おっさんが願うもの

猫の手

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王都への旅路 〜イグリットお家騒動〜

おっさん、聖女になる

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 人の話し声に、徐々に覚醒して行く。目はまだ開かないが、会話は耳に入ってくる。
「聖女様にお礼を」
「聖女様はお目覚めに?」
 セイジョ様、セイジョ様、その言葉に、セイジョって人がここに居るんだと思った。
「まだ起きねーか」
 グレイの声がする。
「無理もないですよ。戦闘であれだけ魔力を消費した上に、さらに数百人を一度に治療したんですから、いったいどれれだけ魔力を使ったんだか…」
 呆れたディーの声がする。
「聖女様ねぇ…」
 クックッとグレイが含み笑いをする。
「そーいやロイはどうした?」
「ああ、復興の手伝いに行ってますよ」
「そっか。じゃあ俺も行ってこようかな」
 バサリと布の音がした後、静かになったので、薄く目を開けた。
 視界を動かすと、ディーの姿が見える。
「ディー…」
「あ、目が覚めましたか」
「あー…うん…お腹空いた…」
 そう言った直後グウウッとお腹が鳴った。



 ギルバートが用意した天幕は無事だった。念の為にと荷物に保護魔法をかけておいて正解だったとディーが誇らしげに言う。
 さらに言うなら、旅に不要な物だったロマ宅から回収したスクロール類などは全てギルバートに預けてきていたため、本当に被害は馬車だけだった。
 馬も3頭、ディーが馬車の外に出た時に解放して逃してある。その3頭は今はきちんと戻ってきて天幕のそばで草を食んでいるからとても賢い。
 夕食後、今現在の状況を確認する。
「2日も寝てたのかー。」
「焦ったんだぞ。またいきなり倒れるから」
 ロイが頭をグリグリしてくる。
「…ごめん」
「戦闘で火の雨を降らせたり、かなりの数の火魔法を使った後で、あの治癒魔法ですよ。それで枯渇すらしていないんですから魔力お化けとは良く言ったもんです」
 ディーが笑いながら言う。
「あのヒールはすごかったなー。集まってた奴全員だもんなー」
「ああー、あれは魔力ごっそり持ってかれたわw」
 自分もそう笑って何でもないことのように言ったが、ロイに苦笑いされた。
「笑い事じゃねーっつの。すぐに気ぃ失ってどんだけ心配したか」
 さらに小突かれて、すみません、と恐縮した。

 モンスターブレイクからすでに2日経ち、もうすでに村人達は復興に向けて動き始めていると聞いた。
 モンスターブレイク発生直後、すぐに早馬で隣の街に知らせを走らせている。そこからさらに近隣の街や村、領都まで連絡がいくはずだ。
 実際、翌日には隣の街から自警団が救援と支援に到着し、村が壊滅していない状況に驚くと共に喜んだと言う。
 通常のパターンだと、一つの村や街が襲われた場合、少なくともその周辺にも被害が及び、発生した全魔獣が全滅するまで被害は拡大していくのだそうだ。
 それが今回はたまたま居合わせた自分たちが全て駆逐したため、近隣への被害が0という状況になった。
 それでも、村の人口の約4分の1の命が失われた。翌日1日かけて、全ての人の埋葬が終わり、さらに翌日の今日から復興が始まった。
 村人には3人の正体を明かしたが、これから来る人には秘密にしてほしいとお願いして約束を取り付けた。今もまた認識阻害魔法をかけて、髪色も変更している。
 ただ聖女に関してだけは、秘密にせず説明に使ってくれと言った。たまたま聖女が通りかかり、その護衛たちがモンスターブレイクを撃破した、ということにしてもらう。

