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異世界へ 〜襲撃〜
14.おっさん、襲撃される
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ロイの額から、汗が流れ落ちる。
目の前の男が、ロイにも気付かせずに侵入してきたことに、数日前に聞かされた話を思い出した。
この家は、強力な隠蔽魔法と結界魔法に守られている。それらを破って侵入出来るのは、ロマクラスの魔導士だけ。
ってことは、あいつ、賢者クラスの魔導士ってことだよな…
ゴクリと唾を飲み込む。
どう考えたって叶う相手じゃない。格が違いすぎる。
ロイ、は…?
そういえば、ロイってどのくらい強いのか、全然知らない。
3人組に襲われた時の、一瞬でオークの頭を吹っ飛ばすくらいには強いんだろうけど、あの時のオークの強さなんて、目の前の男に比べたら月とすっぽん、だと思う。
後ろからロイを見上げる。そして、その口角がうっすらと上がっていることを知る。
笑ってる…?
ギクっとした。
「ショーヘー、ここから動くなよ」
そう言われた。
その瞬間、ドン!という音と共に振動が伝わり、ロイが男に向かって飛び出す。
ロイが床を蹴った衝撃で、床板が破損しかけらが飛び散る。次の瞬間、前方から突風のような衝撃波が襲い、慌てて顔を庇う。
ロイと男が両手を組み合わせ、力比べの姿勢に入っていた。
2人の闘気によって周囲のドアや壁がミシミシと音を立て、窓ガラスが粉々に吹き飛ぶ。
「ガアアァァ!!」
ロイの咆哮とともに、メキメキと踏み込んだ足元の床板が割れ、男の体を入口のドアもろとも一気に外へ押し出す。
家の外に出た瞬間、爆音と一気に空へ立ち上る炎が見え、思わず、メチャクチャに壊れた入口付近まで駆け寄る。
家を背にロイが、その向こう側に男の姿が確認できた。
男の周囲には無数の火の玉が浮かび、次から次へとロイへ襲いかかっていたが、ロイにぶつかる瞬間、水辺の波紋のような光の膜が火の玉を弾き、一瞬で消えていく。
「効かねえよ!!」
ロイが怒鳴りながら再び男のそばまで飛躍すると、浮かんでいた何十個もの火の玉が全て一気にロイへと放たれた。
だが、ロイは防御魔法でほぼ無効化する。しかし数発は防ぎきれずに受けてしまうが、それを気にも止めることなく男へ突進していく。
ドン!という何かがぶつかり合う音がしたかと思うと、そこから肉弾戦が始まった。
拳も蹴りも、お互いに数発づつ入っているのはわかるが、動き自体が早すぎて見えない。だが、ロイの蹴りが男の頭、耳元にヒットした瞬間、男が一度よろめく。だが次の瞬間ロイの足元から爆発が起こり、ロイもよろめいた。
ほぼ同時に互いに後方へ下がると距離をとり数メートルの間隔をあけて睨み合いに入る。
ロイは口に溜まった血をペッと吐き出し、男は鼻血を服の袖で拭う。
男が現れてから10分足らず。今まで見たこともない戦いに呆然とするしかない。
目の前で繰り広げられた、魔法を使った非現実的な戦いに言葉が出てこない。殴り合いも固く重たい何かがぶつかり合う音に、身体強化や防御をする魔法をかけているんだろう、とは理解出来た。
それよりも一番驚いたのは、ロイの強さだ。
あんなに怖いと感じた男を、明らかに圧倒していた。怪我の度合いを見ても、ロイが優勢に見える。
ロイの強さに、すごい、と鳥肌がたった。
「随分と弱くなったなー。雑魚ばっか相手にしてんじゃねーか」
ロイが嘲るように言う。
「てめーこそ、乳繰り合うのに夢中でババァの結界が破られたことも気付かなかったじゃねーか」
男も言い返す。
ち、乳繰り合うって…違う…
ロイではなく、心の中で思わず俺が反論する。声には出せないが。
「まぁ今回はお前が目的じゃねーし。そいつが手に入れば何も問題ねー…よ!」
男が言い終わる直後、一瞬で出した炎の玉をロイに向かって放ってくる。今までの火の玉ではなく、表面が渦を巻いた、まるで太陽のような玉だった。
放たれた炎の玉に向かってロイは身構えるが、突然後ろの俺を振り返り、
「ショーヘー!!逃げろ!!!」
と叫んだ。
「え?」
意味がわからなかったが、すぐに理解する。
ロイに放たれたはずの炎の玉は突然進路を変えると俺へと向かって来たからだ。
ロイが叫ぶと同時に俺の方へ走り出すのをスローモーションのように見ていた。
あ、ヤバい
1秒もたっていないだろう、咄嗟に体が動いた。炎の玉をかわすために右へ飛び込むようにジャンプをする。
何とか反射神経で正面からの衝突は避けられたが、右足の膝から下に玉が掠ったため、みるみるうちにジュウウゥと音を立てて火傷が広がる。
「いっつっっっ」
地面に滑り込みながら、すぐに起き上がれるように体勢を整えたが、炎の玉が壊された玄関から家の中に入った瞬間、家の壁が一瞬で膨張し膨れ上がる。
