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対決
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王宮の地下牢は、想像していた以上に暗くてひんやりしていた。
ーー暗闇と静寂と。
殿下と側近が持つランプの灯りを頼りに姉の独房へと向かう。
あの姉が……まさかこんなところにいるなんて……。
私のあの賭けが姉の人生を狂わせた。
ううん。
もともと、軌道をずらしたのは姉だ。
それが私の偽装自殺で、軌道が外れたのだ。
(……私はずっと生まれてから軌道が外れてたけどね……)
「リリアナ嬢、ミリアーヌはここだ。少し離れたところにいるから、何かあれば呼んで欲しい」
私は頷きランプを受け取った。
……姉はどんな顔をするだろうか?
私は独房の前に立ち、姉の様子を伺った。
姉は床に蹲り顔を伏せていたが、私の気配に気がついたのか私を見上げると、いきなり立ち上がった。
「……あんた、生きてたの!何でよ!」
激しい怒りのエネルギーがぶつけられる。
「……死ねば良かった? 今日、移送されると聞いたから来たの」
牢にいる姉は少し前までの妖艶さも、華やかさもなかった。ただ、欲に溺れ己のままに生きた生きざまが現れていた。
「あんたが飛び降りなんかしなければ……!!」
姉はあのままの生活を過ごせた?
(……そんなことあるわけない……!!)
「……公爵家はダニエルと殿下が守って下さるから心配しないで。私はアレクと離婚するから。まあ、姉さまにとってはどうでも良いことかも知れませんが……」
「……何よ!何なのよ!私が王妃になるのよっ!みーんな私を敬うの!私は凄いの!偉いのっ!」
姉はまるで壊れた人形のように叫び続ける。
その声だけが地下牢に響き渡る。
(……可哀想な人……)
「……では姉さま、ごきげんよう。もう会うことはないかと思いますが」
「……早く消えろっ!無価値なあんたなんか消えろ!愛されない女は消えろっ!」
……本当に私は愛されない傷モノだしね。
私は姉を振り返ることなく地下牢を後にした。
あの姉さまがあんな姿に……。
哀れでしかなかった。
ーー暗闇と静寂と。
殿下と側近が持つランプの灯りを頼りに姉の独房へと向かう。
あの姉が……まさかこんなところにいるなんて……。
私のあの賭けが姉の人生を狂わせた。
ううん。
もともと、軌道をずらしたのは姉だ。
それが私の偽装自殺で、軌道が外れたのだ。
(……私はずっと生まれてから軌道が外れてたけどね……)
「リリアナ嬢、ミリアーヌはここだ。少し離れたところにいるから、何かあれば呼んで欲しい」
私は頷きランプを受け取った。
……姉はどんな顔をするだろうか?
私は独房の前に立ち、姉の様子を伺った。
姉は床に蹲り顔を伏せていたが、私の気配に気がついたのか私を見上げると、いきなり立ち上がった。
「……あんた、生きてたの!何でよ!」
激しい怒りのエネルギーがぶつけられる。
「……死ねば良かった? 今日、移送されると聞いたから来たの」
牢にいる姉は少し前までの妖艶さも、華やかさもなかった。ただ、欲に溺れ己のままに生きた生きざまが現れていた。
「あんたが飛び降りなんかしなければ……!!」
姉はあのままの生活を過ごせた?
(……そんなことあるわけない……!!)
「……公爵家はダニエルと殿下が守って下さるから心配しないで。私はアレクと離婚するから。まあ、姉さまにとってはどうでも良いことかも知れませんが……」
「……何よ!何なのよ!私が王妃になるのよっ!みーんな私を敬うの!私は凄いの!偉いのっ!」
姉はまるで壊れた人形のように叫び続ける。
その声だけが地下牢に響き渡る。
(……可哀想な人……)
「……では姉さま、ごきげんよう。もう会うことはないかと思いますが」
「……早く消えろっ!無価値なあんたなんか消えろ!愛されない女は消えろっ!」
……本当に私は愛されない傷モノだしね。
私は姉を振り返ることなく地下牢を後にした。
あの姉さまがあんな姿に……。
哀れでしかなかった。
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