69 / 90
68話 束の間の休息
しおりを挟む
4人は城に戻って、王様に謁見していた。
「よくぞ、人間共を撃退してくれたな。ゲルマン、リーネ、ラクレス。」
「「「はっ」」」
「お前らは一旦次に備えて休んでくれ。人間共が再び来るかもしれないからな。」
「「「はっ」」」
「それよりリットン、あいつらが乗ってきた船はどうしてる?」
「それについては、現在回収を試みています。今日中には持ってこれるかと。」
「さすが我が矛、仕事が早い。」
「恐悦至極に存じます。」
「ささ、お主らは早く休んでくれたまえ。」
城での謁見の後、ラクレス、ロッド・ゲルマン、リーネの三人は一息ついてそれぞれの部屋で休息を取った。
「ラクレス........聞きづらいんだけど..........一つ聞いてもいい?」
リーネは何か心に引っかかるものがあり、ラクレスの部屋を訪ねていた。
「あぁ、何でもいいよ。」
「さっきの大男が言っていたマルコ卿って、一体何のことなの?」
リーネはマルコ卿についてラクレスに聞いた。
ラクレスは少し考えたあと、窓から外を見つめながら語り始めた。
「実は...........俺、ここに来る前にエルフの国でマルコ卿って奴と戦ったんだ.....あいつは強かった。正直、死にかけたよ。」
「そんな……」とリーネは驚くが、ラクレスは軽く笑ってみせた。
「笑い事じゃないわよ!」とリーネが呟くと、ラクレスが「なんか言ったか?」と聞くが、
「何も言ってないわよっ。あんた頭かしくなったんじゃないの?それよち聞かせてよ。マルコ卿って奴とあんたの関係..........」
「関係も何も、ただやり合っただけさ。」
「そんなわけないでしょ?何年あんたと一緒に居ると思ってんの?」
「..........」
ラクレスはしばらく黙り込むが、リーネの真剣な目に押され、ついに真実を打ち明ける。
「マルコ卿が死ぬ間際、俺に話してきたんだ。あのホーレン・グレイって奴がマルコ卿の母親を殺したって。だから.........俺はそのことが引っかかってた。敵討ちというわけじゃないが、彼が寂しそうにしていたのが忘れられなくてな...........」
「..........そうなんだ、じゃあも一つ聞いていい?あの大男が赤馬教とか何とか言ってたけど、あんたは何かわかる?」
「それについては..........よく分かんない。でも、ここに来る前に故郷の村で青馬教のヨハネ卿を名乗る人物と会った..........」
「........ヨハネ卿?それよりあんた、帰ってたのね..........」
ラクレスはさらに考えを巡らせる。
「それに、マルコ卿は白馬教を名乗っていた。白、青、赤........他にもいそうだな..........」
「そうね........でも、マルコ卿って奴は倒したんでしょ?なら、他もいけるんじゃない?」
「いや........村であったヨハネ卿を名乗る人物はマルコ卿の比じゃなかった........今の俺ではどうあがいても勝てないだろうな..........」
そう言いながらも、ラクレスの心の中にはひとつの希望が芽生えていた。
(でも、あの魔法を使えば、もしかしたら..........)
SS級魔法――それを使えば勝てるかもしれないという思いが頭をよぎる。
「んっ?........どうした?リーネ」
ラクレスはボーっとしているリーネに言った。
「........んっ?あ、あぁ、私?」
「あぁ、どうしたんだよ、ボーっとして........」
「ボーっと何かしてないわよっ、ラクレス、あんた疲れてるんじゃない?」
「........いや、でも・・・・・・」
「だから、大丈夫だって........ほら、早く寝てっ。じゃあね、お休みっ」
リーネはラクレスを強引に寝かせると、そのまま部屋を出て行った。
(何なんだろう?この感じ..........無意識のうちに、ボーっとしてしまう........ラクレスにあんなこと言ったけど、私も疲れてるのね..........)
