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王都編 〜聖女争奪戦〜
99.おっさん、プレゼント攻撃を受ける
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むせかえる程の花の匂いにうんざりする。
朝起きてしばらくすると執事達が次々と花束やプレゼントの箱を部屋に運び入れ、部屋の一角がそれらに占領されてしまっていた。
昨日の分もまだ全部整理しきれていないというのに、どんどん溜まって行く。
それと同時に、円卓に重ねられた手紙や招待状にうんざりする。
「すげーな…」
今日の護衛にあたるグレイが来て早々、プレゼントの山を見て呆然とする。
「窓開けていいよな?花の匂いがキツくて」
言いながら窓を開け放つ。
外から入ってくる風が心地よい。
少しだけ肌寒くなった風が、もう少しで冬になると告げていた。
今日から護衛が1人追加されると聞かされ、誰なのか、どんな騎士が来るのかは知らされておらず、部屋でグレイと共に待機しつつ待っていた。
「ロイは?」
「獣士団の訓練場で暴れてたわ」
その姿が想像できて笑ってしまう。
「ディーも今日は魔導士団に詰めるって」
「みたいだな。お前は特に予定ないんだろ?」
「ああ。午前中に服の採寸をするって言われただけかな。
他は特にない、けど…」
チラリと円卓の上の手紙を見る。
「返事、書かなきゃダメなんだってよ」
はあぁーッとため息をつく。
「グレイ、手伝って」
「えー、やだよ」
「そう言わずにさー。文面一緒に考えてくれよー」
拝むように必死にお願いする。
「仕方ないな…」
グレイもため息をつく。
その時部屋がノックされた。
どうぞと言うと、白い騎士服を纏った見知った男が顔を出す。
「よぉ、聖女ちゃん」
オスカーだった。
「え?オスカーが俺の護衛?」
「ああ。昨日勅令が出た」
来て早々、部屋の一角を埋め尽くすプレゼントに驚く。
「なんじゃこりゃ」
「聖女争奪戦だそうです」
他人事のように、乾いた笑い声と共に言うとオスカーが笑った。
オスカーが護衛に入るのはいいが、彼がどこまで事情を知っているのか気になる。
彼は俺たち3人の関係を知っている1人だ。さらにジュノーであることも知っている。
だが簒奪者や黒幕、囮の件について話してもいいのかどうか逡巡した。
だが、そんな俺の様子から察したのか、破顔しつつすぐに全部知ってると教えてくれた。
「ギルさんから直接護衛の件を頼まれたんだ。
団長やレイン、グリフィス、フィッシャーも知ってるぞ。
あと3、4人メンバーに加わるが、全員事情を知ってる奴だから安心しろ。
今頃、誰が護衛に入るか決闘でもしてるんじゃねーか?」
「全員第1部隊から選ばれるのか」
グレイがなんで?という疑問を抱く。
「全員じゃねえが、第1部隊は、ロマーノの時王都に居て、数人は状況を把握してるからな」
オスカーが説明し、なるほど、と相槌を打つ。
「で、今日はこれから何するんだ?」
オスカーが聞き、グレイと顔を見合わせてニヤリと笑う。
手紙の返事を考える仲間が増えほくそ笑んだ。
結局昼食の時間まで、ひたすら3人で円卓に座って返事を考え、書き続ける。
途中、マーサと共に服の仕立ての使用人がやってきて、フィッティングルームで頭から足先まで、細かく採寸された。
採寸が終わると、再び円卓に戻って手紙と格闘する。
グレイが送られた手紙やメッセージカードを読み上げ、時折ゲラゲラと笑う。
「ひでーな、この内容。
聖女様、貴方のことを思うと夜も眠れません。ぜひ貴方と一夜をともに」
ワハハハと笑う。
「ただのスケベじゃねーか」
「おいおい、こっちはもっとひでーぞ。
聖女様、貴方の聖なる棒で私を貫いてください。
聖なる棒ってなんだよ!語彙力ねーなぁー」
ギャハハと爆笑する。
男女問わず、一部の手紙にははっきりと下ネタ系の内容が書かれており失笑する。
「いやぁ面白れー。
聖女様、貴方の中に私の愛を注ぎ込みたい。私の愛を知れば、きっと私に夢中になるはずです。
ひっでーな!
ナニを注ぐんだ!ナニを!!」
涙を流して笑うオスカーに、俺も笑う。露骨な表現にほんと笑えるほど呆れる。
爆笑しながら返事を書き終え、執事に封書を預け終わったーと一息つく。
「お疲れさん」
ずっと書き続けて肩が凝り、肩を押さえながら腕を回した。
3人で昼食に向かうと、ちょうどサイファーに出会った。
「よぉ、サイファー」
「オスカー。今日からか」
「ダリアはまだ?」
「ああ。まだ帝国だ」
2人の会話に、初めて聞く名前が出てグレイを見ると、グレイがコソッと教えてくれて、ダリアがサイファーの伴侶だと知った。
結婚してたのか…。
言われてみれば、サイファーは俺と同じくらいだし、当然っちゃ当然か。
それにしてもその伴侶が何故帝国にいるのか気になるところではある。
「ダリアは帝国の侯爵家の出なんだ。里帰りも兼ねて外交に出てるんじゃないか?」
「外交?」
「ああ、ダリアは外務局局長だ」
そういえば、各局紹介の時に外務局局長がいなかったことを今更思い出す。
第1王子の伴侶が外務局局長。
しかも帝国貴族の身内か。
そういえばサイファーは外交に強いという話をしてたっけ。
伴侶のダリアさんもきっとすごい人なんだろうな。
新たに知った事実に軽く衝撃を受ける。外交とか内政とか、俺にはとんと無縁だな、と学のなさを痛感した。
「そうだ、ショーへー。ぜひ聖女の力を発揮してもらいたいんだが、構わないだろうか」
食べながらサイファーに言われる。
詳しく話を聞けば、国民への聖女の力を示す場を設けたい、とのことだった。
言われてみれば、聖女が来るぞ、と公表しただけで、国民は聖女の力を見たわけではない。
こういうことも必要なのか、と他人事のように思った。
「ショーへーに街の治療院へ足を運んでもらおうかとも考えたのだが、聖女教会の件もまだ未解決だからな。
今はまだ王城から出ない方がいい。
怪我人を動かすのも気が引けるが、どこか1箇所に集まってもらおうと思っている」
「わかりました。俺はいつでも構いません」
「すまんな。国民に通達を出す。早くて明後日にはやってもらうことになるだろう」
「ああ、そうだ。一つだけいいですか?
