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閑話3~操り人形の計画(イルス視点)
しおりを挟む天后からの呼び出しが日常業務になってどれくらいたったでしょうか?
私は何も取り柄のないただの神様ですから。
全てが平均以下で、霊術こそ使えますが、神様としての自分だけの特別な力には恵まれませんでした。
だから、そんな私は天后であるお母様の言い付けだけを守っていれば良いのです。
そこに感情はなく、単なる業務。
そう割り切れるようになったら、何とか生きてこられました。
今日の天后のきまぐれは何でしょう?
父である天帝は良くも悪くも天后の言いなりなのです。私を愛しても守ってくれません。ただ居るだけ、です。
そこに意思はないのだろうか?と何度思ったことでしょう。でも仕方ありません。期待はしません。
お父様は、天后が強引に奪った契約花婿だそうです。きっとお父様は感情を全て失くしてしまったのでしょう。いつも天后の隣で微笑んでいるだけ、ですから。お母様はそれで本当に幸せなのか考えたことがありますが、幸せそうに振舞っていることだけは事実です。
さて、天后との面会の時間になってしまいました。気分は乗りませんが致し方ありません。業務ですから。
「天后、イルサが参りました」
いつもどうり定刻にドアをノックします。
扉はいつもひとりでに開きます。
私は歓迎されているのでしょうか。
「またしても仕留め損ねたわね!この役立たずがっ!」
いきなり顔面に向けて何かが飛んできました。その瞬間、私の両頬に痛みが走り、何とか歯を食いしばりこらえました。痛みがじんじんと頬から頭に向かって走ります。
突然縁者石のお告げが出たことを受け、今回はとても短時間で計画を練り、実行までしなくてはなりませんでした。毎回天后はあの母娘を始末することしか考えていないようです。
幸運なことにあの女には毒を注入することが出来ましたが、誰も殺せませんでした。
私はあの女が大嫌いです。なぜなら、私にとってこの世で唯一無二の存在であるあの方に選ばれたと勘違いしているからです。ウエイ様は私だけのものなのですから。
あの方の隣に相応しいのは、私だけ。
ねえ?そうでしょう。お母様。
しかし、またお父様同様の悲劇は繰り返されるのでしょうか。
「イルス、この役立たずが!でも喜びなさい。お前が役に立つ時が来たのよ!」
またしても天后は何か企んでいるのでしょう。
私には決してお母様と呼ばせない天后。
己の欲望のためなら、娘や夫も平気で利用する傲慢な女です。
「近いうちに婚約してもらうわよ」
今度は結婚ですか。
果たしてどなたを生け贄にされるおつもりでしょうか。
「せいぜい魔界の第一王子を虜にしなさい」
あの方のお兄様でしたか。
これは何か考えないといけません。
天后は魔界と何かするつもりなのでしょうが、私にしたらあの方だけ手に入れば良いのです。
縁者石のお告げすら天后にしてみたら己の欲望を前に無意味なものなのでしょう。そういえば私に縁者石のお告げはでるのでしょうか……。
「善処致します」
私は心にもないことをまた口にしていました。
なんせあの方以外は必要ないのですから。
天界の天帝と天后は単なるお飾り。
虚構の権力と裏では言われていますが、それは真実なのです。
気がついてないのは天后だけ。
いえ、いつまでも天后から離れることが出来ない操り人形な私も含まれるでしょう。
でも、あの方はあの女ともう少しで結ばれてしまいます。だから、私にとって今回の業務は最後のチャンスなのかも知れません。
虚構の夫婦でも構わないのですから。ただ隣に居て欲しいのです。
私は絶対にあの方を手に入れます。
さあ、そうしましょう。
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