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序章
1. おっさん、独身のわけを語る
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島田翔平38歳。
都会ではないがど田舎でもない地方都市で育ち、そこそこの大学に入って、事務機器メーカー会社に営業マンとして入社し16年。
現在は課長補佐として部下もいるし、上司にも恵まれている。給料も周囲の同年代よりは少しだけ多く貰っているし、サービス残業を強要するようなブラックな会社でもない。繁忙期には連日残業という時もあるが、それ以外は普通に定時退社出来るような優良企業だ。
問題があるとすれば会社ではなく自分にある。同期も後輩も結婚して家庭を築いている人が多い中、自分はいまだに独身であることだ。
結婚したいとは思うけれど、自分には出来ないと諦めている。
容姿が悪いわけではないと思う。身長175センチ。体重65kg。イケメンではないが、フツメンよりちょっとイケてる自信はある。体型や服装にも気を使う。だからそこそこモテた経験もあるし、付き合った女性も複数いる。だがある過去がトラウマになって8年間彼女がいない。
8年前、30歳の時に当時4年付き合った女性、美代にプロポーズし、その半年後には結婚することになった。
美代は同期入社の女性。同期という立場から頻繁に仲間達と遊ぶ機会が多くて、気付けば2人で出掛けることも増え、自然と付き合う形になった。
お互い一人暮らしということもあって、半同棲のような形で4年付き合った。そして、結婚式の準備を始めた3ヶ月目にそれは発覚した。
きっかけは経理に在職している同期、高宮和弘だった。同じ社屋にいるので、割と頻繁に顔を合わせてはいたが、結婚式の招待状を送付して数日後に突然廊下で呼び止められ、美代が浮気しているかもしれないと告げられた。
実は高宮の妻も元同期。約1年前に結婚し寿退社している。高宮は妻経由で美代の浮気の話を聞いたと言う。
その日の退社後、高宮夫妻の家に招かれて夕飯をご馳走になりながら話を聞いた。
妻、愛子は同姓の直感なのか、数年前からずっと疑っていたという。美代から聞く彼氏自慢が、どうしても島田のことだと思えない、という話だった。
愛子は、自分のお金で興信所に依頼するから、調査することを了承してくれと言う。絶対浮気してると思うし、もしこのまま結婚されて、やっぱりダメでした、なんて、疑っていて見逃した自分が許せなくなる。島田のためだけど、自分のためでもあるんだ。
と、鬼気迫る勢いで詰め寄られて、自分も若干不安に駆られ始める。
まさか。そんなはずはない。勘違いだ。
そう返す暇もないくらいに畳み掛けてこられて、次第に動悸が激しくなってきて、明らかに動揺し始めている自分に気付いた。
「まあとりあえずさ、愛子も自分で金出すって言ってるし、調べて貰えばいいんじゃない? 何もなければそれでいいんだしさ」
高宮が興奮しながら話す妻を抑えながら、半ば諦めたように言ってくる。自分よりも愛子の言い出したら聞かない性格と若干強めの正義感をよくわかっているんだろう。
結局は押し切られる形で興信所に依頼することを了承した。
高宮の言う通り、何も出なければそれでいいんだ。浮気の証拠なんて出るはずがない。
半ば自分にそう言い聞かせた。
そしてその日からたった1週間後に、調査が終わったと愛子から連絡が来た。
結果は真っ黒だった。
高宮夫妻の家で、今度は興信所の人間も同席した状態で話を聞く。自分と変わらない年であろうスーツを着た興信所の男が茶封筒から厚めの紙束とレコーダーを出してくる。
紙束の中身は写真を普通紙に印刷したものがほとんどで、それらをペラペラとめくりながら、カフェか何処かで話している2人の会話の録音を聞く。よくこんな会話を録音出来たものだ、と感心する。
会話の内容を要約すると、
浮気は約2年ほど前から。
結婚後も関係を続ける。
さらに子供が出来た場合は島田の子として育てる。
などなど、何も悪びれた様子もなく、嬉々として話す美代の声。
さらに最悪だったのは、自分の殺害の話まで上がっていたことだ。
