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9.計画

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「……スカーレット様!スカーレット様!」

ナナの声で意識が戻る。
あの後、そのままベッドで意識を失ってしまったようだった。

「……もう朝?」

カーテンからは日差しが差し込みはじめていた。

「朝食をお持ちしました。昨晩も……酷い目に遭われて……」

ナナは私を見るなりベッドから抱き起こしてくれた。
状況から察してくれたのだろう。

「……あと2日、何とか我慢するから。避妊薬が間に合わないのが痛いわね……」

お兄様からの手紙では、あと2日で計画が完了するとのことだった。

「それと、ナナ?例の場所にはきちんと手紙を届けてくれた?」

「はい、私は外に出らないため信頼できる人間に託しました。安心下さい」

「ナナがそういうなら安心ね……。あと2日、あの男を見るだけで吐き気がする……っ!」

「いっそのこと、月のものがきたとか、体調が悪いと理由をつけて拒否しましょう……!あんまりですっ!」

「そうね、でも意味がないかも……。はぁ、本当にあんな男と結婚しなくて良かった!まあ、国は大丈夫じゃないかもね……」

あんな男が治める国なら、滅びてしまえばいいーー。

いや、民には罪はないのだ。

(決めたっ!この国の王族もろとも葬りさってやるんだからっ!)

「……ナナ、とりあえず脱出のために必要なものを大至急手配して」

「もちろんですっ!メイド服に、カツラに……。食料と薬も何とかしますね。あとは路銀は公爵家から預かってますから。本当は私も一緒に行きたいのですが……」

ナナから路銀の入った袋を預かった。
ずしりと重みを感じる。

「ナナ、大丈夫よ。ありがとう。城の外で合流できるから」

私は路銀が入った袋から金貨数枚をナナに握らせた。

「……スカーレット様、ダメです!大切なお金ですから……」

「……大丈夫。ナナはこれで生活が楽になるでしょう?少しばかりのお礼だから」

私はナナに救われた。
お金では替えられないのだ。

ナナは最終的には喜んで受け取ってくれた。

計画は2日後ーー。
チャンスは一回だけ。

そう、私は死んだことになる。
王宮内で側妃になるのを、抗議しての自殺ーー。

もちろん、死ぬのは私ではない。

が用意される。
その準備に時間がかかっていた。

私はあと2日で死ぬ。
公爵令嬢スカーレット・オルタナは死ぬ。

(新しい名前、何にしよう?)

公爵令嬢に未練なんてない。

新しい人生を想像しながら、あと2日はあのポンコツをどうにかしなくては……。

今度こそ、自分を生きるーー。
生き抜いてやるーー!
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