おっさんが願うもの

猫の手

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王都への旅路 〜海沿いのリゾート地〜

おっさん、嫉妬する

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 明日はとうとうミルアに到着する。
 温泉を想像すると、嬉しくて、自分の置かれた立場がわかっていても、ついついニヤけてしまう。
 移動中はしょっちゅうクリーンを使うため、体はいつも清潔なままだ。でもやっぱり風呂でまったりしたい。
 野兎亭に風呂はなかった。ロマの家の風呂はドラム缶を一回り大きくしたような大きな樽のようなもので、ゆったりと足を伸ばして入る風呂ではなかった。
 温泉ではどんな風呂があるのか、非常に楽しみだった。内風呂はもちろん、露天風呂とかあるといいなあと考える。
 寝る前に、温泉のことを考えてウキウキしていたが、不意にロイに起こされた。
「あっちへ…」
 ロイに言われるまま、その後ろをついていく。グレイもディーも横になり眠っている。いや完全に寝ておらず、見て見ぬふりをしているだけかもしれないが。
 野兎亭で体を重ねて、あれから数回求められた。
 まだ、恋愛感情についてははっきりしていないが、頭と体は別物とはよくいったもので、一度味わってしまった快感を思い出すと、嫌とは言えず何度か同じような行為をした。
 悲しいかな、8年間自分の恋人は右手だけで、人から与えられる快感は凄まじく、性的欲求に勝てない自分に、かなりの後ろめたさを感じていた。
「ごめん…、ちょっと戦って興奮がおさまらなくてさ…」
 寝ている2人が見えなくなる所まで来ると、自分を木に押し付けてそう言ってくる。
 戦うとは言っても、野盗に対して一方的に攻撃しただけだろうが、それでもいつもグレイとやっている模擬戦よりも昂ってしまうのだろう。
「シていいか?」
 何をしようとしているのか理解してここまでついてきたのに、確認のために聞いてくる。毎回必ず、自分の許可を取ってくるのは、自分にまだ抵抗があるのを理解した上での気遣いなんだろう。
「いいよ」
 聞かれて毎回同じ返事をするが、まだ顔から火を吹き出しそうになるくらい恥ずかしかった。
 ロイの手が動き、周囲に遮音魔法を施す。野兎亭の一件から、これだけは絶対に忘れないようにしていた。
 体を密着させて、キスをする。
 下半身が密着したことでロイのペニスがすでに大きく固くなっているのがよくわかる。
「ハァ…ショーヘー」
 やはりいつもよりも興奮しているのか、吐息がすでに熱い。
 その熱を帯びた声と濡れた吐息に、ゾクゾクと感じてしまう。
 舌を絡ませて、お互いの存在を確かめるように貪り合う。
「あ…ぁ…」
 濃厚なキスを繰り返すと、だんだんと頭の芯が痺れて、これから起こる快感を思い出して体が震えた。
 ロイの手がシャツの中に侵入し、そのラインや肌を味わうと、胸を撫で指先で乳首を弾く。
「ん」
 少し弾かれただけで、ビクッと反応を返した。すでに快感でぷっくりと存在感を出していた乳首は、少し擦られただけで熱を帯び、さらに小さく膨れる。
 シャツを捲し上げられて、胸に顔を寄せると、早急に乳首へむしゃぶりつかれた。
「あ、あ、あ」
 舌で、指で、両方の乳首をコリコリと弄られて、声が出る。
 声が聞かれない、ロイしか聞いていないとはっきりわかっているので、声はもう我慢することをしなかった。
 指で片方の乳首をいじったまま、舌が腹部へと下がる。
 片手で器用に自分のズボンベルトを外し、紐解き、緩めると下着ごと下げられた。
 抑えるものがなくなったペニスが、プルンとロイの前に曝け出されて、乳首への刺激のたびにピクンピクンと揺れる。
 揺れるたびに、その鈴口から溢れた蜜が糸を引いて下へ落ちていく。
 ロイの手が胸から離れると、ペニスの根本に手を添えられ、先端にキスを何度かした後、咥えられた。
「あぁ!あ」
 熱い口の中に含まれて、舌で舐め上げられると、ガクガクと腰が震える。
 ジュブッジュブッと音を立てて前後に口と舌で扱かれると、その快感に声を上げ、上半身を曲げて腰が引けてしまう。
 ロイが口からペニス離すと、先端や竿をネットリと舐め上げて、手を使ってゆっくりと扱かれる。
「あ…はぁ…」
 親指で鈴口をグリグリと弄られ、強弱をつけて追い上げられていく。
「ショーヘー」
 手でゆっくりと扱きながらロイが立ち上がり、その耳元で囁いた。
「もっと、気持ちよくなって。声、聞かせて」
 ロイのが手が止まり、己も素早く前をくつろげると、大きく張り詰めたものを直接擦り付けてきた。
 ペニス同士が擦れ合い、2本合わせてロイの片手で扱かれる。
「ん…ぁ」
 舌を絡ませてキスを繰り返しながら、より下半身を密着させてペニスを擦り付けあう。
 やがてロイの片手が2本のペニスを扱き、もう一方の手が自分の尻を撫でたかと思うと、突然アナルの入口を指で撫でてきた。
「あ!」
 お互いの蜜でそこは濡れ、指が滑るように動く。
「ロイ、そこ!」
 抵抗する前に、ツプッと指が1本挿入された。ゾゾゾゾッと途端に快感が背筋を這い上がる。
「ヒゥッ」
 思わずロイの胸にしがみつく。
 指がヌプヌプと音を立てて抜き差しされ、その感覚にガクガクと体が震えた。
「あ、あ、あ」
 指に合わせて声が漏れる。
 頭の中が真っ白になりそうだった。前の後ろもロイの手によって快感を与えられ、ただただ翻弄される。
 いつのまにか、ロイは己のペニスを擦り付けるだけで、自分のだけを扱いて追い込み始めていた。