怪我の程度にもよりますが、人数が多いとそれだけ魔力を使うことになるので、ヒールを使った直後に意識を失うかもしれません。
眠れば元に戻りますから、倒れても気にしないでください」
いきなり意識を失って大騒ぎになられても困るので先に言っておく。
「了解した。どの程度の怪我なのかも確認させよう」
明後日に仕事が出来た。
これでただ飯食らいじゃなくなる、と気分が上がってニコニコしながら自室への廊下を歩く。
だが自室に戻って、さらに増えているプレゼントに愕然とし、高揚した気分が一気に地の底に落ちた。
部屋を埋め尽くす、花、花、花。
「こりゃぁ…」
流石にオスカーもその有様に翔平に同情する。
「花に罪はございませんから…」
マーサ達が部屋の中の花を選り分け、城内からかき集めてきたであろう花瓶に活けていく。それを部屋から運び出し、城内の至るところに飾られていった。
「城が花だらけになるな…」
「グレイ~オスカァ~手伝って…」
円卓の積み上げられた手紙の束に、翔平が半べそをかいた。
結局一日中届く花やプレゼント、手紙に招待状、それらの返事を書くだけで1日が終わってしまう。
「なんかすごい無駄な1日だったような気がする…」
ソファに座った3人が、げっそりしつつ体を投げ出した。
「明日も続くぞこれ…」
「も~やだぁ~手が痛い」
今日1日で100通以上に手紙を書いた。
昨日と今日と、連続で送ってくる奴もたくさんいて、返事に非常に困る。
「お貴族様は必死だな」
オスカーが馬鹿にしたように笑う。
「ショーへーちゃんを手に入れれば大出世だからな。そりゃ必死になるわ」
贈り物をしてくる奴は7割が貴族の子息子女達。残りの3割が富裕層からのものだった。
「ほんとマジで勘弁してほしい…」
顔を両手で覆って泣く仕草をする。
「まあ、キースが来るまでの辛抱だ。頑張れよ」
オスカーが慰めてくれる。
「そのキースさん、アラン様の好きな人って聞いたんだけど…知ってる?」
「ああ、まあそうだな」
グレイもオスカーも知っているようで、顔を見合わせた。
「キースは最初アラン専属の執事だったんだ」
「でも、アランがキースに惚れて、プロポーズしたのをきっかけに専属から外れた」
「それって…公私混同を避けるため?」
「それはわからんが、キースが自分で転属願いを出したと聞いたぞ」
「えぇ…それはキツいな…」
プロポーズを断られるばかりか、自分から勤務先を変更するなんて、アランにしたら大ショックだろう。
「まぁな。だが、アランはそれでもめげずに何度もキースにプロポーズしては、その度にフラれてるw」
「恒例行事になってきてるなw」
グレイも何度かフラれる場面を見たことがある、とおかしそうに笑った。
「まあ何か考えがあるんだろうな。
キースもアランに惚れてるようだし、相思相愛で恋人と言えるんだろうが…。プロポーズだけは受けない」
オスカーがお茶を飲む。
「さすが戦闘執事なだけあって、表情に出ないからな。
奴が何を考えているのかはわからん」
「せんとうしつじ?」
「ああ。執事の仕事をこなしつつ、主人の護衛もするんだ。
ギルさんに仕込まれてるから、かなり強えぞ。しかも執事としてもかなり優秀」
「へぇ…」
そんな人が俺の執事でいいのか、と思ってしまう。しかも自ら望んだと言っていた。
キースがどんな男なのか、ものすごく気になってくる。それと同時に、アランとキースの関係についても、俄然興味が湧いた。
王族にプロポーズされた一般人として、ぜひともその辺についても話したいと思ってしまった。
「まあとにかくだ。明日の分の返信についてはキースに任せればいいさ」
「そっか…うん、そうするよ…」
明日の分の返事を書くことにはなるが、内容を考えなくても済むかもしれないとわかってホッとする。
肩の力を抜きつつ、お茶のおかわりを淹れるために席を立つ。
「おかわりいる?」
2人から空のカップを受け取り、お湯を沸かす。
ポットに組み込まれた魔鉱石へ魔力を通すと熱を発する仕組みで、電気ポットのようですごく便利だ。
お湯が沸く間、何気に近くにあったプレゼントのバラを触る。
真っ赤な薔薇が綺麗で、思わず手が出た。
「いて」
チクッと指先に薔薇の棘が指先に刺さる。
「贈り物なのに棘の処理してないってか。雑だなぁ」
オスカーが笑う。
刺さった人差し指を見ると、プツッと血が滲み出て赤い玉を作っていた。
指を口に入れ血を舐めると、ヒールを使って一瞬で治す。
「なぁ、この箱、開けてもいいか?」
グレイが積み重ねられたプレゼントの箱の山を見ながら言う。
「いいよ。っていうか開けて。自分で開けるなって言われたからさ」
ティーカップにお茶を注ぎながら返事をする。
「俺もやる」
それからしばらくは、2人で箱を開けるのに集中する。
俺は2人が散らかしたリボンや包み紙を拾って綺麗にたたみ1箇所にまとめて行った。
「金かけてんな」
オスカーが大きな宝石の入ったイヤリングを俺に見せる。
「これなんか、金貨10枚はするぞ」
箱の中身を物色しながら、金額当てクイズのようなゲームをして遊ぶ。
「なぁ、貰うつもりないんだけど、そうなると、これはどうなるわけ?」
たくさん出てきた宝飾類やクッキーなどのスイーツ。プレゼントとして受け取ったが、使うつもりはない。
「とりあえず保管して、しばらくしたら転売して金に代える。お前のものだから、お前の金だぞ?」
なるほどと思ったが、別にお金があってもな、と贅沢なことを考えてしまった。
今はここから出られないし、買い物にも行けない。別に欲しいものもないし、と思った。
「寄付とか…?」
「まぁ、それでもいいかもな。……もし寄付するなら、孤児院にしてくれるか」
グレイが突然言った。
「孤児院?知り合いでもいるのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが…」
グレイが苦笑する。
「俺は…、孤児院出身だからよ…」
そう言われてグレイをじっと見る。
4ヶ月も一緒に居て、グレイの過去のことを知らない。
ロイとディーについては色々知ったし、2人とグレイが子供の頃からの付き合いだというのも、悪ガキトリオと言われるほど仲が良いのも知ってる。
だが、グレイ個人については何も知らないと思った。
「ごめん…俺、お前のこと何も知らないんだな…」
立ち上がると、グレイに近寄り、その騎士服の袖を握った。
「言ってないからな」
グレイが笑う。
「今度、聞かせてくれよ。お前のこと、孤児院のこと」
「ああいいぞ。全部片付いたら、一緒に孤児院に行ってくれるか?
