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王都編 〜パレードから謁見そして再び囮へ〜
98.おっさん、尊敬される
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「ショーヘー、キスしたい」
唐突にロイが言い腕を掴まれてじっと見つめられた。
「なんで?」
「だってよー。これから一緒にいられる時間がどんどん減ってくしよー。
できる時にしたい」
ロイのセリフに思い切り呆れる。
「なんじゃそりゃ」
「そうですよねー。これから交代で警護に入るわけですし、今までのようにはいかないですよね」
ディーもロイの口車に乗せられたように俺に迫ってくる。
「なー、チューしようチュー」
んー、と口を突き出して俺に迫る。
ディーも口こそ突き出さないが、触れる位置にまで迫った。
ジリジリと迫る2人に押され、どんどんと壁に追い込まれ、渋い顔をしつつもキスを受け入れることにした。
チュウッと吸い付かれるようなキスに、唇を舐められて味を確かめるようなキス。
交互に何度もキスされ、浅いキスから深いものに変わり、舌を絡ませ合う。
「ん…ぁ」
流石に濃厚なキスになってくると身を捩って抵抗の意思を示す。
だが、ディーに舌を吸われるのと同時にロイに耳を舐められ、ゾクゾクと快感が走った。
「キスだけだろ!」
ディーを押し除け、舐められた耳を押さえ、顔を真っ赤にして抗議すると、ニヤニヤと2人が笑う。
「感じちゃった?」
ロイの言い方にムッとし、ずいっと自分から体を寄せると、ロイの背後に手を回し、右手で尻尾の付け根をギュッと握った。
「ギャン!」
途端に犬のような鳴き声を上げ、ロイの尻尾が総毛立つ。
「すみません、ごめんなさい」
尻尾を俺から奪い返し、ススっと離れたロイに笑った。
「犬科は大変ですねぇ」
ディーが笑いながら言うので、俺はディーにも近付き、ギュッと腸骨の上の部分を握る。
「ひ」
ゾクッと鳥肌が立ち力が抜ける感覚がディーを襲う。
「お前はここが弱いよな」
すぐに手を離してドアに向かった。
「な、なんで知って…」
2人に向かって、いつもいつもやられるわけじゃないんだ、とフンと鼻を鳴らし、行くぞと声をかけた。
しゅんとした2人が案内を再開する。
午後は最初から馬で移動する。
今度はロイと一緒にタンデムすることになり、俺にしがみつかれてロイが嬉しそうにニヤつく。
馬上の高さに恐怖が先行し、揺れるたびに落ちるんじゃないかとヒヤヒヤした。
「大丈夫だ、落ちないって」
ロイがしっかりとお腹に手を回してしがみつく俺の手に触れ撫でてくれるが、俺はそれどころではない。
恐怖で体がガチガチに固まり、景色を眺める余裕なんて全くなく、魔塔に着くまでロイの背中に体を押し付けて、馬という絶叫マシンに耐えた。
魔塔に近付くにつれて、団員の魔導士の姿が多くなる。
魔導士とは言っても、いかにもな三角帽子にローブ姿と杖、のような映画やゲームのようなものではなく、他の士団と同様に、薄い灰色の騎士服を着ている。
色で魔導士団だとわかるが、騎士服だと知らない人からしたら、きっと普通の人に見えるだろう。
魔塔を取り囲む柵を通過すると、魔導士達がわらわらと俺たちの周りに集まってきた。
「副団長!お帰りなさい!」
「ディーゼル様」
口々にディーにお帰りなさいと声をかけ、嬉しそうにニコニコと笑う。
「ただいま。悪かったね、長い間留守にして」
ディーが馬を降り、俺が降りるのを手伝ってくれる。
ロイも降りると、やっぱり獣士団とは雰囲気が違うなぁ、と落ち着いた雰囲気に笑う。
騎士団も獣士団も、割とガヤガヤと騒々しい雰囲気だった。だが、魔導士団は整然としている。
集まった魔導士達の雰囲気も落ち着いているし、とても静かだと感じた。
「エイベルは?」
「執務室にいらっしゃいますよ」
近くにいた魔導士に確認し、ディーが頷く。
「あの…、聖女様」
1人の若い女性の魔導士が俺に近付くと、手を胸の前で組んでもじもじしながら話しかけてきた。
「なんですか?」
微笑みながら聞き返すと、女性が赤面する。
「あの、握手してください」
その言葉に驚く。
「あの、私、路地の襲撃で聖女様の戦う姿を見て、感動して…」
「あ、わかる!俺もあの時怪我を治してもらった!」
途端に俺も、私も、と声があがる。
「一瞬であの場にいた全員の怪我を治すなんて…」
魔導士達が俺をじっと尊敬の眼差しで見る。
「あ…えっと…」
その視線にものすごく照れてしまった。赤面しつつ、目を泳がせる。
「あの、握手…」
女性がダメですか?と見上げてきて、照れながらも手を差し出すと、両手でギュッと握られた。
「俺も!」
「私も!!」
入れ替わり立ち替わり俺の手を握っていく。
「すげー、聖女様と握手したー」
「聖女様の魔力あったけー」
口々に嬉しそうにする魔導士達にますます照れてしまった。
「ほらほら、聖女様が困ってますよ」
ディーが苦笑しつつ嗜めると、魔導士達がすみません、と一斉に一歩下がる。
「ディー」
そんな囲まれた俺達に、外側から声がかけられた。
「エイベル。ただいま」
「おぅ。お帰り」
灰色の騎士服に白いマントを羽織った男が近づいてくる。
40代くらいの髭を生やした男が、数人の部下を引き連れて近づき、周囲にいた魔導士が道を開ける。
「4ヶ月分のお前の仕事、溜まってるからよろしくな」
「えー…、代わりにやっといてくれても…」
「やだよ」
即答しながら、2人が握手を交わす。
「あんたが聖女様か。魔導士団団長のエイベルだ。よろしくな」
ニカっと笑うエイベルに、騎士団第1部隊のおっさんを連想してしまう。
がっちりとした体格で、魔導士というより、肉弾戦が得意そうだと思ってしまった。
「ショーヘイ・シマダです。よろしくお願いします」
お辞儀をした後に握手を交わす。
「ロイも久しぶりだなぁ。また悪ガキトリオでつるんでたんだろ」
