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私はこのクライン国の由緒ある侯爵家の長女として生まれたローゼミリア・ギヌール、18歳。
社交界では、私のことは『日陰令嬢』なんて呼び名まである。
小さい頃にこの領地でしか生息していないハーブを発見し、以来そのハーブ『ラブリーナ』の研究開発に心血を注ぎながら、領地経営のあれこれを学んできた。これもすべてこの侯爵領の繁栄のため。
3歳差の妹がいるが、後継ぎは早々に私に決まり、教育を受けてきたのだ。
それなのに――。
(今更嫁に行けとは!それもあの女ったらしで有名なアンドレア!色恋に興味がない私はお飾り妻に丁度いいと思われただけのはず……。きっと、愛人たくさん囲って屋敷に帰らないパターンよね……。はぁ……。気が重い……)
公爵家の嫡男であるアンドレアとは領地が隣通しということもあり、昔からよく一緒に遊んでいた。
学園に通う頃になると、アンドレアは持ち前のルックスの良さと、交際術で数々の女性と浮名を流し、その後は領地経営を学びながら王宮に上がったと聞いていたが――。
(22歳のアンドレアと、15歳の妹じゃ釣り合わないから?それとも別の理由が?)
ここ数年、顔を合わせることすらしておらず、まずは直接会って話がしたかった。
公爵家に手紙を出すと日時の連絡があり、私は公爵家へ単身乗り込んでいった。
◇◇◇
久しぶりの公爵家は相変わらずの豪華絢爛な屋敷で、応接室に通されるとやはり気持ちが落ち着かなかった。
しばらくすると、金髪碧眼のザ貴族であるアンドレアが颯爽と現れた。
「久しぶりだな、ローザ」
「そうですね、アンドレア様。相変わらずの爽やかさ。息災で何よりですわ。でも、久しぶりなはずなのに婚約の申込を頂くなんて、青天の霹靂です」
明らかに困っています、と遠回しに伝えてみる。
「イヤね、そろそろ私も身を固めないと回りがうるさいしね。知らない相手よりも、昔馴染みのほうが勝手もいいから申込させてもらったよ。既に承諾は侯爵からもらっているが……?」
「……でしたら、妹にして下さい。昔馴染みですし。私は領地経営をしたいのです」
「なら、公爵領でやればいいよ。私は王宮の仕事もあるし、助かる」
「助かるって!もう。アンドレア様!とにかく妹で……」
「もう遅いよ。王宮からは婚約承諾の書類も来ているし、結婚式は来月だ。そうだ、せっかく来たからここにそのまま居てもらって構わないよ。ローザは家令とも顔馴染みだから話も早い。おっと、もうこんな時間だ。とにかく、結婚してもらうよ」
それだけ告げるとアンドレア様は仕事があると王宮に向かわれた。
その後、客室に泊まるように家令のマルクスに言われたが、丁重に断り侯爵家に戻った。
まさかこの日が公爵家でアンドレア様を見るのが最後になるなんてその時は思いもしなかった。
社交界では、私のことは『日陰令嬢』なんて呼び名まである。
小さい頃にこの領地でしか生息していないハーブを発見し、以来そのハーブ『ラブリーナ』の研究開発に心血を注ぎながら、領地経営のあれこれを学んできた。これもすべてこの侯爵領の繁栄のため。
3歳差の妹がいるが、後継ぎは早々に私に決まり、教育を受けてきたのだ。
それなのに――。
(今更嫁に行けとは!それもあの女ったらしで有名なアンドレア!色恋に興味がない私はお飾り妻に丁度いいと思われただけのはず……。きっと、愛人たくさん囲って屋敷に帰らないパターンよね……。はぁ……。気が重い……)
公爵家の嫡男であるアンドレアとは領地が隣通しということもあり、昔からよく一緒に遊んでいた。
学園に通う頃になると、アンドレアは持ち前のルックスの良さと、交際術で数々の女性と浮名を流し、その後は領地経営を学びながら王宮に上がったと聞いていたが――。
(22歳のアンドレアと、15歳の妹じゃ釣り合わないから?それとも別の理由が?)
ここ数年、顔を合わせることすらしておらず、まずは直接会って話がしたかった。
公爵家に手紙を出すと日時の連絡があり、私は公爵家へ単身乗り込んでいった。
◇◇◇
久しぶりの公爵家は相変わらずの豪華絢爛な屋敷で、応接室に通されるとやはり気持ちが落ち着かなかった。
しばらくすると、金髪碧眼のザ貴族であるアンドレアが颯爽と現れた。
「久しぶりだな、ローザ」
「そうですね、アンドレア様。相変わらずの爽やかさ。息災で何よりですわ。でも、久しぶりなはずなのに婚約の申込を頂くなんて、青天の霹靂です」
明らかに困っています、と遠回しに伝えてみる。
「イヤね、そろそろ私も身を固めないと回りがうるさいしね。知らない相手よりも、昔馴染みのほうが勝手もいいから申込させてもらったよ。既に承諾は侯爵からもらっているが……?」
「……でしたら、妹にして下さい。昔馴染みですし。私は領地経営をしたいのです」
「なら、公爵領でやればいいよ。私は王宮の仕事もあるし、助かる」
「助かるって!もう。アンドレア様!とにかく妹で……」
「もう遅いよ。王宮からは婚約承諾の書類も来ているし、結婚式は来月だ。そうだ、せっかく来たからここにそのまま居てもらって構わないよ。ローザは家令とも顔馴染みだから話も早い。おっと、もうこんな時間だ。とにかく、結婚してもらうよ」
それだけ告げるとアンドレア様は仕事があると王宮に向かわれた。
その後、客室に泊まるように家令のマルクスに言われたが、丁重に断り侯爵家に戻った。
まさかこの日が公爵家でアンドレア様を見るのが最後になるなんてその時は思いもしなかった。
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