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王都編 〜聖女争奪戦〜
おっさん、ダンス講習を受ける
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小ホールでアランとキースの切ないダンスを見た後、はっきりと俺は無理だと伝えた。
だが、ディーが苦笑しつつ、これは義務でもあるので、と言われて大きくため息をつく。
「とりあえず、簡単なステップを教えてもらえ」
アランにそう言われ、義務だと言われ断りにくくなり、渋々ながらキースに教えてもらう。
「1、…2、3」
キースの足元を見ながら同じように足を動かす。
一歩づつ、ゆっくりと真似することは出来るが、連続で動かすと途端にわからなくなった。
体を正面に向けたまま、右足を左斜め前に一歩。左足を真横に一歩。右足を左足の後ろを通って横に一歩。
3ステップは基本中の基本だと言われて、何度も練習を繰り返す。ただし、本当にゆっくりゆっくりと。
だが、キースの横で同じような動きをしているのに、全く違う動きになっているような気がする。
「ダメだ、ショーヘイ、悪い」
壁際に立っていたアランが言った直後、大きな笑い声を上げた。
「おま、お前!なんだそのへっぴり腰!」
ギャハハハハと腹を抱えて笑うアランに、キースがキッと睨みつける。
「笑っちゃ悪いですよ…、初めてなんですし…」
アランの隣で見ていたディーが兄を嗜めるが、その顔は今にも笑い出しそうで、声も震えていた。
「気にしないで、続けましょう」
キースがそんな2人に呆れながら、笑われて顔を真っ赤にしている俺を見て優しく微笑み、1、2、3と声をかけながら、足を動かす。
「そうそう、その調子」
ゆっくりだが、3歩だけの移動ができるようになったので、キースがペースを上げた。
途端に、出来ていた3ステップが出来なくなり足がもつれ、ビタン!と漫画のように前方に倒れるように派手に転んだ。
「だ、大丈夫ですか!」
キースが慌てて助け起こそうとする。
転んだ瞬間、ディーとアランが大爆笑し、転んだ痛みと出来ない悔しさで涙が出そうだった。
「無理~出来ない~」
キースの手を借りて起き上がる。
「最初はこんなものですよ」
キースが慰めてくれるが、はっきりと俺はダンスのセンスがないと自覚した。
その時、小ホールのドアがノックされ、ガチャリと開けられた。
「あ、居た」
入ってきた文官のローブを着た背の低い若い男がアランを見つける。
「アラン様!!何油売ってんですか!!決済が溜まってるんですよ!!」
笑っていたアランの顔が、引き攣る。
キースの眉もピクリと動いた。
「アラン様、サボってないとおっしゃいましたよね」
「さ、サボってないぞ」
「どの口が言うんですか!!
皆待ってるんですよ!直ぐに戻ってください!!」
文官がものすごい勢いで怒鳴った。
「ディーゼル殿下、聖女様、キース様、失礼いたしました。
連れて帰ってもよろしいですか?」
若い文官が鼻息荒くアランを睨みつけ、俺たちにペコリと頭を下げる。
「早く連れ帰ってください。邪魔で仕方ないので」
キースが冷たい声を出す。
「邪魔ってお前…」
「邪魔です」
アランがキースに縋るような目を向けるが、キースはビシッと言い放ち、アランはえーと項垂れる。
「兄さん、サボりは良くないですよ。サボりは」
ディーにも言われ、アランはますます項垂れた。
「ほら、行きますよ!今日の分の決済が終わるまで、執務室から出しませんからね!」
若い文官が、アランの袖を引っ張りながら小ホールを出て行く。
が、文官だけがすぐに戻ってきた。
パタパタと小走りに走って俺の前に来ると、再びお辞儀する。
「私、コリンと申します。軍務内政官でアラン様の第2秘書をしております。
どうぞお見知りおきを。
聖女様、昨日は大変お疲れ様でございました。私、感動いたしました」
俺の手を両手で握り、ものすごい早口で挨拶され、思わず笑ってしまった。
彼もまたハーフリングで、背の高さは俺の胸くらいしかなかった。
「ありがとうございます。こちらこそ、どうぞよろしく」
握られた手を握り返しつつニコッと微笑むと、コリンが嬉しそうに笑い、それでは、と立ち去って行った。
「全くあの人は…」
キースが顔を顰めて呟く。
きっとアランは今までに何度もこうやってサボっているのだろう。
「やっぱりキースがそばにいないとダメなんじゃないですか?」
ディーが近寄って、そうキースに言うが、思い切り顔を顰められた。
「続きは明日にしましょう」
そのままお開きとなり、自室へ戻った。
ディーと一緒に部屋で夕食を済ませ、部屋で寛いでいると、キースが午後に届いた贈答品の目録と手紙の返事を持って戻ってくる。
その紙束の多さにうへぇと顔に出した。
「昨日のお披露目のおかげで、さらに増えました」
キースがニコリと微笑む。
「国民からのファンレターもございますよ」
そう言いながら別の封書を円卓に置いた。
「ファンレターって…」
その言い方に苦笑しつつ、一番上にあった手紙を読んでみる。
そこには、怪我を治してくれてありがとう、と子供の字で書かれており、思わず微笑み、ほっこりと気持ちが和む。
「明日は、朝からダンスの練習を致します。