その口ぶりで、やっぱり第1部隊のおっさんに近いと、クスッと笑う。
「早速で悪いが、聖女様」
エイベルがニコニコと笑いつつ、俺の手を取った。
「デモンストレーション、お願いできますか」
「え?」
笑いながら言われ、笑顔で聞き返す。
「魔力量が半端ないらしいじゃないか。なかなか面白い魔法も使うって聞いてな。是非見せてもらいたい」
エイベルが子供のようにワクワクしている表情になり、やっぱり彼は魔導士なんだと改めて認識する。
ディーとロイへ確認の視線を送ると、2人が頷いたため、エイベルの後をついて魔塔の裏側にある訓練場へ進んだ。
その途中、エイベルと一緒にいた第1から第4部隊までの隊長、副官を紹介してもらい、それぞれと握手した。
訓練場に着くと、俺たちの後ろをゾロゾロとついてきた魔導士達が、一斉に周囲に散らばり、訓練中だった魔導士が場所を空ける。
聖女が魔法を使うと聞いた魔導士達が続々と訓練場に集まり、その魔法を一目見ようとひしめきあう。
ドルキア砦の訓練場のような、荒野に向かって魔法を放つわけではなく、訓練場の外へ被害が及ばないように、全体を防御魔法が何重にも張られていた。
周囲を眺め、ちょっとやそっとじゃ、打ち破れない強力な魔法壁だと気付く。
「ショーヘイさん、あまり派手なのはダメですよ」
「そうだぞ。軽くだぞ、軽く」
ロイとディーに念を押され頷く。
「えっと…、どんなものを使ったらいいですか?」
「なんでもいいぞ。出来るやつを見せて欲しい」
「わかりました。
あの的とか、壊しても問題ないですか?」
訓練場に点在している射的の的のようなものを示して確認する。
「壊せるものならな」
エイベルがニヤリと笑い、あの的にも強力な防御魔法が施されていると気付く。
「それじゃ」
一応、エイベルや隊長たちに会釈した後、魔法を放つ位置まで進む。
「まずは…」
うーんと、何を使おうか少し考えた後、右手を前に出し、炎の玉を一発、的に向かって放つ。
的に当たって炎が弾け飛んだ。
続けてもう一発。
さらにもう一発。
連続で同じ炎を次々と放つ。
その様子をじっと見ていたエイベル達も、余裕の表情で俺の魔法を見ている。
まぁ、このくらいはここにいる魔導士なら誰にでも出来ることなのだろう。
チラッと横目で確認し、少しづつ魔法を派手にしていく。
炎の玉の連発スピード上げ、それでも壊れない的を、どうしても壊したくなった。
1秒に3発ほどだった炎の玉が、倍になり、10発になり、20発へ変化させていく。どん、どん、どん、という音が、ドドドドという音に代わり、次第に周囲の魔導士達の口が開き塞がらなくなっていく。
「おいおい…」
流石に隊長達も小さく呟く。
それでも的は壊れない
「これならどうだ」
俺もだんだん楽しくなってきて、なんとしても的を破壊したいと思う。
右手から炎の玉を連発しながら、自分の周囲に、無数の魔法陣を展開させ、その魔法陣からも炎の玉を連発する。
エイベルの口が開き、翔平の周囲に展開した数十の魔法陣に驚愕する。
放たれた炎の玉が全て的へ集中する。
だが、それでも壊れない。
「壊れないな…」
全く壊れる気配のない的に、炎の玉を打ち消した。
うーん、と壊す方法を考え閃く。
一度おろした右腕を再び上げ、指鉄砲を作ると、人差し指の先を的に向ける。
左手で右手首に添えると、今まで放ってきた炎の玉の魔法と同じくらいの、いや、少しだけ魔力量を増やして、指先1箇所だけに集中する。
ブワッと魔力風が巻き起こり、俺を中心に風が渦を巻いた。
光が指先一点に集中していく。
「このくらいかな…」
あまり圧縮しすぎると、多分、この訓練場の防御壁も貫いてしまう。
そう感じて、ある程度の魔力で止め、集められた魔力を弾丸の形に形成すると、クンッと銃を撃つ感じで弾丸を弾いた。
ドン!!!
弾丸が放たれた衝撃で強風が俺も周囲も襲い、弾丸が的の中心を貫き穴を開け、防御壁も数枚内側から割ってしまった。
「あ!やりすぎた!」
砕け散った魔法壁が周囲に拡散して、キラキラと光の粒が降ってくる。
壊してしまった魔法壁に焦って、慌てて後ろを振り向く。
「ごめんなさい、壊しちゃっ…た…」
シーンと静まり返った訓練場に今更気付く。
「す」
誰かが言った。
「すげえええええ!!!!!」
その声でワー!!!と大きな歓声が起こり、そのビリビリと空気を震わせる声にビクッと肩をすくませる。
「おいおいおいおい」
エイベルが俺の側にくると、ガシッと俺の肩へ腕を回す。
「すげえな!聖女様!マジでびびったわ!!」
「魔力量、半端ない…」
隊長が冷や汗のような汗をかいて、半笑いで俺を見る。
「どうだ!すげーだろ聖女様は」
何故かロイがドヤ顔をする。
「魔力は大丈夫なのか」
「はい、大丈夫です。まだ全然…」
近くでガハハハと笑う声に恐縮しながら答える。
「このくらいで枯渇するような総量じゃありませんよ」
ディーもドヤ顔で言う。
「マジか」
「どうやったらこんな量になるんだ」
エイベルがゲラゲラと笑う。
「それに、最後あの魔法…。初めて見ました。どうやってるんですか?」
隊長達が目をキラキラさせて聞いてくる。
「あ、えっと…」
ワイワイと俺の周囲に魔導士達が集まり、俺が撃ち抜いた的を近くで見ようと、大勢が訓練場の中を歩き回る。
あちこちで、すごい、すごい、と興奮したような声が聞こえ、ものすごく照れ臭くて、顔を赤くして縮こまった。
魔塔への挨拶を終えて出る時、ほぼ魔導士全員から盛大なお見送りを受ける。
また来てくださいねー、次は是非指導を、と大勢に言われつつ手を振られ、ロイにしがみついた右手をそろそろと離して、手を振り返す。
「やっぱすげーな、お前の魔法。面白れーわ。俺も今度あの指のやつやってみよー」
ロイが笑いながら馬を操る。
「きっとロイならすぐに出来ると思うよ。あれはロイのインパクトがヒントになってるから」
「どういうことですか?」
隣の馬上でディーが聞いてくる。
「ロイのインパクトも拳に魔力を圧縮してるだろ?
