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15.脱出3

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『黒髪に黒目の女性を探している』

騎士たちの話から、私を探していることは明白だった。

(……わぁ~。最悪っ!)

どうせダニエルが手当たり次第探させているのだろう。

そんなものに見つかる冒険者見習いではないのだ。

が、そんな強気な意志とは裏腹に、やはり隠れるしか術がない私は足音が遠くなるのをひたすら待っていた。

と思ったら、私の潜んでいる場所の前で足音が止まる。

(……ちょっと!早く行って!)

探さないでオーラならね、ビームを送ってみる。

足音的には2人の人間がいるようだった。

覗きこまれたら一貫の終わり……!

見ないで……!
見ないで……!

どくんっ……。
どくんっ……。

シーツを握りしめる手に力が入る。

「おい、あっちで目撃情報が出たらしい。行くぞっ!」

もうダメかと思った瞬間、近づいてきた第三の足音に救われた。

(ふぅ……助かった……!)

バタバタと遠くなる足音を聞き、私はようやく壁から身を乗り出した。

(しっかし、脱出するまで心臓に悪い……!)

北の塔近くの通用門まではあと少し。

危険だがシーツを第二王子の宮に置いてこようか?とふと過った。なぜなら、目の前が第二王子の宮だからだ。

さすがにシーツ抱えたまま通行するのは気がひける。

(……こっそり入って置いてこよう)

何度か訪れたことのある第二王子の宮はだいたいの間取りは頭に入っている。

私は第二王子の宮の入口で通行証を出すと、すんなりと中に入ることが出来た。

正面右手横から入ると使用人通路がある。
そこから入り、シーツを置いてこよう。

そう思って歩いていると、とても見慣れた後ろ姿が目に飛びこんできた。

(……あれは……)

中庭の隅ではあるが、見間違えるはずもないあの聖女と、第二王子の側近のようだった。
 
見ないふり……をしようと思いきや、自然と聖女に視線が向いてしまう。

聖女と第二王子……。
やっぱり関係あったんだ。

(まぁ、私にはもう関係ないけど……)

話を聞かなくてもたいていのことは予想できた。

ふぅ……。

抱えていたシーツは無事に届けておいた。

(任務完了!さて、行きますか)

不自然なことにはカラクリがあるのだ。

あの聖女を見たら、あの夜の薄汚い行為が脳裏に甦ってきた。

(まあ、もう会うこともないし、絶対に許さないけどね……)

今は復讐ではなく、脱出だ。

日が暮れる前に、何とか脱出したい。

目指す森は、自分の足で行くにはあまりにも遠かった。
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