爆発する
そう思うのと同時に、家は中から弾け飛ぶように爆発した。
至近距離で爆発したのだからただで済むはずがない。確実に死んだと思った。
だが、足の火傷以外は無傷だった。
そして、俺を強く抱きしめているロイに気付く。
あの一瞬で俺の元へ戻ったロイが、俺を抱え込んで家の爆発から守ってくれたのだ。
「ロイ…」
「無事だな」
ロイがニコリと微笑む。
そしてすぐに俺を抱えたまま燃えあがる家から離れた。
「アハハハハ!!」
男がおかしそうにロイの行動を笑う。
「そんなにそいつが大事か。たかがジュノーだろうが!!」
「お前こそジュノーを死なせちゃマズいんじゃねーのか」
「別に、手足の1、2本無くなったって死にゃしねーよ」
いや、あれは手足の1、2本じゃ済まないだろ。
恐ろしいことを平然と言ってのける男にゾッとする。
男は呆れたようにやれやれという仕草をしたが、不意に口元に手を当てて何かを思いついたようにニヤニヤした。
ロイは俺を家から離れた柔らかい草むらの上に座らせると、すぐに立ち上がり俺に背を向けて男を睨みつける。
「!!!」
立ち上がったロイの背中を見上げ愕然とする。
背中にまでかかっていた長く白い髪が焼けて無くなり、背中や両腕の裏側が焼けただれていた。数箇所は皮膚が溶け、筋肉が剥き出しになっている。そこからジクジクと血が滲み、赤黒く変色していた。
「ぁ…」
ガタガタと体が震える。
俺を助けるために、防御魔法を全てかなぐり捨て全力で俺のところへ戻ったんだと悟った。
俺の右足もロイとほぼ同じような大火傷を負っていたが、そんな痛みなんて今のロイに比べれば大したことないと思えた。
「……」
ロイが何かを呟き、腕を男に向かって手を突き出す。
その瞬間、ロイの周囲に小さな魔法陣が無数に出現したかと思うと、その魔法陣から炎や尖った氷塊、雷が種類問わず男へ放たれる。
ロイから、見たことも感じたこともない凄まじい怒りのオーラを感じて、悪寒が走った。
男はそれらの攻撃魔法をかわしてはいたが、全部はかわし切れずに押されてロイとの距離が開いていく。
ロイはそれでも魔法を放ち続け、さらに魔法陣の数は増えていく。
すごい…
ロイはとんでもなく強い。賢者クラスの魔導士なんだと改めて理解した。
男はほぼかわしきれなくなったとロイの魔法に押され、広場から森の中へと一歩一歩後退していた。
完全に男の姿が俺には見えなくなったが、ロイには見えているのか攻撃の手をやめない。
下からロイの横顔を見ると、その目は怒りに満ちていた。灰色だった瞳が金色に光輝いている。まるで狼そのものだった。
「ロイ…」
もうやめさせようと、声をかけようとして手を伸ばした瞬間、突然俺の横から黒い影が伸び、ロイの前へ突き出していた右腕と下げられたままの左腕に絡みつく。
驚いて声をあげる暇もなく、後ろから口を塞がれ、羽交い締めにされた。
目の前でロイの両腕に絡みついた黒いものは影から物質へと変化し、異変に気づいたロイが振り払う間も無く、後ろ手に拘束されていた。
「いやあ、事前準備をしっかりやっといて正解だったわ」
俺の背後から黒い男の声がする。
目の前のロイが腕を拘束されて、ガクッと崩れて地面に膝をつく。
「んー!!」
口を塞がれて話せないが、足をジタバタさせ必死に暴れて男から逃れようとすると、腕を曲がらない方向へ捻りあげられ、ミシッと音を立てた関節の痛みに身動きが取れなくなった。
「感情が昂ると我を忘れる癖、まだ治ってねーのな」
男は翔平の体を押さえ込み、腕を捻り上げたまま無理やり立ち上がらせて、立ち膝の状態で後ろ手に拘束された罪人のような姿勢のロイの正面へ翔平を引きずっていく。
「スペンサー…てめぇ…」
ますます怒りに震えるロイの声に合わせて金色の瞳がゆらめいたが、徐々にその光が失われていく。
「無理無理、それ外せないよ」
男、スペンサーがさも可笑しそうに笑う。
「魔力を無限に吸収するアーティファクトさ。今のお前はただの獣人。いかにお前がバカ力でも、腕力じゃそのアイテムは壊せない」
スペンサーがゲラゲラと笑う。
「ジュノーも手に入ったし、もう俺の用事は終わったんだけどさ。さんざんやってくれたから、仕返しっての?させてもらうわ」
スペンサーはそう言うと、俺を放り投げるように離し、ロイの目の前にしゃがみ込む。
「敗者の屈辱を味合わせてやるよ。お前、こいつにだいぶ御執心のようだから、お前の目の前で、こいつを犯してやるよ」
「なっ!」
その言葉に愕然とする。
ロイはカッと目を見開き、スペンサーにその牙を立てようとするが、スッと立ち上がったスペンサーには届かない。
「やめろ!ショーヘーに触るな!!!ショーヘー!!逃げろ!!!」
身動きが取れない状況では怒鳴ることしか出来ず、唸り声を上げながら喚く。
「あーうるさいうるさい」
