21 / 73
お泊まり
しおりを挟む
ディナーの後にレイにプロボーズされ、その後はサザーランド家の馬車で到着した先はレイ曰くたまに使う別荘だった。
さすがサザーランド家と言わんばかりの豪華な造りに身構えてしまう。玄関には何名かの侍女と、レイ付の執事であるローナンが待ち構えていた。ローナンはいかにも出来る感じの、レイより少し年上の美丈夫だった。
「こちら、未来の妻だ」
…つ、妻!
(今日は本当に心臓が持たない……!)
「フォンデンベルグ侯爵家長女、リリアーヌと申します。よろしくお願いいたします」
私は軽くおじぎをした。
(町娘スタイルじゃなくて本当に良かった……)
「ローナン、リリアーヌ嬢に結婚の承諾をもらった。両親と彼女の父親に会いたい。調整してくれ」
大勢の前でプロボーズを承諾したことを話され、恥ずかしかったが、婿入りするにしても、使用人に知らしめる目的もあったのだろう。
「さあ、リリー。部屋に行こうか」
促されるまま客間に案内された。内装はシンプルながら、調度品は高級感溢れている。
(な、なんか流されるまま来ちゃったけど、この流れ大丈夫か?私のなけなしの純潔!)
プロボーズは承諾したと言えど、婚約すら整っていない仮約束な身分だ。あまりにも不安定でいきなりことに及ぶには躊躇いしかない。
「今日は疲れただろう?ゆっくり休んで。侍女が後から来るから着替えや湯浴みは手伝ってもらって」
「あ、あの……。レイ?レイはどこに……?」
私の意味を察したのだろう。レイの顔が仄かに赤みを帯びた。
「……俺は自室にいるから何かあれば侍女かローナンに伝えて欲しい」
私はホッとすると同時に、ようやく二人きりになれたのに離れるのが寂しかった。
「レ、レイ……!」
私は、咄嗟に出ていこうとするレイを後ろから抱き締めた。
「……少しだけこうさせて?」
「……リリー」
レイの背中はとっても大きくて、温かくて。
片方の頬を沈めるとその温もりに気持ちが自然と落ち着いていく。
(未来の旦那様……!大好きっ)
レイが前に回された私の両手をほどくと、正面から再び私を抱き締めてくれた。
「……ギュッとして?」
私を抱き締める力が一段と強くなる。その強さがまるで愛の強さみたいで私の心はどんどん満たされていった。
「……ありがとう。レイが充電できた」
私はレイを見上げてレイと離れるのが寂しいアピールをしてみる。
「……あー、たくっ。リリー。君は……。可愛すぎるだろ。反則だ」
「……?」
小首を傾げる私の前には何やら悶えるレイ。
「……俺をそんなに煽るな……」
「……ち、違うの。ごめんなさい。離れるのが寂しくて……」
「……!リリー。俺もだ。だが、今日は……おやすみ、リリー」
レイはそう言うと額にキスをして部屋を後にした。
(今日はいい夢を見られそうだ)
その後、優秀な侍女に着替えや湯浴みをされ、早々にベッドにダイブしたのは言うまでもない。
さすがサザーランド家と言わんばかりの豪華な造りに身構えてしまう。玄関には何名かの侍女と、レイ付の執事であるローナンが待ち構えていた。ローナンはいかにも出来る感じの、レイより少し年上の美丈夫だった。
「こちら、未来の妻だ」
…つ、妻!
(今日は本当に心臓が持たない……!)
「フォンデンベルグ侯爵家長女、リリアーヌと申します。よろしくお願いいたします」
私は軽くおじぎをした。
(町娘スタイルじゃなくて本当に良かった……)
「ローナン、リリアーヌ嬢に結婚の承諾をもらった。両親と彼女の父親に会いたい。調整してくれ」
大勢の前でプロボーズを承諾したことを話され、恥ずかしかったが、婿入りするにしても、使用人に知らしめる目的もあったのだろう。
「さあ、リリー。部屋に行こうか」
促されるまま客間に案内された。内装はシンプルながら、調度品は高級感溢れている。
(な、なんか流されるまま来ちゃったけど、この流れ大丈夫か?私のなけなしの純潔!)
プロボーズは承諾したと言えど、婚約すら整っていない仮約束な身分だ。あまりにも不安定でいきなりことに及ぶには躊躇いしかない。
「今日は疲れただろう?ゆっくり休んで。侍女が後から来るから着替えや湯浴みは手伝ってもらって」
「あ、あの……。レイ?レイはどこに……?」
私の意味を察したのだろう。レイの顔が仄かに赤みを帯びた。
「……俺は自室にいるから何かあれば侍女かローナンに伝えて欲しい」
私はホッとすると同時に、ようやく二人きりになれたのに離れるのが寂しかった。
「レ、レイ……!」
私は、咄嗟に出ていこうとするレイを後ろから抱き締めた。
「……少しだけこうさせて?」
「……リリー」
レイの背中はとっても大きくて、温かくて。
片方の頬を沈めるとその温もりに気持ちが自然と落ち着いていく。
(未来の旦那様……!大好きっ)
レイが前に回された私の両手をほどくと、正面から再び私を抱き締めてくれた。
「……ギュッとして?」
私を抱き締める力が一段と強くなる。その強さがまるで愛の強さみたいで私の心はどんどん満たされていった。
「……ありがとう。レイが充電できた」
私はレイを見上げてレイと離れるのが寂しいアピールをしてみる。
「……あー、たくっ。リリー。君は……。可愛すぎるだろ。反則だ」
「……?」
小首を傾げる私の前には何やら悶えるレイ。
「……俺をそんなに煽るな……」
「……ち、違うの。ごめんなさい。離れるのが寂しくて……」
「……!リリー。俺もだ。だが、今日は……おやすみ、リリー」
レイはそう言うと額にキスをして部屋を後にした。
(今日はいい夢を見られそうだ)
その後、優秀な侍女に着替えや湯浴みをされ、早々にベッドにダイブしたのは言うまでもない。
20
お気に入りに追加
493
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる