞かれた。
 ようやっとキースも一緒にご飯を食べてくれるようになり、おしゃべりしながら食べる食事は、いつも美味しいと感じた。
「ギル様とシュウ様の恋愛本」
 そう言うと、グレイは吹き出しキースもギョッとする。
「お前、そんなのも読むのか」
 グレイが口の周りを拭きながら聞いてくる。
「昨日建国物語を読んでさ、すごく気になっちゃって」
 コックがいるので、ジュノーという言葉は控えた。
「図書室になかった?」
 ありそうなのに、とアビゲイルが首を傾げた。
「多分…王宮にもないと思います…。
 流石にそういう類の本は…」
 キースに苦笑しつつ言われ、そうだよねー、と乾いた笑いを漏らした。
 確かに、恋愛本のような娯楽本は王宮の図書室に置いてあるわけがないと思った。
「読みたいなら、手配しましょうか?」
 キースが真剣に言い、いや、そこまでしなくてもいいよ、と慌てて断った。
「ちょっと気になっただけだから」
 遠慮しながら答えたが、読めないとわかると、無性に読みたくなるから不思議だ。
「そういえば…、夜会でお芝居に誘われたな…」
 昨日の報告会で話に上がった芸術鑑賞の会のメンバー、リンドバーグ子爵家3男ヴィンスから、ルイス初代国王の演目をやっていると言っていたのを思い出した。
「興味あんのか?」
「いや、正直芝居とかは全く興味ない。
 けど、内容にはちょっと惹かれるな」
「建国物語、面白いものね」
 アビゲイルも私もちょっと観たいかも、と相槌を打った。




 朝食後、再び図書室に向かい本を探してみるが、やはり見当たらず少しだけがっかりした。
 流石に恋愛本なんて娯楽要素が強すぎて、ここや王宮の図書室には相応しくないんだろうな、と諦めることにする。
「ショーヘイ様、昨日の議事録を届けに王城へ行きますが、ご一緒されませんか?」
 キースが王宮の図書室に行ってみましょう、と気を遣ってくれた。
「行こうかな。今日もやることないし…」
 今のところ自分の仕事は何もない。
 何かしたいと思うが、何も出来ることはない。
 囮になると言っても、今現在も指示待ちの状況で、この空いた時間を使って、この世界のことをより詳しく勉強するしかすることがなかった。
 わからないことが多すぎて、いつか確認しなければ、と考えているうちに、どんどん疑問だけが積み上がっている状態だった。


 今日の護衛はディーとジャニスだ。
 やってきた2人に今から王宮の図書室に行くと伝えると、ジャニスは問題なかったが、ディーは明らかに顔を顰めた。
「せっかくこっちでまったり出来ると思ったのに…」
 護衛に来たんだか、休みに来たんだか、わからない言い方に呆れてしまった。


 王宮の図書室でキースと分かれ、図書室のミルコ女史に挨拶する。
「何かお探しの本でもございましたか?」
 ニコニコしながら聞かれて、恋愛本、と答えることは出来なかったため、図書室内を徘徊する許可だけを貰った。
「もし、お読みになるのでしたら、こちらをお使いください」
 そう言って、図書室の奥にある席に案内してくれた。
 外の見える縦長の大きな窓の前に、1人掛け用のソファと小さな読書用のテーブルがいくつか置かれたスペースは、とても居心地が良さそうだった。
 お礼を言って、上着を椅子にかけた後、1人でふらふらと本棚の間を歩き始める。
 ディーとジャニスも、同じように本を探し始め、しんと静まり返った図書室の中を目的の本を探して歩き回った。
「やっぱりないか…」
 ギルバートとシュウの恋愛本はなかったが、シュウについて書かれた本を数冊見つけた。
 その中から適当に1冊取り出すと、読書スペースに戻ってページを捲る。

 シュウの偉業を項目別に紹介した本を読み、ますます彼が日本人なのではないかと思った。
 日本では当たり前にあったシステムを出来たばかりの公国に取り入れている。
 帝国では全て皇帝が判断を下す。
 皇帝の下に元老院と呼ばれる皇帝に助言出来る権利を持った古参貴族や有識者の機関があり、立法、司法、行政、全てこの元老院が統括していた。
 だが、シュウは日本と同じようにこの3つを分けた三権分立のシステムを取り入れている。
 さらに三権においてもさらにこまかく分類され、名称や役割は違うが、日本に似たシステムを作っていた。

