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78話 サン・フォックの嘆き
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「話せばなんとかなる........そう思ってる。」
ラクレスは、部屋の前に立ちながらそう呟いた。
「でも、あの人の過去は想像以上に過酷だったぞ?話して何とかなるのか?」
ロッド・ゲルマンが心配そうに言う。
「隊長の言う通りよ。勢いだけではいけないことだってあるのよ。」
リーネも不安そうに続けたが、ラクレスは二人を見据え静かに言った。
「じゃあ、何かいい案があるのか?」
「「...............」」
「無いだろ?じゃあ、話すしかない。」
そう言って、ラクレスはサン・フォックの部屋へと向かう決心を固めた。三人は先程エルダード・ワーフ王から教えてもらった通り、サン・フォックの部屋の前までやってきた。ラクレスは軽くノックをすると、しばらくして返事が返ってきた。
「サンさん、少しお話できないでしょうか?」
すると、少し間をおいて返事が返ってきた。
「...........白髪の小僧、お前だけ入ってこい。」
ラクレスは一瞬驚いたが、素早く気を取り直し、扉を開けた。
「じゃあ、私たちは部屋に戻ってるから。ちゃんと結果を残しなさいよ。」
「リーネの言うとおりだ。選ばれたからにはしっかりとやって来い。」
そうして二人はその場を去った。
二人が去ったのを確認したラクレスは扉を開けて部屋の中に入った。
「失礼します...........えっ..........」
部屋に入った瞬間、ラクレスは思わず息を呑んだ。
「あっはっは、どうだ?驚いたろ。」
サンが笑みを浮かべて尋ねた。そして、ラクレスは部屋を見回しながら応えた。
「はいっ、まさか部屋の中に鍛冶工房があるなんて........」
ラクレスの目の前には、鉄と火の香りが漂う鍛冶場が広がっていた。寝室ではなく、鍛冶工房そのものだった。
「こういうのって普通、それ専用の建物の中でやるんじゃないんですか?」
ラクレスが尋ねると、サンは少し寂しげな表情で答えた。
「他の奴らはな...............だが俺は違う。俺はこいつが好きなんだ。だから、寝る時もご飯を食べる時もずっと一緒にいたいのさ...........家族のようにな...............」
その言葉には、深い哀しみと孤独がにじみ出ていた。ラクレスは言葉を失ったまま、ただ静かに耳を傾けるしかなかった。
しばらくの沈黙が続いた後、サンが重い声で言った。
「ワーフから聞いたんだろ?」
「何をですか?」
「あっはっは、小僧、とぼけるのは下手なんだな?」
ラクレスはそう言われると、にが笑いをしながら言った。
「すいません、聞きました...........」
「あっはっは、な~~に、謝ることはねぇ。」
すると、ラクレスは意を決して本題に切り込んだ。
「過去のことが原因なんですか?」
「何がだ?」
「ムーンさんに厳しくしているのは...........」
その問いにサンの表情が一変した。彼は静かだった目を鋭く光らせ、低い声で言い放った。
「..........お前に何が分かる........」
「分かります。サンさんの過去は全て聞きました。だから、ムーンさんには強くあってほしいんですよね?」
ラクレスの言葉が刺さるように響くと、サンの顔が歪んだ。
「...........うるせえ、うるせぇっ、俺の前でその話はするなっ!!!!!!」
ラクレスの問いかけに、終始穏やかだったサンが声を荒げた。その声は、深い苦悩と怒りが混ざり合った叫びだった。しかし、ラクレスは一歩も引かなかった。
「いいえ、サンさんが変わるまで俺は話します。いいですか?人間が攻めてくれば、サンさんと同じように家族を亡くす人がたくさん出てしまうんですよ?」
「他人のことなんてどうでもいいんだよ。人を助けたって、もう帰ってこねぇもんは帰ってこねぇ........そんなのはただの自己満だ。」
「自己満で何が悪いんですか?サンさんは知らないでしょうけど、ムーンさんには息子同様に育てている子達もいるんですよっ!!!!!!」
「だからなんだってんだ........あいつはもう俺の息子じゃねぇ。あいつの話は俺の前ではもう二度とするなっ!!!!!!」
サンはさらに激しく叫んだが、ラクレスは諦めずに言い放った。
「本当にいいんですか?スータさんが守った命なんですよっ!!!!!!」
「スータ........お前がその名を口にするんじゃねぇよ!!!!!!スータが守った命?あいつはな、あいつはな........俺達と一緒に国外に追放される予定だったんだぞっ。」
「実は........さっきワーフ王に聞きました。本当はサンさんとムーンさんも殺される予定だったと...........」
「ふんっ、そんな嘘バレバレだっ。」
「嘘じゃないです。スータさんは自分が辱めを受ける代わりに、サンさんとムーンさんの命を守ったんですよっ!!!!!!サンさんこそスータさんの死を無駄にする気ですかっ?」
「うるせぇ、うるせぇ、スータが俺達を守った?何を言ってんだ?」
「本当です。よく考えてみて下さい。冤罪とはいえ国の宝を盗んだんですよ。普通なら一族もろとも死刑になってもおかしくはない。でもなぜ、サンさんとムーンさんは生きているんですか?」
「それは...............」
そしてラクレスは先程ワーフ王に託された手紙を渡した。
「これは?」
「スータさんからの手紙です。王様が持っていました。」
「こんなものがあったなんて...............あの野郎、一言も言ってなかったぞっ」
「言えなかったんですよ..........」
ラクレスがそう言うと、サンはゆっくりと手を伸ばした。そして、手紙を受け取ると、恐る恐る手紙を開けた。
