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アンドレア様が、リーゼロッテ様との営みのために屋敷を留守にして早くも3ヶ月が経つ。
(……月日の流れが早いわね)
だいぶ膨らんできたお腹に手をあてる。
あれ以来、アンドレア様とは会っていない。
案の定、リーゼロッテ様が遣わしたと思われる下働きが、料理に堕胎薬を混ぜたことが判明した。
早くに気づいたため、特に問題はなかったが、これからも油断出来ない。
自分の飲食や、衣類などには更なる細心の注意が必要だ。
そんな中で、何とラブリーナの化粧品シリーズとお茶の予約販売がスタートしたのだ。
本当に嬉しくて、嬉しくて……!
商会経由で、多数の注文が入り、侯爵領も大忙し、公爵家の簡易工場も大忙しだった。
一番人気は、化粧水で、次がラブリーナティーと、ラブリーナの日焼け止めだ。
肌に弾力を持たせみずみずしくなり、色が白くなると評判は上々だった。
ラブリーナの対応に追われている頃、王宮のアンドレア様から知らせが入った。
リーゼロッテ様が懐妊した、と。
が、王女が小さいためリーゼロッテ様よりまだ近くにいてほしい、と懇願され帰れないと言う。
私は特に何の感情も湧かなかった。
◇◇◇
そんなある日、マクシミリアン殿下がお忍びで公爵家にいらした。とても大事な話があると言う。
(……はぁ。妊婦に勘弁してほしいわ……)
絶対に悪い話でしかないため、聞くほうも覚悟が必要だった。
(……仕方ない、いきますか)
私は殿下の待つ部屋に向かった。
「公爵夫人……いや、ローゼ殿。久しいな。体調はどうだ?」
「おかげさまで安定しています。ありがとうございます」
「……すまないな、ローゼ殿も妊娠しているのに……」
「……仕方ないですわ、お仕事ですから。ところで殿下、内密なお話とは?」
私は人払いをすると切り出した。
「……実は……。謝らなくてはならないことがある」
「…うふふ。殿下とお会いするといつも謝罪ですね」
「……そうだな。話は妃、リーゼロッテのことなんだが……。実は……」
そこからまた壮大な話が続いた。
リーゼロッテ様が昔からアンドレア様を好きだったこと。リーゼロッテ様が、ずっと避妊薬を飲んでいたこと。医者を買収し、殿下があたかも原因である、と診断したこと。
「……つまり……。すべてはリーゼロッテ様が仕組んだこと?」
「……そうなるな」
「……はぁ。ちなみに、アンドレア様はご存知ですか」
「……いや、知らない」
「……そうでしたか。では、どうするおつもりですか」
「……リーゼロッテがまた懐妊した。契約通りアンドレアを解放する。ただ、出産まではリーゼロッテの行動に従って欲しい。しばらく嫌な思いをさせるが、我慢して欲しい。私も、ローゼ殿のような相手が妃だったらどんなに良かったことか……」
「……それはその……。お褒め頂きありがとうございます?」
それだけ告げると、殿下は公爵家を後にした。その背中が恐ろしい程に寂しそうだった。
(……月日の流れが早いわね)
だいぶ膨らんできたお腹に手をあてる。
あれ以来、アンドレア様とは会っていない。
案の定、リーゼロッテ様が遣わしたと思われる下働きが、料理に堕胎薬を混ぜたことが判明した。
早くに気づいたため、特に問題はなかったが、これからも油断出来ない。
自分の飲食や、衣類などには更なる細心の注意が必要だ。
そんな中で、何とラブリーナの化粧品シリーズとお茶の予約販売がスタートしたのだ。
本当に嬉しくて、嬉しくて……!
商会経由で、多数の注文が入り、侯爵領も大忙し、公爵家の簡易工場も大忙しだった。
一番人気は、化粧水で、次がラブリーナティーと、ラブリーナの日焼け止めだ。
肌に弾力を持たせみずみずしくなり、色が白くなると評判は上々だった。
ラブリーナの対応に追われている頃、王宮のアンドレア様から知らせが入った。
リーゼロッテ様が懐妊した、と。
が、王女が小さいためリーゼロッテ様よりまだ近くにいてほしい、と懇願され帰れないと言う。
私は特に何の感情も湧かなかった。
◇◇◇
そんなある日、マクシミリアン殿下がお忍びで公爵家にいらした。とても大事な話があると言う。
(……はぁ。妊婦に勘弁してほしいわ……)
絶対に悪い話でしかないため、聞くほうも覚悟が必要だった。
(……仕方ない、いきますか)
私は殿下の待つ部屋に向かった。
「公爵夫人……いや、ローゼ殿。久しいな。体調はどうだ?」
「おかげさまで安定しています。ありがとうございます」
「……すまないな、ローゼ殿も妊娠しているのに……」
「……仕方ないですわ、お仕事ですから。ところで殿下、内密なお話とは?」
私は人払いをすると切り出した。
「……実は……。謝らなくてはならないことがある」
「…うふふ。殿下とお会いするといつも謝罪ですね」
「……そうだな。話は妃、リーゼロッテのことなんだが……。実は……」
そこからまた壮大な話が続いた。
リーゼロッテ様が昔からアンドレア様を好きだったこと。リーゼロッテ様が、ずっと避妊薬を飲んでいたこと。医者を買収し、殿下があたかも原因である、と診断したこと。
「……つまり……。すべてはリーゼロッテ様が仕組んだこと?」
「……そうなるな」
「……はぁ。ちなみに、アンドレア様はご存知ですか」
「……いや、知らない」
「……そうでしたか。では、どうするおつもりですか」
「……リーゼロッテがまた懐妊した。契約通りアンドレアを解放する。ただ、出産まではリーゼロッテの行動に従って欲しい。しばらく嫌な思いをさせるが、我慢して欲しい。私も、ローゼ殿のような相手が妃だったらどんなに良かったことか……」
「……それはその……。お褒め頂きありがとうございます?」
それだけ告げると、殿下は公爵家を後にした。その背中が恐ろしい程に寂しそうだった。
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