 もう一つ特筆すべきなのは、軍の存在だ。
 シュウが提案したサンドラーク公国軍は、組織体系はまるで違うが、日本の自衛隊と似ていると感じた。
 自国を守るためだけに存在している軍。
 実際に建国後、帝国から数度攻め込まれているが、公国側から攻めたことは一度もなかった。

 他にもシュウが打ち立てた内容は、間違いなく日本人だと思わせるものだった。




 本を戻して、新たな本を探す。
 シュウについて書かれた本は多いが、どれも似たり寄ったりの内容だった。
 本棚の前に立ち、一冊一冊手に取ってパラパラと内容を確認していくが、シュウの人となりについて書かれている本は見つからなかった。
 だが、その中でも特に古そうな本を見つけ、分厚いを表紙を捲って固まった。
 目次の前の表紙に、シュウの姿絵があった。

「やっぱり…」

 写真のように鮮明なわけではないが、そこに1人の黒髪の青年の姿が描かれていた。
 細部まではわからない。
 かなり古い本らしく、ところどころインクも掠れてしまっているが、その顔はアジア系の、日本人だと思えるような顔立ちをしていた。

 思わず、その絵をそっと手でなぞる。
 なんとも言えない感慨深さが心に溢れて、その場でじっとその絵を見続けた。

「懐かしいですね」
 いきなり耳元で声をかけられ、ビクッと思い切り体が跳ねた。
「ギ、ギル様…」
 俺の真後ろ、ピッタリとくっつく距離にギルバートが立ち、俺の見ていた本を肩越しに覗き込んでいた。
「キースにショーヘイ君も来てると聞いて、会いにきました」
 ニッコリと微笑み、俺の肩に手を回す。
「シュウの本を読んでいたんですか?」
 肩に回した手に力が込められ、そのまま向かう合う体勢に持って行かれながら、ジリジリとさらに距離を詰められた。
「は、はい…」
 本を閉じて密着されないように胸の前で両手で本を抱きしめる。
「昨日、建国物語を読みまして…」
 どんどん近くなるギルバートを見上げ、少しづつ後ろへ下がる。
 ドンと背中が本棚にぶつかって、それ以上下がれなくなると、ギルバートが微笑みながらさらに体を寄せてきた。
「ギル様…、近いです」
「ええ、わざとですから」
 肩にあった手で本棚に押し付けるように抑え込むと、反対側の手で俺の頬を撫ぜた。
「シュウに興味が?」
「は、はい…。俺と同じジュノーで…」
 逃げ場がなくなって焦りつつ、視線を逸らしながら質問に答える。
「本を読むより、私に聞けばいいのに」
 そう言いながら、頬と耳にチュッと軽く口付ける。
 恥ずかしさで一瞬で顔も何もかも真っ赤になった。
「可愛い」
 本棚に押し付けられて耳元で囁かれる。その息が耳にかかり、ゾクゾクとしたくすぐったさが背筋を走った。
「あなたって人は…、少し目を離したらこれだ」
 カシャンと音がしたかと思うと、ギルバートの顔の横にスゥッと漆黒の剣が伸びた。
「キ、キースゥ…」
 助かった、とギルバートに剣を向けたキースにホッとする。
「ショーヘイさん!」
 さらに、ディーが駆けつけて、素早くギルバートの腕の中から俺を救い出すと、ディーの腕の中にしまい込まれた。
「ギル様、いい加減にしてください」
 ディーが呆れたように呟くが、ギルバートはニコニコしたままだった。
 キースが剣を一瞬でしまうと、ギルバートから守るように、俺とディーの前に立った。
「お取り込み中申し訳ありませんが」
 コホンと咳払いと共に、ミルコが現れ、全員を睨みつけた。
「ここを何処だとお思いですか?」
 ミルコの怒りのオーラにギルバートもキースも固まる。
「これは失礼を」
 ここが図書室で、彼女の聖地であると誰しもが理解していた。
 ここでは彼女が絶対的存在。それは王であっても変わらない。
「申し訳ありません」
 キースが謝罪し、すぐに全員で図書室を後にした。
「ギル様のせいよ」
 ジャニスが読書を途中で中断させられ、ぷりぷりと怒る。
「すまなかったね。
 だが、どうしてもショーヘイ君を見ると我慢出来なくてね」
 悪びれもせずギルバートが答え、談話室へ向かった。