聖女様が来るなんて、ガキどもが喜ぶわ」
グレイがニッコリ笑い、その笑顔がとても眩しいと感じた。
4人の中で一番年下なのに、時折りパパみたいだと感じたのはこのせいか、と納得した。
「ところで、熱いのか?」
「え?」
「顔が赤い」
グレイが俺の頬に触れる。
「ん!」
途端に体に走った電流のような刺激に声をあげた。
「どうした?」
「いや…なんでもない…」
自分でも何だ今の、と首を傾げて円卓に戻ってお茶を飲んだ。
「お茶、冷めちゃうぞ」
箱を開けるのに夢中になっている2人に声をかける。
グレイもオスカーも、一通り中身を確認した後に再び箱にしまい円卓に戻る。
「そろそろ戻るかな」
時計を見ると、午後9時を回った所だった。
「明日のショーへーの予定は?」
「ああ、明日はマーサが夜会について説明と指導をするそうだ」
「明日は俺とロイの予定だが、今日他の護衛が決まってれば、そいつが来るかもしれんな」
2人の会話が聞こえてくるが、頭に入って来ない。
どこか遠くで2人が話しているような感じで、耳の奥がグワングワンと反響しているようだった。
さらに体が熱い。
じっとりと汗が滲んでくるのがわかる。
「勝負は誰が勝ったんだろうな」
グレイが翔平の護衛権をかけた決闘の勝敗を気にする。
「俺の予測ではアビーかジャニスってところか」
「2人ともかなりショーへーを気に入ってたな」
「まあな。周りにいないタイプだからな。可愛くて仕方ないんだろ。俺もだけどw」
全く内容が頭に入って来ない。
熱い。
体が熱い。
それに、ゾクゾクと背筋に悪寒が走る。
今朝、花の匂いに咽せて窓を開けたから風邪でも引いたのだろうか。
とにかく熱い。
「ショーへー?」
グレイが俯いている俺を気にして声をかけてくる。
「どうした?」
オスカーが俺の腕に触れた。
「んぅ!」
その瞬間、全身に再び電流が走る。
オスカーが触れた所から、ゾクゾクとした快感が走った。
何これ。
腕を触られただけなのに。
「っは…ぁ」
両腕で自分の体を抱きしめるように抱えた。
自分でも吐く息が熱いのがわかる。
「グレイ…、オ、スカー…」
涙目で、2人へ顔を向けた。
ゾクゾクとさっきから快感が全身を襲う。
はっきりとあり得ない情欲が現れ始め、全身が性感帯になったような錯覚を覚える。
その俺の表情を見た2人が驚き、すぐにオスカーが反応した。
「薔薇の棘か!!」
オスカーが翔平が触れた薔薇の花束を見る。そして、指を刺した薔薇の棘先が変色していることに気づいた。
「やられた…。
グレイ!ロイとディーを呼んでこい!!大至急だ!!!」
「わかった!」
グレイが部屋を飛び出し、オスカーが俺に近寄る。
「ショーへー、苦しいか?」
そう聞かれ、コクコクと頷く。
オスカーが翔平の全身を見つめ、その体が小刻みに震え、必死に情欲に耐えているのがわかった。
「ショーへー、毒じゃないから安心しろ」
オスカーの声が頭の中に反響する。
毒じゃない、というのは理解できた。
だが、毒じゃないなら、今のこの状況は何なのだ。
体の奥、下腹部からジクジクと痛みにも似た疼きを感じる。
すでにペニスは硬く張り詰めて、陰嚢も膨れ上がっている。
「ふ…んぅ…」
自分の腕で体を押さえ込んでも、湧き上がる情欲に涙を流す。
「苦し…」
「もうちょっと頑張れ。2人が来たら楽になるから」
オスカーが語りかける。
翔平に触れるわけにはいかない。
今触れれば、翔平は我を忘れて自分を求めてくる。
「オス、カー、なに、こ、れ」
はぁはぁと息を吐きながら、上気した顔をオスカーに向け、潤んだ目でオスカーを見る。
その情欲に濡れた表情に、オスカーがゴクリと唾を飲み込む。その色気にあてられて下半身が反応するのを、理性で必死に押さえ込んだ。
「ショーへー、花に、媚薬が仕込まれてた。棘が刺さって全身にまわったんだ」
「び、やく?」
「ああ。大丈夫だ。死ぬわけじゃないから」
極力優しく語りかける。
「ロイとディーに抱いてもらえ。そうしたらおさまる」
「っはぁ…ぁ…」
2人の名前を聞いただけで、ゾクゾクと快感が這い上がり、イキそうになる。
欲しい。
ビクビクと体を震わせ、必死に押さえ込む。
「まだか…」
辛そうな翔平を見ていられず、その場から離れると、ドアを開け人を探す。
すぐに執事の姿を見つけ、声をかける。
「今日の当直の近衞を呼べ。大至急だ」
そう指示を出すと執事が走って行った。
媚薬を仕込んだ薔薇を送りつけた奴は、今夜翔平に夜這いをかけにくるはずだ。
王宮に忍び込もうとするなんざ、頭がおかしいとしか言いようがないが、既成事実を先に作ってしまえば、後からどうにでも出来ると思ったんだろう。
部屋に戻って、贈り物の目録を確認し、薔薇の花束を贈った奴の名前を確認する。
イライジャ・ルメール
ルメール伯爵家4男。
親の脛に齧り付き、何の仕事もしていない、伯爵家の道楽息子の名前に、舌打ちする。
その名前を確認したすぐ後、ドアがノックされる。
「ショーへー、もうちょっと頑張れよ」
一言声をかけ、ドアの外に出る。
そこに今日の当直の近衞が立っていた。
「何かあったのか」
女性の近衞騎士がオスカーの表情からすぐに緊急事態だと察する。
「シドニー、今夜、侵入者があるはずだ」
オスカーは、翔平が媚薬を盛られたことを伏せ、状況を説明する。
「了解した。馬鹿に気付かれないように警備を固め、捕える」
「頼んだ」
「聖女様は無事か?」
「ああ、大丈夫だ」
それだけ答えると、シドニーもそれ以上深く聞いてこなかった。
サッと敬礼し、イライジャを捕える準備に入る。
「オスカー!」
入れ違いに、グレイがロイとディーを連れて戻ってきた。
「お前ら、急げ!」
息を切らせて走ってきた2人をまず部屋の外で引き止める。
「ロイ、ディー。犯人はこっちで対処する。
ショーへーを頼んだぞ」
2人とも整っていない息のせいで返事を出来ず、首を縦に振ってただ頷いた。
そして2人が部屋に入る。
「グレイ、お疲れさん」
膝に両手をついて、ゼーゼーと肩で息をするグレイに声をかける。
