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受賞

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その後の契約や商会設立手続きは、レイとオスカーが進めてくれることになった。孤児院との交渉や、人材スカウトはオスカーに任せ、私は劇の脚本に専念している。

 なかなか休みがないため別宅にいけないものの、今までの暗い生活が一変。毎日、心は充実していた。

 信頼できる仲間がいる。
 助けてくれる仲間がいる。
 それだけで充分だった。

 と、今日は久々のお休みの日。
 もちろん、朝から別宅に向かう。

「マリア、ダニエル、レイ~。ただいま!」

 扉を開けると、誰の応答もない。
(また急用でみんないないの?そうだとしたら、鍵は開いてないはず……?)

 とりあえず、ダイニングをのぞいてみる?

 私は静まりかえった廊下を進んだ。
 自分の家なのに、不安が押し寄せてくる。
 ダイニングの扉に手をかけ、一呼吸置く。
(……ふう。よし!)

 ――カチャ。

 ゆっくりと扉を開く。

「お嬢様、おめでとうございます!」
「リリアーヌ、おめでとう!」

 うう?

 マリアとダニエル、そして今日もキラキラな眼福さんことレイが拍手で迎えてくれた。

「……えっと、今日は何の日だった?」
 ――誕生日じゃないし?

 レイが怪訝そうにしている私に近づくと、急に両手を広げて抱きしめてくる。

 …………そ、そんな情熱的な人だったっけ?
 な、何?この眼福さんのサービスは?
 とっても暖かくて、気持ちのよい抱擁に、私はぼーっとしてしまう。

「君が書いた作品、受賞したんだっ!すごいよ、君は!」

 ーー受賞?
 ーー作品?

 一瞬言われて何のことだが分からなかったのだが、ようやく理解が追いついた。
「あ、あの伯爵令嬢の?」

「らしい。もちろん、作品は出版もされるし」

 されるし?

「君に話をしてないのにあれだったんだけど、商会として劇にしたいと出版社に交渉したら、何と王都で出版社と一緒に協賛という形でやってみることになった」

「……う、嘘?」

「本当だ。リリアーヌの実力だ!」

 私はまさか受賞するとも思っておらず、まさかこんな展開になるなんて……!

 私は嬉しくて、嬉しくて。

「えーん、嬉しいよぉ…」

急に力が抜けてしまって、そのままレイの胸の中で泣かせてもらった。

 ◇◇◇

 受賞の知らせがきたのは数日前だそう。その間に、レイはいろいろと私のために動いていてくれていて、感謝しかなかった。

 「ありがとう、レイ……」
 
ひとしきり泣いた後、ようやく落ち着いた私は受賞を知らせる書類に目を通した。

「劇の契約書は、いまうちの商会名義でとりあえず交渉してるから。それでよかったかな?取り分はそこから分けるということで」
 
もちろん、異論なんてない。
 レイは、私のためだけに動いてくれているのではないことは分かっている。

 けど。ここ数年誰からも相手にしてもらえなかった私はレイの行動が本当に嬉しかった。

「劇は役者の手配や稽古もあるし、会場手配などもあるしな。オスカーとも相談して、孤児院でやる劇とも合わせてやっていこうかと思っている。これで注目されるのは間違いないだろう」

 ――注目される。
 それはとてもありがたいこと。
 
 でもこの時ふとなぜだろう不安がよぎった。
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