とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

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ミスボス商会は、私の誕生日に登録することにした。(誰にも言ってないけど、マリアとダニエルは知ってるか?)

 それを踏まえて、書類上の役員をどうするか?で悩んでいた。

 もちろん、私は登録上も名前を出すつもりはなかったのに、レイが後で後悔するぞ?と脅してくるし。

 いずれにせよ、私は侯爵家を継ぐ訳で、商会からは税収をもらえるし、正式に継いだら取引すればいいくらいに考えていたのに――。

 それで最終的には、私が侯爵家を継いだら名前を連ねることになった。

(ふーっ。これから劇とかで目立つと、どこから嫌がらせされたりするかもだしね!)

 というわけで、私が書類上名前を出さないため、また人選がスタートしていた。

 オスカーからは、レイも連ねて欲しいから説得するように言われ、少し前に話をしたんだけど保留にされてしまった。

 そんなこんなで今日はオスカーから人材を新たに確保したから顔合わせして欲しい、と言われ別宅で顔合わせをすることになった。

 私は、マリアとダニエルと一緒に別宅で客人到着の準備をしている。レイは、オスカーの迎えに行っていた。道中打ち合わせをしたいのだとか。

「私、着替えてくるね」
 マリアに告げると、自室に向かった。

(顔合わせだけど、レイもいるしね!せっかくだから、少しオシャレしよーっと)

 クローゼットを開くと、さりげなく選んだのは淡いピンクのストレートラインのワンピースだった。
 ネックレスとイヤリングにはピンクサファイアを選び、軽く化粧をしなおした。

「お嬢様、お客様が到着されました」
 
 グットタイミングでマリアの知らせが入る。

 マリアとダニエルには、商会設立や、レイとの関係、ビジネスのことを少し話している。どうやらダニエルはレイの手伝いも少ししているらしい。

 姿見で全身チェックし、扉を開けるとレイが佇んでいた。

「び、びっくりしたー!」

 思わぬ登場に声が出てしまった。
 毎回毎回、淑女はどこにいったやら?

「……驚かせて悪い。応接室までエスコートさせてもらえるかな?」

 今日は外出のためか、少しラフな格好をしているレイ。軽い感じの紺色のジャケットに、白のシャツ、白のパンツのスタイルだが、本当に素敵だ!

 (私が隣に並んで大丈夫かなあ?)

 差し出された手を取るのを一瞬躊躇してしまう。

 「今日のワンピースも可憐で似合ってるよ。さあ、お手をどうぞ?」

 私は恐る恐る差し出された手に触れた。

 自然と胸が高鳴る。

「あ、ありがとう!すっごく嬉しい!」
 
 まだデビュー前というのもあるが、パーティーや、お茶会、夜会などはもちろん参加したことはなかった。

「どういたしまして」
 ……やっぱり大人の男性は違うなあ。

 私はレイの横顔をうっとり眺める。
 そういえば、レイには婚約者いるのかな?
 いるよね、きっと。
 こんなに素敵なんだし。
 ああ、羨ましいなあ。
 聞いてみようかなあ。
 でも、知らないほうがいいかなあ?

「どうした?リリー」

 「な、何でもないよ。ただ……」

 そこまで言うと恥ずかしくなってしまい、俯くしかない。

 「……レイは素敵だな、と思って。ねぇ、レイ?」

 「そんな風に言われると、誤解してしまいそうだ。」

 「……ご、誤解って?」

 「いや、そのままの意味だが……」

 私の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだった。誤解?何の誤解?

 「……」

 「……」

 その後は応接室まで謎の沈黙が続いたのは言うまでもない。
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