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王都への旅路 〜遊郭の街ゲーテ〜
67.おっさん、女性を助け、助けられる
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ポツンと1人、裏路地に佇む。
困った。
本当に迷子だ。
この年で、迷子になるなんて。
しかも、異世界で、風俗街という場所で。さらに、自分は襲われる確率が高いと、さっきの件ではっきりと自覚した。
きっと3人とも、今頃必死に自分を探しているだろう。
そう思っても、表通りすらどっちにあるのかわからない。
さらに、さっきの男がまだ自分を探しているかもしれない。
そう思って、このままここにいても駄目だと、路地を歩き始めた。
もう自分の直感に頼るしかない。
辺りを見渡し、空を見上げ、なるべく灯のある方へ進もうと決めた。
さっき逃げるために走ってきた方へは進まず、さらに先へと進むが、まるで泥棒になったかのように、こそこそと足音を立てないように、ゆっくりと進む。
時々聞こえる物音にビクッと体をすくませながら、必死に周囲に警戒しつつ前に前に進む。
十字路や丁字路で、立ち止まり、なるべく明るいと思う方へ進む。
だが、全然表通りに向かっている気がしない。どんどん奥へ奥へと迷い込んでいる感じがして、どんどん不安になっていった。
まるで迷路のような路地裏。
どこを見ても同じ色に、似たような建物。
こんなの、地元民でも迷うんじゃないかと思うくらい入り組んだ路地。
「ヤバいなぁ…」
周囲を見渡しながら呟く。
この世界に迷い込んだ数ヶ月前のことを思い出す。
あの時も今と同じような、恐怖の混じった不安を抱えていた。
ただ、今はここがどこかわからないという恐怖に加えて、自分がこの世界で性的被害にあう可能性がある、とわかっているから、なお怖くなる。
元の世界で、夜道を1人歩く女性が、今の自分と同じ恐怖を抱えていたんだろうな、と、その怖さを身を持って知った。
出来れば、人に会って道を聞いて、と思うが、全員がいい人ではない。
会えたとしても、かなり慎重にならなければいけないと、自分に言い聞かせる。
ずっと緊張しながら歩き、みんなと離れてから1時間は経っただろうか。
ようやっと近くから人の話し声が聞こえてきた。
一気に体が強張る。
慎重に声のする方へ向かい、その声が高い女性の声だとわかって、少しだけホッとする。
だが、その口調が怒っているような、人に向かって文句を言っているようで、一瞬そちらへ行くのを躊躇った。
「だから、あたしに言ったって無理なんだって」
だんだんと、何を言っているかがはっきりしてくる。
「そこをなんとか…」
「無理なものは無理」
丁字路の曲がった先から声が聞こえてきて、とりあえずそっと角からそっと覗いて声の主を確認する。
女性と男性が言い争っている。
というか一方的に女性が怒っているような感じだった。
「一目見るだけでもいいからさ。友人だって言って一緒に連れてってよ。荷物持ちでもなんでもやるから。頼む!」
「無理。マジで無理。あんた、あそこがどんな店だかわかって言ってんの?」
「わかってるから頼んでるんじゃないか。俺なんかが行ける店じゃないってわかってるからコネを使って…」
「コネで入れるような店じゃないっつってんの」
会話の内容で、なんとなくわかった。
高級な店で働く女の子の伝手で、裏口から店に入ろうとしているのだろう。
「そもそも、従業員の出入りだって相当厳しいんだよ。あんたみたいなのを連れて来ようとする奴も多いからね。それに、もし関係のない奴を引き入れたってわかったら、あたしのクビが飛ぶ」
女性が真顔で説明する。
「わかるだろ。連れて行きたくないんじゃなくて、連れて行けないんだ」
真剣に説明されて男が怯む。
だが、それでもゴニョゴニョと食い下がる。
「店に入りたかったら、必死に稼いで正面から堂々と来な」
女性の言葉が、男の癇に障ったらしい。
突然、腕を振り上げたかと思うと、ゴツッと音がした。
思わず、うわっと顔を顰めた。
無理難題を言っているのは男の方なのに、自分の要望が通らないとわかって、女性を殴った。
「お前、ちょっと調子に乗ってねーか。俺がここまで頼んでるっつーのに」
「あんたも、誰に手をあげたかわかってんだろうね」
顔を殴られて、口の中が切れたのだろう、血の混じった唾を横へペッと吐き捨てる。
「私が店に報告すれば、例え金があったって店に入れないよ」
その言葉に男がますます興奮したように鼻息を荒くし、再び女性を殴る。