その間、瑠璃宮への引越しを済ませますので、練習後は瑠璃宮へお戻りになることになります」
今夜でこの部屋ともお別れか、と1週間滞在した部屋を見渡した。
別に個人的な荷物はないが…と思ったが、大事な物を思い出す。
慌てて立ち上がると、キャビネットにしまっていたピアスの入った小さな箱を取り出した。
「これ、これは大切なものだから」
キースに箱を差し出した。
「絶対に失くさないでください」
ディーも真剣に言った。
「かしこまりました。大切にお預かり致します」
キースが丁寧に受け取った。
「他に何か御用はございますか?」
「いや特に…」
「それでは、今日はこれにて失礼致します」
「あ、はい…お疲れ様でした」
そう返事をしつつ、もう少し話したかったな、と目で訴える。
「申し訳ありません。今日はこれから別件がございまして…」
俺の視線を察して、キースが微笑みながら謝ってきた。
「そうなんだ。それなら仕方ないか…」
明らかにがっかりした俺にキースがますます微笑む。
「私も使用人官舎から瑠璃宮へ引っ越すので、荷物をまとめないといけないのです」
それを聞いて、キースも瑠璃宮に住むとわかり、つい表情が明るくなる。
「そうなんだ。それなら仕方ないか」
先ほどと同じセリフだが、口調と声の高さが全く異なり、ディーもキースも声に出して笑った。
「それでは、おやすみなさいませ」
キースが箱を持ち、丁寧にお辞儀する。
「おやすみなさい」
小さく手を振って、キースを送り出す。
「引越しかぁ…」
テーブルに肘をついて新しい住まいを妄想する。
瑠璃宮の外観は見た。
王宮の隣、木々を間に挟んで、小さな庭園と生垣に囲まれている、こじんまりとした館だった。
小さいと言っても、俺にとっては豪邸なのだが。
3階建の洋館は、白をベースにしているが、その屋根や壁の一部、装飾が瑠璃色で統一されている綺麗な館だった。
どんな部屋かなぁ、と考えていると、ふとディーの手が肩に触れる。
「ショーヘイさん、一緒にお風呂入りましょう」
「へ?」
そういや、もう夜9時を回っているのに、ディーが部屋へ戻ろうとしない。
「あー…うー…」
急に2人きりだという現実を思い出し、赤面する。
「今日の任務は終わりです。これからは恋人の時間ですよ」
クサいセリフを恥ずかしげもなく言うディーにますます赤面した。
「入ろっか…」
真っ赤になりながら、呟くように言った。
大きめのバスタブは、2人で入っても余裕がある。
ディーの胸に背中を預ける形で湯船に浸かる。
「はぁ…気持ちぃ」
「そうですね…」
ぬるま湯に浸かって、はぁと2人でため息をつく。
「ロイと2人でお風呂に入ったことあります?」
「うん…、ドルキア砦で」
「もしかして、お風呂でSEXしました?」
ずばり聞かれて、隠しても仕方ないしと、赤面しながら頷く。
「したけど…のぼせた。お風呂ではもうしない」
口を尖らせながら、ブツブツ呟くように言うと、ディーが後ろでクスクスと笑う。
「ベッドならいいでしょ?」
背後から耳へ唇を寄せ、そっと囁くように言う。
耳にディーの低い濡れた声と、吐息がかかり、ピクンと体が反応する。
「ロイ…」
「え?」
「ロイが知ったら抜け駆けしたって怒るかな」
「そうかもしれませんね。でも、ロイだって今までずっと貴方を独り占めにしてきたんですし。
たまには私も貴方を独占したい…」
ディーの舌が俺の耳を舐め、甘噛みする。そして、手が胸を撫で、乳首に触れた。
「ぁ…」
乳首を優しく撫で、カリカリと先端を引っ掻き、指で摘み上げると、翔平の体がピクピクと反応し、嬌声が上がった。
「ショーヘイさん、乳首弱いですよね」
耳元で囁きながら、両手で何度も乳首を責める。
優しく触っていたかと思うと、強めに摘みあげる。
「んう!」
肩越しに胸を見下ろすと、濃いピンク色に染まり、ぷっくりと膨れて主張し始める。
「ベッドに行きましょうか…」
「ん」
すでにディーのペニスも硬く張り詰め、俺の腰にさっきからあたっていた。
タオルで体を拭き、裸のまま移動する。
すぐに肩を押されてベッドに押し倒されそうになったが、それを止める。
「あの…、俺もしてやるから…」
そう言って、逆にディーをベッドに押し倒す。
媚薬に侵された時のSEXの記憶はほぼない。
だが、その中でも一部の記憶はうっすらとだが残っている。
あの時俺は、2人のペニスを口に含んだ。
ディーが苦笑しつつ、無理しなくてもいいと言ったが、ディーのペニスを視界に捕えると、浅ましくゴクリと唾を飲み込んでしまった。
ディーのペニスに手を添え、そのまま顔を近づける。
「あ…」
ディーが声をあげ、手の中でビクビクとペニスが反応する。
ディーの雄の匂いがいつもよりも濃く臭覚を刺激し、ますます俺を興奮させる。
そのまま鈴口に唇を寄せると、チュゥッと口付ける。
「ん」
ディーの声が上から聞こえて、悦んでいると嬉しくなった。
口を開けてペニスを含む。
自分がされるのを思い出しながら、舌で舐めあげ、亀頭部分を舌先で擦り上げると、ディーの息遣いがはっきりと聞こえた。
頭を上下に揺らし、ディーを追い上げると、ふと頭にディーの手が触れた。
「ショーヘイさん…、私にも…」
何をするのかわからず、口からペニスを離してディーを見上げる。
体を起こしたディーが体勢を変えて、俺の腰を抱えると、ディーの顔を跨ぐように持って行かれた。
うわ!