 談話室に入ると、キースがお茶を淹れてくれる。
「さて。ショーヘイ君。
 君には、ヴィンスの誘いを受けてもらうことになりそうです」
 お茶を一口飲み、ギルバートが言った。
「ヴィンス…。あ、お芝居!?」
 朝食の時にも話が出た芸術鑑賞の会を思い出す。
「彼からショーヘイ君宛の手紙にも再度観劇のお誘いがあったのでね。
 彼に探りを入れてもらおうかと思っています」
 ギルバートの言葉に、いよいよか、と心臓が跳ねた。
「もちろん、護衛は付きます。
 私とロイは行けませんが、ヴィンスと2人きりになることはありませんから」
 ディーもこの話を知っていたのか、顔を曇らせながら言った。
 行かせたくない、という思いがその表情に現れていた。

 ロイとディーが護衛につけない理由もすぐに理解した。
 もし、ヴィンスが簒奪者側の人間だったら、王族側の2人がいることに警戒して何も話さないだろう。
 今回の観劇に限らず、今後誘いに乗る時には、2人は確実に護衛から除外される。

 ディーが悔しそうに顔を顰めた。

「さらに、シェリー嬢のお茶会にも近いうちに行ってもらうつもりです」
 夜会で、俺の好みを上から目線で聞いてきた可愛い顔を思い出す。
 さらに取り巻き達の女性達の、俺を品定めするような視線を思い出した。
「わかりました」
 ギルバートの目を見てそう答える。
「話す内容や話題については、こちらで用意しますので、近くなったら打ち合わせしましょう」
 そう言われ、頷いた。
「あたし、観劇の方の護衛につきたいわ」
 唐突にジャニスが言う。
「遊びじゃありませんよ」
 ディーがジャニスに苦笑しながら言った。
「わかってるけどぉ、あたしも今回の演目観たいと思ってたのよね」
「ああ、じゃぁ、もう1人はアビーにしてもらおうよ。アビーも観たいって言ってたし」
 そう笑うと、ギルバートも流石に苦笑した。


 昼前に王宮を後にするが、キースはヴィンスとシェリーへの返事の件で、アランとサイファーに指示を仰ぎに行くと残った。
 王宮を出る時に、アビゲイルが官舎から馬を走らせて来て、俺に一冊の本を渡してくれる。
「探してみたら、持ってたわ」
 カバーがついていて、なんの本かはぱっと見わからないが、すぐにその本が読みたいと思ったギルバートとシュウの恋愛本だとわかる。
「アビー、ありがとう」
 ニコリと嬉しそうに微笑む。
「何の本ですか?」
 ギルバートが興味深そうに聞いてきたが、秘密です、と答えた。
 まさか本人に、貴方の恋愛本です、なんて言えるわけがない。
 昼食を食べたら早速読もうと、ギルバートと別れ、ウキウキしながら瑠璃宮に戻る。


 昼食後、自分でお茶やお菓子を用意して、1人掛けソファのサイドテーブルに置き、本を読む体勢を整える。
「何の本なんですか?」
 ディーが本を覗き込んで来る。
 そっとカバーを外して、その表紙をディーとジャニスに見せた。