「犯人は…?」
流れる汗を手の甲で拭い、オスカーに問う。
「目録からすると、イライジャ・ルメールだ。今、シドニーにも伝えて警備を固めてもらったところだ」
グレイが頷きながら、背筋を伸ばす。
「それじゃ、俺らはルメール家だな」
「ああ。まずは王とサイファーに報告を」
オスカーがポンとグレイの肩を叩き、2人に会うために歩き始めた。
ガクガクと震える体を必死で抑え込む。
体を動かすだけで、絶頂を迎えるような感覚に襲われ、頭がおかしくなりそうで歯を食いしばった。
ドアが開けられロイとディーが部屋に入ってくる。
敏感になった臭覚が2人の匂いを感じ、強烈な快感が駆け抜けた。
膝がガクガク震えるが、それでも2人の匂いを感じたくて、2人に触れて欲しくて、フラフラと立ち上がると近付く。
「ショーへー」
「ショーヘイさん」
足元がふらついた状態で近付く翔平の姿に両手を差し出し、倒れ込む寸前で受け止める。
「あ!」
2人の腕が翔平の体に触れた途端、悲鳴をあげ、それだけで絶頂に達した。
「ロイ…、ディー…」
足に力が入らない状態で、ロイにしがみつき、両腕をその首に回すと自分から唇を重ねた。
「ん、ん」
必死に舌を絡ませ、体を擦り付ける。
「ロイ…、体、が…、あつ…お願い…、欲し、い」
ロイも翔平の頭を抑え、その舌を吸い、絡ませ、激しいキスを繰り返す。
唾液が糸を引き、唇が離れると、今度はディーへ両腕を伸ばし、同じようにディーの唇を貪る。
「ディー…、もっと…、もっとして」
その間も翔平の腰が揺れ、自分からペニスをディーに押し付けている痴態を見て、ロイの喉が鳴った。
すばやく服を脱ぎ捨て、ディーとキスを繰り返す翔平を2人で抱えてベッドへ運ぶ。
服を脱がしつつ、翔平の身体中にキスを落として行く。
「あ、あぁ、あ」
すでに翔平は情欲に支配されて、目もうつろで、快感だけを求めて2人にしがみついてくる。
「あん、ん、ぁ…」
その口から絶えず喘ぎ声が漏れ、体が快楽にビクビクと痙攣していた。
ディーもすばやく服を脱ぎ捨て、横から翔平に覆い被さる。
ロイは乳首をしゃぶり愛撫しながら、翔平のベルトを緩めて、ズボンを下着ごと下げるが、すでに射精し、ドロドロになっている下着に、凄まじい欲情が生まれた。
「ロイ…来て…、早く、入れて」
ディーの愛撫を受けながら、自ら足を開き、ロイへ曝け出す。
媚薬のせいでトロトロに濡れたペニスからの蜜で、すでにアナルも濡れ、収縮を繰り返して挿入を待っている状態だった。
「お願い…、入れて」
悲鳴のように翔平叫び、ロイが解してもいないアナルにペニスをあてがうと、そのまま挿入する。
グプププと音を立てて、ロイを飲み込んで行く。
「あ“ー!!あ、あ」
待ち侘びたロイのペニスに、それだけで絶頂に達し、何の準備もしていないのに、どんどんロイを飲み込んで行く。
「あー!いい!もっと!」
翔平が望むように、ロイが容赦なく腰を打ちつける。
いつも以上に熱い翔平の体に、腸壁の絡みつくようなうねりに、ロイも声を上げた。
ドチュッドチュッと腰を打ち付け、中を抉るように突くと、翔平が歓喜の声を上げる。
「あぁ!あ、いい、もっと、もっとして!」
ガンガン腰を使って翔平を突き上げる。そのたびに翔平のペニスから精液が溢れ、腹や胸に飛び散る。
ディーが翔平の横に座り、翔平の乳首を弄りながら、飛び散った精液を塗りつけるように撫でる。
「あ、んぅ」
クリクリと乳首を指で弄られ、それだけも大きく反応を返す翔平に、ディーも湧き上がる情欲に震えた。
「ディー…」
ロイに突き上げられながら、ふと手に触れたディーのペニスに気付き、手で握り込む。
「あ、ショーヘイさん」
翔平の手に握られ、ゆるゆると上下に扱かれて、とろりと蜜を溢すと、翔平の目がうっとりとディーのペニスを見つめた。
ロイがその翔平に気付き、体勢を変える。
翔平の足を抱え上げ、体を自分の方へ下げると、翔平は近くなったディーのペニスへ顔を寄せた。
「ん!」
そして、翔平が口を開け、ディーのペニスを口に含む。
「ん、んぅ…」
手を添えて、飴を舐めるようにディーのペニスへしゃぶりつく翔平に、ディーがたまらず、翔平の髪を掴む。
「はぁ…、ディーの…大き…」
全部口に入れることが出来ず、舌を使って舐める翔平の表情が、仕草全てが愛おしい。
一生懸命ディーのペニスを口に含んで、舌と唇で愛撫する翔平に、通常よりも早く我慢の限界が来る。
「あ、ショーヘイさん、出ます」
「ん!」
その瞬間、翔平の上顎にディーの精液が放たれる。
口の中で、熱いほとばしりを受け、ペニスから口を離した翔平がトロンとした視線をディーに向ける。
その口から、ドロっと精液を溢し、その姿を見ただけでディーのペニスが再び熱を持った。
「すげぇ…」
ロイが呟く。
翔平の足を極限まで開くと、最奥の壁を抉るように突き上げた。
「あ”!あ“あ!お、奥!奥が」
ゴツゴツとぶつかるロイのペニスに、何度も空イキを繰り返す。
「出すぞ」
「んぅ!出して!中!中に!」
その瞬間、最奥に向かってロイの精液が放たれた。
「はぁ…」
腹に触れて、中に感じるロイの熱に、歓喜の表情を浮かべる。
「なぁ…もっとして…」
翔平が腕を伸ばす。
「もっと欲しい」
媚薬のせいで完全に理性を快楽の乗っ取られ、うっとりと2人を見つめる。
そんな翔平に、2人が唾を飲み込み、互いに顔を見合わせると、頷いた。
「好きなだけやるよ」
「ええ、欲しいだけ。何度でも」
「…嬉しい…」
翔平が微笑むが、いつもの笑顔ではなく、淫らな行為に溺れた正気を失った笑顔だった。
ディーに背後から突き上げられ、口でロイのペニスを受け入れる。
上からも下からも2人の精液を受け止めるが、まだ欲情は終わらない。
ロイに跨り、自ら腰を揺する。ひっきりになしに上がる嬌声が、部屋中に響き渡り、快楽だけを追い求める3匹の獣が絡み合う。
そしてまた中へ精液を注がれ絶頂を味わう。
「もっと…」
翔平の手が2人のペニスへ伸び、顔を寄せてむしゃぶりつく。
