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騒がしい再会
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「ハルトぉ~!レイぃ~!」
少し高めの甘い声だが、どこかで聞いた記憶がある声……。
「……兄上?」
レイの問いかけに、分かっているとばかりにラインハルト様が頷き、その声がする方向に視線を投げかける。
その人物とは別宅、そして結婚式と3回目になるが相変わらずの強烈なインパクトに、男性陣は下を向いてしまった。
「あ、ご無沙汰しております。マリーベル様。リリアーヌでございます。……しばらくこちらでお世話になります」
今だにあの別宅でのメイド姿が私だとまだ気が付かれていない様子。
私の発言と存在はまるで視界に入っていないらしく、私を押しのけてラインハルト様の席に近寄ろうと必死だ。
それを見たレイがマリーベル様を制止しようと腕を掴むが
、貴族令嬢らしからぬ怪力でレイを振り払い、ラインハルト様の前に突進する。
「ま、マリーベル……。今日からレイ達が滞在するから、君の相手をしている時間が……」
「ハルト~。せっかくレイが来たのだから、3人で話しましょうよ?」
3人を強調するマリーベル様に、レイは首を振る。
「ハルトぉ~。レイが結婚した途端に冷たいのっ!幼馴染なのにっ。何とか言って?私、義理の姉になるのに……」
何かにつけて家族アピールをするマリーベル様が、ラインハルト様とレイを誘ってお茶会をしようとしていた。
(わ、私の存在なんて幽霊以下なのね……)
過去に愛人宣言までしていた方なだけあって、押しが驚くほど強い……。
「マリーベル様、今晩は公爵夫妻との晩餐も予定されております。夫も私もお召し替えなどあるため、そろそろ失礼させて頂きます」
なるべく刺激しないように話をしたつもりだが、マリーベル様は眉毛を釣り上げ、怒りを露わにした。
「それなら、レイ!奥さんが支度している間、時間あるでしょう?!私の部屋に来ない?」
部屋に来ないかって……。
あからさま過ぎだけど?
「マリーベル、やめないか。レイも移動で疲れてるんだ。君は結婚式の準備があるだろう?母上のところに行かなくていいのか?」
「そ、それはそうだけど、レイと会うのは久しぶりじゃない?ほら、私……レイと……ほら?」
マリーベル様は何かを言いたそうにして頬を赤らめた。
そんなマリーベル様を無視するように、レイは私の手を取り、部屋を立ち去ろうと歩きだした。
「話はまだですわっ!レイっ!そんな女だけでは満足できないでしょう?私が癒やしたいのっ!」
未来の夫であるラインハルト様がいるからわざとなのかは不明だが、この場の空気が一瞬で凍りつく。
何も答えないのが答えなのに……。
マリーベル様は、分からないフリをなさる。
「リリー、行こうか?」
私は頷きレイのエスコートで部屋を出ようとした。
その時だった。
マリーベル様が私をレイから引き離すように押しのけだはずみで、私は床に叩きつけられた。
ずどーんと言う音がし、視界に天井が見えたのを最後に私は意識を失った。
少し高めの甘い声だが、どこかで聞いた記憶がある声……。
「……兄上?」
レイの問いかけに、分かっているとばかりにラインハルト様が頷き、その声がする方向に視線を投げかける。
その人物とは別宅、そして結婚式と3回目になるが相変わらずの強烈なインパクトに、男性陣は下を向いてしまった。
「あ、ご無沙汰しております。マリーベル様。リリアーヌでございます。……しばらくこちらでお世話になります」
今だにあの別宅でのメイド姿が私だとまだ気が付かれていない様子。
私の発言と存在はまるで視界に入っていないらしく、私を押しのけてラインハルト様の席に近寄ろうと必死だ。
それを見たレイがマリーベル様を制止しようと腕を掴むが
、貴族令嬢らしからぬ怪力でレイを振り払い、ラインハルト様の前に突進する。
「ま、マリーベル……。今日からレイ達が滞在するから、君の相手をしている時間が……」
「ハルト~。せっかくレイが来たのだから、3人で話しましょうよ?」
3人を強調するマリーベル様に、レイは首を振る。
「ハルトぉ~。レイが結婚した途端に冷たいのっ!幼馴染なのにっ。何とか言って?私、義理の姉になるのに……」
何かにつけて家族アピールをするマリーベル様が、ラインハルト様とレイを誘ってお茶会をしようとしていた。
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「マリーベル様、今晩は公爵夫妻との晩餐も予定されております。夫も私もお召し替えなどあるため、そろそろ失礼させて頂きます」
なるべく刺激しないように話をしたつもりだが、マリーベル様は眉毛を釣り上げ、怒りを露わにした。
「それなら、レイ!奥さんが支度している間、時間あるでしょう?!私の部屋に来ない?」
部屋に来ないかって……。
あからさま過ぎだけど?
「マリーベル、やめないか。レイも移動で疲れてるんだ。君は結婚式の準備があるだろう?母上のところに行かなくていいのか?」
「そ、それはそうだけど、レイと会うのは久しぶりじゃない?ほら、私……レイと……ほら?」
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そんなマリーベル様を無視するように、レイは私の手を取り、部屋を立ち去ろうと歩きだした。
「話はまだですわっ!レイっ!そんな女だけでは満足できないでしょう?私が癒やしたいのっ!」
未来の夫であるラインハルト様がいるからわざとなのかは不明だが、この場の空気が一瞬で凍りつく。
何も答えないのが答えなのに……。
マリーベル様は、分からないフリをなさる。
「リリー、行こうか?」
私は頷きレイのエスコートで部屋を出ようとした。
その時だった。
マリーベル様が私をレイから引き離すように押しのけだはずみで、私は床に叩きつけられた。
ずどーんと言う音がし、視界に天井が見えたのを最後に私は意識を失った。
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