それと同じ。指先に魔力を圧縮させてるだけだ」
「簡単に言いますね…」
ディーが苦笑する。
「それはかなり難しいことですよ。ロイのインパクトだって、かなりの修練を積んでようやっと…」
ディーが話している最中、ポンとロイの指先から魔力の弾丸が空に向かって打ち出された。
「出来た」
それを見たディーが顔を顰め、呆れた表情をする。
「なるほどね。こういうことか」
ロイが再び、小さな魔力の弾丸を空に打つ。
「いやいやいやいや…、それは…」
呆れ顔でため息をつく。
「もういいですよ…、歩く非常識と戦闘狂に常識を求めようとした私が馬鹿でした」
ディーの言葉に、俺もロイも声に出して笑った。
各士団の挨拶を終え、元来た道を戻る。
次は各局へ挨拶へ行くために、初日に馬車を降りた、王城正面の回廊の前で馬を降りると、そのまま王城へ入った。
回廊から中へ入ると、改めてその宮殿たる光景に口が開く。
「すげぇ…」
初日も驚いたが、改めて周囲を見渡し、キラキラと輝く豪華な装飾に目を奪われる。
「こっちですよ」
左の通路を進み、そのまま奥まで進めば王宮の方へ入って行くが、その手前で曲がり執務棟へと入る。
「まずは総務局です」
廊下を進み、俺たちに気付いた数人が廊下の端に避けて頭を下げる。
働いている人達の服装は違うが、雰囲気はオフィスビルそのものだった。
忙しそうに動きまわる人々、執務室では、並べられた机に向かって、黙々と書類を作ったり、読み込んだりしている姿を見て、懐かしく思った。
総務局、財務局、経済局、と見て周り、どこも似たような感じで、文官達は書類に目を通して、書き物をして、書類を持って動き回っていた。
だが、副局長以上の、いわゆる貴族達は、ペンを握ることもほぼなく、部下に言われたことを聞き、たまに署名するだけで、こっそり覗いた経済局の部屋では、副局長だというどこかの貴族の次男が自席で居眠りしている姿も目撃する。
「お恥ずかしい限りです…」
ディーがため息をつきながら、貴族というだけで要職につき、仕事をしない奴らを睨みつける。
「でも、その分、部下の人たちは優秀そうだけど」
どこの世界にも、働かない上司というのはいるものだな、と考えながら、サラリーマン時代を思い出していた。
各局の様子を見て回っている間、何度も貴族の子息子女達に声をかけられ、熱心にアピールされる。
自分はどこそこの貴族で、これだけの仕事をして、これだけの部下がいる、ということを自慢げに話すのを、微笑みながら黙って聞く。
昨日一度会っているのだが、記憶に残らないほどどうでもいいと思ってしまった。
だが、視線をそいつらの後ろに向けると、はっきりと嫌な顔をしている部下達の顔が見え、どいつもこいつも口だけなのがその顔でわかる。
「軍務局と外務局は別棟です。
そちらも見に行きますか?」
「いや、場所だけわかればいいかな…」
この棟を見て、どこも似たようなものだと思ったし、働いている人たちが俺たちを気にする姿を見て、邪魔になると考えて断った。
「アラン様もそっちに?」
「ええ。王と宰相の執務室もそっちにあります」
階段を降り、とりあえず別棟へ続く廊下を渡り、入口までは行って見た。
さすが軍部ということもあって、文官よりも騎士の方が多い。
「改めて挨拶にはいきませんが、この他に兵士官舎、研究棟があります」
口頭だけで説明を受け、その広さに舌を巻く。
この王城だけで何人の人が働いているんだろうと思った。
「すごいな…」
王城の出入口に戻りながら、辺りをキョロキョロと見渡して、今まで行った場所の地図を頭に叩き込む。
「じゃぁ、次は…」
「ちょっと休憩しようや」
ロイが疲れたという表情で声をかけた。
「そうですね。一度戻りましょうか」
自室に戻り、ロイが3人分のお茶を淹れてくれ、円卓で寛ぐ。
「広いよ…すごい広い…」
ズズッとお茶を啜り、一息ついた。
「慣れますよ」
ディーが笑う。
その時、ドアがノックされた。
「どうぞ」
返事をすると、執事が入ってきた。
「聖女様、贈り物が届いておりますが、お持ちしてよろしいですか?」
「え?贈り物?」
なんで?誰から?とキョトンとするが、ロイもディーも顔を顰めた。
「ちょっと待て、見にいく」
ロイが席を立つと、ドアの向こう側に消え、しばらくしてから戻ってくる。
「いいぞ、入れてくれ」
ロイの後ろから、次々と花々が部屋に運び込まれた。
「は?えぇ?何これ」
思わず立ち上がって、どんどん部屋に持ち込まれる花束とプレゼントの箱類に唖然とした。
「始まりましたね。聖女争奪戦が」
ディーが苦笑した。
執事数人の手によって、軽く10分はかかって全ての贈り物が部屋に並べられた。
その前で立ち尽くしてその品々を見る。
ロイとディーも山になった贈り物を見つつ、花束に差し込まれていた、メッセージカードを取ると開封した。
「愛しの聖女様、貴方を一目見た時から虜になりました」
「聖女ショーへー様、貴方のヒールで私の恋心を癒してください」
「聖女様、一目惚れいたしました。是非プライベートでお会いしたい」
「貴方のその麗しいお姿が目に焼き付いて離れません。貴方の腕に抱かれたい」
次々と棒読みで読み上げる2人に唖然としつつ、その内容に思い切り吹き出した。
「アハハハハハ!!!なんじゃそりゃ!!!」
ゲラゲラと笑い、涙が込み上げる。
ディーがそのメッセージカードを集め、その他に届いている手紙やお茶会、夜会への招待状を数える。
「全部で28通ですか。ま、初日ならこんなもんでしょ」
「だな。ショーへー、どんどん増えるぞ。頑張れよ」
「え?何が?」
「ああ、そうか。お前はマナーを知らないよな…」
ロイが苦笑し、頭を掻く。
マナーという言葉に嫌な予感がする。
「まさか…、これに返事を?」
「そうです。全部に返事を書く必要があります。直筆でね」
ディーが俺を同情の目で見る。
「えー!全部にか!!」
「はい。一言だけでもいいので、ちゃんと書いてくださいね。マナーなので」
「そんなぁ…」
ガックリと項垂れる。
「当面の貴方の仕事ですね。頑張ってください」
円卓の上に束を置かれ、それを恨めしそうに見つめる。
「キースが来てからでもいいですが、誰が送ってきたのか一覧にする必要がありますね」
ディーがプレゼントの箱の一つを開封する。
「ふん、こんなもの」
中身を見て、ポイっと箱ごと円卓に放り投げる。その中を確認すると、シルバーの髪飾りが入っていた。
いや、確かに昨日は髪飾りをつけていたけどさ…、とヘアアクセを贈られたことに幻滅した。