「そういや、セイジョさんって人、どこに居るんだ? なんか偉い人みたいだけど」
 寝ている時に聞こえてきた人のことを聞いてみる。
「あ?」
「え?」
「は?」
「…、いや、だってセイジョ様って村の人たちが…」
 3人の様子に訝しむが、突然3人とも爆笑した。
「アハハハハ!!!」
「セイジョさんって!!」
「え? なに? なんか変なこと言った!?」
「すみません、セイジョ様って貴方のことですよ、ショーヘイさん」
「…あ?」
「あー、知らないのか」
 グレイが笑いながら膝を叩く。
「流石にロマもそこまでは話してないわ」
 ロイがゲラゲラと寝っ転がりならがら足をバタバタさせている。
 そんなに笑われることなのか。だんだんとムカついてくる。
「うるせーな!知らねーんだよ!しゃーないだろ!!」
「ごめんごめん」
 ロイがギュッと自分を抱きしめる。が、まだ笑っていた。
「聖女の話をしましょうか」
 ディーが笑いすぎて涙を拭いながら、教えてくれた。


 千年以上前からこの世界に伝わる神話に近い御伽噺のようなお話。
 1人の女性が現れる。
 その魔力は膨大で、世界中を旅して怪我や病気に苦しむ人々を救った。
 戦争中の国を訪れ、今まさに戦わんとする人の間に立ち塞がり、戦争を終わらせた。
 魔獣をその魔力で一掃した。
 魔獣に襲われる国をその結界で守り抜いた。
 荒れ果てた大地に緑を蘇らせ、森を復活させた。
 逸話は世界各地に残っている。
 時折この世界の何処かで聖女の話が生まれ、語り継がれていく。
 ただあくまでも伝説は伝説でしかなく、その存在が事実なのか架空なのかはわからない。
 その姿が記録に残ることはなく、わかっているのは一番最初が女性だったということだけ。だから、聖なる乙女、聖女と呼ばれた。

「ふーん。そんな伝説があるんだー」
 すげーな聖女、とクッションを膝に乗せてリラックスしながらモグモグと果物を頬張る。まるで人ごとのように感想を漏らした。もし実在するならジュノーよりもずっと価値があるんじゃないかと思う。
「だからお前のことだって」
 グレイが呆れたように言う。
「え、だって俺男じゃん」
 そのセリフにロイが爆笑する。
「聖女っていうのは、最初が女性だったからただそう呼ばれているだけであって、奇跡を起こした人の事を指すんですよ。男女は関係ありません」
「お前がやったことが奇跡みたいなもんなんだよ。あんな広範囲に、しかも一度に数百人を治すなんて聞いた事ないわ」
 ディーとグレイにさらに説明されて、ポロっと手に持っていた果物を落とした。
「え!なに?俺が聖女なの!?」
「だからさっきからそー言ってんじゃん」
 ロイとグレイが口を揃え、ディーが爆笑した。

 ひとしきり笑われ、またとんでもないことをやらかしてしまった自分に落ち込む。
「ショーヘーがやったことは正しい。あれで何十人も命が救われたんだ」
 ロイがグリグリと頭を撫でて褒めてくる。
「助かったなら、それでいっか」
 そう開き直ることにした。
「そうそう。ついでにな、聖女伝説も利用させてもらうわ」
 ロイがポンと膝を叩く。
「利用?」
「ええ、我々が護衛してるのは聖女であってジュノーじゃないってことですよ」
 思考がついていかない。
「今回聖女が現れたってのは、ジュノーの噂よりも、馴染みが深い分もっと早く広まるだろうな。
 おそらくは、ジュノーじゃなくて聖女だった、に置き換わる可能性も出てくる」
「それがメリットになるのか?」
「なるさ。ジュノーと聖女、国や商人どもが欲しがるのはどっちだ?」
「…ジュノーだな」
 なるほどね、と納得する。
 二つは似ていて異なる物だ。
 ジュノーはその知識で利益をもたらすが、聖女は存在自体が神聖化されたもので、経済や商業においては利用価値は低い。
「ジュノーじゃなかった、聖女の間違いでしたってことになれば、各国や商人ども、スペンサーの雇い主の貴族も手を引く可能性が高くなる」
「利益の問題かあ…」
「そういうことです。ここは大いに聖女様をアピールすることにしましょう」
 ディーがニヤリと笑う。
 あ、この笑顔は何かを企んでる顔だ、とディー以外が思った。



