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13.脱出

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ついに訪れた計画実行日当日。

昨晩、契約を前向きに考えている、と犯された後にポンコツ殿下にチラつかせておいた。

満更でもない殿下は、ダニエルを明日部屋に向かわせると言ったが、私から部屋に出向きたいと伝えた。

ならば、ダニエルに呼びに行かせる、と予想通りの展開になり、私は一人ほくそ笑んでいた。

「……ナナ、準備は大丈夫?」

「……はい、恐らくは……。なんせ私も経験がないので……。とにかく、スカーレット様のご武運だけをお祈りしていますっ!」

ナナが気のせいかこころなしか悲しげな表情で支度を進めてくれた。

事前に予行練習など出来るわけもなく、一か八かの賭けだった。

そして、多くの関わってくれる人の人生を左右することにもなるのだ。

目的地は、この王宮の外れにある北の塔。
そこに井戸があるのだ。

(身投げするにはうってつけの場所よね……)

身代わりの遺体はその井戸で見つかることになっている。

私はそこまでまずは辿り着き、そこから更に王宮を出て目的地に向かう。

計画を頭の中で描いていると、ダニエルが迎えに来たようだった。

「……ナナ、行ってくるね」

相変らず仏頂面なダニエルに従い、殿を目指した。

ダニエルを背中を見つめながら、あからさま過ぎないように距離を開く。

後ろにはやはり護衛が2名。

……次の角を曲がる瞬間が最初で最後のチャンスだ。

3、2、1……!

自分の中でカウントダウンする。

ダニエルが階段を上るために角を曲がった瞬間、私は左右に視線を送った。

(……い、今だっ!)

 私の足が一歩踏み出した途端、脇から2名の騎士が私の背後にいる護衛向けて飛び掛かった。

私はその様子を横目でみながらとにかく突き当りの使用人部屋目指して駆け抜ける。

(みんな、捕まらないで……!)

祈るような気持ちで足を繰り出す。

「あっちだ!」

ダニエルと思われる声が、逃げる私を捉えたようだ。

背後では、この騒ぎを聞きつけて応援が来たのかも知れない。

私はとにかくまずは着替なくては……!
(まあ、今は走りやすいから地味なドレスで感謝したいくらいだけどっ!)

何とか使用人部屋にたどり着くと、身を隠すように辺りを見渡す。

ようやくナナから聞いていた袋を見つけると、今着ている地味なドレスを脱ぎ捨てた。

恥ずかしいとかそんなのはどうでも良かった。

(のんびりしてると、ダニエルが来ちゃう……!)

指名手配犯スカーレットの誕生だった。
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