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番外編2
王妃の事情〜シリウス視点
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それはたまたま少し時間が取れたので王妃の部屋でお茶でもしようと立ち寄ったに過ぎなかったのだが……。
扉越しに聞こえてきたリリアナとシリカの会話に声が出なかった。
扉越しに知らせをしようとした侍従を制し、執務室に帰る旨を告げた。
「……あの噂は火消ししたのではなかったのか?」
執務室に戻り侍従に投げかけながらも、自分に投げかけていた。
高く積まれた決済待ちの書類の脇で頭を抱えた。
(ああ、リリアナに知られていたとはーー!)
「……はぁ。王妃は実家に帰ると言っていたな……」
「……後ほどシリカ嬢が申請書を持参するかと」
まさかあの噂がリリアナの耳に届いていたとはーー。
考えてたくなかったが、事実なのだろう。
おまけに、愛人がいたら全力で応援すると言っていた。
(……はぁ。こんなことになるなら、市井にも、あの伯爵家にも行かなければ良かった。が、行ったことに後悔はない。しかし……)
噂はもちろん事実ではない。
いや、市井に行き、とある伯爵夫人に会ったのは事実だ。
しかし、決して愛人なんかではないのだ。
更に、アンドリューの出自を問う噂まで流れる始末。
誰かが意図的に流しているはずだ。
「……噂の出処はつかめたか?」
「それがなかなか尻尾を出しませんで……」
つまり、噂だけが一人歩きし、リリアナを辱め、リリアナの王妃としての資質を問うと言った最悪の事態に陥ってしまった。
おまけに、このタイミングで実家に帰るリリアナ。
大臣達からもなんらかしらの声が上がるかも知れなかった。
「とにかく急いで対応してくれ」
今は全体が分からないから待つしかない。
その後はもちろんーー 一網打尽にするだけだ。
扉越しに聞こえてきたリリアナとシリカの会話に声が出なかった。
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「……後ほどシリカ嬢が申請書を持参するかと」
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