これはマズい。
女性は細くて小さい。なのに、自分よりもがっちりとした体型の男が、女性に拳を振り上げているのを見て、いてもたってもいられず路地の角から飛び出して、駆け寄った。
「動くな」
男に向かって左手を突き出して、金縛りの魔法をかける。
その瞬間、腕を振り上げた状態で男が硬直した。
「あ…う…」
かなり強めにかけたため、声も出せなくなったらしい。
女性が驚いて駆け寄った自分を凝視する。
「大丈夫?」
殴られて、壁によしかかった女性を見る。その顔の様子を見て顔を顰めた。
すでに頬は腫れて、口の端から血が流れていて、どれだけ強く殴られたのかがわかる。
「事情はよくわかんないけど、女性に手を上げるっていうのはいただけないな」
動けない男に近付いて、低い声で自分よりも遥かに若い男を睨む。
「どうする?このまま立ち去るなら拘束を解除するけど、まだ続けるならこの状態で別の魔法ぶち込むよ」
男の顔から汗が落ちる。
「わ…た」
わかったと言いたいのだろう、女性と男性の間に立って、女性を後ろに庇いながら金縛りの魔法を解いた。
その瞬間、ガクンと体が崩れ、自由に動けるようになった男が膝に両手をついて荒い呼吸を繰り返した。
「行けよ」
男にそう言ったが、男が興奮した目で自分を睨み、襲いかかってっくる。
まぁ、そうだろうな。
呆れたような表情で、右手で飛んでいる虫を払うように、サッと小さく振ると、男の体が一瞬で後ろに吹っ飛び、壁に叩きつけられて、地面に落ちた。背中を強打したことで、そのまま気を失う。
「えっと、大丈夫?余計なことだったかな」
後ろを振り返って、ポカンとしている女性に笑顔を向ける。
「あ、いや…。ありがとう…」
そうお礼を言うが、腫れた頬で喋りづらそうだ。
「じっとしてて」
そう言って、両手を女性の顔に近づけると、触れずに包み込むように手を添える。
「ヒール」
一瞬で、女性の怪我が治る。
女性は痛みがなくなって、腫れも消えたとわかり、自分の顔を両手で触り、撫でて確認する。
「おお、治ってる」
子供のように、嬉しそうに自分の顔を撫で回していた。
「ありがとう。助かったよ」
本当に子供のような笑顔を向けられて、ニカッと笑われた。
自分よりもかなり背の低い、小さな女性にニコリと微笑む。
かなり小さいが、女の子という感じはしない。れっきとした大人の女性だとその雰囲気でわかる。
きっとこの姿が大人のサイズで、小人族、ハーフリング、とかいう種族だったかな、と昔やったファンタジーRPGのキャラクター設定を思い出す。
「ああ、でもごめん、治療代払えないよ。そんなにお金持ってないし」
「え?ああ、いいよ別に。俺は治癒師じゃないし」
この世界でいう治癒師、怪我を治して稼ぐ存在だと思われたようで、慌てて否定する。
「じゃ、魔導士?」
「あー…、なんだろ…」
改めて、聞かれると、自分ってなんなんだろうと思う。
まさか、ジュノーです、なんて言えないし。
まさに今の自分は、職業不詳かつ住所不定の不審者だ。
そう思って笑う。
「俺は……迷子です」
そう答えて、女性が体に似合わず大きな声で笑った。
「いたか」
ロイが乱れた呼吸を整えながら、同じく呼吸が荒い2人に声をかける。
2人とも黙って首をふる。
グレイが顎に伝う汗を腕で拭い、大きく深呼吸する。
翔平とはぐれてすでに30分。
花魁道中が移動したために、群衆もそれに合わせて居なくなった。
今は人通りが元に戻り、多くはあるが、混雑しているわけではない。
翔平は子供じゃない。きっとはぐれてから、翔平は探されることを考えて、動かずに1箇所にとどまっているはずだと思い、全員で周囲を探したが、見つからない。
少し路地に入ってみたが、それでもいなかった。
「あまり考えたくはありませんが…」
「攫われたな」
グレイが続きを言う。
ここまで探して見つからないなら、まず間違いない。
確実に、翔平は攫われた。
おそらく、はぐれて運悪く1人でいる所を目をつけられ、そういう目的で襲われ連れて行かれたと全員が確信する。
さっきは冗談のように翔平に言ったが、翔平が狙われやすいのは事実だ。
本人の生まれながらの気質なのか、人を惹きつけるような雰囲気を持っている。
いつもいつも可愛いと揶揄っていたが、見た目だけのことを言っていたわけではない。彼の持つ印象が「可愛い」という言葉に当てはまるから、そう言っていただけだ。
「まぁ、ショーヘーもかなり強くなったし、そうおいそれとヤられはしないだろうが…」
そう言って、ロイとディーに睨まれ、失言したと顔を顰める。