そう耳を塞ぎ、ロイの口あたりで、何かを拭き取るような動作をしたと思った瞬間、ロイの声がかき消された。
ロイはまだ怒鳴っている。だがその声は一切聞こえなくなっていた。
「静かになった。じゃー始めよっか」
俺を見下ろし、スペンサーがニッコリと微笑む。
ガクガクと震える体を押さえ込み、なんとか逃げようと立ち上がる。大火傷を負った右足なんて気にしていられない。
足を引きずりながら全力で離れようとしたが、右足が言うことをきいてくれずに、ドシャッと音を立てて転ぶ。そしてまた立ち上がり逃げようとした。
「無駄無駄」
たった数歩の距離しか離れることが出来ず、2度目に転んだところで腕を掴まれ、またロイの前まで引きずり戻された。馬乗りになり、仰向けに倒れた俺のシャツの襟元を掴むと、ビリリリッと音を立てて簡単に破る。
「へえ、結構いい体してんじゃん」
露わになった胸から腹を上から品定めするように見られて、羞恥か馬鹿にされた屈辱か頭にカアッと血が上った。
スペンサーに向かって咄嗟に右手をかざすと、電流をイメージする。
だが、すぐに魔法が放つことが出来ずに、馬乗りになっていたスペンサーに手首を掴まれて、方向を変えられてしまう。数秒後に遅れて魔法が放たれ、スペンサーがゲラゲラと笑った。
そして、ニヤニヤとしながらゆっくりと俺に覆い被さってくると、ベロリと顔を舐められた。
「ッヒィ」
思わず悲鳴に近い声が出る。
スペンサーの手が上半身を弄り始め、胸や腹、脇腹を体のラインを確かめるように動き回る。
決して快感ではない寒気が走り、鳥肌がたつが、スペンサーは意にも解さず、肌に触れ、その質感を確かめるように撫で回した。
ジタバタと暴れる体を全身を使って押さえ込み、顎を掴まれたかと思うと、おもむろに唇を重ねられた。
「んー!!」
口を塞がれ、その舌で唇をなぞられてますます悪寒が強くなった。
固く口を閉じた俺にムッとしたのか、鼻を摘まれると、呼吸するために開いた口へ舌を入れてきた。
舌を絡めとられ、吸われ、唇や歯列をなぞられる。
ロイに聞こえるように、わざとジュルジュルと音を立て、糸を引く唾液を見せつける。
「んー!んー!」
口を塞がれながら、それでも抵抗を繰り返す俺にスペンサーがニヤニヤしつつ、指を胸に這わせて、その先端にある乳首を摘んだ。
「ンン!!」
乳首で遊ぶように、指で摘み、擦り上げ、つつく。
「やめッ!」
そう叫ぶが、逆に指の動きを強くされてゾクっと背筋に快感が走った。
スペンサーの舌が口を離し、顎、首へと下がっていく。
そして今まで指で弄っていた乳首をペロリと舐め、大きく口を開けて胸に吸い付いきた。口の中で乳首を転がし、吸い上げ、舌先で先端をつついてくる。
指はもう片方の乳首を弄び、感じたくもない快感が背筋を這い上がってくるのを必死に我慢した。
「男って悲しいよなー。どんなに嫌でも反応しちまう」
スペンサーがクックッと笑いながら、感じ始めている翔平を揶揄うように言う。
「ぁ…ぁ…」
必死に快感を抑えようとするが、舐められるたび、乳首を指で弾かれるたびにビクッと反応を返してしまう。
スペンサーがわざと舌を長く伸ばし、俺の胸や腹を舐め上げる。横目でロイの方をチラチラと見て、その反応を楽しんでいた。
そして舐めるのをやめると、馬乗りになっていた体勢から、俺の両腕を後ろへ捻り上げ引き起こすと、ロイの正面に向かい合わせる形で立ち膝をさせた。
上半身を後ろへのけぞらせ、ロイに体を突き出す体勢になり、初めてロイの顔を見た。
ロイはもう叫んでいなかった。
ギリギリと唇を噛み締め、切れた唇から血が流れている。その目はギラギラと怒りに燃え、スペンサーを睨みつけていた。
その顔を見ていられずに、思わず顔を逸らしてしまう。
「これでよく見えるよな」
そう言うと、俺を後ろから抱きしめた形で、背後から腕を回して、再び乳首をいじり始める。
強く弄られる度に、ビクンビクンと体を震わせるが、絶対に声は出すまいと決めた。
だが、そんな決意もいとも簡単に打ち砕かれる。
ビリビリと布を引き裂く音と共に、下着からズボンも全て破かれ、翔平のペニスが外気に晒された。
それは今までの刺激で、小さく勃ち上がりかけていた。
ロイは目の前に晒された翔平のペニスに一瞬狼狽えると、静かに視線を逸らす。だが、ゴクリと浅ましく喉がなった。
スペンサーが横から乳首をしゃぶりながら、ゆっくりとペニスを握り込むと、ロイに向かって前後に扱き始める。
「ヒゥッ!!」
背筋を走った快感に、思わず体をのけぞらせた。我慢しようと思っていた声が出てしまう。
「どうだ。気持ちいいだろ?」
スペンサーもだいぶ興奮しているのか、グチュグチュとペニスを扱きながら、己の固く張り詰めたものを背後から俺の尻にグリグリと押し付けてきた。
「…グゥ…」
声を我慢すれば我慢するほど唸り声に近い変な音が喉から漏れる。
見るな、見るな!!