お互いにペニスを顔に近付ける69の体勢になって、初めての体勢に恥ずかしくて真っ赤になる。
「いいですよ、続けて…」
後ろで言われ、羞恥に耐えながら、ディーのペニスを手でゆるゆると扱きながら、先端を口に含んで舌先で鈴口を舐める。
「あぁ…気持ちいいです…」
うっとりとディーが感想を漏らし、そして俺のペニスを口に含んだ。
「んぅ!」
熱い口内に包まれて、ペニスを口に含んだまま声を上げた。
「ん、ん」
ジュブジュブとお互いに濡れた音を立ててペニスをしゃぶる。
だが、ディーの手がお尻を撫で、その中心へ指が這わされると、アナルを撫でられた。
そして、ゆっくりと指が挿入される。
「んぁ、あ、あぁ」
指を2本挿入されて、中を解すように動く指に、ゾクゾクと快感が背筋を走った。
中で指を広げられ、腸壁を擦られると、無意識に腰が揺れ、ディーの口からペニスがプルンと飛び出した。
指が引き抜かれると、その入り口が挿入を待つようにひくついた。
ディーが素早く起き上がると、俺の背後に周り、口淫によって濡れたペニスをアナルへあてがうと挿入する。
「あー…!」
指なんか比べ物にならない圧迫感を感じるが、それ以上に快感が上回る。
腸壁をこじ開け、奥へ入ってくるディーに、ブルブルと体が歓喜に震えた。
ディーが腰を使い始めると、もう与えられる快感に呑まれて何も考えられなくなる。
ただただ気持ちいい。
四つ這いの姿勢で腰を掴まれ、深い抽送を繰り返されると、動きに合わせて嬌声をあげた。
どんどんと深くなる挿入に、膝に力が入らなくなり、次第に体は下がり、うつ伏せの状態になると、ディーが上から叩きつけるように奥を突き上げた。
「あ!あぁ!お、奥…ん!」
バチュンバチュンと肉がぶつかり合う音が何度か響いた後、翔平の最奥の入口がノックされ、侵入を許した。
「うあ!あ“あ!」
グポッグポッと音が中で響くような感覚と、最奥を突き上げられる強烈な快感に悲鳴を上げた。
「はぁ、あ、ショーヘイさん、奥に、出しますよ」
ディーがその締め付けに声をあげ、その瞬間ビューッと中に放つ。
腹に注がれた熱さに、翔平の体もビクビクと痙攣を起こす。
奥に挿入したまま、ディーが倒れ込み、荒い息を吐く。
その息が背中にかかるだけでも、快感が背筋を走った。
呼吸が落ち着くと、翔平の背中を舐め、キスを落とす。
「もう一回…、してもいいですよね?」
「ん…」
背中を、首すじを舐め、キスをする。
一度引き抜き翔平を仰向けにすると、足を腰ごと抱えた。
ちょっと前に達したはずなのに、ディーのペニスは熱も硬さも取り戻していた。
ゆっくり挿入され、浅い所で抽送を繰り返す。
「あ、あ、あぁ」
翔平が断続的に喘ぎ、ディーに向かって手を伸ばすと、上半身を倒したディーが翔平に覆い被さる。
そのまま互いに舌を突き出し、絡ませ合い、深い口づけをかわす。
「ん、んぅ、ん」
口内を貪り合いながら、ディーの腰の動きが徐々に早くなると、翔平の体が震え、ディーを抱きしめる腕に力が入った。
「ディー…、も、イきそ…」
アナルから湧き上がる快感に、ペニスがトロトロと蜜をこぼし、脈打つ。
「いいですよ…、イッてください」
ギュッと翔平を抱きしめると、口づけながら大きくを中を突き上げる。
「んぅ!ん!んうー!!」
口を塞がれて、くぐもった声を上げると、射精した。
その瞬間中を締め付け、腸壁が大きくうねると、ディーも我慢せず中に精液を解き放った。
お互いに絶頂の余韻に浸りながら、何度もキスを繰り返す。
「はぁ…」
うっとりと息を吐き出し、見つめ合い、どちらかともなく笑った。
繋いだ体を離し、軽いキスをしながらお互いにクリーンを掛け合う。
着替えを取りにバスルームへ戻り、寝夜着を着るとベッドに横になった。
ディーが再び服を着て、ベッドに座り、俺の頭を撫でる。そして不意にクスクスと笑った。
「なんだよ」
「いえ、初めて貴方を独占出来たな、と」
ディーとだけSEXしたのは、これが初めてで、顔を赤くして照れた。
「3人でも、それはそれでいいんですけど、たまにはこうやって独占したいです」
言いつつ、服のまま俺の隣に横になって、抱きしめてきた。
「きっとロイが知ったら怒るでしょうね。ずるい、俺もって」
地団駄を踏むロイが想像出来て、クスクスと2人で笑った。
「眠ってください。貴方が眠るまでここにいますから」
ディーに優しく頭を撫でられ、嬉しくて暖かくて、その手を握る。
「ディー…、好きだよ…」
「ええ。私も好きです。愛していますよ」
チュッと額にキスを落とされ、目を閉じる。
それから数分も経たない内に翔平は眠った。
翔平に握られていた手を名残惜しそうに離すと、そっとベッドから立ち上がり、小さい声でおやすみなさいと言うと、静かに部屋を出た。
年齢を重ねると、早起きになるのは何故だろうか。
若い時は一日中寝ていられたのに、最近は必ず朝に目が覚める。
元の世界での習慣というのもあるのだろうが、6時に目覚ましをかけていても、5時55分くらいに必ず目が覚めてしまっていた。
体を起こして、時計を見るとちょうど朝6時。
立ち上がると、自分で部屋のカーテンと窓を開けて空気の入れ替えをしつつ大きく伸びをした。
そこへちょうどキースがノックして入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう」
にこやかに挨拶する。
「お早いですね」
「もう習慣なんだろうな。目が覚めちまう」
「元の世界でもこのくらいに起きられてたんですか?」
キースに促され、バスルームで顔を洗いつつ、話を続ける。
「毎朝6時起きて、顔洗って、飯食って、着替えて、7時15分に家を出て、8時10分くらいに会社に着く。
十数年続けてれば体が覚えちゃうんだろうな」
着替えながら話す。
「カイシャ…とは、勤務先のことですか?」
話しながらも、お互いに動きを止めない。
俺は自分でお茶を淹れつつ、キースは朝食の準備を初めていた。