「ロイ」
ディーが落ち着いてきた呼吸でロイに声をかける。
「彼女に頼みましょう。早い方がいい」
真剣にロイを見る。
「…だな」
そう言って眉根を寄せる。
彼女という言葉を聞いて、グレイも深く息を吐いた。
無事でいてくれ。
3人がそれぞれ、心の中で呟いた。
彼女はミーナといった。
とある大店で、化粧師として働いているという。
化粧師という聞き慣れない言葉に、具体的に何をするのか聞くと、メイクアップアーティストのことだった。
体に似合わない、大きな箱のような鞄を肩から下げ、さらに手にも四角い鞄を両手に持っている。
その鞄を持ってあげて、2人で並んで歩く。
迷子だと打ち明けてひとしきり笑われた後、お礼に表通りまで案内してくれることになった。
「攻撃も防御も治癒も出来るなら、魔導士じゃん」
そう言われて、そうか、と、今度から聞かれた時はそう答えようと決める。
「それにしても、危ないよ。あんたみたいなのが1人で来るような場所じゃないし」
そう言われて、実は連れとはぐれて攫われそうになって、必死に逃げてました、と教えて、やはり笑われた。
あんたみたいなの、と言われて、どういう意味なのか聞きたくなったが、聞いて凹むだろうと思ったので、聞くのを止める。
「うーん…。そっかぁ」
ミーナがふいに考えて、独り言を呟く。
「ショーヘー、あんた、1人で通りを歩かない方がいいよ。マジで危ない」
自分よりも小さくか弱そうに見えるミーナに言われて、若干凹む。
「そ、そうかな」
「うん。攫われて犯されるだけならまだマシだけど、きっとあんた性奴隷として売られるよ」
「え」
可愛い顔をしてえげつないことを言われて、あはは、と力なく笑った。
「連れが見つかるまで、ボスにお願いするから店にいたらいいよ。ついでに連れの特徴教えてくれたら、探してもらえるよう頼んでみる」
「いいの?だって、さっきの男」
さっき、連れて行ってくれと頼んでいた男は頑なに拒んでいたのに、自分を連れて行こうとしていることに驚く。
「ああ、あれはあいつだからダメなだけ。本当は連れて行けるんだよ。入れるかどうかは別としてね。
あいつは、裏口からでも絶対に入れないってわかってるから、断ってただけ」
ミーナはそう言うが、連れていっても入れないなら、殴られてまで断る必要はなかったのに、と思った。
「ああ、一応連れてくって言っても、やっぱり人は選ぶよ。紹介料があるし。
逆におかしなの連れてったら、あたしの評価が落ちちゃう」
自分の考えていることを察して、ミーナが教えてくれる。
「なるほどね。ありがとう、ミーナ」
そうニッコリと微笑むと、ミーナが少しだけ赤面した。
「あのさ、ショーヘー」
スッと視線を外して、ブツブツと呟くように言う。
「あんたその顔、誰にでも見せない方がいいよ。勘違いされる」
「え!?」
思わず空いた手で自分の顔を触る。
どんな顔してた?と考えるが、意識して表情をつくっているわけではないから、どんな顔かわからない。
「あんた、面白いね。可愛いし」
ミーナがケラケラと笑った。
メインストリートの奥、一際大きな大店の前に3人が立つ。
「まさか、またここに来ることになるとはね…」
ディーがため息混じりに呟く。
「ディーは3回目か?」
グレイが聞き、ロイについて店に入る。
「そのくらいです。グレイは?」
「俺は…教えん」
「は!?」
聞いといて、自分は内緒とかありえんとディーがグレイをどつく。
「行くぞ」
ロイが店へ入る。
「いらっしゃいませ」
すぐに、黒服に身を包んだ男が近付いてくる。その目が一瞬で3人の身なりを確認し、客か冷やかしかを見極め、金があるかどうかも判断する。
「スカーに会いに来た」
男が次の言葉を言おうと口を開きかけた瞬間、ロイがそう言い、その場で自分だけ認識阻害の魔法を解除する。
その瞬間、周囲にいた遊女や客が一気にざわついた。
「ロイが来たと伝えろ」
黒服がゴクリと唾を飲み込み、かしこまりました、と一礼して下がっていく。
「どうぞ、こちらへ」
すぐに、別の黒服が3人をロビー奥のソファまで案内し、そこに座っていた別の客がすぐさま席を譲るために立ち上がる。
ボソボソと、「白炎の狼」「英雄ロイ」と口々に囁くのが聞こえる。
「あの、ロイ様…握手してもらえませんか」
その中で、勇気を出した1人の客が近寄ってくると、両手を差し出してくる。
「プライベートなので勘弁してもらえるか。すまんな」
薄く微笑みながら、やんわりと断ると、申し訳ありません、と男がすごすごと引き下がる。
「かっこいい…」
「いい男…」
「抱かれてみたい」