「なーんでこーなるかなー」
 天幕の奥に座って、呟く。
「似合ってるぜー、ショーへー」
「似合うかどうかは別として、聖女っぽくなりましたよね」
「ショーヘーかわい~」
 ギルバートが用意していた着替えの中に、丁度良さそうな服を見つけて着替えさせられた。
 ギルバート邸で初日に着せられた、あの動きづらい、ローブがスカートに見える服だ。
 さらに、ディーが村人から譲り受けて来た真っ白い半透明のベールを頭の上からスッポリと被って、顔を隠す。
「お前ら絶対遊んでるだろ!」
 バッとベールを引っ張って取ると投げつける。そして正座から胡座をかいて不貞腐れた。
「ちゃんと被っててよー」
 ロイがニコニコしながらベールを拾うと、フワッとまた頭からかけられた。自分の前でしゃがみ込み、頬杖をついて可愛い可愛いと連呼している。

 可愛いもなにも、顔なんて見えてないだろーが。

「いいですか、明日にはカーライドへ出発します。そこでショーヘイさんは聖女様でいてくださいよ」
 今日の昼過ぎ、カーライドに常駐する自警団の先発隊が到着していた。
 現状を村長に聞き、まだ自分が眠っている時に天幕までやってきたそうだが、自分が眠っている事を理由に、一度お引き取り願っている。
 今は丁度自分たちがいる天幕の村を挟んで反対側に似たような天幕を張って陣取っていた。明日の昼には自警団本体が来る。入れ違いにカーライドへ向けて出発し、カーライドで聖女様活動を2日ほどした後に次の街へ出発。
 その後はいつものスタイルに戻るというわけだ。

 聖女様活動ってなんだ…。
 
 まるでアイドル活動みたいな言い方にかなり戸惑う。
「簡単ですよ、ただ怪我を治せばいいんです」
「そんなの治癒師でも出来るだろーが」
「いやいや、そこは盛大にやってもらいますよ」
 ディーがニヤリと笑う。
「それとあまり、喋らないでくださいね。絶対に我々の誰かが側にいますから、必ず何か話す時は我々に声をかけてください」
「そこまでする必要あるかー?」
 再びベールを取っ払うと、今度は足を投げ出してだらしなく座った。
「聖女様のイメージ作りですよ。神秘的な要素をふんだんに取り入れて、聖女様降臨!!って感じで」
 ディーがだんだん壊れていく。
「ま、派手に聖女をデビューさせればジュノーの噂なんて消し飛ぶだろうな」

 デビューってなんだ。アイドルかよ。

 グレイが近寄ってくると、しゃがんで自分の肩をポンと叩いた。
「頑張ってください、聖女様」
 そう言ってニヤニヤと笑う。
「絶対俺で遊んでる」
 ボソッと呟いた。
「さて、それでは私は村長の所で最終の打ち合わせをしてきます。グレイ、貴方も付き合ってください」
「……おー、今行くわ」
 グレイが立ち上がる時にロイの肩をポンと叩いて行ったが、自分はブーブーとこれから数日間の聖女様活動に文句を垂れていた。

「打ち合わせ行かねーの?」
 天幕の外に出たグレイが少し離れた所に立っていたディーに声をかける。
「行きませんよ」
 振り返ってニッコリと笑う。
「ほんといい性格してるよ、王子様」
 呆れたような口調で言うが、声は笑っている。
「何処で暇つぶしすっかな」
 グレイが辺りを見渡して、場所を探そうとした時、丁度離れたところにいた村人が声をかけてきた。
「ディー様ー、グレイ様ー、一緒に飲みませんかー?」
「いいですね、行きましょうか」
 居場所を見つけて、2人で村人と共に飲むことにした。