ロイに向かって叫びたいが、口を開くと喘ぎ声が出てしまいそうになり、必死に快感を堪えようと歯を食いしばる。
「ンー!ウゥ!」
唇を思い切り噛み、その痛みで快感をやり過ごそうとするが、ペニスの先端を指でグリグリと弄られて、悲鳴に近い声を飲み込んだ。
完全に勃ち上がったペニスが男の手によってさらに追い詰められていく。
いやだ。いやだ。
頼むから、見ないでくれ。
必死に歯を食いしばり、懇願するようにロイを見る。
だが、突然襲った下半身の衝撃に、
「ウアァ!」
声を上げた。
無理やり足を左右に開かされ、アナルに指が挿入されたのだ。そのまま内部を探るようにグリグリと掻き回され、1本から2本へと指が増やされて、何度も抜き差しを繰り返された。
「ア!ア!」
一度発せられた声は、もう抑えることが出来ずに、スペンサーの指がアナルに突き刺さるたびに、悲鳴をあげる。
その間もペニスへの刺激は続いており、溢れ出た蜜が竿を伝い、陰嚢を伝い、アナルへの指の動きを助けることになってしまう。指が出入りする度にグチュッと卑猥な音を立てた。
「ハ…ハァ…」
前後から与えられる衝撃に似た快感と、それを耐えようとする理性がせめぎ合い、頭と体が相反した反応に耐えられなくなってきていた。
涙が両目からボロボロと溢れ、屈辱と、羞恥と、怒りに狂いそうになる。
「ロイとヤリまくってたんじゃねーの?随分と狭いな」
スペンサーがアナルの具合を確かめるように中を弄ってくる。
「まさか、まだ処女かよ! ロイともあろうものが、まだ犯してねーのか!」
スペンサーがゲラゲラゲラと笑い、舌なめずりをした。
どこかで、メキッと音がした。
スペンサーがアナルから指を引き抜き、素早く己のペニスをさらけ出すと、先走りで濡れた先端をアナルへ擦り付けてくる。
「や、め…」
ガクガクと体が震える。
またメキッと音がした。
「…おいおい…」
アナルへグリグリ擦り付けていた動きが急に止まり、スペンサーが声を上げる。
メキメキと目の前から音が響く。
涙で歪んだ視界の先では、ロイが憤怒の表情で、少しづつ前に出ようとしていた。
拘束しているアイテムはびくともしていないが、代わりにロイの腕がメリメリと音を立てている。
「嘘だろ…」
スペンサーが若干焦りを声に出す。
焼けただれていた腕の筋肉の繊維一本一本がブチブチと音を立てて千切れて行く。
「自分で腕を千切るなんて有り得ねーだろ!!」
ロイの腕がみるみるうちに千切れて行く。
怒りに我を忘れ、その目からは血の涙が流れ、聞こえないが、大きく開いた口から咆哮を上げているのがわかる。
右腕はもう半分まで千切れて、血を吹き出し、筋肉の繊維が、骨が剥き出しになっている。
やめろ。
やめてくれ。
なんでそこまで…。
ぼろぼろと涙が溢れた。
視界がぼやけてまともにロイが見えない。
ショーヘー
ロイの声が聞こえる。
ロイの笑顔が、俺に語りかけてくる声が。
ショーヘー、キスしよう
おでこへ、頬へ、唇へ。
優しくて甘い、親愛を込められたキス。
だめだ。
お願いだから、やめてくれ。
俺のために、そこまでする必要なんてない。
誰か…ロイを…助けてくれ…。
ゆっくりと目を閉じる。
そして、体に湧き起こった衝動のまま、俺は、全魔力を外へ開放した。
目の前の男が、ロイにも気付かせずに侵入してきたことに、数日前に聞かされた話を思い出した。
この家は、強力な隠蔽魔法と結界魔法に守られている。それらを破って侵入出来るのは、ロマクラスの魔導士だけ。
ってことは、あいつ、賢者クラスの魔導士ってことだよな…
ゴクリと唾を飲み込む。
どう考えたって叶う相手じゃない。格が違いすぎる。
ロイ、は…?
