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番外編2
連鎖
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店構えからして個人が経営しているのだろう。
ショーウィンドウからは薔薇をあしらった小物が顔を覗かせていた。
(可愛い感じのお店よね。女のコが好きそうな……。店主もきっと可愛らしい方なのね……)
私が想像に耽っていると、シリカが店から出てくるのが見えた。
「り、リリアナ様っ、少し探って参りましたっ!」
足早に駆け寄ってきたシリカが満面の笑みで店内の様子を語り始める。
薔薇を基調とした雑貨屋であること。
店主は某貴族がオーナーで、雇われているだけなこと。
シリウスがお忍びで来たのは間違いないことだった。
「……ちなみに、雇われ店主は近くの街に住む平民の娘だそうで、名はローゼリアだそうです。確かに可愛らしい方でしたが、陛下のことを話す彼女に不自然な言動はなく、愛人かと言われたら違うな、と言う感じですね。まあ、初めて話しをしただけなのであれですが……」
店主によるとシリウスが訪れた理由は分からないのだそうだ。
「では、やはり私が直接行ってみるしかないわね……」
あのシリウスが何の用事もなく訪れる場所ではない。
何かがあるのだ。
「アンドリュー、一緒に行かない?」
私はアンドリューを連れて雑貨店の扉を開けた。
「いらっしゃっませ」
ブロンズヘアーを緩くみつ編みにした店主と思われる女性と目が合う。
「素敵なお店ですね。外から見て気になって……。ちょうど義妹の誕生日だから何かプレゼントを探したくて……」
シリカの報告通り、薔薇の雑貨がところ狭しと並んでいた。
「そうでしたか。わざわざありがとうございます。それでしたら、こちらはいかがでしょうか?」
店主が薦めてきたのは、薔薇がふんだんにあしらわれたカップとソーサーのセットだった。
「この薔薇はオーナーが自らデザインしたオリジナルのデザインなんです。とても人気で今は貴族のお茶会にも使われているそうですよ。オーナーの領地が薔薇の産地なんです。こちらの薔薇ジャムと薔薇紅茶をセットにプレゼントされる方が多いですよ」
(……薔薇が産地?私が知る限りでは、ウィーン伯爵領くらいしかないけれど……)
「あの、もしご存知でしたらで構わないのだけれど、オーナーはウィーン伯爵領の方なのかしら?」
「えっ?ウィーン伯爵領のことをご存知の方、二人目です!オーナーが喜びますっ。このお店、実はオーナーとこの領の貴族の方が恋仲で、それで両方の領地のためと2人の逢瀬のために作られたらしくて…。あ、内緒ですよ?」
恐らく一人目はシリウス。
何らかのきっかけでこの店を知って訪ねてきたーー。
「オーナーはよくこちらにはいらっしゃっるの?」
「そうですね。はい、月に数回、商品の補充にいらっしゃっいますよ。そういえば、今日もこれからお見えになる予定で……」
ウィーン伯爵領の貴族に、アレク様の公爵領。
そして、何故か訪ねてきたシリウス。
噂の伯爵家の未亡人ーー。
(全部繋がりそうね……)
ぼんやりとした輪郭が見え始めた時、店の扉が開き一組の男女が現れた。
私と視線が合うやいなや、男性がいきなり駆け寄ってきた。
「ーーは、母上っ!」
アンドリューが咄嗟に私の前に身を乗り出す。
「……大丈夫ですよ。この方はあなたもよく知る人物ですよ?」
私がアンドリューを後に下げると、その人物に視線を投げ掛けた。
ショーウィンドウからは薔薇をあしらった小物が顔を覗かせていた。
(可愛い感じのお店よね。女のコが好きそうな……。店主もきっと可愛らしい方なのね……)
私が想像に耽っていると、シリカが店から出てくるのが見えた。
「り、リリアナ様っ、少し探って参りましたっ!」
足早に駆け寄ってきたシリカが満面の笑みで店内の様子を語り始める。
薔薇を基調とした雑貨屋であること。
店主は某貴族がオーナーで、雇われているだけなこと。
シリウスがお忍びで来たのは間違いないことだった。
「……ちなみに、雇われ店主は近くの街に住む平民の娘だそうで、名はローゼリアだそうです。確かに可愛らしい方でしたが、陛下のことを話す彼女に不自然な言動はなく、愛人かと言われたら違うな、と言う感じですね。まあ、初めて話しをしただけなのであれですが……」
店主によるとシリウスが訪れた理由は分からないのだそうだ。
「では、やはり私が直接行ってみるしかないわね……」
あのシリウスが何の用事もなく訪れる場所ではない。
何かがあるのだ。
「アンドリュー、一緒に行かない?」
私はアンドリューを連れて雑貨店の扉を開けた。
「いらっしゃっませ」
ブロンズヘアーを緩くみつ編みにした店主と思われる女性と目が合う。
「素敵なお店ですね。外から見て気になって……。ちょうど義妹の誕生日だから何かプレゼントを探したくて……」
シリカの報告通り、薔薇の雑貨がところ狭しと並んでいた。
「そうでしたか。わざわざありがとうございます。それでしたら、こちらはいかがでしょうか?」
店主が薦めてきたのは、薔薇がふんだんにあしらわれたカップとソーサーのセットだった。
「この薔薇はオーナーが自らデザインしたオリジナルのデザインなんです。とても人気で今は貴族のお茶会にも使われているそうですよ。オーナーの領地が薔薇の産地なんです。こちらの薔薇ジャムと薔薇紅茶をセットにプレゼントされる方が多いですよ」
(……薔薇が産地?私が知る限りでは、ウィーン伯爵領くらいしかないけれど……)
「あの、もしご存知でしたらで構わないのだけれど、オーナーはウィーン伯爵領の方なのかしら?」
「えっ?ウィーン伯爵領のことをご存知の方、二人目です!オーナーが喜びますっ。このお店、実はオーナーとこの領の貴族の方が恋仲で、それで両方の領地のためと2人の逢瀬のために作られたらしくて…。あ、内緒ですよ?」
恐らく一人目はシリウス。
何らかのきっかけでこの店を知って訪ねてきたーー。
「オーナーはよくこちらにはいらっしゃっるの?」
「そうですね。はい、月に数回、商品の補充にいらっしゃっいますよ。そういえば、今日もこれからお見えになる予定で……」
ウィーン伯爵領の貴族に、アレク様の公爵領。
そして、何故か訪ねてきたシリウス。
噂の伯爵家の未亡人ーー。
(全部繋がりそうね……)
ぼんやりとした輪郭が見え始めた時、店の扉が開き一組の男女が現れた。
私と視線が合うやいなや、男性がいきなり駆け寄ってきた。
「ーーは、母上っ!」
アンドリューが咄嗟に私の前に身を乗り出す。
「……大丈夫ですよ。この方はあなたもよく知る人物ですよ?」
私がアンドリューを後に下げると、その人物に視線を投げ掛けた。
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