おっさんが願うもの

猫の手

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王都への旅路 〜イグリットお家騒動〜

41.おっさん、拘束される

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 暗く狭い廊下を、息を切らして歩く。
「全く、これだから馬鹿は御し難い」
 ゼーゼーと荒い呼吸を繰り返しながら、壁に手をついて歩みを止めると呼吸を落ち着かせる。
「あの、聖女、本物か」
 一瞬で自分の怪我を治した翔平を思い出し、そう呟く。
「こんな所を散歩かね?」
 不意に聞こえた声に、バッと顔を上げた。
「なぜ貴様がここに…」
 暗い廊下の中にあっても、その金色の瞳がゆらめいて見える。
「ギルバート…」
「なぜって、君がそれを言うかね、アドルフ」
 目を細めてベネットを見る。
「あいつらはお前の…」
「何のことか…」
 ギルバートがベネットの襟首を掴む。
「行きましょうか」
 喉が締まるほど襟を捻り上げ、ベネットがグウウと唸り声をあげ、そのままギルバートに引き摺られた。



 最後の私兵が大広間の壁に叩きつけられ、そのまま床にドサっと落ちる。
 結局、乱闘を収拾することは出来ず、最後の1人が失神するまで終わらせることは出来なかった。
 途中、領主を発見して戻ってきたジュリアも参戦し、部下の4人は、偽自警団と区別が出来ないために、拘束した領主とデニスの監視だけに留めた。
「やっと終わりか」
 グレイがパンパンと両手についた汚れを叩き落とす。
 相手を殺さず失神させるだけ、というのもなかなか手加減が難しい。
「貴様ら、こんなことをしてただで済むと思うなよ」
 いつの間にか意識を取り戻していたデニスが、自分達にギャンギャンと吠えてくるが、一切無視して話を始める。
「とりあえず、偽物の自警団を除いた怪我人は治療するよ。巻き込まれただけだし」
 ざっと大昼間を見渡すと、偽自警団に混ざって、逃げ遅れた貴族や使用人、従者達が倒れている。
 手分けしてその人達を一箇所に集め、ヒールをかけた。
 魔力を結構使ったが、気を失うほどではなかった。大分ヒールに慣れてきたという感じもある。
 その後、カーライドから一緒に来ていた仲間や、領都の自警団が屋敷に来て、次々と偽物をロープで縛り上げていく。
「なんか、有耶無耶になっちゃって…ごめん。煽りすぎた」
 結局領主交代どころではなくなった。
「そんなことないですよ。今回のことで、デニスを後継者の座から引き摺り下ろすことが出来ます」
 証人もたくさんいますしね、とジュリアがニッコリと笑う。
「ベネットもいつのまにかいなくなってるし」
 はぁとため息を吐いた。
 煽りすぎたし、欲張りすぎたかな、と反省する。
「とりあえず、こいつら、どうするか」
 縛り上げられた領主とデニスをチラッと見る。
 まだギャンギャンと吠えるデニスを一瞥し、ディーが近くに寄ると、2人を見下ろした。そして、認識阻害の魔法を全員分、解除する。
 ディーの姿を見たデニスが一瞬で黙り込んだ。
「貴方が誰に刃を向けたのか、認識できましたか」
「あ、あの」
「ちなみにね、聖女様は本物ですよ。
 正式に聖女であると認定するために王都へ向かっていたんです」
 冷たい目でデニスと領主を見た。
 まあ、これはハッタリであって、正しくは聖女ではなくジュノーであると認定するのだが。
「お前はこちらが流した偽情報にまんまと踊らされたんだよ」
 ディーの背後からグレイが睨みを効かせた。
「これ以上ジュリアに何かしてみろ、地の果てまで追いかけて殺してやる」
 遠慮なく殺気と覇気をデニスに叩きつけると、デニスが二度目の失禁をした。
「グレイ殿…」
 ジュリアが、泣きそうな笑顔をその背中に向けた。
 そのジュリアを見て、2人の関係が上手くいきそうで良かったと心から安心した。
「なぁ、ロイ」
 グレイとジュリアの話をしたくて、離れて後ろにいたロイを振り返る。
 だが、ロイはずっと無言のまま、あらぬ方向をじっと見ていた。
「ロイ?」
 そういえば、乱闘終了後から、ロイは一言も話していない。
 どこか怪我をしているのかと、急に心配になり、慌ててロイの側に歩み寄る。
 だが、ギッと睨まれて、ギクリとした。
「怒ってる、のか…?」
 その怒りに満ちた目を向けられて、心臓が跳ね上がった。ゾクッと悪寒が走る。
「おい、もういいよな」
 低い声で、ロイが前方にいた3人に言うと、自分の手首をものすごい力で掴んだ。そのままグイッと引っ張られ、踵を返して歩き始める。
「え?あ、ちょっと」
 突然のロイの行動に、ジュリアが慌てた。
「ど、どうしたんでしょうか」
「ああ…」
 ディーが言い淀み、グレイも苦笑いしか出来なかった。