それだけで熱を取り戻す2人に、嬉しそうに微笑み、自らアナルを差し出して挿入を待つ。
「ロイ…、ディー…、好き…大好き…」
突き上げられながら、何度も愛の言葉を囁く。
理性を無くしても、愛している2人に抱かれていることだけは、無意識下で感じていた。
「あ…イく…」
もう出すものはなく、ただただ絶頂だけを味わう。
繰り返される行為に意識が朦朧とし、数えきれない絶頂を味わった瞬間、完全に意識を手放した。
突然力を失った翔平を、すかさずディーが受け止めた。
「ショーヘイさん?」
耳元で声をかけるが、返事がない。
「終わったな…」
ロイが数度腰を揺らすと翔平の中に放ち、しばらくその余韻を味わった後、ゆっくりとペニスを引きぬいた。
途端にアナルから2人の精液が大量にこぼれ落ちた。
「はぁ…」
「流石に…疲れましたね…」
翔平を抱きしめ、優しく頭を撫でながら、そっとベッドに横たえる。
時計を見ると、夜中の2時。
5時間近くSEXしてたことになる。
「疲れたけど…すげぇ良かった」
ニヤァとロイが笑う。
「確かに」
ディーも笑う。
「明日、ってもう今日か。ショーヘー動けないな」
「ですね」
ロイがベッドから起き上がると自分にクリーンをかけ、新しいシーツを取りに行く。
ディーもクリーンを自分にかけると、翔平にも念入りにクリーンを使う。
シーツを持って戻ってきたロイに交換をお願いし、翔平を抱いてベッドから降りた。
「多分、記憶ないでしょうね」
「だろうな。媚薬のせいでぶっ飛んでたからな」
「あんな姿、もう2度と見られないですよね…」
「そうだな…」
2人が明らかに、残念だ、という表情になった。
交換して綺麗になったシーツに翔平を寝かせ、寝夜着を着せる。
「ディー、お前はここにいろ。俺が状況を確認してくる」
服を着ながら、翔平の頭を撫でているディーに言った。
「わかりました。お願いします」
そう言い、自分もベッドから降りて服を着る。
ロイが一度翔平に近寄ると、眠っているその額にキスを落とす。
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ロイが出て行き、残されたディーは1人でお茶の用意をする。
ベッドで眠る翔平を気にしつつ、そのまま朝を迎えた。
朝起きてしばらくすると執事達が次々と花束やプレゼントの箱を部屋に運び入れ、部屋の一角がそれらに占領されてしまっていた。
昨日の分もまだ全部整理しきれていないというのに、どんどん溜まって行く。
それと同時に、円卓に重ねられた手紙や招待状にうんざりする。
「すげーな…」
今日の護衛にあたるグレイが来て早々、プレゼントの山を見て呆然とする。
「窓開けていいよな?花の匂いがキツくて」
言いながら窓を開け放つ。
外から入ってくる風が心地よい。
少しだけ肌寒くなった風が、もう少しで冬になると告げていた。
今日から護衛が1人追加されると聞かされ、誰なのか、どんな騎士が来るのかは知らされておらず、部屋でグレイと共に待機しつつ待っていた。
「ロイは?」
「獣士団の訓練場で暴れてたわ」
その姿が想像できて笑ってしまう。
「ディーも今日は魔導士団に詰めるって」
「みたいだな。お前は特に予定ないんだろ?」
「ああ。午前中に服の採寸をするって言われただけかな。
他は特にない、けど…」
チラリと円卓の上の手紙を見る。
「返事、書かなきゃダメなんだってよ」
はあぁーッとため息をつく。
「グレイ、手伝って」
「えー、やだよ」
「そう言わずにさー。文面一緒に考えてくれよー」
拝むように必死にお願いする。
「仕方ないな…」
グレイもため息をつく。
その時部屋がノックされた。
どうぞと言うと、白い騎士服を纏った見知った男が顔を出す。
「よぉ、聖女ちゃん」
オスカーだった。
「え?オスカーが俺の護衛?」
「ああ。昨日勅令が出た」
来て早々、部屋の一角を埋め尽くすプレゼントに驚く。
「なんじゃこりゃ」
「聖女争奪戦だそうです」
他人事のように、乾いた笑い声と共に言うとオスカーが笑った。
オスカーが護衛に入るのはいいが、彼がどこまで事情を知っているのか気になる。
彼は俺たち3人の関係を知っている1人だ。さらにジュノーであることも知っている。
だが簒奪者や黒幕、囮の件について話してもいいのかどうか逡巡した。
だが、そんな俺の様子から察したのか、破顔しつつすぐに全部知ってると教えてくれた。
「ギルさんから直接護衛の件を頼まれたんだ。
団長やレイン、グリフィス、フィッシャーも知ってるぞ。
あと3、4人メンバーに加わるが、全員事情を知ってる奴だから安心しろ。
今頃、誰が護衛に入るか決闘でもしてるんじゃねーか?」
「全員第1部隊から選ばれるのか」
グレイがなんで?という疑問を抱く。
「全員じゃねえが、第1部隊は、ロマーノの時王都に居て、数人は状況を把握してるからな」
オスカーが説明し、なるほど、と相槌を打つ。
「で、今日はこれから何するんだ?」
オスカーが聞き、グレイと顔を見合わせてニヤリと笑う。
手紙の返事を考える仲間が増えほくそ笑んだ。
結局昼食の時間まで、ひたすら3人で円卓に座って返事を考え、書き続ける。
途中、マーサと共に服の仕立ての使用人がやってきて、フィッティングルームで頭から足先まで、細かく採寸された。
採寸が終わると、再び円卓に戻って手紙と格闘する。
グレイが送られた手紙やメッセージカードを読み上げ、時折ゲラゲラと笑う。
「ひでーな、この内容。
聖女様、貴方のことを思うと夜も眠れません。ぜひ貴方と一夜をともに」
ワハハハと笑う。
「ただのスケベじゃねーか」
「おいおい、こっちはもっとひでーぞ。
聖女様、貴方の聖なる棒で私を貫いてください。
聖なる棒ってなんだよ!語彙力ねーなぁー」
ギャハハと爆笑する。
男女問わず、一部の手紙にははっきりと下ネタ系の内容が書かれており失笑する。
「いやぁ面白れー。
聖女様、貴方の中に私の愛を注ぎ込みたい。私の愛を知れば、きっと私に夢中になるはずです。
ひっでーな!
