おっさんが願うもの

猫の手

文字の大きさ
上 下
9 / 213
異世界へ 〜現状の把握〜

9. おっさん、状況を理解する

しおりを挟む
 優しい味のするお茶にハァッと息を吐く。
「口に合うみたいだね」
「はい。すごく美味しいです」
 素直に感想を言う。実際、何杯でもいけそうだ。
「それは良かった」
 手慣れた手つきでお茶っぱを入れ替えて新たにお湯を入れると、少なくなったカップに注いでくれる。
「それじゃあ続けようか」
 ロマは居住まいを正し俺の正面に改めて向き直った。

「この世界は、6人目が作った7つ目の世界だと言われているんだ。
 実際にいろんな種族がこの世界にいる。種族の数は軽く百を超えるよ」
 ロマがチラッとロイを見る。
「異種族間での交配も盛んでね。ロイの親は白狼族と人族だよ」
 犬じゃなくて狼だった。まあ犬科には違いないけど。
「耳は普通の人の形なんですね」
 ゲームやアニメで見る獣人は、みんなケモミミシッポという姿だった。でもロイは尻尾がなければただの人に見える。
「決まった特徴を引き継ぐわけじゃないからね。ロイみたいに尾だけのやつ、耳だけのやつ、片方だけの特徴を引き継ぐやつ、色々だね」
「へぇ…」
 言われてみれば人間だってそうだ。親から引き継ぐ特徴は兄弟で違う。そういうことか。
「引き継ぐのは親の種族だけじゃない。
 ロイは父親が白狼族、母親が人族だけど、灰色の瞳はどちらの特徴でもない。灰色は耳長族の特徴なんだ。おそらく両親どちらか、もしくは両方に耳長族の血が混ざっていたんだろう」
「耳長族ってエルフのことですか」
「おや、詳しいね。そうだよ。かく言うあたしもそうさ。あたしの両親は2人ともエルフだったけど、両親みたいな長い耳にはならなかった。何か別の種族の特徴が出た結果だね」
 ロマはスッと横髪を耳にかけて、その形を見せてくれる。ファンタジー映画で見たエルフのような長さでなかったが、少しだけ耳の形が違う。若干長めで尖っている。
「誰しもが何らか種族の血を引いてる。生まれてきて、親以外の特徴がどこかに現れて、初めて混ざっていたことに気付く親もいるくらいさ」
 ロマが新しいお茶を入れてくれる。
 少し間をあけてから、
「それでジュノーの話になるんだけど…。ジュノーは別な世界から来た者を指す言葉だって言ったね?」
「はい」
「他の世界から来た者、何か気付かないかい?」
 ロマにそう聞かれて考える。そして気づいた。
「6つの世界から7つ目の世界に渡った人」
「その通り。7つ目の世界へ渡った者たちのことをジュノーというんだ」
 ああ、だから神話を聞かされたのか、とここで合点がいった。
「さらにジュノーは異種族交配する前の、血が混ざる前の純血種だっていうのも理解できるかい?」
 コクコクと頷く。ここでさらに種族の話に繋がった。
「ショーヘイは神話のように別世界からきたジュノーだ。そして、今現在、この世界には存在していない純血種でもある」
「ああ…なるほどね…。俺はジュノーで…、ジュノーだから、純血種なのか」
 元いた世界は人の世界。人種の違いはあっても他種族なんて存在していない世界だ。血が混ざるなんてあり得ない。
「ジュノーだと…純血種だとバレたら、どうなりますか…」
「そりゃまあ、まずは間違いなく高値で売り飛ばされるだろうね。目的は色々だけど、欲しがるやつは多いよ。
 研究対象になるか、見せ物になるか。労働奴隷にはならないだろうけど、かなりキツいだろうねぇ」
 ワザとだろうが、笑いながら言われて、釣られてアハハハーと一緒に笑う。
 だが急に真顔で、
「一番厄介なのは、性奴隷にされた場合だよ。色々な種族とヤラされたり、犯される。あれは本当に悲惨だよ」
 ロマが眉根を寄せた。
 まるで見てきたかのように複雑な表情をする。
 ヤル側ならまだしも、おっさんを犯すなんて、そんなことはないだろう…とは言い切れない異世界という現実にブルッと震えた。
 だからあの3人組は俺を見て笑ったんだ。あれは獲物を見つけた喜びの笑いだったと気付く。

 ロイが助けてくれなかったら、俺は今頃…。

 3人に襲われて、犯されて、売られる自分を想像してゾッとした。
「それとね、ジュノーが純血種であること以外にも欲しがる理由があるんだよ」
 続けて言われ、ごくりと唾を飲み込む。まだあるのか。
 詰め込まれた情報が頭の中にいっぱいになっている。頭の中が沸騰しそうだった。
 その時、ぐううぅとロイの腹がなる。ムクリと顔を上げると、大きな欠伸を一つ。
「腹減った」
 ロイが腹を押さえながら言った。

 時間を見ればとっくにお昼は周り、午後のおやつの時間だ。
「今から作って、ちょっと早いが夕食にしようか。ショーヘイも少し整理したいだろ?」
 ロマが察してくれる。

 ロマが夕食の支度をしている間、詰め込まれた情報を整理して、理解して、状況を飲み込んでいく。
 割と頭が落ち着いた頃、テーブルの上に美味しそうな料理が並べられた。


 夕暮れも過ぎ、だいぶ暗くなってきた頃、再開される。

「ジュノーを欲しがるもう一つの理由は、その知識さね」
「知識?」
 そう言われたが、俺にはこれといって特別な知識なんて持ち合わせてはいない。
 普通に小中高大と勉強はしてきたが、専門知識を習得しているわけでもない。
「俺はそんな特別頭が良いわけでも、専門的なことを学んだわけでも…」
「違う違う」
 ロマが被せて否定してくる。
「ショーヘイが今まで居た世界の情報そのものが知識なんだよ」
 そう言われてもピンとこない。言っている意味がわからなかった。
「そうだねぇ…例えば、そこにある時計」
 ロマが壁にかけられている何の変哲もない普通の時計を指す。
「時計は数百年前のジュノーが教えてくれた知識の一つだよ」
 そう言われて驚く。
 時計なんて、当たり前過ぎて意識なんてしたことがない。
「その時のジュノーが時間を誰もが目視出来る時計の存在を教えてくれたんだ」
「そのジュノーが時計を作れたってことですか?」
 たまたま時計職人だった、とかなのだろうか。
「いいや、時計という物を知っていただけだで、作ったのはドワーフという種族さ」
 ここで、昨日感じた違和感を思い出した。
「もしかして、トイレも…?」
「ああ、そうだよ」
 そう聞いて妙に納得する。
 あの違和感は、俺が居た世界と酷似した物があることが不自然だと感じたからだ。
 そう思えば、今着ている服も、何気なく使っていた食器や調味料なども、様々なところに似ている物がある。
 軽い衝撃を受けた。
「ジュノーの知識はこっちの世界ではまさに宝なのさ。数百年前に比べて、生活の質が格段に跳ね上がった」
 まるで数百年前の生活を知っているような言い方をする。
 そう言えばエルフは長命だったっけ…。ロマの年齢が気になったが聞くのはやめた。
「わかったろう?ジュノーを欲しがる理由が」
 黙って頷く。
「王侯貴族だけじゃない、商売人も、研究者も、ジュノーが喉から手が出るほど欲しいんだよ」
 さっき整理したのに、また頭の中がいっぱいになる。
 深く息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
「俺はこれからどうすれば…」
 頭を抱えて呟く。
「だから、あたしがいるんだよ。言ったろう?仕事だって」
 ロマに言われて顔を上げる。ロマが優しく微笑んでいた。
「あたしはこの国の王族に仕えていた魔導師なんだよ。今は隠居して歴史やジュノーつにいて研究してるだけだけどね」
「大賢者ロマ、氷の魔女。氷結の魔導士。俺が小さい時に見た絵本にも出てくるこわ~い魔女様だぜ? 今はただの口うるさいババァだけどな」
 ロイが揶揄いを込めて言った瞬間、彼の表面がピシッっという音とともに一瞬で凍りつく。だがすぐにパリンッと音を立ててロイが中から壊して出てくると、ブーブーと文句を言うが、ロマに睨まれて黙り込んだ。
 いきなりの魔法にはまだ少し驚いてしまうが、だいぶ慣れてもきた。
 それよりも目の前の老婆はかなりの有名人らしい。
 先ほどロマが口にした国という言葉も気になる。
「この世界にも国があるんですか?」
「ああ、そうだね。それも説明しないとね。」
 ロマは棚からガサガサと紙を出し、テーブルに広げた。
 世界地図だった。
「あたしたちがいる国はここ」

 サンドラーク公国

 そう表記されていた。
 周囲には大小様々な国があるようだ。
「昔は戦争なんかもあったんだけどね。今は割とどこも平和だね。で、あたしらがいる場所が…」
 ロマがまず王都を示し、そこから指でずーっと、ずーっとなぞる。

 遠い…

 縮尺がどのくらいはわからないが、王都からかなりの距離だろう国の端っこに小さな点がつけられている。
「ベルトラーク辺境伯の領地のこの辺だね」
 周囲に村や街はない。あるのは森林や草原を指す表記しかなかった。
「つまりド田舎ってこと」
 ロイが言った。確かに、ド田舎だ。小さな点はおそらく近くの村だろうが、名前すら地図にはなかった。

 ふと、さっきの言葉を思い出す。
 王侯貴族もジュノーを欲しがる。ロマはその王侯貴族側の人。
「ロマさんは、俺をどうするつもりなんですか?」
 率直に質問する。
「保護するんだよ」
 ロマが即答した。

 保護?それだけ?

「保護して、その後どうこうっていうのは」
「ないない」
 ロマが笑いながら答える。

 それだけ?
 色々な人が欲しがるジュノーを保護するだけ? 
 そこから先、知識を取り出すために尋問とか監禁とかはしないのか?

 あっけらかんとしたロマの言い方に拍子抜けする。
「まあ、言いたいことはわかるよ。
 だけど、他の国はどうか知らないが、この国はジュノーを保護対象にしてる。保護して、友人関係を築いた方が情報も得られやすいしね」
 地図を片付けながら言う。
「だから、ロイがショーヘイを見つけて、本当に良かったと思うよ」
 ロイを見ると、かなりのドヤ顔でニヤニヤしていた。
 
「さて、これで大体の説明は終わりだね」
 ロマは一仕事終わったとフゥッと息を吐く。
「そういえばショーヘイ。あんた、身一つでここに来たのかい?」
「え?」
 聞かれてしばしの沈黙の後、思い出す。
「鞄!」
 慌てて自分の周囲を見渡す。今まで気にもしてなかったので、それらしきものがあるわけもないのだが。
「鞄を持ってたのかい?」
 途端にロマの表情が険しくなった。
「ロイ!!!」
 ロマが突然怒鳴った。ものすごい迫力だ。今にも魔法を発動しそうなオーラまで感じる。
「あんた、ショーヘイが持ってた物を放置してきたのかい!!!」
 今にも爆発しそうな勢いで問いただす。
 ロイは怒鳴られて、焦りながら
「あったようななかったような…」
 モゴモゴと話す。
「今すぐ探して持ってきな!!!」
「あ、いや、そんなに大事なものは入ってないから…」
 ロイを庇うように言ったが、ロマがハアァァッと長いため息をついた。
「マズいんだよ。ショーヘイが持ってた物は、別世界の物だろう?そういう異物が見つかれば、ジュノーが現れたことがすぐにバレる。バレるってことは…」
「…持ち主を探しにくる…」
 ロマの言いたいことがわかった。
 確かにマズい。
「急いで行ってきな!」
 ロマがさらに怒鳴りつけると、ロイはビクビクッと体を震わせ、尻尾がブワッと逆立ち、猛ダッシュで家を飛び出して行った。
 そのロイの後ろ姿を呆然と見送り、ブツブツと呟くロマに向き直る。
「あの時は、俺、刺されて、殴られて、意識が飛びそうで…。そんな俺を見てロイもきっと我を忘れたんだと思います…」
 ロイを庇うように言うと、ロマは顔を上げてフッと微笑んだ。
「ショーヘイは優しいね」
 優しいと言われたが、それは何か違う気がすると思った。
「全部見つかると良いけどね…」
 怒ったような、困ったような、複雑な表情を見せる。
「色々と説明したけど、大丈夫かい?」
「はぁ…まぁ…」
 長時間、一気に説明を聞いて少し混乱気味であるけど、消化出来ない情報量ではない。
「何か質問があれば、わかる範囲で答えるよ」
 そう言われて息を呑む。
 そう。一番聞きたいこと。なるべく考えないようにしていたけど、どうしても確認したい。
「帰る方法ってないんですか?」
 そう問うと、ロマが悲しそうな顔をする。
「残念ながら、あたしは知らない」
「そうですか…」
 やっぱり、とは思ったが、はっきりと答えられると幾分ショックだった。
「でもね、可能性は0ではないと思うよ」
「え?」
「今までにも何人かジュノーに会ったことがあるけど、そのうちの数人がこっちの世界のことを知っていたんだ」
「知ってた?」
「そう。あたしたち種族のことや魔法のことを、だよ。
 ショーヘイ。あんたも知っていたよね。人族以外の話をしても驚きもしないで受け入れてた。
 これってどういうことなんだろうね」
 ニヤリとロマが笑う。

 そうだ。
 俺が知っていたのは、元の世界にその情報がすでにあったからだ。
 映画、漫画、アニメ、ゲーム。
 いろんな媒体でファンタジーの世界を見ていたから知っていた。
 じゃあ誰が最初にファンタジーというものを、種族やモンスターを思いついたのか。
 思いついた、脳内で作り出したのでなく、実際に見ていたとしたら…。

 ゾクっと鳥肌がたった。

 この世界から戻った人がいたんだ。
 戻ってから物語として他人に語り、空想の産物として世界に広まった。
 それが事実なら、

「帰れる方法がどこかにあるかもしれない…」
 
 少しだけ希望が見えた気がした。



しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【完結】嬉しいと花を咲かせちゃう俺は、モブになりたい

古井重箱
BL
【あらすじ】三塚伊織は高校一年生。嬉しいと周囲に花を咲かせてしまう特異体質の持ち主だ。伊織は感情がダダ漏れな自分が嫌でモブになりたいと願っている。そんな時、イケメンサッカー部員の鈴木綺羅斗と仲良くなって──【注記】陽キャDK×陰キャDK

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...