 あの時、翔平がデニスに蹴られ踏み付けられている最中、ロイを挟んで両側に立っていた2人は、気が気じゃなかった。
 ジワジワと膨れ上がるロイの怒気と魔力。フーフーと荒い呼吸を繰り返し、ギリギリと歯を食い縛って、かろうじて約束を守っていたものの、その覇気にあてられて群衆の中で数人が気を失っていた。
 翔平がすぐに自分で治したから良かったものの、さらに暴行を加えられていたら、おそらくロイは怒りで我を忘れて暴れ出していただろう。
 もしそうなっていたら、自分2人では絶対にロイを抑えられなかった。
 すぐにデニスがキレてくれたので、別の意味でホッとしたのだ。
 ロイは今も怒りが収まっていない。これから翔平がされることを考えて、ため息をつくしか出来なかった。


「ロイ!痛いって!」
 掴まれた手首に痛みが走る。
 ズンズンと廊下を進み、ロイの歩く早さに引っ張られながら、走ってついて行く形になっていた。
 ロイが手当たり次第に部屋を確認していく。そして最後に確認した部屋の様子に呆れた声を漏らした。
 大きな天蓋付きのベッド。壁に飾られた拘束具や飾られた品々が、そういう行為をするためだけの部屋だとすぐにわかる。
 おそらくデニスの趣味だろうが、2年もの間収監されて未使用な筈なのに、綺麗に整えられ、妙な生々しさがあった。
「お楽しみ部屋ってことか」
 思い切り腕を引かれて、そのまま部屋に入ると、部屋に備え付けられていたベッドに、乱暴に放り投げられる。
「ロイ!」
 その行動に焦りと驚きと、少しの恐怖を感じてロイの名を呼ぶ。
「うるせえな」
 怒鳴り声を抑えたような声に、明らかに怒気が含まれており、ヒュッと息を呑む。
 バサっと騎士服の上着を脱ぐと放り投げ、ベッドへ上がってくるロイに思わず逃げようとして、ズリズリとベッドの上へ移動したが、手を伸ばしてきたロイの腕にあっさりと手首を掴まれた。

