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領地

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まず向かったのはお父様がいた場所で、しっかり立て直しが行われたかをこの目で確かめるためだった。

領地の中でも、特に目立たず外れにある場所だが、いくつか侯爵領の特産品を産出しており、工場もある。

今は侯爵家ではなく、ミスボス商会から派遣し、これらを管理する方法に切り替えた。

そうすることにより、ミスボス商会で原料などの特性も把握しやすく、企画もしやすい。

工場側も生産ラインを確保しやすく、人員管理も任せられるためコストカットにも繋がった。

まず訪れたのは、お父様が事務所にしていた場所だった。

「ようこそ、おいで下さいました」

出迎えてくれたのは、元はお父様の補佐役で、今はオスカーの部下だった。

40代前半と思われるその男性は、お父様とは真逆な神経質で、真面目そうな人だった。

「すみません、オスカー代表は商会に戻ってまして……」

レイは知っているから構わない、と伝え近況と問題点を報告するよう伝える。

「……では、来年の衣類の生産に合わせて増産が可能ということだな」

このあたりは良質な綿の産地。
今、私が着ているワンピースの綿も、ここのものだ。

「課題の品質管理は?」

「来年度からオーガニックコットンを量産できるよう工場側と調整しています。試作レベルならもう可能かと」

「オーガニックコットンなら、女性受けするし、貴族にも差別化できるわね。ねぇ?次回作品のハートのワンピース、オーガニックコットンにしたらどう?白い生地に、赤いハートはかなり可愛いから、人気になるっ!」

私が思わず口を挟むと、レイが同意してくれた。

「……では、デザイン案を出すから、試作からすすめよう」

「了解しました。それと、今年は柑橘類の収穫量が多く、オイルも多めに出来るようです。そのため、新製品を考えても良いかと」

「……ねぇ、レイ?オイルを使ったスクラブを作ってみない?公爵領で採れる塩と合わせて作るの。どうかな?」

「スクラブ?」

「角質を取るものなんだけど、オイルを使うからマッサージしながら、潤いを残しつつ、角質ケアも出来そうだし。試してみる価値はあるかなって」

「なら、サザーランド商会から、塩のサンプルを取り寄せよう。後はこちらの化粧品工場で試作だな」

「ありがとう、レイ!」

その後もいくつか確認をし、私たちは2時間ほど滞在して次の目的地に向かうことになる。

「……あの。すみません。最後に……」

申し訳なさそうに一通の手紙が差し出された。

あの人から私が来たら手渡すよう渡されたそうで、私は仕方ないので受取った。

この男性もずっと間近であの人を支えてきたはずだ。いろいろ言いたいこともあるに違いない。

「……ありがとう。あの人がいろいろと迷惑をかけたと思います。申し訳ありませんでした。これからは、この侯爵領も生まれ変わります。引き続き、頼りにしていますね」

男性は爽やかな笑顔で見送ってくれた。
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