 ”愛の奇跡 ~英雄とジュノーの愛~“

 そのタイトルに、まんまだな、と笑った。
「あ、あたしも読んだわ。すごく面白いのよ~」
「あ~…」
 ディーもジャニスも知っているのか、2人の対照的な反応に笑う。
「ディーも読んだのか?」
「いえ…、私はそういうのはどうも苦手で…。それに本物のギル様を知ってますから、なんか読む気になれなくて」
 そう言ったディーの気持ちもわかる。
 確かに、本の中の登場人物はよく知っている人だから気まずいと思う。
「昨日、建国物語を読んで、シュウが俺と同じジュノーだったって知ってさ…」
 言葉を切って、2人を見る。
「多分、シュウって、俺と同じ日本人なんだと思うんだよ」
 ついこの間、5年前のハヤトというジュノーが日本人だったと話をしたばかりだ。
「え!?」
 流石にディーも驚く。
「シュウ様もニホンジン?」
 なになに?と昨日いなかったジャニスがキョトンとする。
「多分ね。さっき、シュウの偉業についての本を読んだんだけど、日本のシステムに似てるところがかなりあった」
 ディーが唖然とする。
「さらにな、シュウは、きっと俺が来た年代に近い時代の人だったと思う。最大でも7、80年くらいしか離れてないよ」
 シュウが打ち出した三権分立が施行されたのは、第二次世界大戦後だったはずだ、とうろ覚えの歴史を思い出す。
「時間軸のズレですか…」
「そうなるな」
 ディーと2人で話し、置いて行かれたジャニスが、何なのよぉとむくれる。
「シュウがギル様の伴侶だったってわかって、何となく親近感が…」
「なるほどね…」
 だから、2人がどういう恋愛をしたのかが知りたくなった。
 最後まで言わなくてもディーはわかってくれたらしい。
「あたしにもわかるように教えてよぉ」
 すっかり拗ねてしまったジャニスに笑いながら、ディーに説明してあげてよ、と言った。
 
 ディーがジャニスにニホンジンの話、他諸々の説明を始めたので、俺も早速本を開いて、読み始めた。


 読み始めて1時間後には周囲の音も会話も耳に入らなくなるほどのめり込み、夕食をはさみ、さらに続きを読み耽る。
 2人の心情が細かく書かれた恋愛小説にどっぷりとハマってしまっていた。