ディーが箱の中身をいくつか確認して、途中で放り投げる。
「ロイ」
ディーが席に戻り、ロイに目配せしつつ再び円卓に3人で座る。
「争奪戦が始まったので、いくつか注意事項を言っておきますね」
「ああ。さっき俺がまず見に行っただろ」
2人が真剣に俺を見る。
「ああ、うん」
「今回はなかったが、贈り物の中にはおかしな物もある」
「おかしなもの?」
「ええ。明らかに異常な物がね」
「王宮に運び込まれるものだから、事前に中身などは魔法を使ってチェックされる」
「危険物がないか、とか?」
「そうです」
それは当然だろうと思う。
元の世界でも、赤外線を使って調べたりしていたし。別に不思議はない。
「だがな、危険物と判断されなかったものは通り抜ける」
「例えば?」
「使用済みの下着とか、SEX玩具とか」
「うわぁ…」
「実際に送られてきたことが何度か…」
2人がその時のことを思い出したのか、ものすごく吐きそうな顔をし、送られてきた物を想像して失笑した。
「いいか、絶対に自分で開けるな。執事に開けさせること。
それと、食べ物は絶対に口にするな」
「毒とか?」
「ああ」
ロイが頷く。
「わかりました。気を付けます」
うんうんと頷く。
「絶対だからな。美味そうだと思っても食うなよ」
「グレイじゃあるまいし」
そう返すと声に出して笑う。
ディーが執事に、贈り物の整理を依頼し、休憩を終えて部屋を出る。
次に案内されたのは王城の外、少し奥まった所にある別館だった。
王城の敷地内にあるが、城と呼んでもいいくらいの大きさで、館の前に王宮前の庭園よりもさらに大きな庭が広がっている。
「ここは夜会や来賓を招いたパーティーを開く場所です」
どうりで、王城よりもさらに豪華だと、開いた口が塞がらない。
警備兵にドアを開けてもらって中に入る。
「うわぁ…」
高い天井に巨大なシャンデリア、窓にあしらわれたステンドグラス。
どこを見ても眩しくて目がチカチカする。
「メイン会場の他に、休憩室や談話室、貴賓室などの客が泊まる部屋も全部ある」
「ほへー…」
間抜けな相槌を打ちつつ、館の中を見てまわる。
「ここで、今度お前のお披露目をするんだぞ」
「ええ、国中の貴族、街の有力者を一同に集めたお披露目会を計画してますので、そのつもりでいてください」
「いつ?」
「1週間後です」
思ったよりも早くて顔を顰めた。
「また挨拶挨拶挨拶かぁ…」
はぁとため息をつく。
「ここはそういう場所だから、かなり特殊でな。魔法は使えない。試しにやってみろ」
そう言われて、火の玉を出そうとしたが、魔力が何かに阻害されているような感じがして、何も出来なかった。
「ほんとだ…。じゃぁここで襲われたら…」
「無事じゃ済まない」
「そのために騎士がいるんですよ。彼らは魔法がなくても十分強いですからね」
なるほどね、と頷く。
彼らが常日頃鍛え、剣や槍、格闘術の訓練をしているのはこのためか、と納得する。
魔法が使えない、という状況もありうると知った。
「おそらく、今度の夜会で、例の最初の接触があるはずだ」
ロイの言葉にゴクリと唾を飲む。
そうか。
魔法が使えないこの場所で、守りはその分薄くなる。
どんな接触方法を使ってくるのかはわからないが、夜会がチャンスだと言える。大勢の人がいて、紛れ込み、俺に誘いをかけるにはまさに好都合だろう。
「魔法が使えない分、この館には色々仕掛けがありますから、また後日説明しますね」
館から出て馬に乗ると、王宮まで戻る。
だいぶ馬にも慣れて、まだしがみついているが、周りを見る余裕が少しだけ出てきた。
ゆっくりと木々のトンネルを抜ける。
これで乗馬が怖くなければ気持ちいいんだろうな、とロイの背中に頭を乗せ、練習してみようかな、と本気で思った。
社会科見学の最後の場所は王宮だった。
それぞれの自室以外にも、たくさんのドアがある。
食堂、談話室、娯楽室、厨房や使用人控室、色々見て周り、最後に1階の最奥にある大きな扉の前にくる。
「図書室です」
その大きな扉を開け放つと、巨大な図書室が眼前に広がり、独特な紙の匂いが辺りを包む。
4階まである王宮をその一角だけ吹き抜けになっており、4階までの高さの壁に、ぎっしりと本が詰め込まれている。
「すご…」
「これはこれは殿下…」
「ドアを入ってすぐの執務席に、メガネをかけた黒いドレスを着た女性が座っており、ディーに気がつくと立ち上がった。
茶色く長い髪をきっちりアップにし、背筋を伸ばした立ち姿にインテリの印象を持つ。
「ミルコ女史、こちら、聖女ショーヘイさんです」
「聖女様、初めまして。ミルコと申します」
スッとカーテシーで挨拶されて、慌てて自分も貴族用の挨拶を返す。
その俺の挨拶を見たミルコがにっこりと微笑む。
ミルコ、という名前に聞き覚えがあるが、どこで聞いたんだっけと必死に考える。
「殿下、ロイ様も、本をご所望ですか?」
「いえ、彼を案内している最中でして」
「そうでしたか。ついこの間、魔法学の新たな論文が発表されまして…」
ミルコが話し始め、論文と聞き、あ、とロイとディーの家庭教師だと、会話の中で一度だけ出てきた彼女を思い出した。
色々なことが片付いたら、色々教えてもらおうと思った。
図書室を出ると社会科見学は終了となる。
「最後になるんですけど、貴方に見せたいものがあります」
ディーが俺の手を取る。
誰かに見られたらマズいのではないかと思ったが、ここは王宮の中だし大丈夫かと思い直し、手を繋いだままディーについていく。
王宮の中、中央にある大階段の前で止まる。
この階段に来るのは初めてで、いつもは王城からも自室からも近い、小さめの使用人達が使用する階段の方ばかり使っていた。
「母です」
大階段を見上げると、階段を上がった踊り場に、レイブンの肖像画と、その隣にディーの肖像画がかけてあった。
いや、ディーじゃない。
女性だった。
「この方が…ソフィア王妃様…?」
ディーにそっくり。というか、ディーがソフィアに似ているのだ。
似ているどころじゃない。まるで生き写し。
ディーを女性にしたら、ソフィアになるだろう。
これなら父親や兄妹達がディーを溺愛するのもわかると思った。
「私が10歳の時に、亡くなりました」
ディーが母の肖像画を見つめ、俺の手をギュッっと握る。
ロイが俺に近寄ると、俺の背中に手を添える。
「親父さんから名前聞いたのか?」
「うん…。俺、王妃様に似てるって言われた…全然見た目は似てないけど…」
「いえ…わかります…似てますよ。雰囲気が…」
ディーが横にいる俺をじっと見る。
