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その先へ

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「リリーっ…」

レイの部屋に入ると、名前を呼びながらレイが静かに扉を閉めた。

(名前呼ばれただけで何だかドキドキする……)

レイは私の手を掴むと、ソファまで行き二人で腰を下ろす。

既にマリアがデザートを用意してくれていた。

「今日のデザートも美味しそう」

甘い物大好きな私は、毎晩マリアが作るデザートを楽しみにしていた。

「……本当に美味しそうに食べるな」

プリンを頬張る私は一瞬噎せそうになった。

レイはそこまで甘い物が得意ではないので、いつも半分私に餌付けしてくれる。

「リリー、はい、口開けて?」

私が雛鳥気分で口を開けると、スプーンが迫ってくる。

レイと視線を合わせながらプリンを頂く。

「……おいひぃ!しあわせ!」

ナプキンで口を拭き、紅茶に手をかける。

「リリー!ああっ…!この数日は……」

レイが何やらブツブツ呟いている。

「どうしたの?レイ?」

「……とりあえず、無事で良かった……!」

紅茶をソーサーに戻したタイミングで、レイに抱き締められた。

「れ、レイ?カイル様が護衛手配してくれたし……。ほら、無事でしょ?」

の意味が違う、とイライラするレイ。

「リリーが…リリーが…あの男を選ぶかも知れないと思ったら……気が気でなくて……」

ああ、そうだった…!
すっかり忘れていた位、そんな話があったっけ?

「そ、そうだったね……。ごめんね、不安にさせて……」

私はレイの胸のあたりに顔を埋めながら必死でレイに詫びた。

「で、でもね?レイ。結局、アレク様とのことも忘れていたくらいだから……その……何もなかったし?まあ、留学の話は少し魅力的だったけど……」

「あの男、留学なんて言い出したのか……!」

「い、いや……そのね?ほら、ここにいても大変だから王妃様が心配して下さって……」

「あの男……!使えるものは何でも使うな……」

え?そうなの?あれもアレク様の作戦?
そこまで考えてなかった…。

というか、レイこそ使えるもの何でも使ってない?とはさすがに聞けないが……。

「それで、リリー。その……もう結婚しないか?」

ん?結婚?

「け、結婚って言った?」

見上げたレイの表情は、いつになく真剣だった。
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