そういえば、ロイってどのくらい強いのか、全然知らない。
3人組に襲われた時の、一瞬でオークの頭を吹っ飛ばすくらいには強いんだろうけど、あの時のオークの強さなんて、目の前の男に比べたら月とすっぽん、だと思う。
後ろからロイを見上げる。そして、その口角がうっすらと上がっていることを知る。
笑ってる…?
ギクっとした。
「ショーヘー、ここから動くなよ」
そう言われた。
その瞬間、ドン!という音と共に振動が伝わり、ロイが男に向かって飛び出す。
ロイが床を蹴った衝撃で、床板が破損しかけらが飛び散る。次の瞬間、前方から突風のような衝撃波が襲い、慌てて顔を庇う。
ロイと男が両手を組み合わせ、力比べの姿勢に入っていた。
2人の闘気によって周囲のドアや壁がミシミシと音を立て、窓ガラスが粉々に吹き飛ぶ。
「ガアアァァ!!」
ロイの咆哮とともに、メキメキと踏み込んだ足元の床板が割れ、男の体を入口のドアもろとも一気に外へ押し出す。
家の外に出た瞬間、爆音と一気に空へ立ち上る炎が見え、思わず、メチャクチャに壊れた入口付近まで駆け寄る。
家を背にロイが、その向こう側に男の姿が確認できた。
男の周囲には無数の火の玉が浮かび、次から次へとロイへ襲いかかっていたが、ロイにぶつかる瞬間、水辺の波紋のような光の膜が火の玉を弾き、一瞬で消えていく。
「効かねえよ!!」
ロイが怒鳴りながら再び男のそばまで飛躍すると、浮かんでいた何十個もの火の玉が全て一気にロイへと放たれた。
だが、ロイは防御魔法でほぼ無効化する。しかし数発は防ぎきれずに受けてしまうが、それを気にも止めることなく男へ突進していく。
ドン!という何かがぶつかり合う音がしたかと思うと、そこから肉弾戦が始まった。
拳も蹴りも、お互いに数発づつ入っているのはわかるが、動き自体が早すぎて見えない。だが、ロイの蹴りが男の頭、耳元にヒットした瞬間、男が一度よろめく。だが次の瞬間ロイの足元から爆発が起こり、ロイもよろめいた。
ほぼ同時に互いに後方へ下がると距離をとり数メートルの間隔をあけて睨み合いに入る。
ロイは口に溜まった血をペッと吐き出し、男は鼻血を服の袖で拭う。
男が現れてから10分足らず。今まで見たこともない戦いに呆然とするしかない。
目の前で繰り広げられた、魔法を使った非現実的な戦いに言葉が出てこない。殴り合いも固く重たい何かがぶつかり合う音に、身体強化や防御をする魔法をかけているんだろう、とは理解出来た。
それよりも一番驚いたのは、ロイの強さだ。
あんなに怖いと感じた男を、明らかに圧倒していた。怪我の度合いを見ても、ロイが優勢に見える。
ロイの強さに、すごい、と鳥肌がたった。
「随分と弱くなったなー。雑魚ばっか相手にしてんじゃねーか」
ロイが嘲るように言う。
「てめーこそ、乳繰り合うのに夢中でババァの結界が破られたことも気付かなかったじゃねーか」
男も言い返す。
ち、乳繰り合うって…違う…
ロイではなく、心の中で思わず俺が反論する。声には出せないが。
「まぁ今回はお前が目的じゃねーし。そいつが手に入れば何も問題ねー…よ!」
男が言い終わる直後、一瞬で出した炎の玉をロイに向かって放ってくる。今までの火の玉ではなく、表面が渦を巻いた、まるで太陽のような玉だった。
放たれた炎の玉に向かってロイは身構えるが、突然後ろの俺を振り返り、
「ショーヘー!!逃げろ!!!」
と叫んだ。
「え?」
意味がわからなかったが、すぐに理解する。
ロイに放たれたはずの炎の玉は突然進路を変えると俺へと向かって来たからだ。
ロイが叫ぶと同時に俺の方へ走り出すのをスローモーションのように見ていた。
あ、ヤバい
1秒もたっていないだろう、咄嗟に体が動いた。炎の玉をかわすために右へ飛び込むようにジャンプをする。
何とか反射神経で正面からの衝突は避けられたが、右足の膝から下に玉が掠ったため、みるみるうちにジュウウゥと音を立てて火傷が広がる。
「いっつっっっ」
地面に滑り込みながら、すぐに起き上がれるように体勢を整えたが、炎の玉が壊された玄関から家の中に入った瞬間、家の壁が一瞬で膨張し膨れ上がる。
爆発する
そう思うのと同時に、家は中から弾け飛ぶように爆発した。
至近距離で爆発したのだからただで済むはずがない。確実に死んだと思った。
だが、足の火傷以外は無傷だった。
そして、俺を強く抱きしめているロイに気付く。
あの一瞬で俺の元へ戻ったロイが、俺を抱え込んで家の爆発から守ってくれたのだ。
「ロイ…」
「無事だな」
ロイがニコリと微笑む。
そしてすぐに俺を抱えたまま燃えあがる家から離れた。