「そう。勤務先のことだよ。こっちではなんていうのかな、商会? 組合? いや違うな…」
当て嵌まる言葉を考えるが思いつかない。
「どうぞ」
円卓に朝食を並べ終わり、ニコリと微笑む。だがキースはじっと立ったままだ。
「えっと、キースの朝ごはんは?」
「私はもう済ませました」
「ああ…そうなんだ…」
「どうかなさいましたか?」
「1人で食べるの、寂しいなと思って」
今までずっと1人で用意して食べていたのに、ここに来てから必ず誰かと一緒に食事していることに慣れ、寂しいと感じてしまった。
「食堂に行けば、誰かがいるかもしれませんが…。朝はお部屋でとる方が多いですし…」
キースも考える。
「じゃぁ、明日は一緒に…」
「それは出来ません。そもそも食事内容が違うんです」
キースが苦笑する。
「そうなのか…」
思い切り残念そうな顔をする。
その翔平の表情を見て、キースが申し訳なさそうに微笑む。
「慣れてください…」
「そうだな…」
答えつつ、もそもそと1人で食べ始めた。
いつも思うが、1人で食べるにしてはすごく量が多い。品数もすごく多くて、絶対に1人で全て食べることは出来ず、いつも残していた。
おそらく、これが貴族の当たり前なのだろう。
足りない、食べたいものがない、と言われる方が使用人にとっては大変なことなのだろう。
だが、数ヶ月前まで食べ残すのはもったないという生活をしてきた俺にとっては、この食事に多少戸惑いを抱いていた。
出来れば、食べられる分だけにしてもらえないだろうか、と、口を動かしながら考えていた。
朝食後、食後休憩をはさんで早速王城の小ホールに移動する。
今日の護衛担当はアビゲイルだった。
「ダンスの練習ですって?」
「うん…昨日少しやってみたけど、俺、センスないわ…」
移動しながらアビゲイルと話す。
「そうねぇ…センスは大事よねぇ」
「大丈夫です。基本の動きはセンスは関係ありませんよ」
「そうは言うけどさぁ」
廊下を歩きながら、昨日足がもつれて転んだのを思い出し、乾いた笑いを漏らした。
小ホールについて、早速練習を始める。
昨日と同じ3ステップから。
最初はゆっくり、徐々に早く。
だが、早くなるとすぐに足がもつれて転びそうになる。
頭では理解しているのに、足がついてこない。
「も~無理だって~」
休憩中、頭を抱え込む。1時間ほど練習しても、全く上達しなかった。
ある程度運動は出来る方だと思っていたが、ダンスとなるとまさかここまで脳と体の動きが一致しないと思わなかった。
リズム感が無さすぎて、かなり凹む。
その小ホールのドアがノックされ、キースが応対する。
「苦戦していると聞きましたよ」
壁際で三角座りをして凹んでいると、声をかけられる。
顔をあげると、そこにギルバートがニッコリと微笑んでいた。
「ギル様…」
「キース、代わりましょう」
そう言い、俺に手を差し出した。
「…よろしくお願いします」
その右手に左手を重ねると、力強く引かれ立たされる。そのまま腰を引き寄せられて抱きしめられた。
「あらあら」
アビゲイルがニヤニヤし、ギルバートは彼女に向かってウインクする。
「今日も綺麗ですね、アビー」
俺を抱きしめながら、アビゲイルを見つめ、褒める。
それを聞いて、本当にこの人は…、と半分呆れた。だが、彼は本心で言っていると思うからタチが悪いとも思った。
「では、始めますよ」
ギルバートがグッと俺の腰を抱く腕に力を込めると、下半身を密着させた。
あまりにも密着度が高くて、思わずアワワと赤面し、彼の胸に手を置いた。
「いいですか? 私の足を踏んでも構いませんから、出来る限りついてきなさい」
キースが魔鉱石に魔力を注ぐと、音楽が流れた。
ゆっくりなペースから始めるのではなく、いきなり音楽に合わせて踊らされる。というかギルバートに振り回された。
「右前、左、右後ろ」
ギルバートに抱えられ、持ち上げられた状態で、足に体重を半分もかけていない。
小ホールの中を縦横無尽に踊りながら、ギルバートが足の動きをずっと耳元で囁くように呟く。
「右前、左、右後ろ」
ギルバートの声に合わせて、自分も呟きながら懸命に足を動かす。彼の腕に上半身を抱き支えられているので、足がもつれてもバランスを崩すことなく、足の動きを繰り返す。
何度もギルバートの足を踏んでしまうが、ギルバートは微笑むだけで何も言わずに俺を振り回す。
「右前、左、右後ろ」
そのうち、足の動きが追いつくようになってきた。
「いいですよ。その調子です」
30分、ずーっと同じ動きを繰り返し、最後の方はギルバートの足を踏むことなく、彼の足の動きに合わせて3ステップを踏めるようになっていた。
だが、振り回されるだけでなく、自分の足に体重を乗せて踊り出すと、次第に息があがり、終わる頃にはハァハァと息を切らせていた。
「休憩しましょう」
動きが止まり、ギルバートがそういうと、頬にキスをしてくる。
「すごいわねぇ。たった30分で動けるようになったじゃない」
アビゲイルが感心したように言った。
「ショーヘイ君は、まずは頭で考える癖があるようなのでね。実践で覚えた方がいいと思ったんですよ」
なるほど、とキースとアビゲイルが頷く。
ゼーゼーと俺が息を切らせているのに、ギルバートは俺を抱えて踊っていたにも関わらず、息も乱れていなければ汗一つかいていなかった。
化け物だ。
平然としているギルバートを見て、心の中で呟く。
しばらく休憩し、呼吸が元に戻ると、再びギルバートに抱きしめられるように踊った。
「今度は腕をここに、そうそう」
休んだせいで、最初は足の動きもぎこちなかったが、すぐに思い出してステップを踏む。
今度は足の動きに加えて手の位置も教えられた。ギルバートの肩に右手を置き、左手を上げてギルバートに握られる。
「上手ですよ。もう少し胸を張って。背中を後ろに反らせるように」
踊りながら、ギルバートに指導され、どんどん様になっていく。
そしてまた30分踊り続け、息があがるが、やっぱりギルバートは平然としていた。
