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番外編2

断罪3〜ローゼリア視点

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『あなたがジョー氏?……依頼内容は、噂を流して欲しいの。噂は3つ……』

部屋の中央に映し出されたジョー氏とフードを被った貴族令嬢と思われる女性。

今、巷に流れた噂の内容を指示していた。

今の角度からだと人物特定は難しいが、映像の最後の瞬間、フードから覗いた顔は紛れもなくこの会場にいる人物だった。

会場にいる他の会員も『あの方よね?』とヒソヒソ話が聞こえ始める。

「……な、何よっ?!そんなにジロジロ見ないで!はしたないっ。私が何をしたと言うの?単に噂を流しただけじゃないっ……!」

私とアレク様がその人物に近づいた。

「単に噂ですって……?王家に多大なる迷惑をかけ、公爵家と伯爵家を陥れることが単なる噂ですか?ステファニー様?」

王室を虚偽の噂で陥れようとしたのだ。

(不敬罪だけでは済まされないはず……っ!)

ステファニー様が無言で私達を睨みつける。

「な、何よ!単なる伯爵令嬢なくせに。そもそも王妃を応援する会なんてものがおかしいのよ!あの女のどこが尊敬に値するわけ?!私の大好きなアレクサンダー様には相手にもされなかったのに、王妃になるなんて。あの女がいたから私はアレクサンダー様と婚約できなかったのよ!上手く別れたから今度はチャンスだと思ったのに。今度は横からまた別の女が出てきて。そうよ、あんたよ!王妃を応援する会ですって?!冗談じゃないわよっ?」

ステファニー様が一気にまくしたてると会場はシーンと静まり返る。

その時、部屋の扉がカチャリと音を立ててゆっくりと開いた。





「皆様、ごきげんよう」

そこに現れたのは話題の人物でもあるリリアナ王妃だった。

「り、リリアナ王妃っつ!わざわざお越しいただいたのですか?」

「……親友のローゼリア様が奮闘されているのですから、私も応援にと思いまして。それに、王妃を応援する会の皆様に御礼をと思い参りましたわ!」

「あ、ありがとうございますっ!」

「……今、扉の外ですべて聞かせて頂きましたわ。ステファニー様。ご無沙汰しております。アレク様とのことは残念でした。が、それを理由に騒動を引き起こすことは断じて許せません。既に王宮から騎士団が派遣されておりますので、これから一緒に行っていただきます。その後は追って調査させて頂きます」

リリアナ王妃がそう述べると、扉の外で待機していた王宮騎士団が数名、ステファニー様を取り囲んだ。

「覚えてなさいよっ!許さないからっ!」

私を睨みつけながら騎士たちに引きずられるように部屋を出て行った。

「……お見事でした。ローゼリア様」

その後、リリアナ王妃はせっかく来たから、と会員と交流して王宮に帰って行った。
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