「アハハハハ!!」
男がおかしそうにロイの行動を笑う。
「そんなにそいつが大事か。たかがジュノーだろうが!!」
「お前こそジュノーを死なせちゃマズいんじゃねーのか」
「別に、手足の1、2本無くなったって死にゃしねーよ」
いや、あれは手足の1、2本じゃ済まないだろ。
恐ろしいことを平然と言ってのける男にゾッとする。
男は呆れたようにやれやれという仕草をしたが、不意に口元に手を当てて何かを思いついたようにニヤニヤした。
ロイは俺を家から離れた柔らかい草むらの上に座らせると、すぐに立ち上がり俺に背を向けて男を睨みつける。
「!!!」
立ち上がったロイの背中を見上げ愕然とする。
背中にまでかかっていた長く白い髪が焼けて無くなり、背中や両腕の裏側が焼けただれていた。数箇所は皮膚が溶け、筋肉が剥き出しになっている。そこからジクジクと血が滲み、赤黒く変色していた。
「ぁ…」
ガタガタと体が震える。
俺を助けるために、防御魔法を全てかなぐり捨て全力で俺のところへ戻ったんだと悟った。
俺の右足もロイとほぼ同じような大火傷を負っていたが、そんな痛みなんて今のロイに比べれば大したことないと思えた。
「……」
ロイが何かを呟き、腕を男に向かって手を突き出す。
その瞬間、ロイの周囲に小さな魔法陣が無数に出現したかと思うと、その魔法陣から炎や尖った氷塊、雷が種類問わず男へ放たれる。
ロイから、見たことも感じたこともない凄まじい怒りのオーラを感じて、悪寒が走った。
男はそれらの攻撃魔法をかわしてはいたが、全部はかわし切れずに押されてロイとの距離が開いていく。
ロイはそれでも魔法を放ち続け、さらに魔法陣の数は増えていく。
すごい…
ロイはとんでもなく強い。賢者クラスの魔導士なんだと改めて理解した。
男はほぼかわしきれなくなったとロイの魔法に押され、広場から森の中へと一歩一歩後退していた。
完全に男の姿が俺には見えなくなったが、ロイには見えているのか攻撃の手をやめない。
下からロイの横顔を見ると、その目は怒りに満ちていた。灰色だった瞳が金色に光輝いている。まるで狼そのものだった。
「ロイ…」
もうやめさせようと、声をかけようとして手を伸ばした瞬間、突然俺の横から黒い影が伸び、ロイの前へ突き出していた右腕と下げられたままの左腕に絡みつく。
驚いて声をあげる暇もなく、後ろから口を塞がれ、羽交い締めにされた。
目の前でロイの両腕に絡みついた黒いものは影から物質へと変化し、異変に気づいたロイが振り払う間も無く、後ろ手に拘束されていた。
「いやあ、事前準備をしっかりやっといて正解だったわ」
俺の背後から黒い男の声がする。
目の前のロイが腕を拘束されて、ガクッと崩れて地面に膝をつく。
「んー!!」
口を塞がれて話せないが、足をジタバタさせ必死に暴れて男から逃れようとすると、腕を曲がらない方向へ捻りあげられ、ミシッと音を立てた関節の痛みに身動きが取れなくなった。
「感情が昂ると我を忘れる癖、まだ治ってねーのな」
男は翔平の体を押さえ込み、腕を捻り上げたまま無理やり立ち上がらせて、立ち膝の状態で後ろ手に拘束された罪人のような姿勢のロイの正面へ翔平を引きずっていく。
「スペンサー…てめぇ…」
ますます怒りに震えるロイの声に合わせて金色の瞳がゆらめいたが、徐々にその光が失われていく。
「無理無理、それ外せないよ」
男、スペンサーがさも可笑しそうに笑う。
「魔力を無限に吸収するアーティファクトさ。今のお前はただの獣人。いかにお前がバカ力でも、腕力じゃそのアイテムは壊せない」
スペンサーがゲラゲラと笑う。
「ジュノーも手に入ったし、もう俺の用事は終わったんだけどさ。さんざんやってくれたから、仕返しっての?させてもらうわ」
スペンサーはそう言うと、俺を放り投げるように離し、ロイの目の前にしゃがみ込む。
「敗者の屈辱を味合わせてやるよ。お前、こいつにだいぶ御執心のようだから、お前の目の前で、こいつを犯してやるよ」
「なっ!」
その言葉に愕然とする。
ロイはカッと目を見開き、スペンサーにその牙を立てようとするが、スッと立ち上がったスペンサーには届かない。
「やめろ!ショーヘーに触るな!!!ショーヘー!!逃げろ!!!」
身動きが取れない状況では怒鳴ることしか出来ず、唸り声を上げながら喚く。
「あーうるさいうるさい」
そう耳を塞ぎ、ロイの口あたりで、何かを拭き取るような動作をしたと思った瞬間、ロイの声がかき消された。
ロイはまだ怒鳴っている。だがその声は一切聞こえなくなっていた。
「静かになった。じゃー始めよっか」
俺を見下ろし、スペンサーがニッコリと微笑む。