「午前中はこのくらいでいいでしょう」
ギルバートが微笑み、俺の隙をついてチュッと唇を奪われた。
「ギルバート様…」
キースが眉を寄せ、ギルバートを咎めるように呟く。
「私にもご褒美がないとね」
フフフと笑って俺を見ると、ペロリと自分の唇を舐める。
一旦解散し、昼食後に再び指導を受けた。
30分おきに休憩を入れ、なんとか形になった所で、キースと踊ってみるが、ギルバートの時と同じように踊ることが出来るようになっていた。
「お、踊れるようになってるな」
ダンス講習が終わる頃、アランが顔を出し、キースとまともに踊っている姿を見て感心する。
「さすがギル様」
「付け焼き刃なので、踊る相手は上級者に限りますが、明後日の夜会には間に合うでしょう」
ギルが、踊り終わって戻ってきた翔平に言う。
「昨日のへっぽこに比べたらかなりの進歩だ」
アランが笑い、キースに睨まれる。
「アラン様、また…」
「休憩中だ。サボってねーよ」
すかさずドヤ顔で言い、キースが信用出来ないと言いたげに目を細めた。
練習を終えて、王宮の食堂でみんなで食事をした。
大勢で食事をするのが嬉しくて、かつたくさん動いてお腹が空いていたため、いつもよりたくさん食べてしまった。
夕食後、新たに居住する瑠璃宮へ向かった。
新しい部屋はどんな所だろうと、ワクワクするが、1日中ダンスの練習を続けて体が重く、すでに足がパンパンになっていた。
部屋についたら、すぐにヒールを使おうと思う。
疲労は取れないが、絶対に筋肉痛になる。明日もまだ練習は続くので、筋肉痛にならないようにしないと、と思った。
だが、ディーが苦笑しつつ、これは義務でもあるので、と言われて大きくため息をつく。
「とりあえず、簡単なステップを教えてもらえ」
アランにそう言われ、義務だと言われ断りにくくなり、渋々ながらキースに教えてもらう。
「1、…2、3」
キースの足元を見ながら同じように足を動かす。
一歩づつ、ゆっくりと真似することは出来るが、連続で動かすと途端にわからなくなった。
体を正面に向けたまま、右足を左斜め前に一歩。左足を真横に一歩。右足を左足の後ろを通って横に一歩。
3ステップは基本中の基本だと言われて、何度も練習を繰り返す。ただし、本当にゆっくりゆっくりと。
だが、キースの横で同じような動きをしているのに、全く違う動きになっているような気がする。
「ダメだ、ショーヘイ、悪い」
壁際に立っていたアランが言った直後、大きな笑い声を上げた。
「おま、お前!なんだそのへっぴり腰!」
ギャハハハハと腹を抱えて笑うアランに、キースがキッと睨みつける。
「笑っちゃ悪いですよ…、初めてなんですし…」
アランの隣で見ていたディーが兄を嗜めるが、その顔は今にも笑い出しそうで、声も震えていた。
「気にしないで、続けましょう」
キースがそんな2人に呆れながら、笑われて顔を真っ赤にしている俺を見て優しく微笑み、1、2、3と声をかけながら、足を動かす。
「そうそう、その調子」
ゆっくりだが、3歩だけの移動ができるようになったので、キースがペースを上げた。
途端に、出来ていた3ステップが出来なくなり足がもつれ、ビタン!と漫画のように前方に倒れるように派手に転んだ。
「だ、大丈夫ですか!」
キースが慌てて助け起こそうとする。
転んだ瞬間、ディーとアランが大爆笑し、転んだ痛みと出来ない悔しさで涙が出そうだった。
「無理~出来ない~」
キースの手を借りて起き上がる。
「最初はこんなものですよ」
キースが慰めてくれるが、はっきりと俺はダンスのセンスがないと自覚した。
その時、小ホールのドアがノックされ、ガチャリと開けられた。
「あ、居た」
入ってきた文官のローブを着た背の低い若い男がアランを見つける。
「アラン様!!何油売ってんですか!!決済が溜まってるんですよ!!」
笑っていたアランの顔が、引き攣る。
キースの眉もピクリと動いた。
「アラン様、サボってないとおっしゃいましたよね」
「さ、サボってないぞ」
「どの口が言うんですか!!
皆待ってるんですよ!直ぐに戻ってください!!」
文官がものすごい勢いで怒鳴った。
「ディーゼル殿下、聖女様、キース様、失礼いたしました。
連れて帰ってもよろしいですか?」
若い文官が鼻息荒くアランを睨みつけ、俺たちにペコリと頭を下げる。
「早く連れ帰ってください。邪魔で仕方ないので」
キースが冷たい声を出す。
「邪魔ってお前…」
「邪魔です」
アランがキースに縋るような目を向けるが、キースはビシッと言い放ち、アランはえーと項垂れる。
「兄さん、サボりは良くないですよ。サボりは」
ディーにも言われ、アランはますます項垂れた。
「ほら、行きますよ!今日の分の決済が終わるまで、執務室から出しませんからね!」
若い文官が、アランの袖を引っ張りながら小ホールを出て行く。
が、文官だけがすぐに戻ってきた。
パタパタと小走りに走って俺の前に来ると、再びお辞儀する。
「私、コリンと申します。軍務内政官でアラン様の第2秘書をしております。
どうぞお見知りおきを。
聖女様、昨日は大変お疲れ様でございました。私、感動いたしました」
俺の手を両手で握り、ものすごい早口で挨拶され、思わず笑ってしまった。
彼もまたハーフリングで、背の高さは俺の胸くらいしかなかった。
「ありがとうございます。こちらこそ、どうぞよろしく」
握られた手を握り返しつつニコッと微笑むと、コリンが嬉しそうに笑い、それでは、と立ち去って行った。
「全くあの人は…」
キースが顔を顰めて呟く。
きっとアランは今までに何度もこうやってサボっているのだろう。
「やっぱりキースがそばにいないとダメなんじゃないですか?」
ディーが近寄って、そうキースに言うが、思い切り顔を顰められた。
「続きは明日にしましょう」
そのままお開きとなり、自室へ戻った。
ディーと一緒に部屋で夕食を済ませ、部屋で寛いでいると、キースが午後に届いた贈答品の目録と手紙の返事を持って戻ってくる。