「貴方といると、安心する…。落ち着くんです。母がそばにいた時と、同じなんです」
再び母の肖像画を見上げる。
「ディー…」
「俺は王妃様には会ったことないが、ディーやユリア、兄貴達からたくさん話を聞いた」
ロイの手が背中から肩に移動し、抱きしめる。
「王妃様とお前は似てると思うよ。優しさとか、思いやりとか…」
「ええ。でもしっかり自分の意思も考えも持っているところもね」
ディーの声が少しだけ震えている。
「父は、母にメロメロでした。
両親は、大恋愛の末に結婚したんです…」
ディーが少しだけ涙を浮かべて笑い、俺を見る。
「ショーヘイさん…愛しています…。私も両親と同じように大恋愛をして結婚したい」
「うん…俺も、愛してるよ、ディー」
ゆっくりと唇を重ねる。
「ロイもありがとう。
ショーヘイさんを見つけてくれて、貴方がいてくれて本当に良かった」
ディーに言われ、ロイが少しだけ照れる。
「お前は俺で、俺はお前だ。
俺もショーへーと大恋愛をして結婚する。
俺たちは、3人で家族になるんだろ?」
ロイが俺の頬にキスをする。
「ああ。3人で家族になろう」
両腕を上げて、2人の体に腕を回す。
「愛してる」
2人が左右から俺を抱きしめ、俺も抱きしめ返す。
ソフィア王妃の肖像画の前で、しばらく3人で抱き合った。
この国を守ろう。
ソフィア王妃が愛したこの国を、全力で。
ディーのために。ロイのために。
体に伝わる2人の温もりに誓った。
唐突にロイが言い腕を掴まれてじっと見つめられた。
「なんで?」
「だってよー。これから一緒にいられる時間がどんどん減ってくしよー。
できる時にしたい」
ロイのセリフに思い切り呆れる。
「なんじゃそりゃ」
「そうですよねー。これから交代で警護に入るわけですし、今までのようにはいかないですよね」
ディーもロイの口車に乗せられたように俺に迫ってくる。
「なー、チューしようチュー」
んー、と口を突き出して俺に迫る。
ディーも口こそ突き出さないが、触れる位置にまで迫った。
ジリジリと迫る2人に押され、どんどんと壁に追い込まれ、渋い顔をしつつもキスを受け入れることにした。
チュウッと吸い付かれるようなキスに、唇を舐められて味を確かめるようなキス。
交互に何度もキスされ、浅いキスから深いものに変わり、舌を絡ませ合う。
「ん…ぁ」
流石に濃厚なキスになってくると身を捩って抵抗の意思を示す。
だが、ディーに舌を吸われるのと同時にロイに耳を舐められ、ゾクゾクと快感が走った。
「キスだけだろ!」
ディーを押し除け、舐められた耳を押さえ、顔を真っ赤にして抗議すると、ニヤニヤと2人が笑う。
「感じちゃった?」
ロイの言い方にムッとし、ずいっと自分から体を寄せると、ロイの背後に手を回し、右手で尻尾の付け根をギュッと握った。
「ギャン!」
途端に犬のような鳴き声を上げ、ロイの尻尾が総毛立つ。
「すみません、ごめんなさい」
尻尾を俺から奪い返し、ススっと離れたロイに笑った。
「犬科は大変ですねぇ」
ディーが笑いながら言うので、俺はディーにも近付き、ギュッと腸骨の上の部分を握る。
「ひ」
ゾクッと鳥肌が立ち力が抜ける感覚がディーを襲う。
「お前はここが弱いよな」
すぐに手を離してドアに向かった。
「な、なんで知って…」
2人に向かって、いつもいつもやられるわけじゃないんだ、とフンと鼻を鳴らし、行くぞと声をかけた。
しゅんとした2人が案内を再開する。
午後は最初から馬で移動する。
今度はロイと一緒にタンデムすることになり、俺にしがみつかれてロイが嬉しそうにニヤつく。
馬上の高さに恐怖が先行し、揺れるたびに落ちるんじゃないかとヒヤヒヤした。
「大丈夫だ、落ちないって」
ロイがしっかりとお腹に手を回してしがみつく俺の手に触れ撫でてくれるが、俺はそれどころではない。
恐怖で体がガチガチに固まり、景色を眺める余裕なんて全くなく、魔塔に着くまでロイの背中に体を押し付けて、馬という絶叫マシンに耐えた。
魔塔に近付くにつれて、団員の魔導士の姿が多くなる。
魔導士とは言っても、いかにもな三角帽子にローブ姿と杖、のような映画やゲームのようなものではなく、他の士団と同様に、薄い灰色の騎士服を着ている。
色で魔導士団だとわかるが、騎士服だと知らない人からしたら、きっと普通の人に見えるだろう。
魔塔を取り囲む柵を通過すると、魔導士達がわらわらと俺たちの周りに集まってきた。
「副団長!お帰りなさい!」
「ディーゼル様」
口々にディーにお帰りなさいと声をかけ、嬉しそうにニコニコと笑う。
「ただいま。悪かったね、長い間留守にして」
ディーが馬を降り、俺が降りるのを手伝ってくれる。
ロイも降りると、やっぱり獣士団とは雰囲気が違うなぁ、と落ち着いた雰囲気に笑う。
騎士団も獣士団も、割とガヤガヤと騒々しい雰囲気だった。だが、魔導士団は整然としている。
集まった魔導士達の雰囲気も落ち着いているし、とても静かだと感じた。
「エイベルは?」
「執務室にいらっしゃいますよ」
近くにいた魔導士に確認し、ディーが頷く。
「あの…、聖女様」
1人の若い女性の魔導士が俺に近付くと、手を胸の前で組んでもじもじしながら話しかけてきた。
「なんですか?」
微笑みながら聞き返すと、女性が赤面する。
「あの、握手してください」
その言葉に驚く。
「あの、私、路地の襲撃で聖女様の戦う姿を見て、感動して…」
「あ、わかる!俺もあの時怪我を治してもらった!」
途端に俺も、私も、と声があがる。
「一瞬であの場にいた全員の怪我を治すなんて…」
魔導士達が俺をじっと尊敬の眼差しで見る。
「あ…えっと…」
その視線にものすごく照れてしまった。赤面しつつ、目を泳がせる。
「あの、握手…」
女性がダメですか?と見上げてきて、照れながらも手を差し出すと、両手でギュッと握られた。
「俺も!」
「私も!!」
入れ替わり立ち替わり俺の手を握っていく。
「すげー、聖女様と握手したー」
「聖女様の魔力あったけー」
口々に嬉しそうにする魔導士達にますます照れてしまった。
「ほらほら、聖女様が困ってますよ」
ディーが苦笑しつつ嗜めると、魔導士達がすみません、と一斉に一歩下がる。
「ディー」
そんな囲まれた俺達に、外側から声がかけられた。
「エイベル。ただいま」
「おぅ。お帰り」
灰色の騎士服に白いマントを羽織った男が近づいてくる。
40代くらいの髭を生やした男が、数人の部下を引き連れて近づき、周囲にいた魔導士が道を開ける。
「4ヶ月分のお前の仕事、溜まってるからよろしくな」
