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覚醒

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「……おはよう、リリアナ。今日は気分はどうかな?目立った傷はもう治ったし、骨折もほぼ問題ないそうだ。背中の傷も目立たなくするための薬が手に入ったからシリカに渡しておくよ」

『……傷が目立たなくなる薬……。ありがとう?なのかも知れないけど、婚約時代からもらった贈り物が微妙な花言葉の花と、傷を治す薬ってどうなのよ?アレク?姉さまには何か送ってたみたいだし……』

何ともアレクとのズレを感じる。

ううん。

きっと、私は心のどこかにアレクに対する愛情があって期待してるんだと思う。

はぁ。

何ともじれったい……。

「それと、その……。ミリアーヌの処分が決まったよ。北の修道院に生涯幽閉される。あと、実家の公爵家はリリアナの功績も加味されて、領地の1/3の没収と、現公爵夫妻の早期爵位返還になったよ。リリアナの弟ダニエルが成人するまではシリウス殿下がダニエルの後見人を務めるそうだ」

『……妥当な処分ね。殿下はやはり優秀だった。ダニエルも優秀だからあと数年なら問題ないでしょう』

目覚めたら一度殿下にお礼を言わなくては。

う?

ううう?

急に手足がある感覚が全身を貫く。

(……もしかしたら覚醒?)

体温をゆっくり感じる。

間違いない、覚醒するーー!

「……それと、私の処分も決まった。領地1/4の没収と、2ヶ月の謹慎処分だ」

『……そう』

そして次の瞬間、目が大きく開かれた。

『……私、覚醒した!』

ベッド際に座り込み、私の手を握り締めていたアレクが目を開けた私以上に、目を大きく見開いたまま固まっていた。

「……あ、アレク?」

(……ちゃんと話せた!)

違和感なく口が動く。傷の痛みも感じなかった。

「り、リリアナ!リリアナ!」

喜びなのか?安堵なのか?

アレクが私をギュっと抱き締める。

「……アレク、痛い!」

「……ご、ごめん。とにかく医者、医者を呼んでくるから!」

慌てて飛び出していこうとするアレクに、シリカを呼ぶよう伝えた。
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