「抱いてみたい」
「お連れの方もいいわ」
「美しい」
娼婦も男娼も客も、全員がロイたちを見る。所々で自分たちを噂する声に、フンと鼻を鳴らす。
その時、一際ため息の声が大きくなり、店の主人が入口正面にある大きな階段から階下へ降りてきた。
「ああ…、スカーレット様だ」
「いつ見てもお美しい」
ロイたちと同じように、客たちがその容姿にうっとりと見入る。
長くヒップまで届く、ストレートの金髪。耳が長く尖り、エルフであることがわかる。
体のラインがわかる真紅のドレス。
胸元から臍まで大きく切れ込みの入りったドレス。その赤い布の間から白く大きく形のいいバストが谷間を覗かせ、くびれたウエストにバストと同じように大きなヒップ。
ロングドレスのサイドに長いスリットが入り、白く長い足が階段を降りるたびに妖しく動く。
髪と同じ金色の長いまつ毛、ドレスと同じ真紅の口紅を塗った形の良い唇。
絶世の美女がゆっくりと階段を降りてくる。
「ロイ、久しぶりね。3年ぶりかしら」
3人の前に来て、ロイと抱擁を交わす。
抱擁が終わって、ロイがスカーレットの手を取って、その甲へ口付ける。
ディーもグレイも同じようにスカーレットの抱擁を受け、手へ口付けを落とす。
「なんだ、ディーゼルにグレイじゃないの。認識阻害なんてどうして?」
2人の魔法は解除していないのに、スカーレットは気付く。
多分、抱擁した時に気付いたのだろうと、2人が苦笑した。
「色々事情があってな。頼みたいことがあって来たんだ。奥で話したい」
「あら、私に会いに来てくれたんじゃないの?」
「急ぐんだ」
ロイの真剣な眼差しに、スカーレットが目を細めた。
「いいわよ。いらっしゃい」
くるりと踵を返し、歩きながら使用人の黒服に声をかける。
「この後の予定は全部キャンセルして」
「かしこまりました」
使用人たちが道を開け、頭を下げる。
3人もスカーレットの後に続き、階段をあがり、建物の上階、さらに奥まで進んだ。
豪華なスカーレットの執務室へ入り、そのソファに座る。
そこでディーとグレイも認識阻害の魔法を解いた。
「ロイ坊、ディー坊ちゃん、グレイ坊や、本当に久しぶりね。元気だった?」
ニコニコとスカーレットが言う。
「坊や扱いは止めてくれ」
思わずグレイが顔を顰める。
「あら、いいじゃない。ここには私たちしかいないし。
それにしても、相変わらず悪ガキトリオでつるんでるのね」
おかしそうに、懐かしいわ、とクスクスと笑う。
「早速だが、人を探して欲しい」
思い出話をしそうなスカーレットに、ロイが本題を切り出す。
「もう1人、連れがいたんですが、はぐれてしまって。1人になった所を攫われてしまったかと」
ディーが真剣にスカーレットを見る。
「貴方達がついていながら?」
スカーレットが眉を動かす。
「不甲斐ない…」
グレイがこぼす。
その3人の様子をじっと見つめ、スカーレットが目を細める。
「特徴を教えてちょうだい」
「恩にきる」
「貸しよ」
そう言われ、苦笑いしつつも翔平の特徴を教えた。
「名前はショーヘイ。黒髪、少し長めの短髪、細身の男。39歳だが、20代後半から30代前半に見える。身長175センチくらい。黒いパンツに水色に白のラインが入ったシャツ。ベージュの肩掛け鞄」
スラスラとディーが特徴を伝え、スカーレットは一切メモを取らずに暗記していく。
「右耳に、これと同じピアスをつけてる」
そう言って、ロイとディーの左耳のピアスを見せた。
「あら…、そういうこと。それなら焦るわよね」
スカーレットがそう言うと、立ち上がって一度部屋を出て行き、すぐに戻ってくる。
「手配したわ。見つかるといいわね」
そう言って3人の背後に回ると、ロイの左耳のピアスを指で弾いた。
「大事な人なのね」
スカーレットが呟いて微笑む。
「ここで待つ?」
「いや、俺たちも探しに行く」
「わかったわ。見つけたらこちらで保護しておくから、何度か立ち寄ってちょうだい」
3人が立ち上がって、部屋を出る。
「頼む。数時間おきに店に寄るから」
先ほどの階段の所まで3人を送り、挨拶もそこそこに店を出て探しに行く姿を見送った。
「無事でいればいいけど」
スカーレットが小さく呟く。
この街で攫われるということが何を意味するかはよくわかっている。
ロイとディーが惚れるなら、きっと誰もが手を出したくなるような男だ。
見つかったとして、無事であるとは限らない。散々嬲られ、レイプされた状態であっても、生きていればまだ救いがある。
もし遺体で見つかったなら。
「この街が消えるかもね」