 最後の章を読み終わり、はぁとため息を漏らした。
「終わったか」
 ロイに聞かれる。
「うん。面白かった…」
 しばらく余韻に浸りつつ、本をテーブルの上に置き、ソファから立ち上がると大きく背筋を伸ばした。
「あれ?ジャニスは?」
「もう寝ましたよ。声かけたのに、空返事ばかりで…」
 ディーが呆れた口調で言った。
「あー…ごめん…ん?っていうかなんでロイがいるんだ?」
 いつのまにか、ソファにロイが座ってお茶を飲んでいる。
「1時間くらい前にいらっしゃったんですけど…」
 キースが笑いながら言った。
「え…、ごめん…」
 ロイが遊びに来てたなんて全く気付いていなかった。
 ロイを見ると、完全に拗ねている。
 プイッとそっぽを向いて目も合わせない。
「ごめんって」
 ロイに近づいてその肩に触れるが反応がない。完全に拗ねている様子に苦笑した。
「それでは、私も今日はこれで失礼しますね」
 キースがそう言い、ペコリと頭を下げる。
「あ、うん…おやすみ…」
「おやすみなさい」
 ドアまでキースを見送ると、キースが俺だけに聞こえる声でそっと言った。
「アラン様の所へ行ってきます。朝には戻りますから」
 その言葉にニンマリと笑い、キースを送り出した。
 廊下へ身を乗り出して、キースに手を振り、静かにドアを閉めると振り返る。
「う」
 ロイとディーが真顔でじっと俺を見ている視線にたじろぐ。
「ショーヘー」
 ロイが立ち上がると大股で俺に近付く。
「今日はいいよな」
「え?」
 何を?と聞く前に、いきなり姫抱きに抱えられた。
「は!?え!?」
 そのままズンズンと歩き、ディーが先行して寝室のドアを開け、道を作る。
 そのまま連れて行かれ、そっとベッドに下ろされる。
「す、するのか?」
「する」
「します」
 目の前で2人が服を脱いで行き、あっという間に裸になった。
 すでに2人のペニスが大きく張り詰め天を向いていた。
 その様子を見て、ゴクリと喉がなってしまう。
「あ、あの…」
「しないっていうのは無し。
 どんだけ我慢してると思ってんだ」
 ロイに怒ったように言われ、ビクッと体をすくませた。
「ロイ、怒ってどうするんですか」
 俺が体をすくませたことに気づいたディーが宥める。
「…すまん…」
 ロイがハッとしてすぐに謝り、俺をベッドに押し倒す。
「ごめん、ショーヘー。
 でも、お前がそばにいるのに、限られた場所でしかお前に触れられないのが、辛い」
 ロイが苦しそうに言った。
「好きだ。ショーヘー」
 ギュッと抱きしめられて、ロイが辛いと訴えたことに、胸が締め付けられた。
「ロイ…」
 そっとロイの頭を両手で掴むと顔を上げさせる。そして、自分からキスをした。
「そうだよな…今まで一緒にいたのに…ここに来てから、ずっと我慢させて…」
 そう言って再び唇を重ねる。
「ディーも」
 手を伸ばし呼ぶと、ロイが体をずらし、ディーが俺に覆い被さると唇を重ねる。
「愛してます」
「愛してる」
 2人に告げられ、ゾクゾクと背筋に快感が走った。
「来い…。いっぱい愛してくれ…」
 2人に向かって両手を広げ、顔も体も真っ赤になりながら、精一杯恥ずかしさを堪えて言った。
 途端に2人が破顔し、服を脱がされて行く。
 交互にキスを与えられ、舌を絡ませあうと、ジクジクとした欲情が全身を襲った。
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「あ、あぁ、あ」
 乳首を口に含まれて、舌で転がされるとビクビクと体が跳ねる。
 口から漏れる喘ぎを飲み込むようにキスをされ、くぐもった嬌声をあげた。
 2人の愛撫に、痛いほど張り詰めたペニスがビクビクと跳ねるような動きを繰り返すと、ディーの手がそっと添えられて、トロトロと溢れる蜜を塗りつけるように上下に扱かれた。
「あぅ、あ」
 その快感に耐えようと掴む所を探して
両手を動かすと、その手がロイのペニスに触れた。
「…ロイ…」
 はぁと息を吐き、手に触れた熱さを確かめるように、ロイのペニスを握る。
 ディーが微笑むと、俺の体をうつ伏せにさせ、顔のそばにロイのペニスを近づけさせた。
「ぁ…」
 目の前にあるロイの怒張したペニスを見て、その雄の匂いにあてられて舌を出した。
 片手でロイのペニスを握り、その竿から鈴口までに舌を這わせる。
「んぅ」
 ロイがその快感に呻き、俺がロイに快感を与えているという事実に歓喜した。
 大きく口を開け、ロイのペニスを口に含む。太く長いペニスを全て含むことは出来ないが、それでも口に含んだ部分を舌で愛撫した。
「んぁ…ぁ、ショーヘー…」
 ロイの喘ぎが頭上から聞こえ、それだけで嬉しくなる。もっと気持ちよくなって欲しくて、夢中で舌を動かし、唇で扱いた。
 だが、ディーに尻を突き出す格好で、アナルに触れた濡れた感触に、思わず口から離してしまった。
 ペチャと濡れた音が響き、ディーの舌がアナルを舐め、解し、濡らしていく。
「あ、あ!はぁ…」
 ゾクゾクとアナルから伝わる快感に大きく喘いだ。
 唾液で濡らされたアナルに指を入れられ、ヌプヌプと抽送を繰り返されると、ガクガクと腰が無意識に揺れた。
 思わず、ギュッとロイのペニスを握り込んでしまい、ロイがうっと声を上げ、顔を顰めた。
「ごめ…」
 強く握ってしまったことを謝りながら、再び口に含む。
 ディーにアナルを指で犯されながら、ロイのペニスをしゃぶり、その快感に腰が揺れて、己のペニスからパタパタと蜜を溢した。
 指が引き抜かれ、ディーの手が尻に添えられ、親指でアナルを左右に開くと、指とは比べものにならない太く熱いペニスが中に挿入された。
「んぅ!ん!」
 口にロイのペニスを含んだまま、アナルにディーを受け入れる。
 律動が始まると、その快感に耐えられなくなり、口からペニスを離してしまった。
「あ、あぁ、あ」
 奥を抉るように突かれると、その気持ちよさに声が上がり、涙が出る。
 ロイがディーを受け入れている翔平の脇に手を入れて持ち上げ、自分にしがみつくような体勢を取らせ、そのまま抱きしめて唇を奪った。
 ディーに突き上げられながらロイと舌を絡ませ、抱きしめ合う。
「あ、あぅ…、も、イク…」
「いいぜ、イケよ。何度でもイかせてやるから」
 ロイの手が翔平のペニスに伸び、ディーの動きに合わせて扱きつつ、深いキスをすると、ビクビクと大きく痙攣した翔平が射精した。
 その直後締め付けが強くなったアナルにディーも射精する。
「はぁ…ぁ…」
 ディーがその絶頂に喘ぎ、中に精液を注いだ。
「ん…ん…」
 射精の余韻に浸りながらロイとキスを繰り返す。
 それだけで再び快感が背筋を這い上がり、挿入されたディーのペニスを締め付けた。