ガクガクと震える体を押さえ込み、なんとか逃げようと立ち上がる。大火傷を負った右足なんて気にしていられない。
足を引きずりながら全力で離れようとしたが、右足が言うことをきいてくれずに、ドシャッと音を立てて転ぶ。そしてまた立ち上がり逃げようとした。
「無駄無駄」
たった数歩の距離しか離れることが出来ず、2度目に転んだところで腕を掴まれ、またロイの前まで引きずり戻された。馬乗りになり、仰向けに倒れた俺のシャツの襟元を掴むと、ビリリリッと音を立てて簡単に破る。
「へえ、結構いい体してんじゃん」
露わになった胸から腹を上から品定めするように見られて、羞恥か馬鹿にされた屈辱か頭にカアッと血が上った。
スペンサーに向かって咄嗟に右手をかざすと、電流をイメージする。
だが、すぐに魔法が放つことが出来ずに、馬乗りになっていたスペンサーに手首を掴まれて、方向を変えられてしまう。数秒後に遅れて魔法が放たれ、スペンサーがゲラゲラと笑った。
そして、ニヤニヤとしながらゆっくりと俺に覆い被さってくると、ベロリと顔を舐められた。
「ッヒィ」
思わず悲鳴に近い声が出る。
スペンサーの手が上半身を弄り始め、胸や腹、脇腹を体のラインを確かめるように動き回る。
決して快感ではない寒気が走り、鳥肌がたつが、スペンサーは意にも解さず、肌に触れ、その質感を確かめるように撫で回した。
ジタバタと暴れる体を全身を使って押さえ込み、顎を掴まれたかと思うと、おもむろに唇を重ねられた。
「んー!!」
口を塞がれ、その舌で唇をなぞられてますます悪寒が強くなった。
固く口を閉じた俺にムッとしたのか、鼻を摘まれると、呼吸するために開いた口へ舌を入れてきた。
舌を絡めとられ、吸われ、唇や歯列をなぞられる。
ロイに聞こえるように、わざとジュルジュルと音を立て、糸を引く唾液を見せつける。
「んー!んー!」
口を塞がれながら、それでも抵抗を繰り返す俺にスペンサーがニヤニヤしつつ、指を胸に這わせて、その先端にある乳首を摘んだ。
「ンン!!」
乳首で遊ぶように、指で摘み、擦り上げ、つつく。
「やめッ!」
そう叫ぶが、逆に指の動きを強くされてゾクっと背筋に快感が走った。
スペンサーの舌が口を離し、顎、首へと下がっていく。
そして今まで指で弄っていた乳首をペロリと舐め、大きく口を開けて胸に吸い付いきた。口の中で乳首を転がし、吸い上げ、舌先で先端をつついてくる。
指はもう片方の乳首を弄び、感じたくもない快感が背筋を這い上がってくるのを必死に我慢した。
「男って悲しいよなー。どんなに嫌でも反応しちまう」
スペンサーがクックッと笑いながら、感じ始めている翔平を揶揄うように言う。
「ぁ…ぁ…」
必死に快感を抑えようとするが、舐められるたび、乳首を指で弾かれるたびにビクッと反応を返してしまう。
スペンサーがわざと舌を長く伸ばし、俺の胸や腹を舐め上げる。横目でロイの方をチラチラと見て、その反応を楽しんでいた。
そして舐めるのをやめると、馬乗りになっていた体勢から、俺の両腕を後ろへ捻り上げ引き起こすと、ロイの正面に向かい合わせる形で立ち膝をさせた。
上半身を後ろへのけぞらせ、ロイに体を突き出す体勢になり、初めてロイの顔を見た。
ロイはもう叫んでいなかった。
ギリギリと唇を噛み締め、切れた唇から血が流れている。その目はギラギラと怒りに燃え、スペンサーを睨みつけていた。
その顔を見ていられずに、思わず顔を逸らしてしまう。
「これでよく見えるよな」
そう言うと、俺を後ろから抱きしめた形で、背後から腕を回して、再び乳首をいじり始める。
強く弄られる度に、ビクンビクンと体を震わせるが、絶対に声は出すまいと決めた。
だが、そんな決意もいとも簡単に打ち砕かれる。
ビリビリと布を引き裂く音と共に、下着からズボンも全て破かれ、翔平のペニスが外気に晒された。
それは今までの刺激で、小さく勃ち上がりかけていた。
ロイは目の前に晒された翔平のペニスに一瞬狼狽えると、静かに視線を逸らす。だが、ゴクリと浅ましく喉がなった。
スペンサーが横から乳首をしゃぶりながら、ゆっくりとペニスを握り込むと、ロイに向かって前後に扱き始める。
「ヒゥッ!!」
背筋を走った快感に、思わず体をのけぞらせた。我慢しようと思っていた声が出てしまう。
「どうだ。気持ちいいだろ?」
スペンサーもだいぶ興奮しているのか、グチュグチュとペニスを扱きながら、己の固く張り詰めたものを背後から俺の尻にグリグリと押し付けてきた。
「…グゥ…」
声を我慢すれば我慢するほど唸り声に近い変な音が喉から漏れる。
見るな、見るな!!