怒り狂ったロイが、この街を破壊する様子を妄想し、クスッと人ごとのように笑う。
そして、翔平がどんな男であるのか、すごく興味が湧いた。
困った。
本当に迷子だ。
この年で、迷子になるなんて。
しかも、異世界で、風俗街という場所で。さらに、自分は襲われる確率が高いと、さっきの件ではっきりと自覚した。
きっと3人とも、今頃必死に自分を探しているだろう。
そう思っても、表通りすらどっちにあるのかわからない。
さらに、さっきの男がまだ自分を探しているかもしれない。
そう思って、このままここにいても駄目だと、路地を歩き始めた。
もう自分の直感に頼るしかない。
辺りを見渡し、空を見上げ、なるべく灯のある方へ進もうと決めた。
さっき逃げるために走ってきた方へは進まず、さらに先へと進むが、まるで泥棒になったかのように、こそこそと足音を立てないように、ゆっくりと進む。
時々聞こえる物音にビクッと体をすくませながら、必死に周囲に警戒しつつ前に前に進む。
十字路や丁字路で、立ち止まり、なるべく明るいと思う方へ進む。
だが、全然表通りに向かっている気がしない。どんどん奥へ奥へと迷い込んでいる感じがして、どんどん不安になっていった。
まるで迷路のような路地裏。
どこを見ても同じ色に、似たような建物。
こんなの、地元民でも迷うんじゃないかと思うくらい入り組んだ路地。
「ヤバいなぁ…」
周囲を見渡しながら呟く。
この世界に迷い込んだ数ヶ月前のことを思い出す。
あの時も今と同じような、恐怖の混じった不安を抱えていた。
ただ、今はここがどこかわからないという恐怖に加えて、自分がこの世界で性的被害にあう可能性がある、とわかっているから、なお怖くなる。
元の世界で、夜道を1人歩く女性が、今の自分と同じ恐怖を抱えていたんだろうな、と、その怖さを身を持って知った。
出来れば、人に会って道を聞いて、と思うが、全員がいい人ではない。
会えたとしても、かなり慎重にならなければいけないと、自分に言い聞かせる。
ずっと緊張しながら歩き、みんなと離れてから1時間は経っただろうか。
ようやっと近くから人の話し声が聞こえてきた。
一気に体が強張る。
慎重に声のする方へ向かい、その声が高い女性の声だとわかって、少しだけホッとする。
だが、その口調が怒っているような、人に向かって文句を言っているようで、一瞬そちらへ行くのを躊躇った。
「だから、あたしに言ったって無理なんだって」
だんだんと、何を言っているかがはっきりしてくる。
「そこをなんとか…」
「無理なものは無理」
丁字路の曲がった先から声が聞こえてきて、とりあえずそっと角からそっと覗いて声の主を確認する。
女性と男性が言い争っている。
というか一方的に女性が怒っているような感じだった。
「一目見るだけでもいいからさ。友人だって言って一緒に連れてってよ。荷物持ちでもなんでもやるから。頼む!」
「無理。マジで無理。あんた、あそこがどんな店だかわかって言ってんの?」
「わかってるから頼んでるんじゃないか。俺なんかが行ける店じゃないってわかってるからコネを使って…」
「コネで入れるような店じゃないっつってんの」
会話の内容で、なんとなくわかった。
高級な店で働く女の子の伝手で、裏口から店に入ろうとしているのだろう。
「そもそも、従業員の出入りだって相当厳しいんだよ。あんたみたいなのを連れて来ようとする奴も多いからね。それに、もし関係のない奴を引き入れたってわかったら、あたしのクビが飛ぶ」
女性が真顔で説明する。
「わかるだろ。連れて行きたくないんじゃなくて、連れて行けないんだ」
真剣に説明されて男が怯む。
だが、それでもゴニョゴニョと食い下がる。
「店に入りたかったら、必死に稼いで正面から堂々と来な」
女性の言葉が、男の癇に障ったらしい。
突然、腕を振り上げたかと思うと、ゴツッと音がした。
思わず、うわっと顔を顰めた。
無理難題を言っているのは男の方なのに、自分の要望が通らないとわかって、女性を殴った。
「お前、ちょっと調子に乗ってねーか。俺がここまで頼んでるっつーのに」
「あんたも、誰に手をあげたかわかってんだろうね」
顔を殴られて、口の中が切れたのだろう、血の混じった唾を横へペッと吐き捨てる。
「私が店に報告すれば、例え金があったって店に入れないよ」
その言葉に男がますます興奮したように鼻息を荒くし、再び女性を殴る。
これはマズい。
女性は細くて小さい。なのに、自分よりもがっちりとした体型の男が、女性に拳を振り上げているのを見て、いてもたってもいられず路地の角から飛び出して、駆け寄った。
「動くな」
