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愛人

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衝撃の初夜以降、私たちはひたすらアレクの愛人の存在を確認すべく調査を行った。

毎晩、主人が訪れることのない部屋で二人の報告を聞いていた。

二週間ほどして、自分の中で出た結論があった。

(……アレクの愛人は、あの人ね……)



「ねぇ?ユン、シリカ。愛人の目星もついたし、現場を押さえたいのよね」

二人は私の発言に驚くも、すぐに納得してくれた。

「あの女、確か今日来るはずだから……。最終確認しに行くわよっ!」

あの女が来た、と別の侍女が丁度呼びに来たので笑顔で出迎えに向かった。

「ミリアーヌ姉さまっ!」

私は姉を慕っている素振りで近づいた。

「リリアナ、元気だった?問題はない?」

「……アレクに良くしてもらっているから、特に問題はないわ。何かあればお姉さまにお伝えします。ところで、今日も何か用事が?」

「……あなたの顔を見るに、アレクに話があって……」

「……そうなの?アレクは執務室みたいよ?」

私は姉にニッコリと満面の笑みで答えた。

「…あなたの顔もみたし、アレクと話をしてくるわ」

王太子妃教育の合間に足繁く、妹に会うふりをして夫に近づくまるで寄生虫……!

(美しいのはだけね……)

私は二人を二人だけの世界にするために自室に籠るふりをする。

「私はちょうど家令から領地のことを教わる予定だから失礼するね」

「……私のことは構わないで。用事が済んだら一人で帰るわ」

「……では姉さま、どうぞごゆっくり」

姉はその足でアレクの執務室に向かった。
それを見届けるべく、こっそり執務室に向かう。

お茶を届けるふりをするため、先にシリカが厨房で手配しているはずだ。

私はシリカと合流し、執務室の扉の前でお茶セット片手に聞き耳を立てた。


「……会いたかったわ、アレク!」

 聞き間違えるはずがなかった。
姉ミリアーヌの声……!

(まさか私が立ち聞きしてると思わないなんて……。私……信頼されているのか、バカにされているのか…)

ため息しかでない。

「……私も会いたかった!ミリアーヌ」

実の姉の名前を平然と呼ぶ夫にもはや嫌悪感しかない。

会話からして抱きあっているのか?キスでもしているのか?

「……まあこうして会えるのもあの子のお陰ね?何の取り柄も使い道もないと思っていたけど…。さすが私の妹だわ」

「……そうだね。私たちがこうして会えるのもリリアナが隠れ蓑になっているからだしね。命の恩人である君とは一緒になれない運命だけど、こうして会えるだけで私は幸せだよ」

ーー隠れ蓑?
ーー命の恩人?

(……まさか命の恩人は自分だとアレクに伝えていたの?)

二人の会話と、初夜にアレクに言われた言葉を思い出す。

(……姉が嵌めたのね……!)

姉はおそらくだとアレクに言ったのだ。

「あっあっあぁぁーん!アレク、気持ちがいいわ……!」

いつのまにか二人の行為が始まり、不快でしかない声が漏れ聞こえる。

ーやるべきことが分かったわ!

「……ようやく私、目が覚めたみたい。シリカ、ユン部屋に戻るわよ」

私は唇を噛み締めながら二人に気付かれないよう静かに涙を流した。

(私の人生、返してもらうから!)

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