その後、サンは手紙に食いつくように読み始めたのであった。
ラクレスは、部屋の前に立ちながらそう呟いた。
「でも、あの人の過去は想像以上に過酷だったぞ?話して何とかなるのか?」
ロッド・ゲルマンが心配そうに言う。
「隊長の言う通りよ。勢いだけではいけないことだってあるのよ。」
リーネも不安そうに続けたが、ラクレスは二人を見据え静かに言った。
「じゃあ、何かいい案があるのか?」
「「...............」」
「無いだろ?じゃあ、話すしかない。」
そう言って、ラクレスはサン・フォックの部屋へと向かう決心を固めた。三人は先程エルダード・ワーフ王から教えてもらった通り、サン・フォックの部屋の前までやってきた。ラクレスは軽くノックをすると、しばらくして返事が返ってきた。
「サンさん、少しお話できないでしょうか?」
すると、少し間をおいて返事が返ってきた。
「...........白髪の小僧、お前だけ入ってこい。」
ラクレスは一瞬驚いたが、素早く気を取り直し、扉を開けた。
「じゃあ、私たちは部屋に戻ってるから。ちゃんと結果を残しなさいよ。」
「リーネの言うとおりだ。選ばれたからにはしっかりとやって来い。」
そうして二人はその場を去った。
二人が去ったのを確認したラクレスは扉を開けて部屋の中に入った。
「失礼します...........えっ..........」
部屋に入った瞬間、ラクレスは思わず息を呑んだ。
「あっはっは、どうだ?驚いたろ。」
サンが笑みを浮かべて尋ねた。そして、ラクレスは部屋を見回しながら応えた。
「はいっ、まさか部屋の中に鍛冶工房があるなんて........」
ラクレスの目の前には、鉄と火の香りが漂う鍛冶場が広がっていた。寝室ではなく、鍛冶工房そのものだった。
「こういうのって普通、それ専用の建物の中でやるんじゃないんですか?」
ラクレスが尋ねると、サンは少し寂しげな表情で答えた。
「他の奴らはな...............だが俺は違う。俺はこいつが好きなんだ。だから、寝る時もご飯を食べる時もずっと一緒にいたいのさ...........家族のようにな...............」
その言葉には、深い哀しみと孤独がにじみ出ていた。ラクレスは言葉を失ったまま、ただ静かに耳を傾けるしかなかった。
しばらくの沈黙が続いた後、サンが重い声で言った。
「ワーフから聞いたんだろ?」
「何をですか?」
「あっはっは、小僧、とぼけるのは下手なんだな?」
ラクレスはそう言われると、にが笑いをしながら言った。
「すいません、聞きました...........」
「あっはっは、な~~に、謝ることはねぇ。」
すると、ラクレスは意を決して本題に切り込んだ。
「過去のことが原因なんですか?」
「何がだ?」
「ムーンさんに厳しくしているのは...........」
その問いにサンの表情が一変した。彼は静かだった目を鋭く光らせ、低い声で言い放った。
「..........お前に何が分かる........」
「分かります。サンさんの過去は全て聞きました。だから、ムーンさんには強くあってほしいんですよね?」
ラクレスの言葉が刺さるように響くと、サンの顔が歪んだ。
「...........うるせえ、うるせぇっ、俺の前でその話はするなっ!!!!!!」
ラクレスの問いかけに、終始穏やかだったサンが声を荒げた。その声は、深い苦悩と怒りが混ざり合った叫びだった。しかし、ラクレスは一歩も引かなかった。
「いいえ、サンさんが変わるまで俺は話します。いいですか?人間が攻めてくれば、サンさんと同じように家族を亡くす人がたくさん出てしまうんですよ?」
「他人のことなんてどうでもいいんだよ。人を助けたって、もう帰ってこねぇもんは帰ってこねぇ........そんなのはただの自己満だ。」
「自己満で何が悪いんですか?サンさんは知らないでしょうけど、ムーンさんには息子同様に育てている子達もいるんですよっ!!!!!!」
「だからなんだってんだ........あいつはもう俺の息子じゃねぇ。あいつの話は俺の前ではもう二度とするなっ!!!!!!」
サンはさらに激しく叫んだが、ラクレスは諦めずに言い放った。
「本当にいいんですか?スータさんが守った命なんですよっ!!!!!!」
「スータ........お前がその名を口にするんじゃねぇよ!!!!!!スータが守った命?あいつはな、あいつはな........俺達と一緒に国外に追放される予定だったんだぞっ。」
「実は........さっきワーフ王に聞きました。本当はサンさんとムーンさんも殺される予定だったと...........」
「ふんっ、そんな嘘バレバレだっ。」
「嘘じゃないです。スータさんは自分が辱めを受ける代わりに、サンさんとムーンさんの命を守ったんですよっ!!!!!!サンさんこそスータさんの死を無駄にする気ですかっ?」
「うるせぇ、うるせぇ、スータが俺達を守った?何を言ってんだ?」
「本当です。よく考えてみて下さい。冤罪とはいえ国の宝を盗んだんですよ。普通なら一族もろとも死刑になってもおかしくはない。でもなぜ、サンさんとムーンさんは生きているんですか?」
「それは...............」
そしてラクレスは先程ワーフ王に託された手紙を渡した。
「これは?」
「スータさんからの手紙です。王様が持っていました。」
「こんなものがあったなんて...............あの野郎、一言も言ってなかったぞっ」
「言えなかったんですよ..........」
ラクレスがそう言うと、サンはゆっくりと手を伸ばした。そして、手紙を受け取ると、恐る恐る手紙を開けた。
その後、サンは手紙に食いつくように読み始めたのであった。
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