 なんだこれ!

 少しパニックになっていた。
 異物感もあるが、それよりも指で中を擦られるたびに襲ってくる強烈な快感は今まで感じたことがない。
「あ…抜い、て!」
 思わず懇願していた。
 指が入口付近まで引き抜かれ、終わると思った瞬間、2本の指が入ってくる感触がわかり、
「あー!」
 悲鳴をあげてしまった。
 指が中を広げるようにグネグネと動くのわかる。壁を擦り、広げ、奥へ奥へ入り込んでくる。
「あ…あ…やめ…」
 木の幹ロイの体に挟まれて、上半身を動かすことが出来ない。ロイの手がペニスとアナルを同時に犯していた。
 そして、中でロイの指がある一箇所に触れた時、電流が走ったような衝撃的な快感に襲われる。
「あ!やめ、そこ、や…」
 クン、クンと同じ所を指で突くように撫で上げられ、ガクガクと腰が痙攣を始め、
「!!!」
 そのまま絶頂に追い上げられた。
 ロイの手の中に射精し、ビクビクと体を震わせる。
 射精後にゆっくりと指が引き抜かれ、木の幹によしかかるように、片手で支えられると、ロイも自身を追い込み始める。
 何度もロイのペニスを自分のペニスに擦り付けられ、その度にビクビクと反応を返す自分の体を舐め回すように見ながら、ロイが自分に向かって射精した。
 2人分の精液で濡れたペニスをうっとりと眺め、チュッチュッと何度も唇や頬にキスを落とす。
 そのキスに応えることができないほど放心状態が続いていたが、ロイがクリーン魔法をかけ、自分の衣服を整えた頃には荒い呼吸を何とか落ち着かせることが出来ていた。
「無理させたか…?」
 腰が砕けてなかなか立ち上がることが出来ず、結局は起こしてもらって、しばらくここにいることにした。
「いや…そうじゃないんだけど…」
 ただ、あまりな快感の強さに体もそうだが、頭がついてきていなかっただけだ。

 まさかあんな場所があんなに気持ちいいなんて…

 晴天の霹靂に近い衝撃だった。
 アナルの中に前立腺があるのは知っている。前立腺マッサージという射精を促す技を持った風俗嬢がいると、男性向き週刊誌で読んだ記憶があるし、右手が恋人の間、風俗に行ってみようかと悩んだこともあった。
 だが実際には行くこともなく、単純な知識として知っていただけだった。
 以前スペンサーにレイプされかけた時も同じことをされたが、痛くて、苦しくて、気持ち悪くて、絶対に無理だと思ったのに、ロイにされた時はあんなに気持ちよかった。

 最後までするって、あそこにあれを入れるんだろ…?