 怖い。

 ロイの目が、その表情が、全て怒りに満ちている。
 両方の手首を掴まれ上へ持ち上げられると、ガチャッと音がして手が離れた。
「な!」
 自分の手首が、拘束具に繋がれていた。
 一応手首の周りには柔らかなクッションがあって、金具に直接触れて傷つかないようにはなっているが、金属の部分が強力な磁石になっているらしく、両手首の金具同士がくっついて離れない。さらにその金具がベッドの天蓋へ鎖で繋がれていた。
「ロイ…やめ」
 恐怖で小さな声でしか抵抗出来ない。
 怒りで満ちた目で睨まれて、体が萎縮する。
 両足を抱えられると、履いていたズボンを下ろそうとするが、面倒くさい形の服に思ったように脱がすことが出来ず、苛立ったロイが、思い切りローブもズボンも引き裂いた。
「ヒィッ」
 小さく悲鳴をあげてしまう。
 下着も破かれて、足を抱え左右に開かされると、ロイが素早く自分のペニスを曝け出し、何の準備もしていないアナルに添えた。
「やめろ…」
 カタカタと小さく震えるが、次の瞬間、力づくでロイのペニスが挿入された。
「ひぐっ!」
 強烈な痛みと異物感に唸るような悲鳴を上げた。
 アナルの入口が裂け、血が流れる。
 そのまま無理矢理奥まで捩じ込まれ、奥深くまで挿入された。
「うあ、あ」
 痛みと恐怖に声が出る。
 全く受け入れ準備が出来ていないアナルが、無理矢理広げられ、異物を押し出そうと腸壁が動くが、お構いなしにロイが腰をゆすり出した。
「うあ!痛い!」
 思わず叫んだ。
「痛い?」
 ロイが動きを止めた。
「治せばいいだろ、自分で」
 冷たくそう言われた。
「殴られても、蹴られても、自分で治すから構わないんだろ?」
 そう言いながら、自分に覆い被さってくる。さらに奥まで挿入され、痛みに顔を顰めた。
「何度蹴られた?」
 グンと突き上げる。
「何度踏みつけられた?」
 さらに腰を揺さぶる。
「あばら、何本折れた?」
 全く遠慮せず、ガンガンと奥を突き始め、痛みで言葉にもならない悲鳴をあげた。
「治せよ!自分で!」
 痛みに涙が出てくる。
 その痛みは、自分の体の痛みじゃなく、ロイの心の痛みだと気付いた。
 自分がデニスに蹴られた時よりも、ずっと痛い。
 アナルから血が滴って、潤滑油代わりにロイの動きを激しくさせる。
 ゆさゆさと揺さぶられながら、拘束された腕を掴まれると頭上へと持ち上げられ、そのままベッドに押し付けられたまま突き上げられる。
 その痛みに、目を閉じて耐えていたが、ポタッと顔に水滴が落ちた。
「ロイ…」
 次から次へと降ってくる水滴が、ロイの涙だとわかって、胸が締め付けられた。
「ロイ…ロイ」
 何度もロイを呼ぶ。
「ック…」
 ロイがビクッと震え、自分に中に射精した。
 ゆっくりとペニスを引き抜くと同時に精液と血がアナルから零れ落ちる。
「治せよ」
 目元を拘束された両手で覆っていたが、無理矢理引き剥がされて、手をアナルまで持っていかされた。
「治せ」
 泣きながら、命令された通り小さな声でヒールと呟く。
 一瞬で、裂けた傷が塞がって体の痛みは消えたが、心の痛みは消えない。
 ロイがベッドから降りると、部屋にあったキャビネットや引き出しを漁り、目的の物を見つけると、戻ってくる。
 ベッドに上がる前にすべて服を脱ぎ、自分の服もさらに引き裂かれた。
 バシャッと下半身に大量のローションがぶち撒けられる。
 再びロイが両足を抱えると、今度はゆっくりと挿入してくる。
 グプッとローションの力を借りて、今度は裂けることなく入ってきた。
「んあ…」
 ゾクッと背筋に快感が走る。
 深く挿入せず、浅く中を掻き回してくる動きに、次第に快感が伴ってくる。
「前に、俺に言ったよな。自分を犠牲にするなって」
「あ…あ…」
 少しづつ喘ぎに変わる自分の声を聞きながら、震えながら勃ち上がり始めたペニスを指でなぞった。
「んん…」
「俺にそう言ったくせに、自分が犠牲になるのはいいのか」
 ギュッとペニスを握られて、ビクンと体が跳ねる。
「勝手だな、ショーヘー」
 ドチュッといきなり奥まで突き上げる。
「あが!」
 その衝撃に引き攣った声が出た。
 そして再び浅い場所でのストロークを始める。
「俺がどんな気持ちでお前が痛ぶられるのを見てたと思う?」
「あぅ…ん…う…」
 グプグプと亀頭が出入りを繰り返す。
「気が狂いそうだったよ!」
 ドチュッと再び奥まで突き上げられて、また入口付近まで引き抜かれる。
「んぐ!ん…」
「俺は、お前のためなら何だってする」
 浅い抽送を繰り返しながら、自分のペニスをチュクチュクと扱く。
「あ…はぁ…ぁ」
「でもお前が傷付くのだけは絶対に駄目だ!」
 また奥まで突き上げられた。
「もう二度とあんなことを俺にさせるな!」
「んあ“、あ、あ」
 そのまま奥をガンガン突き上げられた。
「ロイ、ロイイィ!」
 何度も名前を叫んだ。ペニスを扱かれ、腸壁を擦り前立腺を突き上げられて、そのまま射精した。
「グゥ」
 キュウッとアナルが締まり、ロイも再び中に精液を放つ。
 お互いにビクビクと体を震わせて、快楽の余韻に浸る。ロイが自分に覆い被さり、荒い呼吸を繰り返す。
「ロイ…ごめん。ごめんなさい」
 拘束された腕でロイを抱きしめる。
「ごめんなさい…」
 ボロボロと涙を流した。
 自分が、ロイに一番辛い約束を強要し、その辛さを怒りに変えて耐えたロイに心から謝る。
「もう、あんなこと言わない…自分を犠牲にしない…だから…」
 まだ挿入されたまま覆い被さるロイの腰に自分の足を絡ませる。
「俺を…守って…愛して…」
 グッと足に力を入れてロイの腰を押し、自らロイのペニスを自分の中へ導くような動きをした。
 途端に、射精したばかりのペニスがみるみると太さと硬さを取り戻して行く。
「あん…」
 アナルが広げられる感覚に、素直に声を上げた。
 ロイの腕に力が込められて、グッと体を持ち上げられる。
 腕を背中に回してロイにしがみつくと、胡座をかいたロイの上に座る体勢をとらされた。
「んあ…」
 自分の体重で、さらに深くロイを受け入れる。
 顔を上げ見つめ合うと、自然に唇が重なった。
 ねっとりと舌を絡ませて、ロイが口内の性感帯を舌で嬲ってくる。
「んん…はぁ…ん…」
 クチュクチュと何度も舌を絡ませて、唇を互いに舐め合う。
 ロイの指が両方の乳首を弄り出し、ピンピンと指で弾かれると、ビクビクと快感に細かく体を震わせた。
「あ…あぁ…」
 口と乳首と同時に愛撫されながら、ゆさゆさと揺さぶられて。下から突き上げられる行為に、気持ち良すぎて、頭がボーッとしてくる。
 強くはないが、何度も揺さぶられ、中を擦り上げられて、ゆっくりと追い詰められ、プルプルと小さく体を震わせると、初めてアナルだけで絶頂に達した。
 途端にギュウッと締まったアナルに、ロイも射精した。
 繋がったままのアナルのほんの少しの隙間から白濁とした精液が流れてくる。
「ロイ…もっと…愛して…」
 ロイの耳元でそう囁き、その耳をペロリと舐めた。それだけで、ロイのペニスが復活する。
「あ」
 再び広げられたアナルに、ゾクッと快感が襲う。