リーネは違和感に気づいていた。
そして、これを疲れからきているものだと考えていた。
いや........そう願っていた。
次の日、オルロ・リットンは三人に新たな任務を告げる。
「今日もお前らには海岸に行ってもらう。昨日倒したとはいえ、まだ敵が来るかもしれない。そのための見張りをしてほしい。もちろん、見つけ次第倒してほしいがな。ではっ、健闘を祈る。」
そうして、三人は再び海岸に向かった。
「ふんっ、今日こそは骨のあるやつが来てほしいぜっ。」
ロッド・ゲルマンはにやけながらそう言った。
すると、
「はぁ、これだから変態は..........あのね隊長、敵は来ない方が良いのっ!!!」
「はっはっは、何を言っているんだお前は。敵は来た方が良いだろ?そうしないと斬れないからな。」
「はぁ、もう疲れる。ね?ラクレス。」
「........あ、あぁ」
ラクレスは何かを考えていたのか、少し反応に遅れたが返事をした。
「ねぇラクレス、本当に聞いてた?」
「あぁ、聞いてたさ。」
「じゃあ、何て言った?」
「それは..........それより、早く行かないと」
そうしてラクレスは走り出した。
こんな生活が続けばいい。
誰もがそう思っていた。
しかし、願いとはそう簡単には叶わないから願いなのである。
だが、乱世の中での平和など、そう簡単に長くは続かないのである。
「よくぞ、人間共を撃退してくれたな。ゲルマン、リーネ、ラクレス。」
「「「はっ」」」
「お前らは一旦次に備えて休んでくれ。人間共が再び来るかもしれないからな。」
「「「はっ」」」
「それよりリットン、あいつらが乗ってきた船はどうしてる?」
「それについては、現在回収を試みています。今日中には持ってこれるかと。」
「さすが我が矛、仕事が早い。」
「恐悦至極に存じます。」
「ささ、お主らは早く休んでくれたまえ。」
城での謁見の後、ラクレス、ロッド・ゲルマン、リーネの三人は一息ついてそれぞれの部屋で休息を取った。
「ラクレス........聞きづらいんだけど..........一つ聞いてもいい?」
リーネは何か心に引っかかるものがあり、ラクレスの部屋を訪ねていた。
「あぁ、何でもいいよ。」
「さっきの大男が言っていたマルコ卿って、一体何のことなの?」
リーネはマルコ卿についてラクレスに聞いた。
ラクレスは少し考えたあと、窓から外を見つめながら語り始めた。
「実は...........俺、ここに来る前にエルフの国でマルコ卿って奴と戦ったんだ.....あいつは強かった。正直、死にかけたよ。」
「そんな……」とリーネは驚くが、ラクレスは軽く笑ってみせた。
「笑い事じゃないわよ!」とリーネが呟くと、ラクレスが「なんか言ったか?」と聞くが、
「何も言ってないわよっ。あんた頭かしくなったんじゃないの?それよち聞かせてよ。マルコ卿って奴とあんたの関係..........」
「関係も何も、ただやり合っただけさ。」
「そんなわけないでしょ?何年あんたと一緒に居ると思ってんの?」
「..........」
ラクレスはしばらく黙り込むが、リーネの真剣な目に押され、ついに真実を打ち明ける。
「マルコ卿が死ぬ間際、俺に話してきたんだ。あのホーレン・グレイって奴がマルコ卿の母親を殺したって。だから.........俺はそのことが引っかかってた。敵討ちというわけじゃないが、彼が寂しそうにしていたのが忘れられなくてな...........」
「..........そうなんだ、じゃあも一つ聞いていい?あの大男が赤馬教とか何とか言ってたけど、あんたは何かわかる?」
「それについては..........よく分かんない。でも、ここに来る前に故郷の村で青馬教のヨハネ卿を名乗る人物と会った..........」
「........ヨハネ卿?それよりあんた、帰ってたのね..........」
ラクレスはさらに考えを巡らせる。
「それに、マルコ卿は白馬教を名乗っていた。白、青、赤........他にもいそうだな..........」
「そうね........でも、マルコ卿って奴は倒したんでしょ?なら、他もいけるんじゃない?」
「いや........村であったヨハネ卿を名乗る人物はマルコ卿の比じゃなかった........今の俺ではどうあがいても勝てないだろうな..........」
そう言いながらも、ラクレスの心の中にはひとつの希望が芽生えていた。
(でも、あの魔法を使えば、もしかしたら..........)
