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21.仲間
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「ゴンちゃーーんっ!」
その姿を見た時に、反射的に抱きついていた。
その大きくて厚い胸板には当然腕は回しきれないけれど、喜びは表現出来たと思う。
「す、ス、スカ!ひ、久しぶりだ……。さっき姿を見かけたたからアイサツニキタ……」
いかつい図体のゴンザレスが実は女性が苦手なヘタレでもある。女性を前にすると、緊張して上手く話せないのだそう。緊張して少し体が震えていた。
「大好きなゴンちゃんに会えて幸せー」
私はゴンちゃんに回した腕に力をこめた。
ゴンちゃんはこの森に通っていた頃の私の癒やしだった。
「あ、そうそう。みんな身内みたいなものだから言っておくね。私さー、あのボンクラ王太子に婚約破棄されて、王宮から逃げてきたの。で、一応表向きは死んだことになってるから、暫定的に平民アイリスとして生きてるからヨロシクっ。それでね、しばらくはここで、また冒険者見習いとして居させて欲しいんだ」
「うふふ。スカちゃん、おっとアイリスは、また冒険者見習いしたいのね?大歓迎よー、ねぇ?ゴンザレス?」
ゴンちゃんもすかさず首を縦に振る。
「それに、スカちゃんから連絡もらったから、ちゃーんとあの男を捕まえといたわよっ。ちょうど昨晩から少し大きめな魔獣が出たからか行ってもらってるけど、もう戻るんじゃない?何人かで行ってるから、時間はそんなにかからないと思うし……」
ゴンちゃんとミラちゃんは、無口で無表情なエルフィの良き理解者であり、良き相棒でもある。
私は久しぶりの気心知れた仲間に王宮から続いていた緊張が一気に解けた。
すると、瞳からは何故だが涙が溢れてきた。
頬を伝わる涙がゆっくりと首筋に伝う。
「お、おい!何で泣くんだよ?」
ザックが慌てて自分のハンカチ片手に私の涙を拭こうとしてくれている時だった。
私が俯き加減になっていると、いきなり足元にザックが転がってきた。
「……い、痛てぇ……いきなり何すんだよ!」
腰を蹴られたザックは、腰に手を当ててうずくまっていた。
私はびっくりして足元のザックに手を伸ばしたが、いつまでたっても手はザックに届かなかった。
誰かの手によって私が引き戻られていた。
「ちょ……っ、誰?」
私が強引に引き戻された体をよじりながら、誰が犯人なのかを確認するため何とか顔を振り向かせようと踏ん張った。
「……」
手に伝わる温もりはどこか懐かしく、私を一気に過去へと引き戻した。
「……エ、エルフィ?」
その名を口にした途端、足元のザックが飛び起きた。
その姿を見た時に、反射的に抱きついていた。
その大きくて厚い胸板には当然腕は回しきれないけれど、喜びは表現出来たと思う。
「す、ス、スカ!ひ、久しぶりだ……。さっき姿を見かけたたからアイサツニキタ……」
いかつい図体のゴンザレスが実は女性が苦手なヘタレでもある。女性を前にすると、緊張して上手く話せないのだそう。緊張して少し体が震えていた。
「大好きなゴンちゃんに会えて幸せー」
私はゴンちゃんに回した腕に力をこめた。
ゴンちゃんはこの森に通っていた頃の私の癒やしだった。
「あ、そうそう。みんな身内みたいなものだから言っておくね。私さー、あのボンクラ王太子に婚約破棄されて、王宮から逃げてきたの。で、一応表向きは死んだことになってるから、暫定的に平民アイリスとして生きてるからヨロシクっ。それでね、しばらくはここで、また冒険者見習いとして居させて欲しいんだ」
「うふふ。スカちゃん、おっとアイリスは、また冒険者見習いしたいのね?大歓迎よー、ねぇ?ゴンザレス?」
ゴンちゃんもすかさず首を縦に振る。
「それに、スカちゃんから連絡もらったから、ちゃーんとあの男を捕まえといたわよっ。ちょうど昨晩から少し大きめな魔獣が出たからか行ってもらってるけど、もう戻るんじゃない?何人かで行ってるから、時間はそんなにかからないと思うし……」
ゴンちゃんとミラちゃんは、無口で無表情なエルフィの良き理解者であり、良き相棒でもある。
私は久しぶりの気心知れた仲間に王宮から続いていた緊張が一気に解けた。
すると、瞳からは何故だが涙が溢れてきた。
頬を伝わる涙がゆっくりと首筋に伝う。
「お、おい!何で泣くんだよ?」
ザックが慌てて自分のハンカチ片手に私の涙を拭こうとしてくれている時だった。
私が俯き加減になっていると、いきなり足元にザックが転がってきた。
「……い、痛てぇ……いきなり何すんだよ!」
腰を蹴られたザックは、腰に手を当ててうずくまっていた。
私はびっくりして足元のザックに手を伸ばしたが、いつまでたっても手はザックに届かなかった。
誰かの手によって私が引き戻られていた。
「ちょ……っ、誰?」
私が強引に引き戻された体をよじりながら、誰が犯人なのかを確認するため何とか顔を振り向かせようと踏ん張った。
「……」
手に伝わる温もりはどこか懐かしく、私を一気に過去へと引き戻した。
「……エ、エルフィ?」
その名を口にした途端、足元のザックが飛び起きた。
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