男に向かって左手を突き出して、金縛りの魔法をかける。
その瞬間、腕を振り上げた状態で男が硬直した。
「あ…う…」
かなり強めにかけたため、声も出せなくなったらしい。
女性が驚いて駆け寄った自分を凝視する。
「大丈夫?」
殴られて、壁によしかかった女性を見る。その顔の様子を見て顔を顰めた。
すでに頬は腫れて、口の端から血が流れていて、どれだけ強く殴られたのかがわかる。
「事情はよくわかんないけど、女性に手を上げるっていうのはいただけないな」
動けない男に近付いて、低い声で自分よりも遥かに若い男を睨む。
「どうする?このまま立ち去るなら拘束を解除するけど、まだ続けるならこの状態で別の魔法ぶち込むよ」
男の顔から汗が落ちる。
「わ…た」
わかったと言いたいのだろう、女性と男性の間に立って、女性を後ろに庇いながら金縛りの魔法を解いた。
その瞬間、ガクンと体が崩れ、自由に動けるようになった男が膝に両手をついて荒い呼吸を繰り返した。
「行けよ」
男にそう言ったが、男が興奮した目で自分を睨み、襲いかかってっくる。
まぁ、そうだろうな。
呆れたような表情で、右手で飛んでいる虫を払うように、サッと小さく振ると、男の体が一瞬で後ろに吹っ飛び、壁に叩きつけられて、地面に落ちた。背中を強打したことで、そのまま気を失う。
「えっと、大丈夫?余計なことだったかな」
後ろを振り返って、ポカンとしている女性に笑顔を向ける。
「あ、いや…。ありがとう…」
そうお礼を言うが、腫れた頬で喋りづらそうだ。
「じっとしてて」
そう言って、両手を女性の顔に近づけると、触れずに包み込むように手を添える。
「ヒール」
一瞬で、女性の怪我が治る。
女性は痛みがなくなって、腫れも消えたとわかり、自分の顔を両手で触り、撫でて確認する。
「おお、治ってる」
子供のように、嬉しそうに自分の顔を撫で回していた。
「ありがとう。助かったよ」
本当に子供のような笑顔を向けられて、ニカッと笑われた。
自分よりもかなり背の低い、小さな女性にニコリと微笑む。
かなり小さいが、女の子という感じはしない。れっきとした大人の女性だとその雰囲気でわかる。
きっとこの姿が大人のサイズで、小人族、ハーフリング、とかいう種族だったかな、と昔やったファンタジーRPGのキャラクター設定を思い出す。
「ああ、でもごめん、治療代払えないよ。そんなにお金持ってないし」
「え?ああ、いいよ別に。俺は治癒師じゃないし」
この世界でいう治癒師、怪我を治して稼ぐ存在だと思われたようで、慌てて否定する。
「じゃ、魔導士?」
「あー…、なんだろ…」
改めて、聞かれると、自分ってなんなんだろうと思う。
まさか、ジュノーです、なんて言えないし。
まさに今の自分は、職業不詳かつ住所不定の不審者だ。
そう思って笑う。
「俺は……迷子です」
そう答えて、女性が体に似合わず大きな声で笑った。
「いたか」
ロイが乱れた呼吸を整えながら、同じく呼吸が荒い2人に声をかける。
2人とも黙って首をふる。
グレイが顎に伝う汗を腕で拭い、大きく深呼吸する。
翔平とはぐれてすでに30分。
花魁道中が移動したために、群衆もそれに合わせて居なくなった。
今は人通りが元に戻り、多くはあるが、混雑しているわけではない。
翔平は子供じゃない。きっとはぐれてから、翔平は探されることを考えて、動かずに1箇所にとどまっているはずだと思い、全員で周囲を探したが、見つからない。
少し路地に入ってみたが、それでもいなかった。
「あまり考えたくはありませんが…」
「攫われたな」
グレイが続きを言う。
ここまで探して見つからないなら、まず間違いない。
確実に、翔平は攫われた。
おそらく、はぐれて運悪く1人でいる所を目をつけられ、そういう目的で襲われ連れて行かれたと全員が確信する。
さっきは冗談のように翔平に言ったが、翔平が狙われやすいのは事実だ。
本人の生まれながらの気質なのか、人を惹きつけるような雰囲気を持っている。
いつもいつも可愛いと揶揄っていたが、見た目だけのことを言っていたわけではない。彼の持つ印象が「可愛い」という言葉に当てはまるから、そう言っていただけだ。
「まぁ、ショーヘーもかなり強くなったし、そうおいそれとヤられはしないだろうが…」
そう言って、ロイとディーに睨まれ、失言したと顔を顰める。
「ロイ」
ディーが落ち着いてきた呼吸でロイに声をかける。
「彼女に頼みましょう。早い方がいい」
真剣にロイを見る。
「…だな」
そう言って眉根を寄せる。
彼女という言葉を聞いて、グレイも深く息を吐いた。