SS級魔法――それを使えば勝てるかもしれないという思いが頭をよぎる。
「んっ?........どうした?リーネ」
ラクレスはボーっとしているリーネに言った。
「........んっ?あ、あぁ、私?」
「あぁ、どうしたんだよ、ボーっとして........」
「ボーっと何かしてないわよっ、ラクレス、あんた疲れてるんじゃない?」
「........いや、でも・・・・・・」
「だから、大丈夫だって........ほら、早く寝てっ。じゃあね、お休みっ」
リーネはラクレスを強引に寝かせると、そのまま部屋を出て行った。
(何なんだろう?この感じ..........無意識のうちに、ボーっとしてしまう........ラクレスにあんなこと言ったけど、私も疲れてるのね..........)
リーネは違和感に気づいていた。
そして、これを疲れからきているものだと考えていた。
いや........そう願っていた。
次の日、オルロ・リットンは三人に新たな任務を告げる。
「今日もお前らには海岸に行ってもらう。昨日倒したとはいえ、まだ敵が来るかもしれない。そのための見張りをしてほしい。もちろん、見つけ次第倒してほしいがな。ではっ、健闘を祈る。」
そうして、三人は再び海岸に向かった。
「ふんっ、今日こそは骨のあるやつが来てほしいぜっ。」
ロッド・ゲルマンはにやけながらそう言った。
すると、
「はぁ、これだから変態は..........あのね隊長、敵は来ない方が良いのっ!!!」
「はっはっは、何を言っているんだお前は。敵は来た方が良いだろ?そうしないと斬れないからな。」
「はぁ、もう疲れる。ね?ラクレス。」
「........あ、あぁ」
ラクレスは何かを考えていたのか、少し反応に遅れたが返事をした。
「ねぇラクレス、本当に聞いてた?」
「あぁ、聞いてたさ。」
「じゃあ、何て言った?」
「それは..........それより、早く行かないと」
そうしてラクレスは走り出した。
こんな生活が続けばいい。
誰もがそう思っていた。
しかし、願いとはそう簡単には叶わないから願いなのである。
だが、乱世の中での平和など、そう簡単に長くは続かないのである。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
召喚と同時に「嫌われた分だけ強くなる呪い」を掛けられました
東山レオ
ファンタジー
異世界に召喚された主人公フユキは嫌われたら強くなる呪いをかけられた!
この呪いを活かして魔王を殺せ! そうすれば元の世界に帰れる、とのことだが進んで人に嫌われるのは中々キッツい!
それでも元の世界に帰るためには手段を選んじゃいられない!……と思ってたけどやっぱ辛い。
※最初主人公は嫌われるために色々悪さをしますが、色んな出会いがあって徐々に心を取り戻していきます
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
宮廷魔術師のお仕事日誌
らる鳥
ファンタジー
宮廷魔術師のお仕事って何だろう?
国王陛下の隣で偉そうに頷いてたら良いのかな。
けれども実際になってみた宮廷魔術師の仕事は思っていたのと全然違って……。
この話は冒険者から宮廷魔術師になった少年が色んな人や事件に振り回されながら、少しずつ成長していくお話です。
古めのファンタジーやTRPGなんかの雰囲気を思い出して書いてみました。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる