銀色のクマ

リューク

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トイレの個室

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 奈美と話さなくなってから三週間ほどが過ぎた。もしこのままずっと女の子と話せなかったらどうしよう。そう不安に思いつつ、モヤモヤを振り払おうと「なーにやってんの。早くゲームしようよ」と三浦に声をかけた。

 すると「あーわりぃ、俺達サッカーやるんだ」と言って、教室を出て行ってしまった。最近ずっとゲームを一緒にやっていたから、急に取り残されたような気がした。しかし「男子なんだから、たまにはサッカーしたい日もあるかな」と思い、久しぶりに一人でレースゲームをやり始めた。ひたすら一位で色んなコースを独走する。変化があるのは、マシンの前に広がる景色だけだった。

 三浦達はそれから毎日サッカーをやり続けた。もしかしてあたしがずっと連勝していたからかな、と思った。だからつまらなくなって、サッカーをやり始めたのかもしれない。スマホを開いて、別のゲームアプリをダウンロードした。男子に人気があると聞いていたゲームだ。

 ある日の昼休み、ドキドキしながら三浦に近づいた。

「ねぇ三浦、このゲーム好きって言ってたよね。今日からこれやらない?」
「あ、ごめん。無理だわ」
「え? でも……」と言いかけた時、「おーい早くしろよー」と別の男子が廊下から呼んだ。三浦は「おーう」と言いながら席を立ち、ボールを持った男子を追いかける。三浦が離れていくにつれ、周りの空気も持っていかれるような感じがした。

 ゆっくりと教室の音が遠くなる。マンガを片手におしゃべりをする女子たち。カード交換やサッカーで盛り上がる男子たち。急にキーンと頭と耳が痛くなる。気がつくと、あたしはトイレの個室の中に立っていた。
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