その紙束の多さにうへぇと顔に出した。
「昨日のお披露目のおかげで、さらに増えました」
キースがニコリと微笑む。
「国民からのファンレターもございますよ」
そう言いながら別の封書を円卓に置いた。
「ファンレターって…」
その言い方に苦笑しつつ、一番上にあった手紙を読んでみる。
そこには、怪我を治してくれてありがとう、と子供の字で書かれており、思わず微笑み、ほっこりと気持ちが和む。
「明日は、朝からダンスの練習を致します。
その間、瑠璃宮への引越しを済ませますので、練習後は瑠璃宮へお戻りになることになります」
今夜でこの部屋ともお別れか、と1週間滞在した部屋を見渡した。
別に個人的な荷物はないが…と思ったが、大事な物を思い出す。
慌てて立ち上がると、キャビネットにしまっていたピアスの入った小さな箱を取り出した。
「これ、これは大切なものだから」
キースに箱を差し出した。
「絶対に失くさないでください」
ディーも真剣に言った。
「かしこまりました。大切にお預かり致します」
キースが丁寧に受け取った。
「他に何か御用はございますか?」
「いや特に…」
「それでは、今日はこれにて失礼致します」
「あ、はい…お疲れ様でした」
そう返事をしつつ、もう少し話したかったな、と目で訴える。
「申し訳ありません。今日はこれから別件がございまして…」
俺の視線を察して、キースが微笑みながら謝ってきた。
「そうなんだ。それなら仕方ないか…」
明らかにがっかりした俺にキースがますます微笑む。
「私も使用人官舎から瑠璃宮へ引っ越すので、荷物をまとめないといけないのです」
それを聞いて、キースも瑠璃宮に住むとわかり、つい表情が明るくなる。
「そうなんだ。それなら仕方ないか」
先ほどと同じセリフだが、口調と声の高さが全く異なり、ディーもキースも声に出して笑った。
「それでは、おやすみなさいませ」
キースが箱を持ち、丁寧にお辞儀する。
「おやすみなさい」
小さく手を振って、キースを送り出す。
「引越しかぁ…」
テーブルに肘をついて新しい住まいを妄想する。
瑠璃宮の外観は見た。
王宮の隣、木々を間に挟んで、小さな庭園と生垣に囲まれている、こじんまりとした館だった。
小さいと言っても、俺にとっては豪邸なのだが。
3階建の洋館は、白をベースにしているが、その屋根や壁の一部、装飾が瑠璃色で統一されている綺麗な館だった。
どんな部屋かなぁ、と考えていると、ふとディーの手が肩に触れる。
「ショーヘイさん、一緒にお風呂入りましょう」
「へ?」
そういや、もう夜9時を回っているのに、ディーが部屋へ戻ろうとしない。
「あー…うー…」
急に2人きりだという現実を思い出し、赤面する。
「今日の任務は終わりです。これからは恋人の時間ですよ」
クサいセリフを恥ずかしげもなく言うディーにますます赤面した。
「入ろっか…」
真っ赤になりながら、呟くように言った。
大きめのバスタブは、2人で入っても余裕がある。
ディーの胸に背中を預ける形で湯船に浸かる。
「はぁ…気持ちぃ」
「そうですね…」
ぬるま湯に浸かって、はぁと2人でため息をつく。
「ロイと2人でお風呂に入ったことあります?」
「うん…、ドルキア砦で」
「もしかして、お風呂でSEXしました?」
ずばり聞かれて、隠しても仕方ないしと、赤面しながら頷く。
「したけど…のぼせた。お風呂ではもうしない」
口を尖らせながら、ブツブツ呟くように言うと、ディーが後ろでクスクスと笑う。
「ベッドならいいでしょ?」
背後から耳へ唇を寄せ、そっと囁くように言う。
耳にディーの低い濡れた声と、吐息がかかり、ピクンと体が反応する。
「ロイ…」
「え?」
「ロイが知ったら抜け駆けしたって怒るかな」
「そうかもしれませんね。でも、ロイだって今までずっと貴方を独り占めにしてきたんですし。
たまには私も貴方を独占したい…」
ディーの舌が俺の耳を舐め、甘噛みする。そして、手が胸を撫で、乳首に触れた。
「ぁ…」
乳首を優しく撫で、カリカリと先端を引っ掻き、指で摘み上げると、翔平の体がピクピクと反応し、嬌声が上がった。
「ショーヘイさん、乳首弱いですよね」
耳元で囁きながら、両手で何度も乳首を責める。
優しく触っていたかと思うと、強めに摘みあげる。
「んう!」
肩越しに胸を見下ろすと、濃いピンク色に染まり、ぷっくりと膨れて主張し始める。
「ベッドに行きましょうか…」
「ん」
すでにディーのペニスも硬く張り詰め、俺の腰にさっきからあたっていた。
タオルで体を拭き、裸のまま移動する。
すぐに肩を押されてベッドに押し倒されそうになったが、それを止める。
「あの…、俺もしてやるから…」
そう言って、逆にディーをベッドに押し倒す。
媚薬に侵された時のSEXの記憶はほぼない。
だが、その中でも一部の記憶はうっすらとだが残っている。
あの時俺は、2人のペニスを口に含んだ。
ディーが苦笑しつつ、無理しなくてもいいと言ったが、ディーのペニスを視界に捕えると、浅ましくゴクリと唾を飲み込んでしまった。
ディーのペニスに手を添え、そのまま顔を近づける。
「あ…」
ディーが声をあげ、手の中でビクビクとペニスが反応する。
ディーの雄の匂いがいつもよりも濃く臭覚を刺激し、ますます俺を興奮させる。
そのまま鈴口に唇を寄せると、チュゥッと口付ける。
「ん」
ディーの声が上から聞こえて、悦んでいると嬉しくなった。
口を開けてペニスを含む。
自分がされるのを思い出しながら、舌で舐めあげ、亀頭部分を舌先で擦り上げると、ディーの息遣いがはっきりと聞こえた。
頭を上下に揺らし、ディーを追い上げると、ふと頭にディーの手が触れた。
「ショーヘイさん…、私にも…」
何をするのかわからず、口からペニスを離してディーを見上げる。
体を起こしたディーが体勢を変えて、俺の腰を抱えると、ディーの顔を跨ぐように持って行かれた。
うわ!