 もっとシたい。
 もっと愛されたい。
 もっと、自分にロイの愛を注いで欲しい。
 
 歓喜に震える体に、心も素直になる。



 ベッドの上に膝立ちになり、拘束された腕が鎖によって吊り上げられる。
 背後から、ロイの手が乳首を摘み、その先端をクリクリと弄られると、ペニスがビクビクと上下に揺れて、先走りの蜜をシーツの上に飛ばした。
 何度も中に注がれたロイの精液が、タラタラと太ももを伝う。
 ロイの手が自分に腰を掴むと、打ち付けるように前後に揺り出す。
「あ、あ、あ」
 バチュンバチュンと濡れた音を立てて突き上げられると、突き上げに合わせて嬌声が漏れる。
「ロイ、また、イく…」
 そのまま射精するが、すでに何度もイカされたペニスからは、トロトロと精液が溢れるだけで、勢いはすでになかった。
「ショーヘー…出すよ」
 背後から強く抱くしめられて、もう何度目か覚えていないロイの精液を受け止める。
 それだけで、ゾクゾクとした快感が襲ってくる。
 ゆっくりとペニスが引き抜かれると、ゴボッと音を立てて、収まりきれない精液が溢れ出す。
 鎖をジャラジャラと音を立てて緩めると、脱力してベッドへ倒れ込んだ。
「ロイ…好き…愛してる」
「俺も…すげー好き」
 ショーヘーを抱き起こし、何度も口付けをしながらお互いに睦言を言い合う。
 そして、ロイの指が背中をなぞり、再びアナルへ挿入されると、
「あ」
 とビクンと体が跳ねた。