「えー…、代わりにやっといてくれても…」
「やだよ」
即答しながら、2人が握手を交わす。
「あんたが聖女様か。魔導士団団長のエイベルだ。よろしくな」
ニカっと笑うエイベルに、騎士団第1部隊のおっさんを連想してしまう。
がっちりとした体格で、魔導士というより、肉弾戦が得意そうだと思ってしまった。
「ショーヘイ・シマダです。よろしくお願いします」
お辞儀をした後に握手を交わす。
「ロイも久しぶりだなぁ。また悪ガキトリオでつるんでたんだろ」
その口ぶりで、やっぱり第1部隊のおっさんに近いと、クスッと笑う。
「早速で悪いが、聖女様」
エイベルがニコニコと笑いつつ、俺の手を取った。
「デモンストレーション、お願いできますか」
「え?」
笑いながら言われ、笑顔で聞き返す。
「魔力量が半端ないらしいじゃないか。なかなか面白い魔法も使うって聞いてな。是非見せてもらいたい」
エイベルが子供のようにワクワクしている表情になり、やっぱり彼は魔導士なんだと改めて認識する。
ディーとロイへ確認の視線を送ると、2人が頷いたため、エイベルの後をついて魔塔の裏側にある訓練場へ進んだ。
その途中、エイベルと一緒にいた第1から第4部隊までの隊長、副官を紹介してもらい、それぞれと握手した。
訓練場に着くと、俺たちの後ろをゾロゾロとついてきた魔導士達が、一斉に周囲に散らばり、訓練中だった魔導士が場所を空ける。
聖女が魔法を使うと聞いた魔導士達が続々と訓練場に集まり、その魔法を一目見ようとひしめきあう。
ドルキア砦の訓練場のような、荒野に向かって魔法を放つわけではなく、訓練場の外へ被害が及ばないように、全体を防御魔法が何重にも張られていた。
周囲を眺め、ちょっとやそっとじゃ、打ち破れない強力な魔法壁だと気付く。
「ショーヘイさん、あまり派手なのはダメですよ」
「そうだぞ。軽くだぞ、軽く」
ロイとディーに念を押され頷く。
「えっと…、どんなものを使ったらいいですか?」
「なんでもいいぞ。出来るやつを見せて欲しい」
「わかりました。
あの的とか、壊しても問題ないですか?」
訓練場に点在している射的の的のようなものを示して確認する。
「壊せるものならな」
エイベルがニヤリと笑い、あの的にも強力な防御魔法が施されていると気付く。
「それじゃ」
一応、エイベルや隊長たちに会釈した後、魔法を放つ位置まで進む。
「まずは…」
うーんと、何を使おうか少し考えた後、右手を前に出し、炎の玉を一発、的に向かって放つ。
的に当たって炎が弾け飛んだ。
続けてもう一発。
さらにもう一発。
連続で同じ炎を次々と放つ。
その様子をじっと見ていたエイベル達も、余裕の表情で俺の魔法を見ている。
まぁ、このくらいはここにいる魔導士なら誰にでも出来ることなのだろう。
チラッと横目で確認し、少しづつ魔法を派手にしていく。
炎の玉の連発スピード上げ、それでも壊れない的を、どうしても壊したくなった。
1秒に3発ほどだった炎の玉が、倍になり、10発になり、20発へ変化させていく。どん、どん、どん、という音が、ドドドドという音に代わり、次第に周囲の魔導士達の口が開き塞がらなくなっていく。
「おいおい…」
流石に隊長達も小さく呟く。
それでも的は壊れない
「これならどうだ」
俺もだんだん楽しくなってきて、なんとしても的を破壊したいと思う。
右手から炎の玉を連発しながら、自分の周囲に、無数の魔法陣を展開させ、その魔法陣からも炎の玉を連発する。
エイベルの口が開き、翔平の周囲に展開した数十の魔法陣に驚愕する。
放たれた炎の玉が全て的へ集中する。
だが、それでも壊れない。
「壊れないな…」
全く壊れる気配のない的に、炎の玉を打ち消した。
うーん、と壊す方法を考え閃く。
一度おろした右腕を再び上げ、指鉄砲を作ると、人差し指の先を的に向ける。
左手で右手首に添えると、今まで放ってきた炎の玉の魔法と同じくらいの、いや、少しだけ魔力量を増やして、指先1箇所だけに集中する。
ブワッと魔力風が巻き起こり、俺を中心に風が渦を巻いた。
光が指先一点に集中していく。
「このくらいかな…」
あまり圧縮しすぎると、多分、この訓練場の防御壁も貫いてしまう。
そう感じて、ある程度の魔力で止め、集められた魔力を弾丸の形に形成すると、クンッと銃を撃つ感じで弾丸を弾いた。
ドン!!!
弾丸が放たれた衝撃で強風が俺も周囲も襲い、弾丸が的の中心を貫き穴を開け、防御壁も数枚内側から割ってしまった。
「あ!やりすぎた!」
砕け散った魔法壁が周囲に拡散して、キラキラと光の粒が降ってくる。
壊してしまった魔法壁に焦って、慌てて後ろを振り向く。
「ごめんなさい、壊しちゃっ…た…」
シーンと静まり返った訓練場に今更気付く。
「す」
誰かが言った。
「すげえええええ!!!!!」
その声でワー!!!と大きな歓声が起こり、そのビリビリと空気を震わせる声にビクッと肩をすくませる。
「おいおいおいおい」
エイベルが俺の側にくると、ガシッと俺の肩へ腕を回す。
「すげえな!聖女様!マジでびびったわ!!」
「魔力量、半端ない…」
隊長が冷や汗のような汗をかいて、半笑いで俺を見る。
「どうだ!すげーだろ聖女様は」
何故かロイがドヤ顔をする。
「魔力は大丈夫なのか」
「はい、大丈夫です。まだ全然…」
近くでガハハハと笑う声に恐縮しながら答える。
「このくらいで枯渇するような総量じゃありませんよ」
ディーもドヤ顔で言う。
「マジか」
「どうやったらこんな量になるんだ」
エイベルがゲラゲラと笑う。
「それに、最後あの魔法…。初めて見ました。どうやってるんですか?」
隊長達が目をキラキラさせて聞いてくる。
「あ、えっと…」
ワイワイと俺の周囲に魔導士達が集まり、俺が撃ち抜いた的を近くで見ようと、大勢が訓練場の中を歩き回る。
あちこちで、すごい、すごい、と興奮したような声が聞こえ、ものすごく照れ臭くて、顔を赤くして縮こまった。
魔塔への挨拶を終えて出る時、ほぼ魔導士全員から盛大なお見送りを受ける。
また来てくださいねー、次は是非指導を、と大勢に言われつつ手を振られ、ロイにしがみついた右手をそろそろと離して、手を振り返す。
「やっぱすげーな、お前の魔法。面白れーわ。俺も今度あの指のやつやってみよー」
ロイが笑いながら馬を操る。
「きっとロイならすぐに出来ると思うよ。あれはロイのインパクトがヒントになってるから」
「どういうことですか?」
隣の馬上でディーが聞いてくる。
「ロイのインパクトも拳に魔力を圧縮してるだろ?