 何度も見たロイのあのペニスが入るかどうかも疑問だが、指でいじられてあんなに衝撃だったのに…と考えて怖くなる。
「大丈夫か?」
「あ、ああ、大丈夫」
 ぐるぐると思考はフル回転していたが、何とかロイには笑顔を向けることが出来た。
 



「青い空!白い砂浜!暑い日差し!う~み~だ~!!!」
 ロイがどこぞのCMのキャッチコピーのようなセリフを吐く。
 ニールもそうだったが、ミルアの街も高い城壁に囲まれていた。城壁を越えて街に入ると、一気にリゾート地という雰囲気が醸し出される。
 ニールと同じようなヨーロッパ風の家々が立ち並び、街の規模はニールの半分もないだろう。だが、海側に近い通りに面した建物は民家よりも宿屋や店が多く、街中を歩く人々も明らかに街の外から来た人たちの方が多い気がする。
 ロイがヒャッホーイと今にも走り出しそうにウズウズしている。
 緩やかに下っている街を通り抜け、海岸まで降りてくると、綺麗な砂浜が広がり、海水浴を楽しんでいる人たちが見えた。
「行っていい!?いい?いいよな!?」
 目をキラキラさせて、こっちを見てくるロイに、お前いくつだよ、と突っ込みたくなる。まるで水遊びをしたがる大きな犬だ。ひっきりなしに尻尾がバタバタと揺れて、早く早くと急かされている気がした。
「少しだけですよ」
 ディーが頭が痛いような仕草をしたかと思うと、自分の腕を引っ張り走り出した。
「俺もか!」
 そう突っ込んだが、引っ張られるままに海に向かって走っていた。ふと横を見ると、グレイも走り出していて、
「お前もか!」
 とさらに突っ込む。
 砂浜に着くと、荷物を放り投げ、一気に上着もシャツも脱ぎ捨てると海へ飛び込んでいく。グレイも負けじと同じように飛び込んだ。
「うおー気持ちー!」
 飛び込んで、潜った後に顔を水面に出す。
 自分は2人が放り出した荷物や服をまとめて一箇所に置く。
「すみませんね、あのバカどもが」
「ディーも苦労するな」
 同情の言葉をかけると、
「わかってもらえます?もーほんと好き勝手ばっかりして…」
 と泣き真似をして、笑い合った。
「ショーヘー来ないのかよー!」
 ロイが海の中から手を振って呼んでくる。
 その奥でグレイがクロールでドドドドという勢いで猛然と泳いでいた。
 結局、自分も上半身裸になると、海に入る。若干水は冷たいが、問題のない温度だ。静かに海に入り、そのまま平泳ぎでゆっくりと泳ぐ。すごく気持ちが良かった。

 海水浴なんて何年振りだろう。
 若い時はよくみんなで行ったなあ。

 などとおっさんらしい若かりし頃の思い出に浸った。

 ディーが自警団の詰所へ昨日の野盗の捕縛を依頼しに行く、とその場を離れ、荷物番をするために砂浜に上がると、泳いでいる2人を眺めてボーッとする。
 周囲を見渡してみると、割とたくさんの海水浴客がいた。家族連れ、カップル、友人同士、様々な種族がみんな海水浴を楽しんでいる。そんな中、小さい子供を連れた親子連れを見て、羨ましいと心の底から思った。
 そんな落ち込みそうな考えを振り払い、再びロイとグレイに視線を戻すと、そこに男に声をかけられている2人がいた。
 何を話しているかはわからないが、要するにナンパだと悟る。
 ほんと節操無いな、この世界、と苦笑いしたが、1人の男がロイの肩へ腕を回しているのを見た瞬間ムカっとした。
 随分と馴れ馴れしいなと思っているうちに、ロイはさっさと腕を振り解き、再び泳ぎ始めたのを見てホッとする。
 しばらくすると、今度は女性が2人近づいて行き、2人にベタベタとくっつき始める。
「💢」
 はっきりとイラッとした。
 2人とも、ナンパに慣れているのか、かなりあっさりと断っているのがわかる。苦笑いだが笑顔で断っている様子を見てさらにイラッとした。

 イライラする。
 なんかムカつく。

 何に対してなんてわかっていた。
 ロイに声をかける男や女たちにイラついていると自覚があった。

「なんか怒ってる?」
 砂浜に戻ってきたロイが声をかけてくる。
「別に」
 イラついた声で返事をしてしまい、我ながら大人気ないと思う。
 付き合っている、とはいえ、自分はまだロイに対して恋愛感情を抱いているのかははっきりしていない。でも、こんなにイライラするのは独占欲だと自覚は出来る。
 ロイが自分に向ける愛情が、そうさせているんだと思った。
「モテモテだねー、ロイ君もグレイ君も」
「まあ、俺かっこいいから」
 嫌味で言ったつもりだが、伝わらないことにさらにイラッとした。
 ディーが戻ってきても、海水浴が終わっても、しばらくこのイライラとモヤモヤは治らなかった。

 これは嫉妬だ。

 そう自覚する。
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