ナニを注ぐんだ!ナニを!!」
涙を流して笑うオスカーに、俺も笑う。露骨な表現にほんと笑えるほど呆れる。
爆笑しながら返事を書き終え、執事に封書を預け終わったーと一息つく。
「お疲れさん」
ずっと書き続けて肩が凝り、肩を押さえながら腕を回した。
3人で昼食に向かうと、ちょうどサイファーに出会った。
「よぉ、サイファー」
「オスカー。今日からか」
「ダリアはまだ?」
「ああ。まだ帝国だ」
2人の会話に、初めて聞く名前が出てグレイを見ると、グレイがコソッと教えてくれて、ダリアがサイファーの伴侶だと知った。
結婚してたのか…。
言われてみれば、サイファーは俺と同じくらいだし、当然っちゃ当然か。
それにしてもその伴侶が何故帝国にいるのか気になるところではある。
「ダリアは帝国の侯爵家の出なんだ。里帰りも兼ねて外交に出てるんじゃないか?」
「外交?」
「ああ、ダリアは外務局局長だ」
そういえば、各局紹介の時に外務局局長がいなかったことを今更思い出す。
第1王子の伴侶が外務局局長。
しかも帝国貴族の身内か。
そういえばサイファーは外交に強いという話をしてたっけ。
伴侶のダリアさんもきっとすごい人なんだろうな。
新たに知った事実に軽く衝撃を受ける。外交とか内政とか、俺にはとんと無縁だな、と学のなさを痛感した。
「そうだ、ショーへー。ぜひ聖女の力を発揮してもらいたいんだが、構わないだろうか」
食べながらサイファーに言われる。
詳しく話を聞けば、国民への聖女の力を示す場を設けたい、とのことだった。
言われてみれば、聖女が来るぞ、と公表しただけで、国民は聖女の力を見たわけではない。
こういうことも必要なのか、と他人事のように思った。
「ショーへーに街の治療院へ足を運んでもらおうかとも考えたのだが、聖女教会の件もまだ未解決だからな。
今はまだ王城から出ない方がいい。
怪我人を動かすのも気が引けるが、どこか1箇所に集まってもらおうと思っている」
「わかりました。俺はいつでも構いません」
「すまんな。国民に通達を出す。早くて明後日にはやってもらうことになるだろう」
「ああ、そうだ。一つだけいいですか?
怪我の程度にもよりますが、人数が多いとそれだけ魔力を使うことになるので、ヒールを使った直後に意識を失うかもしれません。
眠れば元に戻りますから、倒れても気にしないでください」
いきなり意識を失って大騒ぎになられても困るので先に言っておく。
「了解した。どの程度の怪我なのかも確認させよう」
明後日に仕事が出来た。
これでただ飯食らいじゃなくなる、と気分が上がってニコニコしながら自室への廊下を歩く。
だが自室に戻って、さらに増えているプレゼントに愕然とし、高揚した気分が一気に地の底に落ちた。
部屋を埋め尽くす、花、花、花。
「こりゃぁ…」
流石にオスカーもその有様に翔平に同情する。
「花に罪はございませんから…」
マーサ達が部屋の中の花を選り分け、城内からかき集めてきたであろう花瓶に活けていく。それを部屋から運び出し、城内の至るところに飾られていった。
「城が花だらけになるな…」
「グレイ~オスカァ~手伝って…」
円卓の積み上げられた手紙の束に、翔平が半べそをかいた。
結局一日中届く花やプレゼント、手紙に招待状、それらの返事を書くだけで1日が終わってしまう。
「なんかすごい無駄な1日だったような気がする…」
ソファに座った3人が、げっそりしつつ体を投げ出した。
「明日も続くぞこれ…」
「も~やだぁ~手が痛い」
今日1日で100通以上に手紙を書いた。
昨日と今日と、連続で送ってくる奴もたくさんいて、返事に非常に困る。
「お貴族様は必死だな」
オスカーが馬鹿にしたように笑う。
「ショーへーちゃんを手に入れれば大出世だからな。そりゃ必死になるわ」
贈り物をしてくる奴は7割が貴族の子息子女達。残りの3割が富裕層からのものだった。
「ほんとマジで勘弁してほしい…」
顔を両手で覆って泣く仕草をする。
「まあ、キースが来るまでの辛抱だ。頑張れよ」
オスカーが慰めてくれる。
「そのキースさん、アラン様の好きな人って聞いたんだけど…知ってる?」
「ああ、まあそうだな」
グレイもオスカーも知っているようで、顔を見合わせた。
「キースは最初アラン専属の執事だったんだ」
「でも、アランがキースに惚れて、プロポーズしたのをきっかけに専属から外れた」
「それって…公私混同を避けるため?」
「それはわからんが、キースが自分で転属願いを出したと聞いたぞ」
「えぇ…それはキツいな…」
プロポーズを断られるばかりか、自分から勤務先を変更するなんて、アランにしたら大ショックだろう。
「まぁな。だが、アランはそれでもめげずに何度もキースにプロポーズしては、その度にフラれてるw」
「恒例行事になってきてるなw」
グレイも何度かフラれる場面を見たことがある、とおかしそうに笑った。
「まあ何か考えがあるんだろうな。
キースもアランに惚れてるようだし、相思相愛で恋人と言えるんだろうが…。プロポーズだけは受けない」
オスカーがお茶を飲む。
「さすが戦闘執事なだけあって、表情に出ないからな。
奴が何を考えているのかはわからん」
「せんとうしつじ?」
「ああ。執事の仕事をこなしつつ、主人の護衛もするんだ。
ギルさんに仕込まれてるから、かなり強えぞ。しかも執事としてもかなり優秀」
「へぇ…」
そんな人が俺の執事でいいのか、と思ってしまう。しかも自ら望んだと言っていた。
キースがどんな男なのか、ものすごく気になってくる。それと同時に、アランとキースの関係についても、俄然興味が湧いた。
王族にプロポーズされた一般人として、ぜひともその辺についても話したいと思ってしまった。
「まあとにかくだ。明日の分の返信についてはキースに任せればいいさ」
「そっか…うん、そうするよ…」
明日の分の返事を書くことにはなるが、内容を考えなくても済むかもしれないとわかってホッとする。
肩の力を抜きつつ、お茶のおかわりを淹れるために席を立つ。
「おかわりいる?」
2人から空のカップを受け取り、お湯を沸かす。