 仰向けに寝たロイに跨り受け入れる。
 背後からディーが支えてくれるおかげで、ロイの強い突き上げに揺れる体が崩れることなく、嬌声を上げつづけた。
「あ!あ!」
 ディーの指が背後から乳首を撫で、カリカリと先端を擦ると、その快感で腸壁がうねる。
「ディー、支えててくれ」
 ロイが翔平の腰を掴むと、下から強く翔平を突き上げた。
 その突き上げに跳ね上がる体をディーが支え、翔平の口から悲鳴のような喘ぎ声が上がった。
 何度か大きく突き上げ、その中にロイも精液を放つ。
「ひぁ!あ”あ!」
 その熱さにガクガクと全身が震え、翔平も数度目の絶頂を味わった。

 何度も体位を変え、2人に翻弄されながら、快感に咽び泣く。
「も…無理ぃ…」
 ロイを受け入れ、揺すられながら涙を流した。
「ごめん…もうちょっと…」
 翔平の片足を抱え、奥を抉るように突き上げられ、何度目かわからない絶頂を迎える。
「ショーヘイさん…すみません…」
 ロイが避けると、すぐにディーが覆い被さり、抱きしめ合い、深いキスを繰り返しながら突き上げられた。
「ん、んぅ!」
 そしてまた中に熱い精液が注がれる。

 変わるがわる愛され、すでに限界を迎えていた。
 グッタリと体を横たえ、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。
 ロイとディーも呼吸を荒くし、翔平をはさんで、2人が左右に倒れ込み、優しく頭や腕を摩った。
「ごめん、無理させて…」
「すみません…。止まらなくて」
 2人に謝罪される。
「あのなぁ…何度も、言ってる、けど…」

「年の差を考えろ」×3

 3人同時に同じセリフを言った。
 そんな2人の頭を叩く。
「もっと労われ」
「はい」
 2人が返事をして、優しいキスを頬に落とした。
 そして、2人が同時に何度もクリーン魔法をかけ、体力の限界を迎えている俺をロイが抱き抱え移動させると寝夜着を着せ、ディーは汚してしまったシーツを剥取り、新品と交換した。
 こういう所は2人ともすごくマメだと苦笑する。
 再びベッドに降ろされると、下着だけをつけた2人が俺の隣に滑り込んできて、両脇から抱きしめられた。
「泊まってくのか?」
「ああ」
「今日はここで」
 そっか、と答えてすり寄ってくる2人の額にキスをした。
「好きだよ。でも、もうちょっと加減してください」
 そう切実に言った。
 その俺の言葉に2人が声を押し殺して笑った。





 翌朝、目を覚ました時には2人はもういなかった。
 なんだ、どうせなら起きる時も一緒にいたかったな、と少しむくれてしまった。
 体を普通に起こしたが、ビキッと背中や脇腹、足や尻の筋肉が悲鳴をあげて悶絶した。

 い、痛い…。

 色んな体位で交わったせいで、あちこちが筋肉痛になっていた。
 すかさずヒールをかけて、筋肉の炎症を治す。

 SEXするたびにヒールをかけるってどんだけだよ。

 思わず自分で自分に突っ込んだ。
 己に呆れながら欠伸をしつつ寝室を出ると、ちょうどキースが入ってくる所だった。
「おはよう」
「おはようございます…」
 キースが少しだけいつもと違うことにすぐに気付いた。
 すすすとキースに近付く。
「もしかして…腰とか背中痛い?」
 そっと聞くと、カァーッとキースがみるみるうちに真っ赤になった。
 その反応に、鍛えているはずのキースでも痛みが出るなんてどんだけだ、と性豪兄弟にため息をついた。
「ヒール」
 すぐにキースにもヒールをかける。
 一瞬で痛みが消えたキースが恥ずかしそうに俺を見る。
「すみません…」
「いや、お前の気持ちはよ~くわかる」
 ポンと肩を叩きはぁとため息をつくと、キースも察したらしい。
「キースも大変だな…」
「ショーヘイさんも…」
 お互いに抱き潰される寸前だったことがその表情から読み取れた。
 そして目が合うと、どちらかともなく自虐的に互いに笑った。


 

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風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

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