お互いにペニスを顔に近付ける69の体勢になって、初めての体勢に恥ずかしくて真っ赤になる。
「いいですよ、続けて…」
後ろで言われ、羞恥に耐えながら、ディーのペニスを手でゆるゆると扱きながら、先端を口に含んで舌先で鈴口を舐める。
「あぁ…気持ちいいです…」
うっとりとディーが感想を漏らし、そして俺のペニスを口に含んだ。
「んぅ!」
熱い口内に包まれて、ペニスを口に含んだまま声を上げた。
「ん、ん」
ジュブジュブとお互いに濡れた音を立ててペニスをしゃぶる。
だが、ディーの手がお尻を撫で、その中心へ指が這わされると、アナルを撫でられた。
そして、ゆっくりと指が挿入される。
「んぁ、あ、あぁ」
指を2本挿入されて、中を解すように動く指に、ゾクゾクと快感が背筋を走った。
中で指を広げられ、腸壁を擦られると、無意識に腰が揺れ、ディーの口からペニスがプルンと飛び出した。
指が引き抜かれると、その入り口が挿入を待つようにひくついた。
ディーが素早く起き上がると、俺の背後に周り、口淫によって濡れたペニスをアナルへあてがうと挿入する。
「あー…!」
指なんか比べ物にならない圧迫感を感じるが、それ以上に快感が上回る。
腸壁をこじ開け、奥へ入ってくるディーに、ブルブルと体が歓喜に震えた。
ディーが腰を使い始めると、もう与えられる快感に呑まれて何も考えられなくなる。
ただただ気持ちいい。
四つ這いの姿勢で腰を掴まれ、深い抽送を繰り返されると、動きに合わせて嬌声をあげた。
どんどんと深くなる挿入に、膝に力が入らなくなり、次第に体は下がり、うつ伏せの状態になると、ディーが上から叩きつけるように奥を突き上げた。
「あ!あぁ!お、奥…ん!」
バチュンバチュンと肉がぶつかり合う音が何度か響いた後、翔平の最奥の入口がノックされ、侵入を許した。
「うあ!あ“あ!」
グポッグポッと音が中で響くような感覚と、最奥を突き上げられる強烈な快感に悲鳴を上げた。
「はぁ、あ、ショーヘイさん、奥に、出しますよ」
ディーがその締め付けに声をあげ、その瞬間ビューッと中に放つ。
腹に注がれた熱さに、翔平の体もビクビクと痙攣を起こす。
奥に挿入したまま、ディーが倒れ込み、荒い息を吐く。
その息が背中にかかるだけでも、快感が背筋を走った。
呼吸が落ち着くと、翔平の背中を舐め、キスを落とす。
「もう一回…、してもいいですよね?」
「ん…」
背中を、首すじを舐め、キスをする。
一度引き抜き翔平を仰向けにすると、足を腰ごと抱えた。
ちょっと前に達したはずなのに、ディーのペニスは熱も硬さも取り戻していた。
ゆっくり挿入され、浅い所で抽送を繰り返す。
「あ、あ、あぁ」
翔平が断続的に喘ぎ、ディーに向かって手を伸ばすと、上半身を倒したディーが翔平に覆い被さる。
そのまま互いに舌を突き出し、絡ませ合い、深い口づけをかわす。
「ん、んぅ、ん」
口内を貪り合いながら、ディーの腰の動きが徐々に早くなると、翔平の体が震え、ディーを抱きしめる腕に力が入った。
「ディー…、も、イきそ…」
アナルから湧き上がる快感に、ペニスがトロトロと蜜をこぼし、脈打つ。
「いいですよ…、イッてください」
ギュッと翔平を抱きしめると、口づけながら大きくを中を突き上げる。
「んぅ!ん!んうー!!」
口を塞がれて、くぐもった声を上げると、射精した。
その瞬間中を締め付け、腸壁が大きくうねると、ディーも我慢せず中に精液を解き放った。
お互いに絶頂の余韻に浸りながら、何度もキスを繰り返す。
「はぁ…」
うっとりと息を吐き出し、見つめ合い、どちらかともなく笑った。
繋いだ体を離し、軽いキスをしながらお互いにクリーンを掛け合う。
着替えを取りにバスルームへ戻り、寝夜着を着るとベッドに横になった。
ディーが再び服を着て、ベッドに座り、俺の頭を撫でる。そして不意にクスクスと笑った。
「なんだよ」
「いえ、初めて貴方を独占出来たな、と」
ディーとだけSEXしたのは、これが初めてで、顔を赤くして照れた。
「3人でも、それはそれでいいんですけど、たまにはこうやって独占したいです」
言いつつ、服のまま俺の隣に横になって、抱きしめてきた。
「きっとロイが知ったら怒るでしょうね。ずるい、俺もって」
地団駄を踏むロイが想像出来て、クスクスと2人で笑った。
「眠ってください。貴方が眠るまでここにいますから」
ディーに優しく頭を撫でられ、嬉しくて暖かくて、その手を握る。
「ディー…、好きだよ…」
「ええ。私も好きです。愛していますよ」
チュッと額にキスを落とされ、目を閉じる。
それから数分も経たない内に翔平は眠った。
翔平に握られていた手を名残惜しそうに離すと、そっとベッドから立ち上がり、小さい声でおやすみなさいと言うと、静かに部屋を出た。
年齢を重ねると、早起きになるのは何故だろうか。
若い時は一日中寝ていられたのに、最近は必ず朝に目が覚める。
元の世界での習慣というのもあるのだろうが、6時に目覚ましをかけていても、5時55分くらいに必ず目が覚めてしまっていた。
体を起こして、時計を見るとちょうど朝6時。
立ち上がると、自分で部屋のカーテンと窓を開けて空気の入れ替えをしつつ大きく伸びをした。
そこへちょうどキースがノックして入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう」
にこやかに挨拶する。
「お早いですね」
「もう習慣なんだろうな。目が覚めちまう」
「元の世界でもこのくらいに起きられてたんですか?」
キースに促され、バスルームで顔を洗いつつ、話を続ける。
「毎朝6時起きて、顔洗って、飯食って、着替えて、7時15分に家を出て、8時10分くらいに会社に着く。
十数年続けてれば体が覚えちゃうんだろうな」
着替えながら話す。
「カイシャ…とは、勤務先のことですか?」
話しながらも、お互いに動きを止めない。
俺は自分でお茶を淹れつつ、キースは朝食の準備を初めていた。
「そう。勤務先のことだよ。こっちではなんていうのかな、商会? 組合? いや違うな…」
当て嵌まる言葉を考えるが思いつかない。
「どうぞ」
円卓に朝食を並べ終わり、ニコリと微笑む。だがキースはじっと立ったままだ。
「えっと、キースの朝ごはんは?」
「私はもう済ませました」
「ああ…そうなんだ…」
「どうかなさいましたか?」
「1人で食べるの、寂しいなと思って」
今までずっと1人で用意して食べていたのに、ここに来てから必ず誰かと一緒に食事していることに慣れ、寂しいと感じてしまった。
「食堂に行けば、誰かがいるかもしれませんが…。朝はお部屋でとる方が多いですし…」
キースも考える。
「じゃぁ、明日は一緒に…」
「それは出来ません。そもそも食事内容が違うんです」
キースが苦笑する。
「そうなのか…」
思い切り残念そうな顔をする。
