とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

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餌付け

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私とマリアがメインダイニングに現れると、歓談していたアレク様とレイが立ち上がり、私のところに近づいてきた。

 「……今日は二人でエスコートさせてもらうよ?」
 
 アレク様が右手、レイが私の左手を取る。

 「……あ、ありがとうございます?」
 二人は私の歩幅に合わせながら歩いていく。

 重ねられた手から伝わる温もりが愛しくて思わずきゅっと握り返した。
 ダニエルが椅子を引き、私はアレク様に促されて着席した。

 「……今日は、リリーの両隣に座ろう」
 アレク様が右側、レイが左側に着席する。
 私はもちろん真ん中。

 (ひょえー。対面でもなく、隣ですか?)

 距離が近すぎです!
 それも肩が触れ合う距離感!
 食事どころじゃなくないですか?

 「リリー、そんなに照れなくても」
 
 両隣ではキラキライケメンと眼福さんが、私の手を握りながら顔を覗きこんでくる。
 
(……ど、どっちを見たらいいの?)
 
 狼狽える私を見ながら、二人はお構いなしに見つめてくる。
 
「明日からはリリーが早番の時は交互に夕食を共にしよう」
 
「……カシコマリマシタ」
 
 またまたアレク様の押しの強さに負けたー!
 
「リリーがいない時は、マリア殿とダニエル殿にリリーの幼い頃の話や、好きなものとか思い出深いエピソードなどを聞いて楽しんでいるよ、なあ?レイ殿」
 
 アレク様とレイっていつの間にそんなに仲良くなったのかくらいに砕けた感じになっていた。
 
 このダイニングには、私と二人の婚約者候補以外は誰もいない。礼儀作法など抜きにしたディナータイムになっていた。
 
 今日のメニューはもちろんコース料理だが、マリアとダニエルが出来次第料理を運んでくることになっている。
 
「私はアレク様とレイの話が聞きたいです!」
 
 料理を待つ間、何とか二人の関心を私から離す作戦だ。
 
「我々の話?聞いて楽しいか」
 
 アレク様の声がかなり嫌がっていたがそんなのお構い無しに進めてやるっ!
 
「だって、お互いを知らないと理解できないでしょう?二人だってマリアとダニエルに私のこと聞いた癖に!」
 
 私は少し頬を膨らませむくれた態度をすると、二人はすまないと言わんばかりに三人で交互にお互いの話をすることになった。
 
「次はアレク様ですよー」
 
 進行役の私は話を聞きながら、夕食を進めながら、横から交互に「あーん」と口に運ばれる。
 
「……まるで餌付けされてるひな鳥だな」
 
 レイがクスクス笑いながら、私の口にオードブルを運んだ。
 
「ひな鳥、可愛いでしょ?」
 
「ああ、とっても可愛いひな鳥だ」
 
 レイは口の端についてしまったソースを自分の指ですくいとると自らの口に含んだ。
 
(……ううっ!何てセクシーなレイっ!)
 
 何気ない動作に妙な色気を感じて、ひな鳥は口がパクパクあいたままになっていた。
 
「口、閉じないのか?俺に見惚れた?」
 
「……レイの色気にやられた」
 
 隣ではリリーは色気に弱いのかとアレク様がぶつぶつつぶやいてるし。
 
 二人の話も想像以上に楽しくて、正直なところ二人の魅力がぐーんとアップしたことは秘密。

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