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74話 ダッカの村

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「どこに行くんだ?」

ラクレスが家の中に入って行った親分に声をかけた。

「あぁ、あんちゃんたちに必要なものだ.......」

親分はそう言い残して家の中へと消えた。しばらくすると、彼は手に一つの古びた巻物を持って戻ってきた。

「これだ。」

「これは.......もしかしてっ!?」

ラクレスの目が大きく開かれた。

「あぁ、これはこの辺り一帯を記した古い地図だ。これがあれば、簡単にダッカの村に行くことができる。」

「まじかぁ....まさかこんな簡単に行けるとは思わなかった......」

ラクレスは驚きながらも、感謝の表情を浮かべた。

「でもな、あんちゃん。着いたとしても、村に入れるとは限らない。用心して進めよ。」

親分の言葉には一抹の不安が込められていた。

「あぁ分かってる。ありがとうムーンさん。」

「えーーーーーー、もう行っちゃうのかよ?」

パンクが名残惜しそうに声を上げた。

「ごめんな、少し急いでいるんだ。話はまた後でしてやるからな。」

ラクレスはパンクの頭に手を置き、優しく笑った。

「絶対、約束だぞっ」

パンクは手を握りしめて叫ぶ。

「あぁ、任せとけっ」

ラクレスは自信を持って返事をし、彼らは再び歩みを進めた。

ロッド・ゲルマン、リーネ、ラクレスの三人はダッカの村を目指して歩き始めた。

「それより、あいつらは何者なの?」

リーネが突然そんなことを口に出した。

「たしかに......なぜあんな奴らがあそこにいた?」

リーネに呼応するように、ロッド・ゲルマンも口を開いた。

「詳しいことは分からない。でも、悪い人たちでもない。」

「たしかに.......でも、私を捕まえようとしたことは絶対に許さない。」

リーネは灯台での出来事を思い出して憤りを感じている。

しかし、

「あっはっは、そんなに怒るなよ?それに、あんなのを避けれなかったお前がトロいんだよ。」

ロッド・ゲルマンがリーネを挑発するように笑う。

ラクレスは「やれやれ」といった顔をして、ロッド・ゲルマンから距離をとる。すると、

「ボワァ」

炎の塊がロッド・ゲルマンに向かって放たれた。

「おいおい、こんなとこでそんなもん放つなよっ」

ロッド・ゲルマンは間一髪で炎を避け、呆れながらも警告する。

「はっ?そんなこと、知らないわよ。」

それからリーネとロッド・ゲルマンの小競り合いはしばらく続いた。

「おいっ!!!二人とももういいだろ?」

「はぁ?いいわけないでしょっ!!!」

「あっはっは、それに関してはリーネに同感だ。」

「じゃなくて、もう着くぞ。」

「えっ?もう着くの?」

リーネは思ったことを口にした。

「案外近かったな。」

「あぁ、ムーンさん達は思ったよりもダッカの村の近くにいたらしい。」

そうして三人は、ダッカの村を目の前にした。

「...........これが、城?」

「あっはっは、リーネは見識もないのか?」

「はぁ?」

「考えてみろ。ドワーフは人前には滅多に出てこない。そんな奴らが、ただ普通の城や町に住んでると思うか?」

「........悔しいけど、あんたの言ってる通りね.........」

リーネは納得した様子で、目の前の壮大な景色を見上げる。山が削られ、そこに築かれた巨大な居住区が広がっている。

そして、三人は門に近づいた。

「何者だ?」

「俺達はオックス王国から派遣されてきた。ドワーフ製の武器と防具がほしい。」

ロッド・ゲルマンが堂々と答える。

しかし、

「あぁ?オックス王国?リザードマンが来るなんて聞いてないぞ?」

「そりゃそうだろ。なんせ、アポ無しだからな。」

ロッド・ゲルマンはキメ顔をしてそう言った。

しかし、

「帰れ。不審な奴らはこの国には一歩たりとも入らせねぇ。」

兵士は断固として拒否する。

「あぁ?おいおい、お前ごとき俺の手にかかれば一瞬だ。」

怒りを抑えきれないロッド・ゲルマンは、兵士を威圧する。

しかし、

「おい、落ち着け!ここで揉め事を起こしたら、何の意味もないぞ。」

ラクレスが止めに入る。

「そうよ、隊長って本当にガキね!」

リーネも追随するように冷たく言い放つ。

「何だと?副隊長の分際で、よくもまあ隊長にそんな口をきけるな?」

「なにっ?隊長こそ、ガキの癖によく隊長が勤まりますね?もしかして、副隊長がとても優秀なのかしら。」

リーネとロッド・ゲルマンの口喧嘩が再び始まるが、ラクレスは無視して兵士に話しかける。

「すみません、うちの隊長が。だが、言ってることは本当なんだ。ただ、俺たちはここで武器と防具が必要なだけだ。」

「さっきの態度を見た後で信じられるか?あいつ、俺を殺そうとしたんだぞ?」

「信じてくれ。もしここで引き返したら、オックス王国は.........いや、この国も危ないんだ。」

「おいっ、お前さっき聞き捨てならねぇことを言ったな?この国もやばい?おいおい、冗談はやめてくれ。この要塞は相手が誰であっても崩せねぇ。なんなら、俺達ドワーフがお前らの代わりにその敵を頬無ってやる。」

「多分、無理だ。」

「はっはっは、さっきから冗談がうまいなぁ?で、相手は誰だ?獣人か?それとも、同種族のリザードマンか?」

兵士はそう言った。

「...........人間だ」

兵士は人間と聞くと、目を丸くして言った。

「う、嘘だろ!?なんで人間と戦うんだ?」

「本当だ。人間が攻めてきたんだ。」

ラクレスの真剣な表情に、兵士は戸惑いを見せるが、

「うそだっ!!!はっはっは、危うく騙されるところだったぜ。人間が攻めてくるわけねぇ。もう、冗談はいいから帰ってくれっ!!!!」

そう言って兵士は槍をラクレスに向ける。

(このままじゃ埒が明かないな...........時間をおくか)

ラクレスは一旦引こうとした。

すると、突然、

「ちょっと待ってくれっ」

要塞の中からラクレスを呼び止める声がした。

「あ、あぁ、あなたは、」

兵士はその人物を見ると怯えひざまついた。

「何者だ?」

ラクレスはそう言うと、呼び止めた者を見たのであった。
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