ポットに組み込まれた魔鉱石へ魔力を通すと熱を発する仕組みで、電気ポットのようですごく便利だ。
お湯が沸く間、何気に近くにあったプレゼントのバラを触る。
真っ赤な薔薇が綺麗で、思わず手が出た。
「いて」
チクッと指先に薔薇の棘が指先に刺さる。
「贈り物なのに棘の処理してないってか。雑だなぁ」
オスカーが笑う。
刺さった人差し指を見ると、プツッと血が滲み出て赤い玉を作っていた。
指を口に入れ血を舐めると、ヒールを使って一瞬で治す。
「なぁ、この箱、開けてもいいか?」
グレイが積み重ねられたプレゼントの箱の山を見ながら言う。
「いいよ。っていうか開けて。自分で開けるなって言われたからさ」
ティーカップにお茶を注ぎながら返事をする。
「俺もやる」
それからしばらくは、2人で箱を開けるのに集中する。
俺は2人が散らかしたリボンや包み紙を拾って綺麗にたたみ1箇所にまとめて行った。
「金かけてんな」
オスカーが大きな宝石の入ったイヤリングを俺に見せる。
「これなんか、金貨10枚はするぞ」
箱の中身を物色しながら、金額当てクイズのようなゲームをして遊ぶ。
「なぁ、貰うつもりないんだけど、そうなると、これはどうなるわけ?」
たくさん出てきた宝飾類やクッキーなどのスイーツ。プレゼントとして受け取ったが、使うつもりはない。
「とりあえず保管して、しばらくしたら転売して金に代える。お前のものだから、お前の金だぞ?」
なるほどと思ったが、別にお金があってもな、と贅沢なことを考えてしまった。
今はここから出られないし、買い物にも行けない。別に欲しいものもないし、と思った。
「寄付とか…?」
「まぁ、それでもいいかもな。……もし寄付するなら、孤児院にしてくれるか」
グレイが突然言った。
「孤児院?知り合いでもいるのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが…」
グレイが苦笑する。
「俺は…、孤児院出身だからよ…」
そう言われてグレイをじっと見る。
4ヶ月も一緒に居て、グレイの過去のことを知らない。
ロイとディーについては色々知ったし、2人とグレイが子供の頃からの付き合いだというのも、悪ガキトリオと言われるほど仲が良いのも知ってる。
だが、グレイ個人については何も知らないと思った。
「ごめん…俺、お前のこと何も知らないんだな…」
立ち上がると、グレイに近寄り、その騎士服の袖を握った。
「言ってないからな」
グレイが笑う。
「今度、聞かせてくれよ。お前のこと、孤児院のこと」
「ああいいぞ。全部片付いたら、一緒に孤児院に行ってくれるか?
聖女様が来るなんて、ガキどもが喜ぶわ」
グレイがニッコリ笑い、その笑顔がとても眩しいと感じた。
4人の中で一番年下なのに、時折りパパみたいだと感じたのはこのせいか、と納得した。
「ところで、熱いのか?」
「え?」
「顔が赤い」
グレイが俺の頬に触れる。
「ん!」
途端に体に走った電流のような刺激に声をあげた。
「どうした?」
「いや…なんでもない…」
自分でも何だ今の、と首を傾げて円卓に戻ってお茶を飲んだ。
「お茶、冷めちゃうぞ」
箱を開けるのに夢中になっている2人に声をかける。
グレイもオスカーも、一通り中身を確認した後に再び箱にしまい円卓に戻る。
「そろそろ戻るかな」
時計を見ると、午後9時を回った所だった。
「明日のショーへーの予定は?」
「ああ、明日はマーサが夜会について説明と指導をするそうだ」
「明日は俺とロイの予定だが、今日他の護衛が決まってれば、そいつが来るかもしれんな」
2人の会話が聞こえてくるが、頭に入って来ない。
どこか遠くで2人が話しているような感じで、耳の奥がグワングワンと反響しているようだった。
さらに体が熱い。
じっとりと汗が滲んでくるのがわかる。
「勝負は誰が勝ったんだろうな」
グレイが翔平の護衛権をかけた決闘の勝敗を気にする。
「俺の予測ではアビーかジャニスってところか」
「2人ともかなりショーへーを気に入ってたな」
「まあな。周りにいないタイプだからな。可愛くて仕方ないんだろ。俺もだけどw」
全く内容が頭に入って来ない。
熱い。
体が熱い。
それに、ゾクゾクと背筋に悪寒が走る。
今朝、花の匂いに咽せて窓を開けたから風邪でも引いたのだろうか。
とにかく熱い。
「ショーへー?」
グレイが俯いている俺を気にして声をかけてくる。
「どうした?」
オスカーが俺の腕に触れた。
「んぅ!」
その瞬間、全身に再び電流が走る。
オスカーが触れた所から、ゾクゾクとした快感が走った。
何これ。
腕を触られただけなのに。
「っは…ぁ」
両腕で自分の体を抱きしめるように抱えた。
自分でも吐く息が熱いのがわかる。
「グレイ…、オ、スカー…」
涙目で、2人へ顔を向けた。
ゾクゾクとさっきから快感が全身を襲う。
はっきりとあり得ない情欲が現れ始め、全身が性感帯になったような錯覚を覚える。
その俺の表情を見た2人が驚き、すぐにオスカーが反応した。
「薔薇の棘か!!」
オスカーが翔平が触れた薔薇の花束を見る。そして、指を刺した薔薇の棘先が変色していることに気づいた。
「やられた…。
グレイ!ロイとディーを呼んでこい!!大至急だ!!!」
「わかった!」
グレイが部屋を飛び出し、オスカーが俺に近寄る。
「ショーへー、苦しいか?」
そう聞かれ、コクコクと頷く。
オスカーが翔平の全身を見つめ、その体が小刻みに震え、必死に情欲に耐えているのがわかった。
「ショーへー、毒じゃないから安心しろ」
オスカーの声が頭の中に反響する。
毒じゃない、というのは理解できた。
だが、毒じゃないなら、今のこの状況は何なのだ。
体の奥、下腹部からジクジクと痛みにも似た疼きを感じる。
すでにペニスは硬く張り詰めて、陰嚢も膨れ上がっている。
「ふ…んぅ…」
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極力優しく語りかける。
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部屋に戻って、贈り物の目録を確認し、薔薇の花束を贈った奴の名前を確認する。