それと同じ。指先に魔力を圧縮させてるだけだ」
「簡単に言いますね…」
ディーが苦笑する。
「それはかなり難しいことですよ。ロイのインパクトだって、かなりの修練を積んでようやっと…」
ディーが話している最中、ポンとロイの指先から魔力の弾丸が空に向かって打ち出された。
「出来た」
それを見たディーが顔を顰め、呆れた表情をする。
「なるほどね。こういうことか」
ロイが再び、小さな魔力の弾丸を空に打つ。
「いやいやいやいや…、それは…」
呆れ顔でため息をつく。
「もういいですよ…、歩く非常識と戦闘狂に常識を求めようとした私が馬鹿でした」
ディーの言葉に、俺もロイも声に出して笑った。
各士団の挨拶を終え、元来た道を戻る。
次は各局へ挨拶へ行くために、初日に馬車を降りた、王城正面の回廊の前で馬を降りると、そのまま王城へ入った。
回廊から中へ入ると、改めてその宮殿たる光景に口が開く。
「すげぇ…」
初日も驚いたが、改めて周囲を見渡し、キラキラと輝く豪華な装飾に目を奪われる。
「こっちですよ」
左の通路を進み、そのまま奥まで進めば王宮の方へ入って行くが、その手前で曲がり執務棟へと入る。
「まずは総務局です」
廊下を進み、俺たちに気付いた数人が廊下の端に避けて頭を下げる。
働いている人達の服装は違うが、雰囲気はオフィスビルそのものだった。
忙しそうに動きまわる人々、執務室では、並べられた机に向かって、黙々と書類を作ったり、読み込んだりしている姿を見て、懐かしく思った。
総務局、財務局、経済局、と見て周り、どこも似たような感じで、文官達は書類に目を通して、書き物をして、書類を持って動き回っていた。
だが、副局長以上の、いわゆる貴族達は、ペンを握ることもほぼなく、部下に言われたことを聞き、たまに署名するだけで、こっそり覗いた経済局の部屋では、副局長だというどこかの貴族の次男が自席で居眠りしている姿も目撃する。
「お恥ずかしい限りです…」
ディーがため息をつきながら、貴族というだけで要職につき、仕事をしない奴らを睨みつける。
「でも、その分、部下の人たちは優秀そうだけど」
どこの世界にも、働かない上司というのはいるものだな、と考えながら、サラリーマン時代を思い出していた。
各局の様子を見て回っている間、何度も貴族の子息子女達に声をかけられ、熱心にアピールされる。
自分はどこそこの貴族で、これだけの仕事をして、これだけの部下がいる、ということを自慢げに話すのを、微笑みながら黙って聞く。
昨日一度会っているのだが、記憶に残らないほどどうでもいいと思ってしまった。
だが、視線をそいつらの後ろに向けると、はっきりと嫌な顔をしている部下達の顔が見え、どいつもこいつも口だけなのがその顔でわかる。
「軍務局と外務局は別棟です。
そちらも見に行きますか?」
「いや、場所だけわかればいいかな…」
この棟を見て、どこも似たようなものだと思ったし、働いている人たちが俺たちを気にする姿を見て、邪魔になると考えて断った。
「アラン様もそっちに?」
「ええ。王と宰相の執務室もそっちにあります」
階段を降り、とりあえず別棟へ続く廊下を渡り、入口までは行って見た。
さすが軍部ということもあって、文官よりも騎士の方が多い。
「改めて挨拶にはいきませんが、この他に兵士官舎、研究棟があります」
口頭だけで説明を受け、その広さに舌を巻く。
この王城だけで何人の人が働いているんだろうと思った。
「すごいな…」
王城の出入口に戻りながら、辺りをキョロキョロと見渡して、今まで行った場所の地図を頭に叩き込む。
「じゃぁ、次は…」
「ちょっと休憩しようや」
ロイが疲れたという表情で声をかけた。
「そうですね。一度戻りましょうか」
自室に戻り、ロイが3人分のお茶を淹れてくれ、円卓で寛ぐ。
「広いよ…すごい広い…」
ズズッとお茶を啜り、一息ついた。
「慣れますよ」
ディーが笑う。
その時、ドアがノックされた。
「どうぞ」
返事をすると、執事が入ってきた。
「聖女様、贈り物が届いておりますが、お持ちしてよろしいですか?」
「え?贈り物?」
なんで?誰から?とキョトンとするが、ロイもディーも顔を顰めた。
「ちょっと待て、見にいく」
ロイが席を立つと、ドアの向こう側に消え、しばらくしてから戻ってくる。
「いいぞ、入れてくれ」
ロイの後ろから、次々と花々が部屋に運び込まれた。
「は?えぇ?何これ」
思わず立ち上がって、どんどん部屋に持ち込まれる花束とプレゼントの箱類に唖然とした。
「始まりましたね。聖女争奪戦が」
ディーが苦笑した。
執事数人の手によって、軽く10分はかかって全ての贈り物が部屋に並べられた。
その前で立ち尽くしてその品々を見る。
ロイとディーも山になった贈り物を見つつ、花束に差し込まれていた、メッセージカードを取ると開封した。
「愛しの聖女様、貴方を一目見た時から虜になりました」
「聖女ショーへー様、貴方のヒールで私の恋心を癒してください」
「聖女様、一目惚れいたしました。是非プライベートでお会いしたい」
「貴方のその麗しいお姿が目に焼き付いて離れません。貴方の腕に抱かれたい」
次々と棒読みで読み上げる2人に唖然としつつ、その内容に思い切り吹き出した。
「アハハハハハ!!!なんじゃそりゃ!!!」
ゲラゲラと笑い、涙が込み上げる。
ディーがそのメッセージカードを集め、その他に届いている手紙やお茶会、夜会への招待状を数える。
「全部で28通ですか。ま、初日ならこんなもんでしょ」
「だな。ショーへー、どんどん増えるぞ。頑張れよ」
「え?何が?」
「ああ、そうか。お前はマナーを知らないよな…」
ロイが苦笑し、頭を掻く。
マナーという言葉に嫌な予感がする。
「まさか…、これに返事を?」
「そうです。全部に返事を書く必要があります。直筆でね」
ディーが俺を同情の目で見る。
「えー!全部にか!!」
「はい。一言だけでもいいので、ちゃんと書いてくださいね。マナーなので」
「そんなぁ…」
ガックリと項垂れる。
「当面の貴方の仕事ですね。頑張ってください」
円卓の上に束を置かれ、それを恨めしそうに見つめる。
「キースが来てからでもいいですが、誰が送ってきたのか一覧にする必要がありますね」
ディーがプレゼントの箱の一つを開封する。