その翔平の表情を見て、キースが申し訳なさそうに微笑む。
「慣れてください…」
「そうだな…」
答えつつ、もそもそと1人で食べ始めた。
いつも思うが、1人で食べるにしてはすごく量が多い。品数もすごく多くて、絶対に1人で全て食べることは出来ず、いつも残していた。
おそらく、これが貴族の当たり前なのだろう。
足りない、食べたいものがない、と言われる方が使用人にとっては大変なことなのだろう。
だが、数ヶ月前まで食べ残すのはもったないという生活をしてきた俺にとっては、この食事に多少戸惑いを抱いていた。
出来れば、食べられる分だけにしてもらえないだろうか、と、口を動かしながら考えていた。
朝食後、食後休憩をはさんで早速王城の小ホールに移動する。
今日の護衛担当はアビゲイルだった。
「ダンスの練習ですって?」
「うん…昨日少しやってみたけど、俺、センスないわ…」
移動しながらアビゲイルと話す。
「そうねぇ…センスは大事よねぇ」
「大丈夫です。基本の動きはセンスは関係ありませんよ」
「そうは言うけどさぁ」
廊下を歩きながら、昨日足がもつれて転んだのを思い出し、乾いた笑いを漏らした。
小ホールについて、早速練習を始める。
昨日と同じ3ステップから。
最初はゆっくり、徐々に早く。
だが、早くなるとすぐに足がもつれて転びそうになる。
頭では理解しているのに、足がついてこない。
「も~無理だって~」
休憩中、頭を抱え込む。1時間ほど練習しても、全く上達しなかった。
ある程度運動は出来る方だと思っていたが、ダンスとなるとまさかここまで脳と体の動きが一致しないと思わなかった。
リズム感が無さすぎて、かなり凹む。
その小ホールのドアがノックされ、キースが応対する。
「苦戦していると聞きましたよ」
壁際で三角座りをして凹んでいると、声をかけられる。
顔をあげると、そこにギルバートがニッコリと微笑んでいた。
「ギル様…」
「キース、代わりましょう」
そう言い、俺に手を差し出した。
「…よろしくお願いします」
その右手に左手を重ねると、力強く引かれ立たされる。そのまま腰を引き寄せられて抱きしめられた。
「あらあら」
アビゲイルがニヤニヤし、ギルバートは彼女に向かってウインクする。
「今日も綺麗ですね、アビー」
俺を抱きしめながら、アビゲイルを見つめ、褒める。
それを聞いて、本当にこの人は…、と半分呆れた。だが、彼は本心で言っていると思うからタチが悪いとも思った。
「では、始めますよ」
ギルバートがグッと俺の腰を抱く腕に力を込めると、下半身を密着させた。
あまりにも密着度が高くて、思わずアワワと赤面し、彼の胸に手を置いた。
「いいですか? 私の足を踏んでも構いませんから、出来る限りついてきなさい」
キースが魔鉱石に魔力を注ぐと、音楽が流れた。
ゆっくりなペースから始めるのではなく、いきなり音楽に合わせて踊らされる。というかギルバートに振り回された。
「右前、左、右後ろ」
ギルバートに抱えられ、持ち上げられた状態で、足に体重を半分もかけていない。
小ホールの中を縦横無尽に踊りながら、ギルバートが足の動きをずっと耳元で囁くように呟く。
「右前、左、右後ろ」
ギルバートの声に合わせて、自分も呟きながら懸命に足を動かす。彼の腕に上半身を抱き支えられているので、足がもつれてもバランスを崩すことなく、足の動きを繰り返す。
何度もギルバートの足を踏んでしまうが、ギルバートは微笑むだけで何も言わずに俺を振り回す。
「右前、左、右後ろ」
そのうち、足の動きが追いつくようになってきた。
「いいですよ。その調子です」
30分、ずーっと同じ動きを繰り返し、最後の方はギルバートの足を踏むことなく、彼の足の動きに合わせて3ステップを踏めるようになっていた。
だが、振り回されるだけでなく、自分の足に体重を乗せて踊り出すと、次第に息があがり、終わる頃にはハァハァと息を切らせていた。
「休憩しましょう」
動きが止まり、ギルバートがそういうと、頬にキスをしてくる。
「すごいわねぇ。たった30分で動けるようになったじゃない」
アビゲイルが感心したように言った。
「ショーヘイ君は、まずは頭で考える癖があるようなのでね。実践で覚えた方がいいと思ったんですよ」
なるほど、とキースとアビゲイルが頷く。
ゼーゼーと俺が息を切らせているのに、ギルバートは俺を抱えて踊っていたにも関わらず、息も乱れていなければ汗一つかいていなかった。
化け物だ。
平然としているギルバートを見て、心の中で呟く。
しばらく休憩し、呼吸が元に戻ると、再びギルバートに抱きしめられるように踊った。
「今度は腕をここに、そうそう」
休んだせいで、最初は足の動きもぎこちなかったが、すぐに思い出してステップを踏む。
今度は足の動きに加えて手の位置も教えられた。ギルバートの肩に右手を置き、左手を上げてギルバートに握られる。
「上手ですよ。もう少し胸を張って。背中を後ろに反らせるように」
踊りながら、ギルバートに指導され、どんどん様になっていく。
そしてまた30分踊り続け、息があがるが、やっぱりギルバートは平然としていた。
「午前中はこのくらいでいいでしょう」
ギルバートが微笑み、俺の隙をついてチュッと唇を奪われた。
「ギルバート様…」
キースが眉を寄せ、ギルバートを咎めるように呟く。
「私にもご褒美がないとね」
フフフと笑って俺を見ると、ペロリと自分の唇を舐める。
一旦解散し、昼食後に再び指導を受けた。
30分おきに休憩を入れ、なんとか形になった所で、キースと踊ってみるが、ギルバートの時と同じように踊ることが出来るようになっていた。
「お、踊れるようになってるな」
ダンス講習が終わる頃、アランが顔を出し、キースとまともに踊っている姿を見て感心する。
「さすがギル様」
「付け焼き刃なので、踊る相手は上級者に限りますが、明後日の夜会には間に合うでしょう」
ギルが、踊り終わって戻ってきた翔平に言う。
「昨日のへっぽこに比べたらかなりの進歩だ」
アランが笑い、キースに睨まれる。
「アラン様、また…」
「休憩中だ。サボってねーよ」
すかさずドヤ顔で言い、キースが信用出来ないと言いたげに目を細めた。
練習を終えて、王宮の食堂でみんなで食事をした。
大勢で食事をするのが嬉しくて、かつたくさん動いてお腹が空いていたため、いつもよりたくさん食べてしまった。
夕食後、新たに居住する瑠璃宮へ向かった。
新しい部屋はどんな所だろうと、ワクワクするが、1日中ダンスの練習を続けて体が重く、すでに足がパンパンになっていた。
部屋についたら、すぐにヒールを使おうと思う。
疲労は取れないが、絶対に筋肉痛になる。明日もまだ練習は続くので、筋肉痛にならないようにしないと、と思った。
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