イライジャ・ルメール
ルメール伯爵家4男。
親の脛に齧り付き、何の仕事もしていない、伯爵家の道楽息子の名前に、舌打ちする。
その名前を確認したすぐ後、ドアがノックされる。
「ショーへー、もうちょっと頑張れよ」
一言声をかけ、ドアの外に出る。
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「シドニー、今夜、侵入者があるはずだ」
オスカーは、翔平が媚薬を盛られたことを伏せ、状況を説明する。
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「お願い…、入れて」
悲鳴のように翔平叫び、ロイが解してもいないアナルにペニスをあてがうと、そのまま挿入する。
グプププと音を立てて、ロイを飲み込んで行く。
「あ“ー!!あ、あ」
待ち侘びたロイのペニスに、それだけで絶頂に達し、何の準備もしていないのに、どんどんロイを飲み込んで行く。
「あー!いい!もっと!」
翔平が望むように、ロイが容赦なく腰を打ちつける。
いつも以上に熱い翔平の体に、腸壁の絡みつくようなうねりに、ロイも声を上げた。
ドチュッドチュッと腰を打ち付け、中を抉るように突くと、翔平が歓喜の声を上げる。
「あぁ!あ、いい、もっと、もっとして!」
ガンガン腰を使って翔平を突き上げる。そのたびに翔平のペニスから精液が溢れ、腹や胸に飛び散る。
ディーが翔平の横に座り、翔平の乳首を弄りながら、飛び散った精液を塗りつけるように撫でる。
「あ、んぅ」
クリクリと乳首を指で弄られ、それだけも大きく反応を返す翔平に、ディーも湧き上がる情欲に震えた。
「ディー…」
ロイに突き上げられながら、ふと手に触れたディーのペニスに気付き、手で握り込む。
「あ、ショーヘイさん」
翔平の手に握られ、ゆるゆると上下に扱かれて、とろりと蜜を溢すと、翔平の目がうっとりとディーのペニスを見つめた。
ロイがその翔平に気付き、体勢を変える。
翔平の足を抱え上げ、体を自分の方へ下げると、翔平は近くなったディーのペニスへ顔を寄せた。
「ん!」
そして、翔平が口を開け、ディーのペニスを口に含む。
「ん、んぅ…」
手を添えて、飴を舐めるようにディーのペニスへしゃぶりつく翔平に、ディーがたまらず、翔平の髪を掴む。
「はぁ…、ディーの…大き…」
全部口に入れることが出来ず、舌を使って舐める翔平の表情が、仕草全てが愛おしい。
一生懸命ディーのペニスを口に含んで、舌と唇で愛撫する翔平に、通常よりも早く我慢の限界が来る。
「あ、ショーヘイさん、出ます」
「ん!」
その瞬間、翔平の上顎にディーの精液が放たれる。
口の中で、熱いほとばしりを受け、ペニスから口を離した翔平がトロンとした視線をディーに向ける。
その口から、ドロっと精液を溢し、その姿を見ただけでディーのペニスが再び熱を持った。
「すげぇ…」
ロイが呟く。
翔平の足を極限まで開くと、最奥の壁を抉るように突き上げた。
「あ”!あ“あ!お、奥!奥が」
ゴツゴツとぶつかるロイのペニスに、何度も空イキを繰り返す。
「出すぞ」
「んぅ!出して!中!中に!」
その瞬間、最奥に向かってロイの精液が放たれた。
「はぁ…」
腹に触れて、中に感じるロイの熱に、歓喜の表情を浮かべる。
「なぁ…もっとして…」
翔平が腕を伸ばす。
「もっと欲しい」
媚薬のせいで完全に理性を快楽の乗っ取られ、うっとりと2人を見つめる。
そんな翔平に、2人が唾を飲み込み、互いに顔を見合わせると、頷いた。
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突然力を失った翔平を、すかさずディーが受け止めた。
「ショーヘイさん?」
耳元で声をかけるが、返事がない。
「終わったな…」
ロイが数度腰を揺らすと翔平の中に放ち、しばらくその余韻を味わった後、ゆっくりとペニスを引きぬいた。
途端にアナルから2人の精液が大量にこぼれ落ちた。
「はぁ…」
「流石に…疲れましたね…」
翔平を抱きしめ、優しく頭を撫でながら、そっとベッドに横たえる。
時計を見ると、夜中の2時。
5時間近くSEXしてたことになる。
「疲れたけど…すげぇ良かった」
ニヤァとロイが笑う。
「確かに」
ディーも笑う。
「明日、ってもう今日か。ショーヘー動けないな」
「ですね」
ロイがベッドから起き上がると自分にクリーンをかけ、新しいシーツを取りに行く。
ディーもクリーンを自分にかけると、翔平にも念入りにクリーンを使う。
シーツを持って戻ってきたロイに交換をお願いし、翔平を抱いてベッドから降りた。
「多分、記憶ないでしょうね」
「だろうな。媚薬のせいでぶっ飛んでたからな」
「あんな姿、もう2度と見られないですよね…」
「そうだな…」
2人が明らかに、残念だ、という表情になった。
交換して綺麗になったシーツに翔平を寝かせ、寝夜着を着せる。
「ディー、お前はここにいろ。俺が状況を確認してくる」
服を着ながら、翔平の頭を撫でているディーに言った。
「わかりました。お願いします」
そう言い、自分もベッドから降りて服を着る。
ロイが一度翔平に近寄ると、眠っているその額にキスを落とす。
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ロイが出て行き、残されたディーは1人でお茶の用意をする。
ベッドで眠る翔平を気にしつつ、そのまま朝を迎えた。
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「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
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メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
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