ロイに向かって叫びたいが、口を開くと喘ぎ声が出てしまいそうになり、必死に快感を堪えようと歯を食いしばる。
「ンー!ウゥ!」
唇を思い切り噛み、その痛みで快感をやり過ごそうとするが、ペニスの先端を指でグリグリと弄られて、悲鳴に近い声を飲み込んだ。
完全に勃ち上がったペニスが男の手によってさらに追い詰められていく。
いやだ。いやだ。
頼むから、見ないでくれ。
必死に歯を食いしばり、懇願するようにロイを見る。
だが、突然襲った下半身の衝撃に、
「ウアァ!」
声を上げた。
無理やり足を左右に開かされ、アナルに指が挿入されたのだ。そのまま内部を探るようにグリグリと掻き回され、1本から2本へと指が増やされて、何度も抜き差しを繰り返された。
「ア!ア!」
一度発せられた声は、もう抑えることが出来ずに、スペンサーの指がアナルに突き刺さるたびに、悲鳴をあげる。
その間もペニスへの刺激は続いており、溢れ出た蜜が竿を伝い、陰嚢を伝い、アナルへの指の動きを助けることになってしまう。指が出入りする度にグチュッと卑猥な音を立てた。
「ハ…ハァ…」
前後から与えられる衝撃に似た快感と、それを耐えようとする理性がせめぎ合い、頭と体が相反した反応に耐えられなくなってきていた。
涙が両目からボロボロと溢れ、屈辱と、羞恥と、怒りに狂いそうになる。
「ロイとヤリまくってたんじゃねーの?随分と狭いな」
スペンサーがアナルの具合を確かめるように中を弄ってくる。
「まさか、まだ処女かよ! ロイともあろうものが、まだ犯してねーのか!」
スペンサーがゲラゲラゲラと笑い、舌なめずりをした。
どこかで、メキッと音がした。
スペンサーがアナルから指を引き抜き、素早く己のペニスをさらけ出すと、先走りで濡れた先端をアナルへ擦り付けてくる。
「や、め…」
ガクガクと体が震える。
またメキッと音がした。
「…おいおい…」
アナルへグリグリ擦り付けていた動きが急に止まり、スペンサーが声を上げる。
メキメキと目の前から音が響く。
涙で歪んだ視界の先では、ロイが憤怒の表情で、少しづつ前に出ようとしていた。
拘束しているアイテムはびくともしていないが、代わりにロイの腕がメリメリと音を立てている。
「嘘だろ…」
スペンサーが若干焦りを声に出す。
焼けただれていた腕の筋肉の繊維一本一本がブチブチと音を立てて千切れて行く。
「自分で腕を千切るなんて有り得ねーだろ!!」
ロイの腕がみるみるうちに千切れて行く。
怒りに我を忘れ、その目からは血の涙が流れ、聞こえないが、大きく開いた口から咆哮を上げているのがわかる。
右腕はもう半分まで千切れて、血を吹き出し、筋肉の繊維が、骨が剥き出しになっている。
やめろ。
やめてくれ。
なんでそこまで…。
ぼろぼろと涙が溢れた。
視界がぼやけてまともにロイが見えない。
ショーヘー
ロイの声が聞こえる。
ロイの笑顔が、俺に語りかけてくる声が。
ショーヘー、キスしよう
おでこへ、頬へ、唇へ。
優しくて甘い、親愛を込められたキス。
だめだ。
お願いだから、やめてくれ。
俺のために、そこまでする必要なんてない。
誰か…ロイを…助けてくれ…。
ゆっくりと目を閉じる。
そして、体に湧き起こった衝動のまま、俺は、全魔力を外へ開放した。
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