「あの…大丈夫でしょうか…」
 数時間経っても戻ってこない2人に、ジュリアが不安そうにディーとロイに話しかける。
 今3人は、領主の執務室で、領地経営に関する資料を精査していた。
「ああ、大丈夫だと思いますよ」
「そうだな。別に暴れる音も聞こえないし、爆破音もないしな」
 グレイが不穏な言葉を言うので、ますます不安になる。
「でも…」
「話し合って、仲直りしますよ」
 ディーもグレイも2人がSEXしてるとわかっていたが、ウブなジュリアにはわからない。
「お2人がそう言うなら…」
 と再び書類に目を通す。
 だがどうしても気になってしまう。
 ロイの怒り方は尋常ではなかった。
 もし、もしも、殴りあって気絶してるとか、刺したりとか、などと見当違いなことを考えてしまっていた。
「お茶、淹れてきますね」
 ガタっと席を立つと、執務室を出て、こっそりと2人を探しに行くことにした。
 ロイ様、聖女様、どうか無事でいてください、と考えていた。
 いくつか屋敷内の部屋を見て回ったが、2人の姿はない。もしかして外に出て戦ったんじゃ、と思うが、まだ趣味の悪いデニスの部屋があったと思い出す。
 あんな部屋にいるわけがないと思いつつ、その部屋に向かう。



「あ、あん、あ」
 ベッドに座ったロイに跨って、アナルに深くそのペニスを受け入れて揺さぶられる。
 もう何も考えられなかった。
 ただただ気持ちよくて、もっとして欲しくて、何度も何度もキスをして、ペニスを受け入れる。
 もう精液なんて出ないに等しいが、それでも空イキを繰り返していた。
 そして、また絶頂が近くなる。
「あ…あぁ…」
 体をブルブルと震わせて、ロイに抱きつき、その快感を味わう。
 ロイもまた、その中に精液を放つが、量は少なくなっていた。
「ふ…んぅ…」
 ビクンビクンと体を震わせながら、深く舌を絡ませ合う。
 そしてそのまま再びロイが腰を揺すり出し、もう何度目かわからない快感に意識が朦朧としていた。

「……」
 ゆっくりとドアを開け、目の前で繋がっている2人を目撃してしまう。
 呆然と立ち尽くしてしまって、驚きと恥ずかしさで体が硬直してしまった。
 だが、不意に目元が暗くなり、そのまま頭と体を抑えられて、後ろに下げられると、静かにドアが閉められた。
「遅いから探しに来てみれば…」
 グレイがそっとジュリアを離し、困ったような表情をする。
 真っ赤になってパクパクと口を動かして何か話そうとするが、声が、言葉が出てこない。
「人のSEXを見たのは初めてか?」
 グレイにそう聞かれたが答えられない。
 ゆっくりとグレイに促されて部屋から離れるが、足が震えてしまって、上手く歩けなかった。
「ジュリア」
 名前を呼ばれてグレイを見上げる。
 そのグレイに押されて、壁に押し付けられた。
「お前に惚れた」
 真顔でそう言われた瞬間、カーッと赤くなる。
 元々グレイが自分に対してアピールしてくるので、多分そうだろうなとは思っていた。しかも、自分もまんざらではなくて、グレイならと考える自分にも気付いていた。
「キスしたい」
 そう立て続けに言われて、ジュリアは思わず頷いてしまう。
 ギュッとグレイに抱きしめられ、ゆっくりと重ねるだけのキスをされた。
 重ねた唇が熱くて、気持ちがいい、とそう思い、もう一度したくて、離れた後、グレイの顔を押さえて自分からも口付けた。
 驚いたグレイが、さらに強く抱きしめてくる。

 人を好きになるというのは、気持ちがいいものなんだと、そう思った。

 

 
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