無事でいてくれ。
3人がそれぞれ、心の中で呟いた。
彼女はミーナといった。
とある大店で、化粧師として働いているという。
化粧師という聞き慣れない言葉に、具体的に何をするのか聞くと、メイクアップアーティストのことだった。
体に似合わない、大きな箱のような鞄を肩から下げ、さらに手にも四角い鞄を両手に持っている。
その鞄を持ってあげて、2人で並んで歩く。
迷子だと打ち明けてひとしきり笑われた後、お礼に表通りまで案内してくれることになった。
「攻撃も防御も治癒も出来るなら、魔導士じゃん」
そう言われて、そうか、と、今度から聞かれた時はそう答えようと決める。
「それにしても、危ないよ。あんたみたいなのが1人で来るような場所じゃないし」
そう言われて、実は連れとはぐれて攫われそうになって、必死に逃げてました、と教えて、やはり笑われた。
あんたみたいなの、と言われて、どういう意味なのか聞きたくなったが、聞いて凹むだろうと思ったので、聞くのを止める。
「うーん…。そっかぁ」
ミーナがふいに考えて、独り言を呟く。
「ショーヘー、あんた、1人で通りを歩かない方がいいよ。マジで危ない」
自分よりも小さくか弱そうに見えるミーナに言われて、若干凹む。
「そ、そうかな」
「うん。攫われて犯されるだけならまだマシだけど、きっとあんた性奴隷として売られるよ」
「え」
可愛い顔をしてえげつないことを言われて、あはは、と力なく笑った。
「連れが見つかるまで、ボスにお願いするから店にいたらいいよ。ついでに連れの特徴教えてくれたら、探してもらえるよう頼んでみる」
「いいの?だって、さっきの男」
さっき、連れて行ってくれと頼んでいた男は頑なに拒んでいたのに、自分を連れて行こうとしていることに驚く。
「ああ、あれはあいつだからダメなだけ。本当は連れて行けるんだよ。入れるかどうかは別としてね。
あいつは、裏口からでも絶対に入れないってわかってるから、断ってただけ」
ミーナはそう言うが、連れていっても入れないなら、殴られてまで断る必要はなかったのに、と思った。
「ああ、一応連れてくって言っても、やっぱり人は選ぶよ。紹介料があるし。
逆におかしなの連れてったら、あたしの評価が落ちちゃう」
自分の考えていることを察して、ミーナが教えてくれる。
「なるほどね。ありがとう、ミーナ」
そうニッコリと微笑むと、ミーナが少しだけ赤面した。
「あのさ、ショーヘー」
スッと視線を外して、ブツブツと呟くように言う。
「あんたその顔、誰にでも見せない方がいいよ。勘違いされる」
「え!?」
思わず空いた手で自分の顔を触る。
どんな顔してた?と考えるが、意識して表情をつくっているわけではないから、どんな顔かわからない。
「あんた、面白いね。可愛いし」
ミーナがケラケラと笑った。
メインストリートの奥、一際大きな大店の前に3人が立つ。
「まさか、またここに来ることになるとはね…」
ディーがため息混じりに呟く。
「ディーは3回目か?」
グレイが聞き、ロイについて店に入る。
「そのくらいです。グレイは?」
「俺は…教えん」
「は!?」
聞いといて、自分は内緒とかありえんとディーがグレイをどつく。
「行くぞ」
ロイが店へ入る。
「いらっしゃいませ」
すぐに、黒服に身を包んだ男が近付いてくる。その目が一瞬で3人の身なりを確認し、客か冷やかしかを見極め、金があるかどうかも判断する。
「スカーに会いに来た」
男が次の言葉を言おうと口を開きかけた瞬間、ロイがそう言い、その場で自分だけ認識阻害の魔法を解除する。
その瞬間、周囲にいた遊女や客が一気にざわついた。
「ロイが来たと伝えろ」
黒服がゴクリと唾を飲み込み、かしこまりました、と一礼して下がっていく。
「どうぞ、こちらへ」
すぐに、別の黒服が3人をロビー奥のソファまで案内し、そこに座っていた別の客がすぐさま席を譲るために立ち上がる。
ボソボソと、「白炎の狼」「英雄ロイ」と口々に囁くのが聞こえる。
「あの、ロイ様…握手してもらえませんか」
その中で、勇気を出した1人の客が近寄ってくると、両手を差し出してくる。
「プライベートなので勘弁してもらえるか。すまんな」
薄く微笑みながら、やんわりと断ると、申し訳ありません、と男がすごすごと引き下がる。
「かっこいい…」
「いい男…」
「抱かれてみたい」
「抱いてみたい」
「お連れの方もいいわ」
「美しい」
娼婦も男娼も客も、全員がロイたちを見る。所々で自分たちを噂する声に、フンと鼻を鳴らす。
その時、一際ため息の声が大きくなり、店の主人が入口正面にある大きな階段から階下へ降りてきた。