「ふん、こんなもの」
中身を見て、ポイっと箱ごと円卓に放り投げる。その中を確認すると、シルバーの髪飾りが入っていた。
いや、確かに昨日は髪飾りをつけていたけどさ…、とヘアアクセを贈られたことに幻滅した。
ディーが箱の中身をいくつか確認して、途中で放り投げる。
「ロイ」
ディーが席に戻り、ロイに目配せしつつ再び円卓に3人で座る。
「争奪戦が始まったので、いくつか注意事項を言っておきますね」
「ああ。さっき俺がまず見に行っただろ」
2人が真剣に俺を見る。
「ああ、うん」
「今回はなかったが、贈り物の中にはおかしな物もある」
「おかしなもの?」
「ええ。明らかに異常な物がね」
「王宮に運び込まれるものだから、事前に中身などは魔法を使ってチェックされる」
「危険物がないか、とか?」
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それは当然だろうと思う。
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「だがな、危険物と判断されなかったものは通り抜ける」
「例えば?」
「使用済みの下着とか、SEX玩具とか」
「うわぁ…」
「実際に送られてきたことが何度か…」
2人がその時のことを思い出したのか、ものすごく吐きそうな顔をし、送られてきた物を想像して失笑した。
「いいか、絶対に自分で開けるな。執事に開けさせること。
それと、食べ物は絶対に口にするな」
「毒とか?」
「ああ」
ロイが頷く。
「わかりました。気を付けます」
うんうんと頷く。
「絶対だからな。美味そうだと思っても食うなよ」
「グレイじゃあるまいし」
そう返すと声に出して笑う。
ディーが執事に、贈り物の整理を依頼し、休憩を終えて部屋を出る。
次に案内されたのは王城の外、少し奥まった所にある別館だった。
王城の敷地内にあるが、城と呼んでもいいくらいの大きさで、館の前に王宮前の庭園よりもさらに大きな庭が広がっている。
「ここは夜会や来賓を招いたパーティーを開く場所です」
どうりで、王城よりもさらに豪華だと、開いた口が塞がらない。
警備兵にドアを開けてもらって中に入る。
「うわぁ…」
高い天井に巨大なシャンデリア、窓にあしらわれたステンドグラス。
どこを見ても眩しくて目がチカチカする。
「メイン会場の他に、休憩室や談話室、貴賓室などの客が泊まる部屋も全部ある」
「ほへー…」
間抜けな相槌を打ちつつ、館の中を見てまわる。
「ここで、今度お前のお披露目をするんだぞ」
「ええ、国中の貴族、街の有力者を一同に集めたお披露目会を計画してますので、そのつもりでいてください」
「いつ?」
「1週間後です」
思ったよりも早くて顔を顰めた。
「また挨拶挨拶挨拶かぁ…」
はぁとため息をつく。
「ここはそういう場所だから、かなり特殊でな。魔法は使えない。試しにやってみろ」
そう言われて、火の玉を出そうとしたが、魔力が何かに阻害されているような感じがして、何も出来なかった。
「ほんとだ…。じゃぁここで襲われたら…」
「無事じゃ済まない」
「そのために騎士がいるんですよ。彼らは魔法がなくても十分強いですからね」
なるほどね、と頷く。
彼らが常日頃鍛え、剣や槍、格闘術の訓練をしているのはこのためか、と納得する。
魔法が使えない、という状況もありうると知った。
「おそらく、今度の夜会で、例の最初の接触があるはずだ」
ロイの言葉にゴクリと唾を飲む。
そうか。
魔法が使えないこの場所で、守りはその分薄くなる。
どんな接触方法を使ってくるのかはわからないが、夜会がチャンスだと言える。大勢の人がいて、紛れ込み、俺に誘いをかけるにはまさに好都合だろう。
「魔法が使えない分、この館には色々仕掛けがありますから、また後日説明しますね」
館から出て馬に乗ると、王宮まで戻る。
だいぶ馬にも慣れて、まだしがみついているが、周りを見る余裕が少しだけ出てきた。
ゆっくりと木々のトンネルを抜ける。
これで乗馬が怖くなければ気持ちいいんだろうな、とロイの背中に頭を乗せ、練習してみようかな、と本気で思った。
社会科見学の最後の場所は王宮だった。
それぞれの自室以外にも、たくさんのドアがある。
食堂、談話室、娯楽室、厨房や使用人控室、色々見て周り、最後に1階の最奥にある大きな扉の前にくる。
「図書室です」
その大きな扉を開け放つと、巨大な図書室が眼前に広がり、独特な紙の匂いが辺りを包む。
4階まである王宮をその一角だけ吹き抜けになっており、4階までの高さの壁に、ぎっしりと本が詰め込まれている。
「すご…」
「これはこれは殿下…」
「ドアを入ってすぐの執務席に、メガネをかけた黒いドレスを着た女性が座っており、ディーに気がつくと立ち上がった。
茶色く長い髪をきっちりアップにし、背筋を伸ばした立ち姿にインテリの印象を持つ。
「ミルコ女史、こちら、聖女ショーヘイさんです」
「聖女様、初めまして。ミルコと申します」
スッとカーテシーで挨拶されて、慌てて自分も貴族用の挨拶を返す。
その俺の挨拶を見たミルコがにっこりと微笑む。
ミルコ、という名前に聞き覚えがあるが、どこで聞いたんだっけと必死に考える。
「殿下、ロイ様も、本をご所望ですか?」
「いえ、彼を案内している最中でして」
「そうでしたか。ついこの間、魔法学の新たな論文が発表されまして…」
ミルコが話し始め、論文と聞き、あ、とロイとディーの家庭教師だと、会話の中で一度だけ出てきた彼女を思い出した。
色々なことが片付いたら、色々教えてもらおうと思った。
図書室を出ると社会科見学は終了となる。
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ディーが俺の手を取る。
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ディーを女性にしたら、ソフィアになるだろう。
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「うん…俺も、愛してるよ、ディー」
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