浮気相手は保険の営業マンで、結婚後に多額の保険金をかけ、10年くらいかけてゆっくりと毒を飲ませ、病死に見せかけて殺すという計画までたてていた。証拠として、美代の手書きの生命保険申込書の写真まで出てきた。掛金がかなり高いせいで、死亡保険金が億越えのものだった。
録音を聞き始めてから一瞬で血の気が引いた。視界が一瞬暗くなり、すぐに我に返る。だが声が出ない。ダラダラと汗が噴き出る。浮気の事実もショックだが、殺されそうになっていることも合わせてダブルで衝撃が襲う。
何も気付かなかった。
普通に出会って、恋愛して、結婚するんだ、1週間前までは幸せだと思っていたのに、一気に崖下に突き落とされた気分になった。
愛子は調査を進言したのはいいが、まさか浮気だけではなく、殺人計画まで出てくるとは思っていなかったわけで、眉間に皺を寄せ複雑な表情で黙って俯いていた。
報告が終わり、男が帰って3人になると、高宮が低い声で言った。
「弁護士だな」
そこからは早かった。
高宮が社長にかけ合い、顧問弁護士を通じてこういった問題に慣れている弁護士を紹介してもらった。会社側としても、島田も美代も現役社員であり、結婚後も美代は継続して勤務することになっていたため、異例ではあったが、社内の会議室を利用してそれぞれの両親と弁護士が同席して話合いが行われた。
美代は両親も会社に召集をかけられたことを不思議がっていたが、もしかしてお祝い貰えるのかな、とウキウキの様子だった。だが会議室に入ってから、島田側、美代側と対面した形で座らされたことに戸惑いをみせる。
話合いは自分の弁護士が事を進め、美代は次々と証拠を突きつけられて、顔色が真っ青になり、ガタガタと震え出す。途中、美代の父親が突然立ち上がり、美代を殴り倒すという騒動も起きたが、すんなりと終わった。話合いというよりも、自分の要求を弁護士が美代側へ伝え、それに美代側が同意、署名、捺印、という淡々とした流れだったので、1時間もかからず終了した。
こちらからの要望は婚約破棄、慰謝料請求、結婚式場や諸々のキャンセル料の支払い、送付済みの招待状に対する対応などだ。
殺害計画に関しては、まだ刑事事件に発展することでもないので、こういう話が出ていたという話だけで済ませた。それでも、この殺人計画の話が出た時の美代は目が泳ぎ、明らかに今までとは違う挙動を見せたため、
「ああ、本気だったんだな…」
と他人事のように思った。
浮気相手にも今頃内容証明が届けられているはずで、近日中にそちらも決着がつくことになるだろう。
それと、これは自分は関係のない話だが、美代は浮気相手と遊ぶ金欲しさに会社の金を横領していたことも発覚したため、話合いが終わった後、自分側の関係者が退室したのに合わせて、高宮とその上司、顧問弁護士が入室して行った。
その後、美代は話合いの日以降出社することなく、そのまま懲戒解雇。その2週間後には美代からも相手側からも慰謝料が振り込まれ、高宮夫妻へ興信所の料金を含めて多額の謝礼をした。裏切りが判明してから、1ヶ月と経たずに終わった。
終わった日、初めて涙が出た。
4年間の美代との思い出が今更になって蘇る。楽しかった記憶が次から次へとへと思い出されて、もう二度と戻らないとようやっと認識できた。裏切りに対する怒りと、悔しさと、けど自分にも非があったのではないかという葛藤と、実は夢でした、ドッキリでした、などという非現実的な希望と、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
両親が帰り1人になってから、それはもう思い切り泣いた。
終わったはずだった。
決着したと思っていたのに、それから数ヶ月に渡って美代に復縁を迫られた。電話やSNSの通知が毎日3桁を越え、出退社時に待ち伏せされ、自宅アパートに押しかけられる。
更に逆ギレした浮気相手からも嫌がらせを受けた。
結局2人の様々なストーキング行為は警察沙汰になり、2人に対して接近禁止命令が出る。しかしそれでも続いたために間も無くして2人は逮捕された。
そんなこんなで決着後も心休まることがなく、精神的ダメージが蓄積して体重が激減。体調を崩して1ヶ月近く入院するはめになってしまった。