「ああ…、スカーレット様だ」
「いつ見てもお美しい」
ロイたちと同じように、客たちがその容姿にうっとりと見入る。
長くヒップまで届く、ストレートの金髪。耳が長く尖り、エルフであることがわかる。
体のラインがわかる真紅のドレス。
胸元から臍まで大きく切れ込みの入りったドレス。その赤い布の間から白く大きく形のいいバストが谷間を覗かせ、くびれたウエストにバストと同じように大きなヒップ。
ロングドレスのサイドに長いスリットが入り、白く長い足が階段を降りるたびに妖しく動く。
髪と同じ金色の長いまつ毛、ドレスと同じ真紅の口紅を塗った形の良い唇。
絶世の美女がゆっくりと階段を降りてくる。
「ロイ、久しぶりね。3年ぶりかしら」
3人の前に来て、ロイと抱擁を交わす。
抱擁が終わって、ロイがスカーレットの手を取って、その甲へ口付ける。
ディーもグレイも同じようにスカーレットの抱擁を受け、手へ口付けを落とす。
「なんだ、ディーゼルにグレイじゃないの。認識阻害なんてどうして?」
2人の魔法は解除していないのに、スカーレットは気付く。
多分、抱擁した時に気付いたのだろうと、2人が苦笑した。
「色々事情があってな。頼みたいことがあって来たんだ。奥で話したい」
「あら、私に会いに来てくれたんじゃないの?」
「急ぐんだ」
ロイの真剣な眼差しに、スカーレットが目を細めた。
「いいわよ。いらっしゃい」
くるりと踵を返し、歩きながら使用人の黒服に声をかける。
「この後の予定は全部キャンセルして」
「かしこまりました」
使用人たちが道を開け、頭を下げる。
3人もスカーレットの後に続き、階段をあがり、建物の上階、さらに奥まで進んだ。
豪華なスカーレットの執務室へ入り、そのソファに座る。
そこでディーとグレイも認識阻害の魔法を解いた。
「ロイ坊、ディー坊ちゃん、グレイ坊や、本当に久しぶりね。元気だった?」
ニコニコとスカーレットが言う。
「坊や扱いは止めてくれ」
思わずグレイが顔を顰める。
「あら、いいじゃない。ここには私たちしかいないし。
それにしても、相変わらず悪ガキトリオでつるんでるのね」
おかしそうに、懐かしいわ、とクスクスと笑う。
「早速だが、人を探して欲しい」
思い出話をしそうなスカーレットに、ロイが本題を切り出す。
「もう1人、連れがいたんですが、はぐれてしまって。1人になった所を攫われてしまったかと」
ディーが真剣にスカーレットを見る。
「貴方達がついていながら?」
スカーレットが眉を動かす。
「不甲斐ない…」
グレイがこぼす。
その3人の様子をじっと見つめ、スカーレットが目を細める。
「特徴を教えてちょうだい」
「恩にきる」
「貸しよ」
そう言われ、苦笑いしつつも翔平の特徴を教えた。
「名前はショーヘイ。黒髪、少し長めの短髪、細身の男。39歳だが、20代後半から30代前半に見える。身長175センチくらい。黒いパンツに水色に白のラインが入ったシャツ。ベージュの肩掛け鞄」
スラスラとディーが特徴を伝え、スカーレットは一切メモを取らずに暗記していく。
「右耳に、これと同じピアスをつけてる」
そう言って、ロイとディーの左耳のピアスを見せた。
「あら…、そういうこと。それなら焦るわよね」
スカーレットがそう言うと、立ち上がって一度部屋を出て行き、すぐに戻ってくる。
「手配したわ。見つかるといいわね」
そう言って3人の背後に回ると、ロイの左耳のピアスを指で弾いた。
「大事な人なのね」
スカーレットが呟いて微笑む。
「ここで待つ?」
「いや、俺たちも探しに行く」
「わかったわ。見つけたらこちらで保護しておくから、何度か立ち寄ってちょうだい」
3人が立ち上がって、部屋を出る。
「頼む。数時間おきに店に寄るから」
先ほどの階段の所まで3人を送り、挨拶もそこそこに店を出て探しに行く姿を見送った。
「無事でいればいいけど」
スカーレットが小さく呟く。
この街で攫われるということが何を意味するかはよくわかっている。
ロイとディーが惚れるなら、きっと誰もが手を出したくなるような男だ。
見つかったとして、無事であるとは限らない。散々嬲られ、レイプされた状態であっても、生きていればまだ救いがある。
もし遺体で見つかったなら。
「この街が消えるかもね」
怒り狂ったロイが、この街を破壊する様子を妄想し、クスッと人ごとのように笑う。
そして、翔平がどんな男であるのか、すごく興味が湧いた。
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