 ロイがまたベールを自分の頭にかけてくる。
「もーいいって、今はまだいらねーだろ」
「このベール、何なのか知らないだろ?」
 フワリと頭からかけられるが、今度は顔を出して、頭に乗っかる形で止められた。
「何だよ」
「花嫁のベールだよ」
 それを聞いた途端、ボンッと瞬間的に赤面した。
「な、な、なん」
「いろんな意味があってさ、聖なる乙女、神の巫女、処女、花嫁もその一つ」 
 カーッと顔が熱くなる。
「だから、聖女様がベールを被るのは正解なんだ。
 ディーのやつ、半分遊んでるけどな」
 そう言って笑った。
「この世界でも、嫁って言葉があるんだな…」
「なんで?」
「だって、男女ならいざ知らず、同性同士なら、どっちが夫なのか妻なのか、別に決めなくてもいいだろ?」
「まあ、そりゃそうだな」
 うーんとロイが考える。
「そんなこと、考えたことなかったわ」
「同性同士でベールを被る方がどっちなのかって揉めないのか?」
「……聞いたことないな。でも、今まで出た結婚式では、どっちかが必ず被ってたような…。ああ、そうだ2人とも被ってた時もあったな」
 男女の性に全く差別がない世界であっても、その役割がちゃんと決まっている。その不思議な感覚に、まだ少し慣れない。
 何となく、自分が被ってもまだ余っていた部分をロイの頭にフワリとかける。
 綺麗な顔に、すごくピッタリとハマって、別の意味で赤面した。
「綺麗だ」
 素直にそう言うと、ロイもボンッと一瞬で赤面した。
 2人してベールを被って、向かい合って赤くなっている状況に、可笑しくなってどちらからともなく笑った。
「変な状況w」
 肩を掴まれて、そのまま押し倒された。
「おい、ディーとグレイが…」
「戻ってこねーよ」
 被せ気味に答える。
「気を利かせてくれたんだ」
 グレイが出ていく時にロイの肩を叩いて行ったのを思い出す。
 ゆっくりと唇を重ねる。
「ん…」
 一度離してじっと見つめられる。
「すげー心配したんだからな」
 苦しそうな表情をしたロイに、キュッと胸が締め付けられた。
「…ごめん…」
 ロイの手が、服を脱がしていく。その手がベールに触れて、ロイが真っ赤になった。
「?」
「なんか…初夜みてえ…」
 口元を抑えて、初めて体を重ねるようなそんな錯覚を起こし、ニヤけが止まらない。
「何考えてんだよ」
 ゲシっとロイの足を蹴る。
「汚さないようにしないとな」
 そう言ってニヤける顔を抑えながらベールを取り払うと、遠くへ放り投げた。
 キスを繰り返しながら、互いに服を脱がせ合う。
 肌が密着し、互いにその熱さを確認しながら、何度も繰り返しキスをして舌を絡ませあった。
「あ…はぁ…」
 ロイの指が、乳首を優しく撫で上げると、ビクビクと自然に腰が揺れる。
 指で、舌で愛撫され、鬱血した乳首がぷっくりと存在感を示してくる。
「や、そこ、ばっかり…」
 両方の乳首を責められ続け、すでに硬く張り詰めたペニスに触れないことに抗議の声を上げる。
 その自分の反応にロイが笑い、希望通りゆっくりと手で包まれた。
「んぁ…あ…あぁ…」
 ゆるゆると上下に扱かれて、鈴口からトロトロと絶え間なく蜜がこぼれ落ちる。
 スッとロイが一瞬離れ、すぐに戻ってくると、今度は舌でペニスを嬲ってきた。
「あっ、あん…あ」
 舐め上げて、鈴口にキスすると、亀頭部分を咥え込み、中で転がすように舌を動かす。
「うぁ!あっ!」
 足に力が入ってビクビクと体が震える。
 ペニスを含まれながら、アナルの入口を指で撫で上げると、最初から2本の指を中へ挿入した。
