罪なき人の成り上がり

今崎セイ

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22話 跡

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ソウイの案内によってラクレス達はエルフの国を目指していた..........

「よし、今日はここまでにしよう。暗くなったら迷ってしまうかもしれないからな。」ソウイは暗くなってくると、そう言って切り上げた。

「エルフでも迷うのか?」ラクレスは疑問に思ったことを口にした。

するとソウイは、「迷うさ。なんせ、この大陸の9割はそこら辺に生えている巨大樹で埋め尽くされているからな。」と、当り前だろと言わんばかりの顔で答えた。

「俺達、本当にエルフの国に行けるのか?」そんなソウイを見てラクレスは不安になり言った。

しかし、「それは大丈夫だ。なんせ、エルフの国には目印があるからな。」その不安はすぐに払拭された。

「目印?」

「あぁそうだ。目印だ。」

「何が目印なんだ?」

「世界樹だよ。」

「世界樹?」

「あぁ、世界で一番大きいと言われている木だ。その木だけ群を抜いてでかい。そして、その世界樹の麓にあるのがエルフの国だ。さぁ、今日はもう寝るぞ。明日は朝一から出発するからな。」

ソウイがそう言うと、全員が就寝した。

しかし、眠れない人が一人いた。

彼女はみんなが眠りについた後、一人空を眺めていた。

そんな彼女に「眠れないのか?」と、暗闇の中から声をかける男が現れた。

「ラクレスお兄ちゃん?」メアリーのうれしさと不安が混じった声が辺りに響いた。

「ここにいたか」ラクレスはマリーを見るとほっとした顔で言った。

ラクレスはメアリーがいないことに気づき、暗闇の中探していたのだ。

「眠れないのか?」

「......うん」

(自分の国が近づくごとに不安が大きくなっているんだろうな......)
ラクレスはそう思いながら、メアリーを見ていた。

すると、メアリーが口を開いた。

「私、心配で......。国が近づくにつれて......」

メアリーの言葉が途中で途切れてしまった。

それほどまでに、メアリーは気が気でなかった。

そんな姿を見たラクレスはメアリーを震えている手を握り囁いた。

「メアリー、心配するな。俺がお前の国から人間共を追い返してやる。それに、ビアンカさんやソウイ達もいる。おまけで、あの変態だっているんだ。万が一でも負けないよ。」

ラクレスのその言葉を聞いて、メアリーがラクレスの胸に抱きついた。

そして、

「あ...りが......とう......」と、震える声で言った。

ラクレスはそんなメアリーを優しく抱きしめた。

そして、ラクレスはその態勢のままメアリーを見た。すると、頬をつたる涙が月の光に反射して輝いていた。

その光景を見たラクレスは少し微笑んで、決戦に向けてより一層気合を入れた。

その後はメアリーを眠るのを待って、ラクレスも眠りについた。

そうして、夜が明けた。

ラクレス達は、日の出とともに再び歩き出した。

それから、数時間。

「そろそろだ。あと、一時間もすればつくだろう。」

ソウイの言葉に、その場に緊張感が走った。

「ついに、エルフの国か......」ラクレスが呟いた。

すると、「ふっふっふ、楽しみですね~。エルフの国がどんなところなのか。」あいつが緊張感のかけらもない態度で言った。

しかし、その態度がビアンカの癇に障り、「おいっトーク。まだ、人間が攻めてきているかもしれないんだぞ。気を抜くなっ。」と怒られたが、

「もちろん、そのつもりです。」と、トークはいつにも増して集中していた。

そして、エルフの国が近づくにつれてメアリーをはじめとする三人衆の顔もどんどん曇ってきている。

すると.....

「誰かいるぞ。」ラクレスが突然ボソッと言った。

「ふっふっふ、弟子も気づきましたか。」

そして、ラクレスの言葉に呼応するようにトイ・トークも言った。

「誰かって、こんなところには誰もいないぞ?」

しかし、まだ気づいていないソウイが戸惑いながら言った。

「いや、あそこにある岩の所だ。」

ラクレスはそう言うと、左斜め前に見える大きな岩を指さした。

「たしかに......誰かいるな。」ラクレスの指さした方向を見たビアンカもその姿を確認した。

そう言うとソウイは、「狂戦士も見えるのか?どれどれ、あれは......」とその岩の方を見た。

「どうした?ソウイ。」驚きを隠せていない様子にソウイにトワが言った。

「トワ、お前も見てみろ。人がいる痕跡がある。」

周りが慌てふためく中、メアリーが口を開いた。

「何が見えたのソウイ?」

「はっ。あの大きな岩の前には火が起こされた跡がありました。それに、足跡も.....」ソウイは岩の方を警戒しながらメアリーに言った。

「じゃあ、本当に誰かがいるの?」メアリーはソウイにそう言うと、顔が少し強張った。

「えぇ。その可能性が高いです。メアリー様、我々だけで行ってくるのでここで待機をしていてください。トワ、ナーヤ、メアリー様を頼んだぞ。」ソウイはそう言うと岩の方に向かって静かに歩き出した。

「おう。」「分かったわ。」

「私もここに残ろう。」トワとナーヤに呼応するように、ビアンカが口を開いた。

「ビアンカも残ってくれるの?」メアリーは嬉しそうにビアンカを見た。

「あったりまえだ。メアリーは私が守ってやる。」

「ふっふっふ、では、私も隊長をお守りするためにここに残ります。」トークのビアンカの呼び方が隊長に変わった。

さすがのトークでも、ビアンカのげんこつに耐えられなくなっていたのだろうか....

真相は定かではないが......

「お前は行けっ!!!私の守りなんかいらないだろ。」

「ですが、私と隊長は二人で一つの運命共同体では.....ぐはっ!!!!!!」

トイ・トークは拳を貰った。

「いいから行けっ!!!」

「ヒ~~~。」

「ソウイ、俺も行く。」トークとビアンカをよそにラクレスが口を開いた。

ソウイは、「頼む。よし、行くか。」と言い、ソウイ、ラクレス、トークの三人は大岩目指して音を立てない様に歩き出した。

そして、ラクレスは出会うのであった。

ラクレスの運命の歯車を狂わせうる可能性のある人物に。
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