その入院で体は完全に回復に向かったが、カウンセリングを受けても一度傷ついた心は元に戻ることはなかった。
一連の騒動がかなりのトラウマになっていることに気付いたのは、それから1年以上経過した後だった。
普通に女性と接することには問題ないのだが、いざ恋愛を意識すると恐怖に近い感情が湧き上がって、動悸、息切れ、発汗、というパニックに近い現象が起こる。何人か意識した女性はいたが、どの人に対してもダメだった。
こうして8年経った今でも彼女がいない。おそらく今後も出来ない。そう諦めた。今の時代、男も女もお一人様を貫く人なんてざらにいる。自分もただその中の1人に過ぎない、と考えることにした。
でも、やはり同僚達の家族や恋人の話を聞いたりすると、羨ましいと考えてしまうのもまた事実。
恋愛がしたい。
結婚がしたい。
家族が欲しい。
1人は嫌だ。
もう38歳。
消せない不安を抱えたままおっさんになってしまった自分に嫌気がさす。
そして今日もため息をつく。
都会ではないがど田舎でもない地方都市で育ち、そこそこの大学に入って、事務機器メーカー会社に営業マンとして入社し16年。
現在は課長補佐として部下もいるし、上司にも恵まれている。給料も周囲の同年代よりは少しだけ多く貰っているし、サービス残業を強要するようなブラックな会社でもない。繁忙期には連日残業という時もあるが、それ以外は普通に定時退社出来るような優良企業だ。
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その日の退社後、高宮夫妻の家に招かれて夕飯をご馳走になりながら話を聞いた。
妻、愛子は同姓の直感なのか、数年前からずっと疑っていたという。美代から聞く彼氏自慢が、どうしても島田のことだと思えない、という話だった。
愛子は、自分のお金で興信所に依頼するから、調査することを了承してくれと言う。絶対浮気してると思うし、もしこのまま結婚されて、やっぱりダメでした、なんて、疑っていて見逃した自分が許せなくなる。島田のためだけど、自分のためでもあるんだ。
と、鬼気迫る勢いで詰め寄られて、自分も若干不安に駆られ始める。
まさか。そんなはずはない。勘違いだ。
そう返す暇もないくらいに畳み掛けてこられて、次第に動悸が激しくなってきて、明らかに動揺し始めている自分に気付いた。
「まあとりあえずさ、愛子も自分で金出すって言ってるし、調べて貰えばいいんじゃない? 何もなければそれでいいんだしさ」
高宮が興奮しながら話す妻を抑えながら、半ば諦めたように言ってくる。自分よりも愛子の言い出したら聞かない性格と若干強めの正義感をよくわかっているんだろう。
結局は押し切られる形で興信所に依頼することを了承した。
高宮の言う通り、何も出なければそれでいいんだ。浮気の証拠なんて出るはずがない。
半ば自分にそう言い聞かせた。
そしてその日からたった1週間後に、調査が終わったと愛子から連絡が来た。
結果は真っ黒だった。
高宮夫妻の家で、今度は興信所の人間も同席した状態で話を聞く。自分と変わらない年であろうスーツを着た興信所の男が茶封筒から厚めの紙束とレコーダーを出してくる。
紙束の中身は写真を普通紙に印刷したものがほとんどで、それらをペラペラとめくりながら、カフェか何処かで話している2人の会話の録音を聞く。よくこんな会話を録音出来たものだ、と感心する。
会話の内容を要約すると、
浮気は約2年ほど前から。
結婚後も関係を続ける。
さらに子供が出来た場合は島田の子として育てる。
などなど、何も悪びれた様子もなく、嬉々として話す美代の声。
さらに最悪だったのは、自分の殺害の話まで上がっていたことだ。
浮気相手は保険の営業マンで、結婚後に多額の保険金をかけ、10年くらいかけてゆっくりと毒を飲ませ、病死に見せかけて殺すという計画までたてていた。証拠として、美代の手書きの生命保険申込書の写真まで出てきた。掛金がかなり高いせいで、死亡保険金が億越えのものだった。
録音を聞き始めてから一瞬で血の気が引いた。視界が一瞬暗くなり、すぐに我に返る。だが声が出ない。ダラダラと汗が噴き出る。浮気の事実もショックだが、殺されそうになっていることも合わせてダブルで衝撃が襲う。
何も気付かなかった。
普通に出会って、恋愛して、結婚するんだ、1週間前までは幸せだと思っていたのに、一気に崖下に突き落とされた気分になった。
愛子は調査を進言したのはいいが、まさか浮気だけではなく、殺人計画まで出てくるとは思っていなかったわけで、眉間に皺を寄せ複雑な表情で黙って俯いていた。
報告が終わり、男が帰って3人になると、高宮が低い声で言った。
「弁護士だな」
そこからは早かった。
高宮が社長にかけ合い、顧問弁護士を通じてこういった問題に慣れている弁護士を紹介してもらった。会社側としても、島田も美代も現役社員であり、結婚後も美代は継続して勤務することになっていたため、異例ではあったが、社内の会議室を利用してそれぞれの両親と弁護士が同席して話合いが行われた。
美代は両親も会社に召集をかけられたことを不思議がっていたが、もしかしてお祝い貰えるのかな、とウキウキの様子だった。だが会議室に入ってから、島田側、美代側と対面した形で座らされたことに戸惑いをみせる。
話合いは自分の弁護士が事を進め、美代は次々と証拠を突きつけられて、顔色が真っ青になり、ガタガタと震え出す。途中、美代の父親が突然立ち上がり、美代を殴り倒すという騒動も起きたが、すんなりと終わった。話合いというよりも、自分の要求を弁護士が美代側へ伝え、それに美代側が同意、署名、捺印、という淡々とした流れだったので、1時間もかからず終了した。
こちらからの要望は婚約破棄、慰謝料請求、結婚式場や諸々のキャンセル料の支払い、送付済みの招待状に対する対応などだ。
殺害計画に関しては、まだ刑事事件に発展することでもないので、こういう話が出ていたという話だけで済ませた。それでも、この殺人計画の話が出た時の美代は目が泳ぎ、明らかに今までとは違う挙動を見せたため、
「ああ、本気だったんだな…」
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それと、これは自分は関係のない話だが、美代は浮気相手と遊ぶ金欲しさに会社の金を横領していたことも発覚したため、話合いが終わった後、自分側の関係者が退室したのに合わせて、高宮とその上司、顧問弁護士が入室して行った。
その後、美代は話合いの日以降出社することなく、そのまま懲戒解雇。その2週間後には美代からも相手側からも慰謝料が振り込まれ、高宮夫妻へ興信所の料金を含めて多額の謝礼をした。裏切りが判明してから、1ヶ月と経たずに終わった。
終わった日、初めて涙が出た。
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両親が帰り1人になってから、それはもう思い切り泣いた。
終わったはずだった。
決着したと思っていたのに、それから数ヶ月に渡って美代に復縁を迫られた。電話やSNSの通知が毎日3桁を越え、出退社時に待ち伏せされ、自宅アパートに押しかけられる。
更に逆ギレした浮気相手からも嫌がらせを受けた。
結局2人の様々なストーキング行為は警察沙汰になり、2人に対して接近禁止命令が出る。しかしそれでも続いたために間も無くして2人は逮捕された。
そんなこんなで決着後も心休まることがなく、精神的ダメージが蓄積して体重が激減。体調を崩して1ヶ月近く入院するはめになってしまった。
その入院で体は完全に回復に向かったが、カウンセリングを受けても一度傷ついた心は元に戻ることはなかった。
一連の騒動がかなりのトラウマになっていることに気付いたのは、それから1年以上経過した後だった。
普通に女性と接することには問題ないのだが、いざ恋愛を意識すると恐怖に近い感情が湧き上がって、動悸、息切れ、発汗、というパニックに近い現象が起こる。何人か意識した女性はいたが、どの人に対してもダメだった。
こうして8年経った今でも彼女がいない。おそらく今後も出来ない。そう諦めた。今の時代、男も女もお一人様を貫く人なんてざらにいる。自分もただその中の1人に過ぎない、と考えることにした。
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