 ペニスをしゃぶりながら挿入した指とは逆の手で、ローションの瓶の蓋を器用に開けると、ゆっくりとアナルへ垂らしていく。
 ヌプ、ヌプっと音を立ててローションをアナルに馴染ませていく。
 頃合いを見て指を引き抜くと、起き上がって、自分に見せつけるように、ロイのペニスにもローションを垂らして、ゆっくりと前後に扱く。
 ガチガチに硬くなり筋張った大きなペニスに、ごくりと唾を飲み込んだ。
 足を掴まれて、極限まで左右に開かされて、アナルの入口にロイのペニスが触れる。そしてその先端をアナルの周りに滑らせて、グチュグチュとわざと音を立てられた。
「んん…」
 なかなか挿入されないペニスに擦られるたび、アナルの入口がキュンキュンと収縮する。
 クプッと音を立て、ようやっと挿入が始まる。
 ゆっくりゆっくり、入口を押し広げ、中へ入っていくペニスを、ロイが上から恍惚とした笑顔を浮かべて見ている。
「あ…あ…」
 そのロイの表情にゾクゾクと背筋に悪寒に似た快感が走った。
 あと少しで亀頭部分を全て受け入れる所まで来て、ドチュンッと一気に腰を突き上げられ、一気に挿入された。
「あぁ!!」
 その衝撃と快感に、反射的に射精してしまった。
「んあ!あ…あ」
 ガクガクと震え、無意識に腰が揺れた。
「イッちゃった?」
 ペロリとロイが舌なめずりして、イッたばかりのペニスに触れる。そして、ペニスをさらに奥まで挿入するように、腰を使い出した。
「あ“!あ!あ”ぁ!」
 目の前がチカチカする。
 ゴツゴツとロイのペニスが奥にぶつかるのがわかる。
「すげーいい…。ショーヘーん中、気持ちいい」
 両足を抱え上げられると、腰の動きが早くなる。
 前立腺にロイの亀頭がガンガンぶつかり、イッばかりのペニスからポタポタと蜜と精液が漏れてくる。
「あ“ー!ロ、イ!」
 快感の激しさに、涙が溢れて咽び泣く。
 パンッパンッと肉がぶつかる音と、アナルを出入りする濡れた音に聴覚まで犯される。
「中に、いい?」
「ん!あ”、い、いから!もぅや、め!」
 行き過ぎた快感に耐えられず、悲鳴に近い声をあげる。
 次の瞬間、最奥にドクドクとロイの精液が放たれた。
 中に熱い精液が流れ込み、ガクガクと体が揺れた。
 ロイが快感に濡れたため息をつく。
 そのまま自分に覆い被さってくると、何度も何度もキスされた。
「好きだよ、愛してる」
 再び、指で乳首の先端を擦られて、ビクンと体が跳ねる。
「あ…、も、無理…」
「ごめん、我慢できない」
 グンと奥を突き上げられる。
「あ!」
 そのまま、再び律動が始まる。
 その激しさについていけず、途中から意識が飛んだ。




 バシバシと何度もロイを叩く。
「何度も止めろって言っただろーが!」
「ごめん、ごめんって」
 叩かれながら謝ってくるが、それでも口元がニヤついている。心なしか素肌がツヤツヤしているような気がする。
 気がつくと、とっくに朝になっていた。裸のまま、抱きしめられて眠っており、目が覚めて起きあがろうとした瞬間、腰に痛みが走った。
 何となく記憶に残っている。
 何度も何度もイカされた。途中までは覚えているが、その後は朧げにしか記憶がない。
 身体中の関節が悲鳴を上げて、ギギギッと音がなりそうだった。

 今日、村を出発する。
 こんな全身が悲鳴を上げた状態でちゃんと歩けるだろうか、と真剣に悩んだ。

 
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